ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

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皆さんご存知、あの怪獣が登場します。


怪獣が来る

 

 

 かぐやが彩葉のお金を使い込み、スマートコンなどを買い漁ったその日の夜。

 

 ヤチヨのミニライブ後に発表されたヤチヨカップで、かぐやは大勢の前で立候補した。

 

 この数日間でかぐやの突拍子もない行動には慣れたつもりであったが、全然そんなことはなかった。

 

 しかし、ヤチヨカップ優勝者はツクヨミ史上初のコラボライブをする権利を与えられる。もしそれに自分が参加できたらと思うと―――彩葉はあまり強く反対できない。

 

 優勝できれば嬉しい。

 現実的に見れば不可能だからやめて欲しい。

 

 そんな二律背反を、彩葉は真実と芦花に話した。

 

「でもかぐやちゃんなら可愛いし人気出ると思うな〜」

「美容系インフルエンサーの端くれとしては、あの美肌とさらさらな髪の秘訣を是非とも聞きたいかな」

 

 宇宙人だからです。とは口が裂けても言えない。

 

「イ、色々ヤッテルミタイダヨー。彩葉ヨクワカンナイカナー」

「そうなの? ま、ツクヨミで聞けばいっか」

「今度紹介してね」

「……き、機会があればね」

 

 2人にかぐやがどう反応するか分からないため、できれば会わせたくない。宇宙人バレのリスクも抑えたかった。

 

「彩葉の親戚の子なんだっけ?」

「そ、そう。築地から家出してきたの」

「あっちの学校は終業式先週だったんだね」

「そ、そんな感じかな? ははー……」

 

 怪獣が来ても、クラスメイトが1人減っても、学校は通常通りだった。

 それは明日が終業式というのが大きいのだろう。

 法事で休んでいる教師もいるため、これが学期半ばだった場合空きコマができて悲惨なことになっていた。

 東大の法学部を目指す彩葉として、それは望むところではない。

 

 あっという間に放課後となり、彩葉は2人の友人に別れを告げ、アルバイト先のカフェへ向かった。

 

 道すがらの景色は様変わりしていた。

 非常線が引かれた壊れかけのビルや、散乱した瓦礫。

 車道には工事関係の車が忙しなく行き交い、検問が敷かれて交通整理がそこかしこで行われている。

 特に地中の排水管が破れているのか、下水の臭いが鼻をついた。

 

 とはいえあれから5日もたっているため*1、これでも復旧はかなり進んでいる方だ。

 ネットニュースでもその様子が報道されており、ウルトラマンや怪獣の足跡を埋めるスピードが物凄いと話題になっていた。

 

 カフェの周辺は被害がなかったため、こちらも通常通り営業していたが、お客さんの入りは悪い。

 座席も3つほどしか埋まっておらず、閑古鳥が鳴きそうな勢いだ。

 

「お客さん来ませんね」

「仕方ないさ。ちょっと前に目と鼻の先で怪獣が出たばかりなんだ。わざわざ来ようとは思わんて」

「それはそうですけど」

「今日の賄いは奮発しちゃうぞ。パックにもたくさん詰めてやるからな」

「……大変ありがたいのですが、単純にダメになる仕込みの数を減らしたいだけですよね?」

「ハハ、分かる?」

 

 元シェフとしての経歴を持つ店長が経営するこのカフェは、料理が美味しいと評判の店だ。その味はグルメ系インフルエンサーである真実も太鼓判を押すほどで、賄いは彩葉の密かな楽しみでもあった。

 

 そこでふと、家にいるかぐやのことを思い出す。

 

 2日前から、かぐやは料理を作ってくれている。

 それが嫌いではなくて、むしろ温かみのある味が好きで……このままもし賄いを持ち帰ったら、果たしてかぐやはどんな顔するだろうか?

 

 かぐやの気持ちを無下にしたくない。

 

 彩葉はそのことを店長に伝えた。

 

「あ、で、でも店長の料理に温かみがないとか、不味いとかそういうわけじゃないんですよ!? ただ、なんと言いますか、あいつがもしかしたら、その」

「酒寄さんはその子が好きなんだなぁ」

「は!? 違いますけど!?」

 

 むしろ大変迷惑かけられてます! と反論し、そのワガママさ具合を彩葉は言い募った。

 

「はいはい分かった分かったそうだな好きじゃないんだな」

「……絶対分かってないですよね……」

「それは神のみぞ知るってやつで」

 

 店長は数秒考えてから、ポンと手を叩く。

 

「仕込んだ状態のやつを持って帰るのはどうだ? これならその子の顔も立つだろ?」

「そこまでお気遣いいただかなくても……」

「君にはいつも助けられてるからな。日頃のお礼だよ」

 

 優しげな眼差しが彩葉を見る。

 くすぐったくて、恥ずかしくて、そしてどこか、嬉しい。

 小さな声で、彩葉は言った。

 

「……店長……その、ありがとう、ございます」

「気にすんな気にすんな。そのうち居候の子と一緒に食いに来てくれよ。サービスするから」

「それは、はい。是非」

 

 彩葉が持ち帰った食材に、かぐやは目を輝かせた。その日の夜の配信は急遽料理に内容が変わり、飯テロだとコメントをざわつかせる。

 

 寝る時間になっても良い匂いが部屋に充満していたため、彩葉は窓を全開にしてファブリーズを吹き付けた。

 

 

 

 

 早朝、多くの人間がまだ寝ているであろう時間、突如空にヒビが入り、ガラスのように砕けた。

 その先の空間には目が痛くなるほどの赤が広がっており、ゆらりと怪獣―――否、怪獣を超えた怪獣、超獣が顔を覗かせる。

 

 オレンジと青のツートンカラーが印象的なその超獣の名は『一角超獣バキシム』。

 

 鼻先のバルカン砲が向かう先は、GUYS JAPAN本部、フェニックスネスト周辺にあるミサイル設備だ。

 

 自動迎撃システムが起動するも、バキシムの前では豆鉄砲に過ぎない。周辺にサイレンが鳴り響く中、一方的な破壊行為が行われ、GUYSのミサイル設備は全滅した。

 

 そして最後、フェニックスネストへ向けてバキシムが両腕を構え、破壊光線バキシムクラッシャーを発射する。

 

 破壊光線は主砲が格納されている箇所を正確に射貫き、爆炎をあげた。

 

 遅れて空から戦闘機がやってきた。

 バキシムにとっては片手間に払える羽虫のようなものだが、これ以上時間をかけてウルトラマンが出てきては不味い。

 

 バキシムが後ろを向いて姿を消し、開けた異次元の穴が直っていくのをGUYSは指を咥えて見送るしかなかった。

 

 

 

 

「あっ、おはよう彩葉! 見てよこのニュース!」

「……朝からうっさいなぁ……っては?」

 

 歯を磨く彩葉に、かぐやがタブレットを突き出す。そこには【GUYS本部崩壊!? 一体朝に何が!?】の文字が、ボロボロのフェニックスネストの写真と共にあった。

 

「嘘でしょ」

「また怪獣が出たのかな!?」

「……や、まだそんなの確定したわけじゃないし、悪い宇宙人の可能性もあるし」

「それあんま怪獣と変わんなくない?」

「……そうかも」

 

 言ってて自分でも頭が悪い発言だなと思った。

 

「どうしてウルトラマンは出なかったんだろ」

「そりゃウルトラマンだって朝っぱらはまだ寝てるでしょ」

「そうなの? え、というかウルトラマンって寝るの?」

「ウルトラマンは地球にいる間、人間の姿で隠れながら生活してるの」

「マジ!? じゃあさじゃあさ、もしかしたら彩葉もすれ違ってたりしてるのかな!?」

「したとしても分かんないし、分かっちゃいけない。ウルトラマンはね、正体がバレたら星に帰らなくちゃいけないの。だからかぐやも、絶対に自分が宇宙人だってバレないように。分かった?」

「わ、分かった」

 

 ウルトラマンを例に出すと聞き分けがいいなと、彩葉は思った。

 

「学校どうするの? 行くの? たしか今日はシューギョーシキ? ってやつだけなんでしょ?」

「……でも無遅刻無欠席は維持しないと」

 

 休む人間は多いだろう。もしかしたら彩葉の人生史上もっとも人数の少ない終業式になるかもしれない。

 

 その時スマホから通知音がした。

 彩葉が確認すると、そこには「本日臨時休校*2」との文字が。

 かぐやもそれを確認して、にんまりと笑った。

 

「ね、ね! 遊ぼ彩葉! あ、配信も良いかも!」

「……はいはい。でもバイトの時間までだからね」

「バイトも休めない?」

「それは駄目」

 

 彩葉とかぐやが2人で遊ぶとなると、選択肢は必然的にツクヨミに限られる。

 和風ファンタジーチックなツクヨミの街を散策したり、彩葉がKASSENについてかぐやに教えたりしていると、真実と芦花からツクヨミ内で会わないかとDMが来た。

 

 かぐやがいるため断ろうとするも、昨日紹介すると言ったばかりだ。

 念の為かぐやに確認をとるも、やはり会ってみたいとの返事が返ってきた。

 

「彩葉の友達か〜、楽しみだな〜」

「変なこと言わないでよね」

「大丈夫! 宇宙人だってことはちゃんと内緒にするから!」

「それだけじゃないんだけど……」

「?」

 

 待ち合わせの場所に着くと、すでに真実と芦花の姿があった。

 

「かぐやっほ〜! かぐやだよ!」

「おっ、かぐやっほ〜。ちょー元気いいじゃん」

「かぐややっほ〜」

「そこは普通初めましてでしょーが、全く」

 

 改めて、彩葉はかぐやに2人を紹介する。幸いにも3人はすぐ打ち解けた。波長が合うと言うやつだろうか。インフルエンサーとして発信しようという気概のある人間はやはり違う。

 

「終業式が無くなっちゃったのはアレだけど、かわりに彩葉と遊べたからラッキーだったね〜」

「うんうん。ちょっと怪獣に感謝?」

「来ない方が全然いいけどね」

「どうする? KASSEN*3する?」

「さっきかぐやにもルール教えたし、良いんじゃない?」

「残り3人は野良か〜」

「強い人が来るといいね」

「ね、ね、配信していい?」

 

 顔を見合わせる真実と芦花。

 

「キモイ男避けにもなりそうだし良いよ〜」

「ヤチヨカップに本気だねぇ、かぐやっち」

「もちろん! 目指すはハッピーエンドだよ! 彩葉と一緒にコラボライブするんだ〜!」

「ひゅ〜、愛されてんじゃん彩葉〜」

「愛され〜」

「ちょ、そういうの止めてよね……!?」

 

 かぐやがライバーになってからこの日で早2日が経過している。

 驚くことに、『かぐやいろPチャンネル』の登録者はすでに50人。

 新鮮なファン達は、平日の昼間であろうともかぐやの配信に集まった。まさかの視聴者参加型である。

 

 

〇サバイバル:いろP強い!

〇梅おにぎり:上から来るぞ、気をつけろ!

〇空から来た男:かわいい

〇まい:かわいい

〇働きたくない:かぐやがんばって!

〇チラリズムghj:ほんとに上手くね?

 

 

「楽しいね、彩葉!」

「名前で呼ぶな!」

 

 

 夕方頃、配信が終わった。登録者は2倍になった。

 美少女パワー様々である。

 

「じゃ、バイトに行ってくるから」

「夕飯作って待ってるからね〜。今日はカルボナーラだよ!」

「……うん。楽しみにしてる」

 

 街は妙に静かだった。

 内心休んだ方が良かったかもと後悔しながら、しかし母ならこんな時でも絶対に休まないだろうと頭を振る。

 

 

 カフェの客入りは、昨日と比べてさらに少なかった。

 

 

 店長から食材を貰い帰宅した彩葉は、そこでかぐやから郊外の山間に怪獣が出て、ウルトラマンと戦っていたことを知った。

 

 

 

 

 

*1
怪獣災害に慣れっこな地球人たちは復旧も早い。

*2
休む人間が沢山いたため。

*3
今回は神戦のことを指している。7対7のバトルロワイヤル。




一応解説

〇一角超獣バキシム
怪獣を超えた怪獣、訳して超獣。
芋虫と宇宙怪獣をかけ合わせて作られた。
この枠はベロクロンにするか非常に迷いましたが、より知名度があるだろうバキシムを選びました。
やはりビジュアルが良い。

フェニックスネストを襲ったのは、異次元空間を封印できるディメンショナル・ディゾルバーを使わせないためです。

そして超獣がいるということは、アイツがいる。

〇ウルトラマン
瀕死と重症を反復横跳びしている。

〇彩葉の住む町
流石に2連続で怪獣が来ることはなかった。

〇バ先の店長
元シェフ。退職後にカフェを開いた。
話は変わるのですが、Uキラーザウルスを監視する目的で地球に滞在していたウルトラマンの中に、レストランのオーナーシェフをしていた人がいたらしいですよ。

〇郊外の山間
GUYSのミサイル基地があった。


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