感想評価ならびに誤字報告ありがとうございます。
とても助かっています!
それはそうとウルトラマンテオを皆さんは見ましたか? 私は見ました。一般トラマンが主人公ということで1話敗北スタートも覚悟していたのですが……なんか強くないですか……? 逸般トラマンなのか、ルーブ兄弟を見てみろよ。
夜天の黒と、吹き上がる炎の赤の中で踊るように暴れるのは、1体の超獣。
満月超獣ルナチクス。
だがこれは当時の再現映像でしかない。
実際に月の文明が滅んだのは、今から数十万年も前のことだ。
■■■は、教師の人間にそう教えられた。
だから砕け散る建物も、逃げ惑う人々の悲鳴も、ただ後世に語り継ぐために作られた偽物にすぎない。
それでも■■■の中にある根源的な何かが、映像の中のルナチクスを見て揺れた気がした。
「――――」
ふと目が覚める。
天井は見知らぬものだった。古いアパートのそれではなく、綺麗で、真っ白で、新品のような天井。
そこまで考えて、昨日引っ越したことを思い出した。
隣で眠る彩葉を起こさないように布団から起き上がり、朝空に浮かぶ白い月を見る。
夢を見たことだけは覚えているが、その内容がとんと思い出せない。
だが良い夢ではなかったのだろう。気分はすぐれないし、胸がざわざわして落ち着かない。
「なんだろ、これ」
目は完全に覚めていた。とてもではないが二度寝する気にはなれなかった。
◇
ウェイリンは、はるか宇宙の彼方からやってきたファントン星人である。
ファントン星はかつて深刻な食糧危機にあった。
元より大食らいで食事を神聖視しているファントン星人にとって、これは致命的な事態であったが、24年前に1人の英雄がもたらした非常食「シーピン929」により解決することになる。
その伝説は今も尚語り継がれており、ミーハーな彼女は英雄が降り立ったとされる地球にやって来たのだが、その時地球の食事に魅了されてしまった。
友好的な宇宙人と記録されていたファントン星人が拒まれることはなく*1、正式な移民の手続きを踏んだ彼女は地球に移住することになる。
そして始めたのが、自分の食欲も満たせて金にもなる職業、ライバーだった。
彼女は人間の美女に擬態し、大食い系ライバーのファン・トンウェイと名を変え、地球で生活している。
「大食い系ライバーのファン・トンウェイやで〜。今日もがっぽり食べて……と言いたいところやけど、まずはゲストの紹介や。知っとるキレキレテ*2も多いと思うけど、改めて紹介するで。ほなどうぞ〜!」
そう言ってカメラがズレた先には少女が2人、笑顔で立っている。
「かぐやっほ〜! かぐやだよー! 今日は沢山食べるぞ、おー!」
「こんにちは〜まみまみで〜す。今日はかぐやちゃんを連れてきました〜」
足まで伸びる金髪が特徴的な、話題のシンデレラガール、かぐや。
パーマの入った茶髪をミディアムショートにした弊チャンネルの常連、まみまみ。
そう、トンウェイとまみまみは仲がいい。
片や大食い系の美女、片やグルメインフルエンサー系の美少女と、2人は非常に相性が良く、今回はまみまみがかぐやのリア友ということで、特別にコラボすることができた。
かぐやはガマスとの戦いで、ブラックオニキスと共に音頭を取り、事件を解決に導いた英雄。その上ヤチヨカップで優勝までした、正に時の人である。
今や様々なイベントに引っ張りだこであり、1週間後にはツクヨミ史上初、ヤチヨとのコラボライブまで控えている。ここでコラボできることは非常にアツい。トンウェイは目を金のマークにしてやる気に満ち溢れていた。
なお金はほぼ全て食費に消える模様*2。
「うおー! 今日は食べるぞー!」
「かぐやちゃん沢山食べるもんね〜」
「おっ、そうなん〜? かぐやちゃん大食い系もイケるくちなんか。意外やな~」
「この前なんか1人で5人前くらい食べてたんですよ?」
「マジか!? こりゃライバル登場かもしれへんな!」
「エッヘン……って、そういえば真美は顔出し良いの?」
「顔は編集で隠してもらうからいいんだ~」
「お~」
「あんまり激しく動かれると編集係が大変やから抑えめで頼むで?」
トンウェイは自らがプロデュースした中華料理店に2人を招いた。
それは自身のチャンネルと店舗の宣伝を兼ねた一石二鳥の策であり、料理はいずれもトンウェイが太鼓判を押すラインナップが揃っている。まみまみとかぐやからの反応も良好だった。
特にかぐやは普段作る料理が和食と洋食に傾倒していることもあり、本格的な中華料理は初めてだったため、店長に質問を雨あられのごとく浴びせていた。トンウェイも思わずうなるような鋭い内容まであり、料理系もいけそうやなこの娘と戦慄する。
今回のコラボは全員がお店をおすすめしあうといった内容だったため、次はまみまみがかき氷店に案内した。
季節は夏真っ盛り。キラキラと光る赤いシロップがかけられた山のようなかき氷を見て、かぐやが目を輝かせる。
「冷たくて甘ーい! いくらでも食べ――イッダイアダマガ!?」
「そら冷たいもの一気に食べたらそら頭がキーンとするやろ」
「トンウェイだって一気に食べてるじゃん!」
「ウチは鍛えとるからな~」
嘘である。ファントン星人の身体が特殊なだけだ。
とはいえ冷たいという感覚はあるが。
(あかん、眠たくなってきてもうた。もっとかき氷食ったろ)
ファントン星人は食後に睡眠する生態を持つ。それは限りあるエネルギーの消費を抑えるための生存戦略であったが、地球人には無いものだ。配信を始めた当初は、ドカ食い気絶により血糖値スパイクがやばい美女ライバーがいると、トンウェイが跳ねるきっかけにもなったが、こういう時はむしろ邪魔であった。
眠気覚ましにかき氷を一口で掻き込む姿に、まみまみとかぐやがドン引きし、次にかぐやが真似しようとしてまみまみに止められていた。
◇
おやつ時、彩葉は店先に「close」の立札をかけた。
「お疲れ酒寄さん。そろそろかぐやちゃん達も来るかな?」
店長は窓の外を見ながらずっとそわそわしていた。
彩葉もちらちらと窓の外を見ていた。
かぐやは大食い系ライバーのトンウェイとのコラボ動画撮影にあたり、彩葉のバイト先のカフェを紹介する予定だ。
人のいい店長は突然の話であるにも関わらずに、わざわざ店を貸し切りにして腕によりをかけるぞと息まいている。彩葉はますます頭が上がらなくなりそうだった。
「それにしても酒寄さんは今日大丈夫だったのかい? コラボライブの練習とか、引っ越しの荷ほどきとか、結構忙しいんじゃないのか?」
「まあ……でもご迷惑をおかけするので、このくらいはしないと」
彩葉は撮影のことを鑑みて急遽シフトを入れていた。
かぐやが何かやらかさないか、心配だったからだ。
会話デッキもなくなってきた頃、ふと壁掛けテレビからニュースが聞こえてきた。
『GUYS JAPANから発表がありました。ウルトラマンの名前が決まったとのことです。名前はプラック。英語で勇気という意味です』
『とてもいい名前ですね』
『これからは存分に名前を呼んで応援できますよ』
『技名もあるのでしょうか?』
『プラクティス光線とかどうでしょう?』
『それだと“練習”光線って意味になっちゃいますよ?』
スタジオに笑い声が響く。語感はいいが、意味を知ると舐めプしているように思える微妙な技名だった。
「おっ、ついにウルトラマンの名前決まったのかー」
「……そうみたいですね」
あの日フェニックスネストにいた彩葉はすでに朝日から聞かされていたので、目を逸らして知らない振りをした。
『――ただいま緊急ニュースが飛び込んできました! 都内に巨大宇宙人が現れたそうです!』
◇
『フォッフォッフォ!』
それはあまりにも特徴的な見た目をしていた。
かつて地球を何度も征服しようと訪れ、その度にウルトラマンによりコテンパンにされてきたある意味最も有名な宇宙人。
渋谷のど真ん中に立つ黒い巨影を見て、誰かが言った「バルタン星人だ!」と。
両手の大きなハサミを掲げ、セミのような口吻を震わせたバルタン星人から街中へテレパシーが響く。
『フワハハハ! 愚かな地球人どもよ! 今日こそ年貢の納め時だ! このバルタン星人が誇るニューホープ、ダスク様がウルトラマンを下し、剥製にしてバルタン博物館に飾ってやるぞ!』
『知っているぞ! 今地球にいるウルトラマンはウルトラ兄弟ではない、ただの雑魚だとなぁ!』
『さあ出てこい! でないと街が更地になってしまうぞー!』
そうして街を破壊しだしたバルタン星人。
人々が逃げ惑い、悲鳴が木霊する中、光が舞い降りる。
バルタン星人は気炎を上げてそれを見た。
『来たかウルトラマンプラック! ぶっ殺してやる――ぜ……?』
前後に伸びる大きなトサカ、楕円形の瞳。
特徴的な赤と銀の体色。
『ショアァッ!』
『なんでテメーがいやがる!? ウルトラマンエースぅぅぅううう!?』
問答無用。取り出されたエースブレード*3により、バルタン星人は一瞬で3つに切り刻まれた。
『ぬ、ぬおおぉぉぉ!? だがバルタンのクローン技術を舐めるなよ! お前が切れば切るだけ、私は増えるのだ! 馬鹿め! 好きなだけ切り刻むがいいさ!』
そう言うと、3つの肉片がそれぞれバルタン星人に変化する。
『エースバリヤー!』
『『『なにぃ!?』』』
だが即座にバルタン星人を囲む板状のバリヤーが複数枚形成された。それは異空間がそのまま壁になったものであり、通常の物理的攻撃では絶対に突破できなくなっている。
燃費の悪い技だが、元々エースはウルトラスターという、カラータイマーと同じエネルギータンクの役割があるものを額につけているため、問題にならない。
鳥籠に封じ込められたバルタン星人が脱出しようと暴れるが、無駄な抵抗だ。
そしてエースはバリヤーとバリヤーの隙間に腕を向ける。
『ウルトラシャワー!』
『『『ぐおおおぉぉぉぉぉ!!!???』』』
ウルトラシャワー。それはただ水を発射するウルトラ水流と異なり、超獣をも溶解する特殊な液体を吹きかける必殺技である。
いくら切断に強く、無限に分身できたとしても、細胞から溶かされてしまえば為す術はない。
あまりにも鮮やか。
あまりにもスプラッタ。
あまりにも容赦がない。
バルタン星人がドロドロに溶け、復活する様子もなくなったのを頷いて見てから、エースは空に帰って行った。
殺意マシマシな技の連続に、遅れてやってきたGUYSのみならず、街の人々も唖然としていたが、やがて思い出したかのように歓声が上がったのだった。
◇
『また速報です! 先程お知らせした宇宙人ですが、あのウルトラマンエースにより倒されたそうです! ありがとうウルトラマンエース! すごいぞ、ウルトラマンエース!』
「はやっ!?」
「ウルトラマンエースも地球にきているのか!? こりゃ今回の怪獣頻出期は余裕だな! よし、そろそろかぐやちゃん達も来る頃だろ。スープ温め直してくるよ」
「えっ、あ……はい」
店長は喜んだのもつかの間、すぐに切り替えて厨房に戻っていく。
そんな軽い反応に、彩葉は目を白黒させた。
いくら出現場所ではないとはいえ、怪獣ないし宇宙人が出たのに、のほほんとしすぎでは?
それともこれがかつての怪獣頻出期のデフォルトなのだろうか?
彩葉は微妙な気持ちでテレビと店長を交互に見た。
「やっほー彩葉ー! 来たよー! ……あり、なんかあった?」
「え、えっと……」
テレビをもう一度見る。すでに宇宙人の話題は流れ、プラックの技名の話題に戻っていた。
「一応宇宙人が出たんだけど……なんでもなかった、みたい……?」
一応補足
〇月文明
M78ワールドを通して設定が曖昧なので、オリジナル設定で肉付けしていきます。
ルナチクスによって滅びたことは公式設定ですが、年代が不明のため数十万年前にしました。
ぶっちゃけここは数百万でも数千万でもいいです。強いて言えば5億年前の古生代より後にしたいですかね。
そして南夕子は当時の生き残りです。
は? 南夕子何歳やねんとなりますが、一定以上の技術ツリーがあるSF作品では現在から未来へ向けた時間移動は難しいことではありません。
そう、コールドスリープとウラシマ効果ですね。
コールドスリープは説明不要でしょう。ウラシマ効果は……まあ移動速度が上がると静止している物体よりも時間の流れが遅くなる現象で「トップをねらえ」がわかりやすいと思います。
亜光速で動いているこちらの数秒が、地球では数十年に相当する、という現象です。
つまるところ、月文明の生き残りは亜光速船に乗り、ほとぼりがさめるまで冥王星軌道をウロウロしてたら数十万年たって地球も怪獣王国ではなくなりエース本編になってましたよ、てな具合です。
〇ファントン星人
ウルトラマンメビウスで初登場した宇宙人。
かつてファントン星は深刻な食糧危機に陥っていました。
文中で『英雄』と指した個体は、大気中の二酸化炭素を糧に増殖する非常食「シーピン929」を開発したものの、ボガールの襲撃を受けて地球に落としてしまいますが、GUYSとメビウスの尽力により無事シーピン929はファントン星人の手に戻り、食糧危機は解決されました。
食事を神聖なものと捉える文化があり、食前のダンスや食後の睡眠など、なかなかに特殊。
トンウェイは朝出発前に踊りを済ませ、睡眠は根性で我慢できるようになりました。
種族単位で健啖家であり、以後の作品に登場したいずれの個体も食い意地が張った性格をしています。
〇バルタン星人7代目
限りなきチャレンジ魂を引き継ぎし者。名前はダスク。
ウルトラ兄弟どころか、宇宙警備隊ですらないプラックなら余裕だろうと侵略しに来た。
ついでにプラックを剥製にして故郷の博物館に飾ろうと画策した。ちなみに5代目はウルトラマンを動物園に展示しようとした。
突然ポップしたエースにコテンパンにされた。
「ぜぇはぁぜぇはぁ……。に、肉片を用意しといてよかったぜ」
『力が、欲しいか?』
「なんだァ? てめェ......」
感想評価お待ちしております!