ウルトラかぐや姫   作:ガンタンク風丸

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お待たせいたしました。

仕事もありましたが、ひとえに過去の自分がプロットにただ一言「ガマスの謎を解く」としか書いていなかったせいで、色々考えていました。
謎を解くってなんだよ過去の私。どう謎を解くか知りたいんですよこっちは。



ガマスの謎を解け1

 

 ヤチヨの言葉は衝撃的だった。

 ツクヨミを侵略する超獣ガマスの存在。

 彼らの能力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。やがてツクヨミの全てを喰らい尽くして、現世(リアル)に姿を現すつもりだという。

 

「そんなのヤバいじゃん! ヤチヨは指を加えたまま見てるつもりなの!?」

 

 かぐやにとってツクヨミは最早自身の一部と言っていい。

 ツクヨミが無くなるだなんてことは許せないし、信じたくはないのだろう。

 コメントもかつてない速度で流れていく。

 彩葉はヤチヨのある種余裕を保った態度に一縷の望みをかけながら、黙って次の言葉を待っていた。

 

「いいえ。精一杯足掻くつもりですとも」

 

 にっこりと笑うヤチヨと一瞬だけ目が合った気がした。

 

「私は全プレイヤーの皆様にお願いします」

 

「そして同時に、ツクヨミ史上初のレイドバトルイベントの開催を宣言します!」

 

 

――DANGER――

忍者超獣ガマス

HP/■■■■■■■■■□

 

 

 ツクヨミ全域に、その表示が現れた。

 戦っていたプレイヤーが、複数人で話し込んでいたプレイヤーが、創作に夢中になっていたプレイヤーが、その手を止めて空を見上げる。

 

 それは彩葉とかぐやの周りにも現れた。

 目の前のヤチヨが手を広げ、ツクヨミに向けて語りかける。

 

 ガマスの存在を。

 ガマスの脅威を。

 そして、ツクヨミの未来を。

 

 

「これは電脳世界における初の怪獣vs人類の戦いです。神々よ、どうかツクヨミをお救い下さい! ―――豪華報酬も見逃すな!」

 

 

 8月10日。特殊モード『禍討(MAGAUCHI)』がツクヨミ全域に敷かれた。

 

 これは対ガマス専用のモードである。

 イベント期間中は全てのプレイヤーの身体能力ストッパーが解放され、KASSENに準拠したものとなる。またミニヤチヨ*1が1人1人につき、本人の意向を汲んでガマスへ案内、または避難させる仕様だ。

 

 ガマスを倒すとゲーム内アイテムやふじゅ〜がメールボックスに届く。その内容はエネミー1体を相手取るにしては破格の内容だった。

 

 結果として、依然アカウント停止のリスクは残っていたものの、多くの人間がガマス退治に参加した。

 これはヤチヨが無事討伐された暁にはアカウントは戻ってくると宣言したのも大きい。

 

 世は正に大レイドバトル時代。この時ガマスは噂の化け物でも、恐ろしい超獣でもなく、限りある資源に変わった。

 

 

「皆よろしくね! ではばいなら解散! ―――っと」

 

 

 宙の映像が消えた。そしてこちらを見たヤチヨがちょいちょいと虚空を指さす。

 かぐやはすぐにその意を汲みとると、自身の配信カメラへ向けて手を振った。

 

「あ、いきなりだけど今日の配信はこれまで! 皆お疲れ〜!」

 

 1拍おいてからかぐやが親指を立てる。彩葉はほっと息を吐いて着ぐるみスキンを脱いだ。

 すかさず近寄るヤチヨ。

 

「うんうん。やっぱりその姿じゃないと」

「や、ヤチヨっ!?」

「あー! ヤチヨずっるーい!」

 

 ヤチヨと彩葉が手を握っているのを見て、かぐやが頬を膨らませて突撃してきた。ギリギリのところでヤチヨはひらりと避ける。

 がるると威嚇するかぐやを押しのけて、彩葉はヤチヨに問う。

 

「ねえヤチヨ」

「?」

「ヤチヨは大丈夫なの? もしツクヨミが無くなったら……」

「……それが運命ならば、そうなるでしょう。ですが私は皆さんを信じています」

 

 ヤチヨはそう微笑み、2人の前から消えた。

 

「……かぐや」

「どしたの彩葉?」

「ガマスは絶対倒すよ」

「う、うん」

 

 そうして、かぐやいろPチャンネルの「肝試し配信」は伝説となった。

 ヤチヨが出てきたあたりからガマスとの戦闘、そしてレイドバトル発表にかけて、コメントは正に大盛り上がり。最大同時接続数も大きく更新し、切り抜きはどれも万バズ。

 

 登録者数はうなぎどころか龍が天に昇る勢いで増えており、翌日からかぐやの鼻は伸びっぱなしだった。

 

「にっひっひっひ〜、かぐや達、もーヤチヨカップ優勝確定じゃない?」

 

 うれしい笑いが止まらないとはまさにこの事。

 実際彩葉が一笑に付すことができないほどに優勝は現実味を帯びてきているが、まだまだ油断はできない。

 

 一夜明けて、ヤチヨカップに参加するライバー達は軒並みガマス討伐を表明した。

 彼ら彼女らはツクヨミが無くなった場合路頭に迷う者ばかりなのだから当然だ。

 

 そしてガマスは1人(ソロ)よりも複数人(マルチ)で戦う方が簡単だと、他の誰でもない彩葉達が証明しており、その上で人気ライバーがとる手段は自ずと限られてくる。

 

 コラボ、あるいは参加型配信だ。

 

 彩葉はヤチヨカップにおいて、このレイドバトルイベントが勝負の分け目になると睨んでいた。

 

「ねー彩葉、私たちもガマス倒しに行こうよ〜」

「駄目。私はこれから勉強するの」

「ぶ〜! そんなのいつだってできんじゃん。ツクヨミ存亡の危機なんだよ? 今立ち上がらなきゃいつ立ち上がるの!?」

「それはそれ、これはこれ。座って立ち止まることも大切です」

 

 ヤチヨは大事だ。ツクヨミも無くなって欲しくない。

 だが勉強とバイトは疎かにできなかった。

 

 

 

 

 朝日は帝アキラの姿でツクヨミにログインした。

 

 するといつかのライブで見たロリヤチヨよりもさらに小さいマスコットサイズのミニヤチヨが目の前に現れる。

 

「帝おにーさん、こんにちは!」

「おっ、話には聞いてたが、このヤチヨはいつもに増して元気がいいなぁ。こんにちは」

 

 見た目に合わせて言動もどこか幼い。相変わらずよくできたAIだった。

 

「久しぶりのログインだねー。何かあったー?」

「おう、そりゃもう山こえ谷こえ大変だったぜ」

「今度ヤチヨにもお話聞かせてね!」

「いやあ守秘義務があるからなぁ」

 

 まだGUYZに所属したことは世間に公表していない。例えAIでも、いやAIだからこそ事情を話すのは憚られた。

 

「そういやヤチヨ。例のガマスのやつに参加したいんだが」

「帝おにーさんも参加してくれるの!? やったー! 百人、いや億人力だね!」

 

――DANGER――

忍者超獣ガマス

HP/■■■■■■■■□□

 

YES/NO

 

 もちろん朝日の答えは決まっている。躊躇いなくYESを押した。

 

「おー勇者よ! そなたの参戦を歓迎しよう!」

 

 朝日の視界に矢印が映し出され、その先にゲートが開く。

 

「へぇ、こうなるのか」

 

 そうして行こうとした矢先、背後にもゲートが開き、ライとノイが現れた。

 

「―――1人で行くつもりか?」

「―――流石にそこまで帝ちゃんも馬鹿じゃないっしょ」

「……お前ら」

「帝ちゃんログイン通知バレバレ♡」

 

 すぐさま飛んできた2人に呆れていいやら喜べばいいのやら。

 

「アカウント凍結されたら商売上がったりなのに、まさかソロるつもりだったの?」

「そ、そんなことするわけねーだろ」

 

 嘘である。

 アカウント凍結など承知の上。プロゲーマーの端くれとして、初見の相手はまずソロでやると1人で行く気満々だった。

 

「ヤチヨ、俺たち3人でパーティにしてくれ」

「りょー!」

「GUYZにかまけて鈍ってる帝に、対ガマスをレクチャーしてあげなくちゃね」

「ああ、コラボ先には事欠かなかったからな。対策は万全だ。誰かさんはいなかったが」

 

 2人の物言いはどこか刺々しいが、それも当然である。

 朝日はここ連日GUYZの訓練や出動ばかりで忙しく、たまの休日もウルトラマンの面倒を見ていたため、ゲームをろくにできていなかった。

 ヤチヨカップは言わずもがな。これでは2人が怒るのも無理はない。

 朝日は自業自得かとため息を吐き、頭を下げる。

 

「……ライ、ノイ。心配かけたのも、勝手にGUYZ*2に入ったのも悪いと思ってる。すまなかった」

「1本くらい誤射するかも」

「1回くらい手が滑るかもしれない」

「……本当に申し訳ございませんでした。今度何か飯奢るのでマジで許してください……」

 

 フレンドリーファイアはシャレにならない。朝日は尊厳を捨てて地に伏せた。ノイはそれに白けた目を向け、ライはやれやれと首を振った。

 

「今度リアルでもちゃんと謝ること」

 

 その後都内の高級焼肉店を奢ることで手打ちとなり、ようやく朝日は許されたのだった。

 

 気を取り直した3人は*3ゲートを潜りツクヨミの繁華街へ出た。

 

 楼閣が立ち並ぶそこは以前と雰囲気が様変わりしている。まず夜から一転して昼に変わり、何人ものプレイヤーが思い思いに飛んだり跳ねたりしながら動き回っていた。

 

 ツクヨミ全域で身体能力が開放されたのは初めてのことである。好奇心溢れる一部のプレイヤー達*4は、普段は行けない場所に行くことができると、ガマス討伐そっちのけで探検や観光に明け暮れていた。

 

 加えて魔法の絨毯やらウルトラマンやら、ツクヨミの雰囲気にそぐわない飛行ユニットもそこかしこに飛び回っている。

 

 やりたいことはやらなくていい。それもまたゲームの良い側面の1つであるが、いつものファンタジックで風光明媚な雰囲気はなりを潜め、果てしないカオスがそこにはあった。

 

「……まるで祭りだな、こりゃ」

「楽しそーだよねー」

「気持ちは分からなくもないがな」

「ふーん、で、ガマスの野郎は……あっちか」

 

 KASSENの気分でジャンプすればグンと視界が上に行き、あっという間に楼閣の天辺にたどり着いた。

 いつもはただ歩くことしかできない繁華街を見下ろしながら、朝日は探検してみたい気持ちを我慢してガマスの元へ行き―――なんのドラマや捻りもなく普通に倒す。

 

 あまりに拍子抜け。

 ブラックオニキス3人の連携にガマスが勝てるわけがなかった。

 

 1体、また1体と順調にスコアを増やていき、10を数えたあたりで朝日が言った。

 

「なんつーか、こいつらかなり頭悪くないか?」

「基本的に瞬間移動して視覚外からの不意打ちしかしてこないからねぇ。馬鹿ばっかだよ」

「武器や忍法を使用することもあるが、結局ノイの言う戦法しかしてこないな。攻略方法も確立されてきているぞ」

「一応超獣なんだがな……」

 

 GUYZで超獣の恐ろしさをこれでもかと教えられた身としては、なんだが釈然としなかった。

 

「なんか圧倒的に中身が足りてないって感じするよねー」

「中身?」

「そうそう。プログラムが欠けてるっていうか」

 

 どこかに置いてきたか、削られたかのように。

 

「救援信号がきたよー! 救援信号ー!」

 

 ミニヤチヨが突然騒ぎ出した。

 どうやらガマスに苦戦すると、こうして他のプレイヤーに通知が来るらしい。

 目線でどうするのかと問いかけてくるライ。GUYZ魂が刻まれつつある朝日の答えはもちろん決まっていた。

 

「行くに決まってんだろ。GUYZだからな」

 

 救援先はウルトラマン気分が味わえると人気のミニチュア都市が広がるマップだった。

 

 ―――しかし悠長にしている暇は無さそうだ。

 

 見渡す限りのガマスの群れ。

 

 そしてその集団の中で捕食され、消えかけるプレイヤー達がいた。

 

「だ、だすけ」

「来るなぁ!?」

 

 凄惨な光景に立ち止まる3人。

 その間にもプレイヤー達は完全に食われ、ガマスがさらに2体、6体、10体と増えていく。

 嫌な汗が流れるのを感じた。

 

 

「……オイオイ、普通は1人食ったら増えるのは1体だろ」

 

 

 超獣に恐怖心は無い。

 だがいかにガマスの中身が欠けているとはいえ、兵器として命令を遂行しようとする意思はある。

 

 人間は障害と見られていなかっただけだ。

 「なんか鬱陶しいのがいるな」と放置されていただけ。

 たった今この瞬間から、ガマスが人間を明確な敵として捉えた。

 

 

 ただそれだけの話だった。

 

 

 

 

*1
手乗りサイズのヤチヨ。

*2
ミニヤチヨ「むむー?」

*3
ミニヤチヨは良い話ダナーと涙を流してた。

*4
戦闘が不得意な者や、考察系or検証系ライバー達。




一応補足


〇MAGAUTHI(禍討)
オリ設定。乱世や幕末とかと迷いましたが、最終的に怪獣を相手にするなら「禍」の文字は外せないよねとこの名称に。

ツクヨミ全土でKASSENのような動きができるようになるほか、通常では使えないアイテムも使えるようになります。
が、検証勢や考察勢はガマスを無視して普段は行けない場所に行けるようになったぜ! と建物にタックルしたり、遠くの景色にあるアレは何だと無限に飛んでいったり、最高高度はどうなっているのか、当たり判定をバグらせて何か起こらないかと実験したりしていました。これもまた、ゲーム。


〇ミニヤチヨ
2頭身のマスコットヤチヨ。かわいい。
ヤチヨ本人ではなくプログラミングされたマジモンのAIが1人1人についています。


〇忍者超獣ガマス(2世)
「殺したかっただけで、死んで欲しくはなかった」枠になりかけました。
残機3割削られたから本気出します。

また現代ナイズによりプレイヤーの捕食能力と分身能力を獲得しました。
それってもしかして(→ラブマシーン+ディアボロモン

理屈としては、ネガを通して自己増殖する能力を拡大解釈し、自身の情報を他の媒体にコピー&ペーストする能力としました。ツクヨミのプレイヤーデータや環境データを今回は対象としている、といった感じです。

またどうやら中身がスカスカのようで……? 


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