ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

7 / 8
朝日周りの話は正直3話くらいすぐ書ける気がするのですが、それをしてしまうといよいよかぐやと彩葉が主人公でなくなってしまうため、カットしました。

乃依「最近朝日が部屋に入れてくれない……モヤモヤ」
ウルトラマン「これがyogibo」



怪獣頻出期

 

 

「怪獣もこれで4体目か〜」

 

 かぐやが寝転びながら見るタブレットにはウェブニュースが表示されていた。

 そこにはゴモラ*1とウルトラマンが戦う姿が。

 

「やっぱり怪獣頻出期が到来したのかな」

「怪獣頻出期?」

「読んで字のごとく、怪獣が沢山出る時期ってこと」

「ウルトラマンがいてラッキーだったね!」

「……どーだか。世間ではウルトラマンが来たから怪獣が出たって言う人もいるよ」

「え、なにそれ」

「あと地球は人間の手で守るべき、ウルトラマンの手は借りない。って人達も」

「んなの無理でしょ」

「弱い怪獣なら人間の手だけでも倒せるようになってきてるから」

「え〜ホントに〜?」

 

 彩葉はGUYSの戦闘機によって倒される再生怪獣サラマンドラの様子を見せた*2

 メテオールを発動しての袋叩きに、映像の中のサラマンドラはお得意の再生能力*3を見せることなく爆散する。

 

「うわ、マジじゃん。地球人ってすげー」

 

 日本スゲーならぬ地球スゲーに彩葉は少し鼻が高くなったが、自分がやったんじゃないと慌てて頭を振った。

 心の中の母も、他人の成果を勝手に誇るんやないと言っている。

 こればかりは彩葉もそう思う。

 

「ねね、そういえばこんな噂知ってる?」

「噂?」

「ツクヨミで夜道を歩いてたらBANされちゃう噂」

「はあ?」

 

 今SNSは、ツクヨミで人気のないエリアを歩いていると化け物に襲われて強制ログアウトさせられるという話で持ち切りらしい。

 鍵垢で日頃の愚痴しか呟かない彩葉*4の知らない世界だった。流石陽キャである。

 

 しかしこの事件には続きがあるようで、その後ログインしようとすると「このアカウントは使用できません」と表示され、実質BANされるとか。

 

 ツクヨミで得られるふじゅ〜を当てに生活している人間にとっては恐ろしい話である。

 もちろんかぐやも例外ではない。

 

 たがそれでも彩葉は噂に懐疑的だった。

 

「あのね、ツクヨミにはヤチヨがいるんだよ? チートだって数秒で発覚してBANされるくらいなんだから、そんなあからさまな悪質行為ムリムリ」

 

 ツクヨミのセキュリティは非常に強固だ。

 チートやハッキングの類に滅法強く、KASSENがeスポーツとして広く認知されているのも、そのゲーム性以上にツクヨミが誇る安定性の高さが故。

 夏の季節によくある捏造の怪談話だろうと彩葉は断じた。

 どこぞのクリエイターチームがそういった催しをしている可能性があるとも。

 

「そんなのつまんないよ〜、いるかもしれないじゃん化け物〜」

「いるわけないでしょ。化け物なんて現実の怪獣だけで十分」

「そりゃそうだけどさ〜」

 

 まだまだ言い足りなさそうなかぐやだったが、時計を見てそろそろ配信の時間だと準備を始めた。

 彩葉も教科書を取り出す。

 

 今日のかぐやの配信はゲームらしい。右耳からはかぐやの声を、左耳からはイヤホンでヤチヨの配信を作業用BGMにする。

 

『今日はツクヨミに蔓延る世にも恐ろしい七不思議を話しましょう……』

 

 ヤチヨもかよ、と彩葉は内心ツッコミを入れた。

 しかも7つに増えている。

 

 だがヤチヨが面白おかしく語るということは所詮は根も葉もない噂なのだろう。

 怪談なんてありえない。しかもツクヨミ内で。

 

 彩葉は安心して勉強を進めた。

 

 

 

 

「肝試しをするよ!」

 

 翌日、バイトから帰ってきた彩葉に向かってかぐやが言った。

 

「ああ、毎年やってるよねマ〇クラ肝試し。かぐやも参加……できるかそりゃ」

 

 かぐやいろPチャンネルの登録者は飛ぶ鳥を落とす勢いで増えている。

 1位確実だろうと目されていたブラックオニキスが何故かあまり活動していないため、このまま行けば優勝も夢ではない。

 

「そっちじゃなくて噂の方! ね、彩葉一緒に行こ? お願い〜」

「……まあ別にいいけどさ。でもどうせ何も出ないと思うよ?」

「ふっふっふ、それがですね彩葉さんや。実は結構色々証言が出てきておりまして……」

 

 かぐやはSNSの呟きを彩葉に見せた。その中にはスクリーンショットもあり、ツクヨミと思われる夜道で半月状の大きな翼を持った影が佇んでいる。暗くて細部は分からないが、確かに化け物に見えた。

 

「……合成じゃないの? それか誰かのカスタムスキンとか」

「そんな夢のないこと言わないでさ〜」

 

 引っ付くかぐやを片手で抑えながら、彩葉はもう1度スクリーンショットを見つめた。

 

(なんか、やけにキモイっていうか。変って言うか……()()()()() いや、まさかね……)

 

 今にも動き出しそうな雰囲気。

 真に迫る何か。

 ふと通知に「キャッシュを削除しますか?」の文字を見つける。

 どうやら気付かぬうちにキャッシュが溜まっていたらしい。彩葉は設定画面からSNSのキャッシュを削除した。

 

 何となく清々した彩葉は、気のせいだったかなとスマコンを装着する。

 そうして2人はツクヨミにログインした。

 

 視界がツクヨミの繁華街に切り替わる。

 彩葉はすぐさまキツネの着ぐるみに着替えた。準備は万端だ。かぐやに親指を立てて合図を送る。

 

 

「画面の前の皆〜、かぐやっほー!」

 

 

〇ミクミクラス:かぐやっほー!

〇トイ:かぐやっほー!

〇忠犬オタ公:かぐやっほー!

〇かかかか:待ってた

〇having:かぐやっほー

〇河童のへえ助:ツクヨミじゃん

 

 

「今日は噂のツクヨミに出没する化け物を探しに行くよ! つまり、肝試しってコト!」

 

 

〇AtomicDragon:かわいい

〇緑茶:BANされるやつ?

〇トーチカ丸:あれ結構マジらしいけどどうなんだろ

〇斬鉄剣:幽霊……切れぬ!?

〇ハゲてきた:知らねえ

〇あさがお:ヤチヨがノータッチなの怪しすぎ

 

「行先は裏道のほうずーっと行けばいいかなぁ」

 

〇(ฅ ᐙ )ฅ:観光エリアとか人少なそう

 

「それだ! 観光エリアに行ってみよう! ……いろPどうやって行くんだっけー? オススメあるー?」

(……もう)

 

 観光エリアの殆どはクリエイターが作ったものだ。

 現実の名所を再現したり、あるいは中世ファンタジー路線だったり、鬱蒼としたジャングルだったり、その種類は実に様々。

 その中で最も雰囲気があり、彩葉が案内できるものといえば―――

 

 『京都再現マップ(夜)』

 

 彩葉は少しのためらいの後、移動ゲートを作った。

 

「流石いろP仕事が早い! そんじゃレッツゴー!」

 

 かぐやに続いてゲートをくぐると、懐かしい京都の古い町並みが目に入ってきた。

 等間隔に吊るされた提灯だけが、ぼんやりと辺りを照らしている。

 過疎ワールド故人気はなく、横の路地を見れば真っ暗闇が広がっていた。

 想像以上に雰囲気があり、彩葉はちょっと早まったかな、と数秒前の選択を後悔する。

 

〇はるまき:京都かな?

〇ドレミファ名無シド:ふ、雰囲気あんじゃねーの

〇ガリレオ:ツクヨミのこういうマップ普通に怖いから嫌い

〇ぽぽぽ:視覚に関してはガチだからな

〇abcx:最早デートじゃねこれ

 

「確かに! いろPとデートだ!」

「!?」

 

 そう言うや否やかぐやに腕を強引に組まれ、引き摺られる彩葉。

 

(ちょ、かぐや!?)

 

 かぐやは暗い道へどんどん突き進んでいく。

 その歩みは淀みなく、呆れるほど真っ直ぐだ。もしかしたらこの中で化け物などいないと1番信じているのはかぐやなのかもしれない。

 

「にひひひ、暗いねー彩葉〜」

「ソ、ソウデスネ……」

 

 周囲の光源は月明かりと時折設置された燈籠*5しかなくなった。

 記憶の京都とは全く異なるホラーマップのような空気感に、彩葉は自然とかぐやにくっついて動くが、それが逆に燃料を注ぐ行為だとは気づけなかった。

 

(も、もうそろそろ帰らない? 他のところにいるかもしれないじゃん。少なくともここにはいないって、うん)

(えー? でもほら、コメント欄も盛り上がってるよ?)

 

〇かまんべーる1898:いろP怖がってて草

〇田中鈴木佐藤:wwwww

〇hamham:いいぞもっとやれ

〇ヤギ:いろかぐじゃない……? おかしい、計算と違うぞ

〇HUMMER:そんな計算捨てちまえ

 

 彩葉はそこで自分が見世物にされていたことに気がついた。

 かぐやを見ればにんまりとした笑顔が帰ってくる。

 怒りがふつふつと湧き上がり、声をあげようとした瞬間。

 

 

「―――ばあ!」

 

 

 突如背後から声をかけられ、彩葉の身体がすごい勢いで飛び跳ねた。声は根性で抑えたが、代わりに魂が口から漏れ出る。

 

(あば、あばばば!?)

「い、いろPが壊れたー!? 何奴じゃー!?」

 

 かぐやは独特なファイティングポーズ*6を取った。

 

 暗がりから出てきたのは、ツクヨミにいる人間なら誰もが知る管理AI、ヤチヨであった。

 

「こんばんは。かぐや、彩葉。今宵は月が綺麗ですね〜」

「ヤチヨー! ほらいろP起きて、ヤチヨだよ!」

 

 がくがくと揺すられた彩葉が再起動する。

 

「……ハッ!? や、ヤチヨ!? どうしてここに!?」

「例の噂を探し求める名探偵お2人に、少し警告をばと」

 

 扇子を広げ、口元を隠しながらヤチヨが言う。

 

「奴は恐ろしい化生なれば、この先に進めばそれはもう大変な目に遭うでしょう……それでも行きますか?」

「え、ならやめ―――」

「行く! うおぉーーー! 盛り上がってきたぁーーー!!」

 

 かぐやが気炎を上げた。コメントもヤチヨの登場に大盛り上がりだ。

 どうやらホラーマップはまだ続くらしい。彩葉はガックリと肩を落とす。

 

「ふふ、その意気やよし! ならば進みましょうか。ほいっとな」

 

 ぽむ、とかぐやと彩葉の手にKASSENでいつも使っている武器が現れた。

 これには彩葉も声を隠せない。

 

「えっ、ここ観光エリアなのに」

「化け物退治に武器は必要でしょう?」

「戦えるってこと!?」

「はい。もちろん私もほらこの通り」

 

 ヤチヨのスキンが動きやすいミニ丈の和服に切り替わる。どうやら本当に戦うらしい。

 そして大きく跳躍。

 

「ヤッチョについて来て!」

「オッケー!」

「っ」

 

 身体能力のストッパーも完全に外れている。戦闘エリアに設定が切り替わっているらしい。

 こんなことは初めてだ。まさか何かのイベントなのかと、彩葉は訝しむ。

 

 ヤチヨに連れられて、かぐやと彩葉は日本庭園がある場所にやってきた。

 

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり―――悪鬼現わば、いざ打ち倒さん」

「あれが、化け物」

「うわマジじゃん」

 

 和風の橋の上に、そいつはいた。

 身長は2mあるかないか。SNSのスクリーンショットと同じように、背中には半月状の翼がある。目はカメレオンのようだが、口はクチバシで、鋭い牙が生えていた。

 

「一番槍どうします?」

「もちろんかぐやで! っとりゃあーッ!」

「ちょ」

 

 かぐやはハンマーのジェットをかっ飛ばし、化け物に向けて大きく振りかぶった。

 渾身の一撃は、化け物がどろんと煙と共に姿を消したことで空振りに終わる。

 

「はやっ!?」

「隙あり!」

 

 かぐやの後ろに突然現れた―――恐らくあれは瞬間移動だと、彩葉は思った―――化け物の横面を、ヤチヨが和傘で殴打する。

 

 派手なヒットエフェクトと共に吹き飛ぶ化け物。

 遠くからそれを見ていた彩葉は、分析しながら呟く。

 

「やっぱりエネミーなんだ。瞬間移動とか厄介すぎる……それも結構防御力高いような……打撃に耐性があるのかな?」

 

 今度はヤチヨの背後に化け物が現れたが、かぐやがキックでカバーした。

 

「お見事」

「さっきのお返し!」

 

 化け物が再び煙に紛れて姿を消す。その様はまるで忍者のようだ。

 ヤチヨとかぐやは背中合わせに立った。

 

「化け物忍者とかセンス無〜い!」

「よよよ、これはヤチヨ監修ではないのでお許しくだされ」

 

 と、そこで頭上に化け物が現れた。その手には両刃剣が握られている。

 

「彩葉!」

「分かってる、よっと!」

 

 彩葉がブーメランを投げる。化け物は意識外からの攻撃に対応できず真っ二つになった。

 地面に落ちた残骸がポリゴンになって消えていく。

 その様子をヤチヨは見送ってから、合流してきた彩葉に言った。

 

「お疲れサマンサ〜!」

「ナイスだったよ彩葉!」

「ちょ、名前!」

「あ、ごみんごみん」

「大丈夫。今の所はヤチヨマジックでピー音を入れておいたよ!」

「おお、ヤチヨナイス!」

 

 「は」の部分にピーを被せました、とヤチヨが胸を張り、かぐやがワザマエだと拍手した。

 

「……で、あれって一体なんなのヤチヨ?」

「うーん、このまま流されたり……」

「しない」

 

 彩葉もこれには頷いて同意を示す。

 ヤチヨは腕を組んで悩ましげだ。

 

「うむむむ、もう言い逃れできなさそうな雰囲気。仕方がありませんか」

 

 くるりと一回転。ヤチヨの姿がいつもの和装に戻る。

 

 

「あの化生の名前、それは―――」

 

 

 

 

 

「―――ガマス。奴は忍者超獣ガマスです」

 

 フェニックスネストにて、テッペイがいつになく真剣な表情で言う。

 

「そいつはそんなにヤバい奴なのか?」

「ヤバいなんてもんじゃないですよ! ガマスはネガフィルムに入り込み、焼き増しされる毎に無限に数を増やす非常に危険な超獣です! 情報社会となった現代に出現すれば、一瞬で数百、いえ数万体にも増殖しているかもしれません!」

「マジかよ」

 

 テッペイはタブレットを見せつけ、ガマスが映された画像をGUYSメンバーに見せつける。

 

「この画像に特定の高周波を当てると、奴は実体化し暴れ出します。いわば不発弾が世界中にばら撒かれたのと同じ状況なんです」

「ヤバいじゃねぇか!?」

「だからヤバいんですって!」

 

 テッペイの顔は蒼白だ。この段階でガマスの根絶は不可能。想像するのも馬鹿らしい数のスマホ、PCにガマスの画像がダウンロードされ、あるいはキャッシュとして残っているはずだ。

 

 朝日も画像を見下ろし、ふと気づいた。

 

「あれ、これって確か、ツクヨミで今噂になってる化け物じゃ」

「そうなんですか?」

「ツクヨミ? ツクヨミってなんだよ」

「リュウさん流石に世間に疎すぎませんか? 今の若者はツクヨミというVR空間でよく遊んでいるんですよ。酒寄君はそこのプロとして元々働いていたんです」

 

 果たしてプロゲーマーの活動を働くと一言で表現していいものか。テッペイも大概である。

 

「ツクヨミはかなりリアルに作られてますから誤解したのでしょうけど、これは現実の写真ではありません。ツクヨミ……VR空間の中で撮られたスクリーンショットです」

「なるほど……で、どうなるんだ?」

「……そこまではちょっと」

「いえ、少なくとも前回と手段や経路が異なると分かっただけでも収穫です。あとはこいつから本当にガマスが出てくるかですが……」

 

 GUYSメンバーの視線がタブレットに集まる。

 しばらくして、タブレットは滑走路のど真ん中に移された。

 

 頭上では戦闘機が3機*7旋回しており、いつ出てきても良いように待機している。

 

 そして高周波を出すスイッチが押され―――

 

「……何も、起こらない?」

「……なんだよ脅かしやがって、何も出ねーじゃねぇか」

「おかしいですね。あれは確実にガマスだったのですが……」

 

 混乱するテッペイ。リュウが杞憂だったなと笑い飛ばす。

 結局謎だけが残り、その日は解散となった。

 

 

 

*1
ヤプールの改造怪獣。目が逝ってる。強さは普通。

*2
ウルトラマンメビウス外伝アーマードダークネスSTAGE1

*3
喉にある再生器官を壊さない限り死なない。

*4
最近は愚痴も呟かなくなり、開いてすらいない。

*5
緑に淡く光っている。

*6
鶴の構え

*7
補充された。




一応補足

〇忍者超獣ガマス(2世)
ネガフィルムに入り込み、焼き増しされたらその分残機と武装・能力が増えるえげつない超獣です。
たとえ一体倒しても、別の写真のそばで電動髭剃りを動かせば途端に残機が実体化。そばにあった人間や家ごと吹き飛ばして現れます。
エース本編ではネガフィルム+現像数枚で済んでいましたが、今作ではSNSで世界中に拡散済み。もうおしまいだぁ……、勝てるわけが無い……。

が、流石に強すぎるのでオリ設定でナーフ。
ついでに現代ナイズに強化。
タブレットから出てくることはありませんでした。


〇肝試し
海? ありませんようちには。


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