お待たせいたしました!
今回の話はプロットにどうするかまで書いていたのですが、前回とは逆に文章にするのが大変でした……。
感想評価ありがとうございます!10もいただけまして、感無量です!
ガマスが戦闘ロジックを変えた。
先程までほとんどのガマスは無手だった。時々思い出したかのように武器を握るだけ。
だが今は、あるガマスは剣を持っている。
あるガマスは弓を持っている。
あるガマスは吹き矢を持っている。
あるガマスは火縄銃を持っている。
あるガマスは目が白眼になっている。
そして瞬間移動による
それらが大軍となって押し寄せてくるのだ。
朝日の攻撃力・ライの補助・ノイの手数が阿吽の呼吸で組み合わさることによりなんとか拮抗できているが、それも果たしていつまで続くか。
ヤチヨ曰く、ここには50人規模の参加型配信をしていたライバーがいたらしい。
だがガマスの動きが突然変わり、あっという間に食い尽くされて今に至るそうだ。
「どうして動きが変わったんだ!?」
「沢山倒されて怒ったのかもー!」
奮闘する3人。周囲には似たような光景がいくつもあった。同じように救援にかけつけたプレイヤー達がガマスを倒しているのだ。その中には朝日もよく知るプロゲーマーの姿もあった。
だがガマスの圧倒的な物量を前にとにかく人が足りていない。
もし朝日が100人いるのなら余裕で勝てる。
だが救援に来るプレイヤーの実力はマチマチで、今も1人食われてさらにガマスが増えた。これでは鴨が葱を背負って来てるようなものだ。
「どうする? 全員1箇所に集めるか?」
「いや、それだと中心部にガマスが瞬間移動して来た時乱戦になっていよいよ終わりだ」
「八方塞がりじゃん?」
「……撤退するべきだな」
ライの言葉に朝日は押し黙る。
直にすり潰されるのは目に見えている。勝てる道理は無く、一刻も早く撤退するべきだ。
だがそれは、今ここにいる他のプレイヤーを見捨てるということで。
なんとなく、それは嫌だった。
1ヶ月前だったらまた違ったかもしれない。自分の変わりように苦笑しながら、朝日は決断する。
「なぁ、少し無理言っていいか?」
「何か策があるのか?」
「あんましんどくないのにしてね」
襲い来るガマスを捌きながらも軽快に言葉を返す2人。それを頼もしく思いながら、同時にこれから多大な負担をかけることに申し訳なく思う。
「俺達で、ここにいる全パーティを1組ずつ逃がさないか?」
ライとノイはキョトンとした顔で目を見合わせた後、笑った。
◇
ガマスが現れたことでツクヨミを運営する株式会社タカマガハラの株価は大暴落していた*1。
現在は株主説明会が執り行われており、社長は会議室でてんてこ舞いだ。
外部の折衝を任された老人はフェニックスネストを感慨深げに見上げていた。
「いつかは訪れることになるだろうとは思っていたが、こんなことでとはなぁ……人生何があるか分からないものだ」
しばらくすると、前からGUYZの制服を着た青年が歩いてきた。迫水リョウタ隊長だ。彼は老人の前に来ると、帽子を脱いでキビキビと頭を下げる。
「初めまして目戸博士。私が隊長の迫水です」
「これはどうもご丁寧に。にしてもお若いですな。何歳で?」
「20歳です。若輩者ですが、誠心誠意頑張らせていただいています」
「なるほどなるほど、いやぁ立派じゃないか。孫に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ」
「恐縮です、目戸博士」
老人―――目戸栄一は機嫌良さそうに笑った。
「うんうん、君のように実直な若者は好きだよ。昔を思い出す」
「……いえ、自分などまだまだです。親の七光りと呼ばれることもしょっちゅうですし……」
「謙遜するな。君はよくやっている。それにいつも町を守ってくれているじゃないか。流石はGUYZだ。感謝しているよ」
「……はい、ありがとうございます」
褒められ慣れていないのか、リョウタは照れた様子で帽子をかぶり直した。
「どうぞこちらへ。総監がお待ちです」
「ああよろしく」
管制室にはリュウとテッペイが待っていた。
自己紹介も手短に、リュウは本題を切り出す。
「あんたらタカマガハラには悪いが、今上の方ではツクヨミの処分が決まりそうだ」
「……まあそうなるだろうと思っていたよ。それが最も簡単かつ確実な対処法だからね」
ガマスがツクヨミを食らい尽くして現れるのならば、ツクヨミがあるサーバーごと物理的に破壊、消滅させればいい。いくらVR空間で猛威をふるえど、所詮は0と1の並びでしかないガマスは抵抗もできずに倒されるだろう。
人的被害もなく、非常に安全だ。
「だがこちらの損失があまりにも大きい。出来ればやめていただきたいのだが」
「なら覆すだけの強い理由が必要だ」
目戸とリュウの視線がぶつかる。
「……理由、理由か。ツクヨミは世界中で愛されているVR空間。仮想通貨ふじゅ〜は経済に密接に関わっており、突然無くなれば混乱は避けられないだろう……これでは弱いですかな?」
「弱いな。ンなもん無くたって人は生きていける」
目戸は確かにと頷く。
社長からはツクヨミを守るようにと厳命されている。
このままではサーバーがあるビルにミサイル群が降り注ぎかねない。
黙り込んだ目戸を見かねて、リュウが問いかける。
「なあ、そもそも本当にガマスの奴はツクヨミから出て来るのか?」
「……ふむ、出て来れるか出て来れないかで言えば、出て来れますとも。うちの管理AIがわざわざタチの悪い嘘を吐くわけがないだろう」
そもそも、と目戸博士は続ける。
「GUYZはガマスの能力をどう分析されておられるので?」
「ンなもんネガフィルムに映り込んで、焼き増しされた分だけ無限に増えるんだろ?」
「その通り。だがこれをもっと詳しく言えば、自身を他の情報媒体にコピー&ペーストして無限に増える能力、と捉えることができる」
「なるほど。ヤプールはガマスをツクヨミにアップロードした、ということですね?」
「ええ。全くはた迷惑なことだ」
ツクヨミのプレイヤー人口は2億人以上。
ここまで人気になった要因は様々考えられる。
ある人はKASSENのゲーム性がeスポーツになるほど高いからだと言うだろう。
ある人はハッキングなどに滅法強いからだと言うだろう。
ある人はツクヨミはお金を稼げるからと言うだろう。
ある人はツクヨミが自由に色々な創作活動ができるからと言うだろう。
だがそれらは真に的を射ていない。
最も大きな要因は、サーバーが鬼強くて通信ラグがほぼ存在しないからだ。
タカマガハラの社長が開発した量子コンピューターとニュートリノ通信システムにより、たとえ地球の裏側であっても非常に高いスペックと遅延の無さを両立した世界初の量子サーバー。その中にツクヨミはある。
だからこそ沢山の人間がプレイし、だからこそヤプールは狙った。
「だがヤプールは我々のツクヨミ……というよりもネットの仕組みをよく知らなかったようでね。ある大きな間違いを犯した」
「間違い?」
「ヤプールはただのプレイヤー権限しか無い状態で、ガマスをアップロードしたのだよ」
その言葉にピンと来ないのか首を傾げるGUYZのメンバー達。
目戸は苦笑して続ける。
「もし超獣のような大きくてすごい存在をデータに変換しようとしたら、どのくらいのサイズになると思うかね?」
「そりゃあ……超獣なんだからめちゃくちゃ大きくなるだろ」
「では次にそれをアップロードしようとしたら、どうなると思う?」
「……普通にアップロードできるんじゃないのか?」
目戸は首を横に振った。
「一般の人間にはあまり馴染みないかもしれないが、アップロードというのはね、
「データ量、上限?」
そこまで来てテッペイが急に立ち上がった。
「……ツクヨミにアップロードできるサイズは限られている、だがヤプールは膨大なデータ量のガマスを無理矢理アップロードしようとした……上限を超えた分は、もしかして……!」
「気づいたかね。そう、上限以上のデータは削除されている」
「通りでタブレットからじゃガマスが現れなかったはずだ! 画像程度のデータ量じゃ全然足りないんだ!」
SNSの画像など精々数百MB程度だ。ガマスを出現させるには到底足りない。
目戸の推測では少なくともTBは必要なはずだ。
「故にガマスはツクヨミの全てを取り込み、失ったデータを補完しようとしているのだ」
「なるほどなあ、そういうカラクリだったのか*2」
「ネットに出回っているガマスの画像に危険はない。ツクヨミで倒せれば、それで終わりだよ」
「朗報ですね、胸のつかえが1つ取れました……」
世界中にガマスの画像が撒かれた現状に最も危機感を持っていたテッペイが胸を撫で下ろす。
「……だが、結局話は何も進んでねぇぞ。ツクヨミの処分を止めれる理由にはならねぇ」
「……その通りですな。ではこのようなものはどうかね?」
目戸はタブレット端末を取り出し、たくさんの色が使われた円グラフを表示して見せた。
「これはタカマガハラでも一部の人間のみが閲覧できる極秘資料でね。国籍ごとのプレイヤー数をグラフ化したものだ……ちょっと見にくいかな」
少し操作すると、グラフは薄い緑と青の2色だけになった。
緑は99.5%。青は0.5%ある。
「この青、なんだと思うかね?」
「国別だろ? あー、GUYZのプレイヤー数か?」
「GUYZは国じゃないですよ、リュウさん」
「ふむ、ではテッペイさん。貴方は?」
「そうですね……青、海の上……北極とかですか?」
「いいや。だが惜しい! 迫水隊長、貴方は?」
「……分かりません」
やはり当たりは出ないかと目戸は頷いた。
「この青は宇宙の青。ツクヨミにはね、宇宙人のプレイヤーが約100万人いるのだ」
その言葉に、GUYZメンバーの動きが止まった。
畳み掛けるように目戸が言う。
「ツクヨミは地球人と宇宙人を繋ぐ大切な架け橋なのだ」
「見た目で忌避される宇宙人も、ツクヨミの中でならアバターのおかげで地球人と友達になれる。絆を育むことができる」
「こんな場所はツクヨミ以外他にない。ツクヨミを壊すなど、最早タカマガハラだけの損失ではなく、地球全体の損失だ」
「そしてツクヨミを愛した地球人と宇宙人が、今現在もガマスを倒そうと奮闘している」
「私はツクヨミの制作に携わった者の1人として、彼らを信じたい」
そうして、目戸は深く頭を下げた。
ツクヨミを愛しているのは、地球人だけではない。
同じように愛する心を持った宇宙人のためにも、ツクヨミを無くさないでくれと懇願する。
長い沈黙を破ったのは、リュウの大きな笑い声だった。
「ははは! ったく、最初からそれを言えよな! 宇宙人と一緒にゲーム!? スゲぇじゃねーかツクヨミ!」
「……いやはやすごいことを聞いちゃいました……! これなら上も意見を変えるかもしれませんよリュウさん!」
「あたぼうよ! それとテッペイ間違ってるぞ! 絶対変えさせるんだよ!」
「そうでした!」
行くぞテッペイ! はいリュウさん! と2人は嵐のように出て行く。
残されたリョウタは目戸に言った。
「すごいんですね、ツクヨミって。そんなに面白いんですか?」
「私は作ったきりで分からないが、孫はヤチヨが大好きでね。部屋中ファングッズで一杯だよ」
目戸は惨状を思い出しながら少し遠い目をした。
「100万人も宇宙人の方がおられると聞きましたが、例えばどのような方がおられるのですか?」
「どのような、とは?」
「例えばガッツ星人だとか」
「ああなるほど」
目戸は何かを思いついたのか、リョウタから少し距離をとる。
そして悪戯げに笑った。
「
一応補足
〇株式会社タカマガハラ
ツクヨミの運営会社。社長は量子コンピューターとニュートリノ通信システムを開発した超天才科学者です。
ちなみにニュートリノ通信システムの元ネタは、ウルトラマンガイアで藤宮(アグルの人)が作ったもの。
ニュートリノは物体を透過する性質を持ち、地球の裏側からでもほぼラグなく通信できます。
〇GUYZ
朝日が戦っていることを知っていたので、みんな内心反対していました。そのために目戸博士を呼びました。
〇忍者超獣ガマス
ヤプール渾身の大ポカ。それはアップロードサイズ上限超過でした。
こういうのは絶対アカウントごとに上限が決められています。でないとサーバーがあっという間にパンパンになってしまいますからね。
ちなみに現実で容量オーバーのものをアップロードした場合、デカすぎるとエラーを吐かれて失敗すると思います。
不親切な所は成功も失敗も表示しませんが。
とにもかくにも、これによりガマスは中身がスッカスカの状態になっていました。VR世界とはいえ人間サイズまで縮んでいたのも、これが原因です。
残った外装と能力データをコピー&ペーストし、削除された内容を推測して復元・補完しようとしています。
つまるところ、「アップロードの仕様」「情報量が足りない場合実体化できない」というのがガマスへかけられたナーフの正体でした。
〇目戸栄一
タカマガハラ創設メンバーの1人である科学者。定年しており普段は相談役というポジションで好き勝手好々爺をしています。社員からの人望は厚く、今回は社長に代わってGUYZに出向してきました。
しかしその正体なんとあのメトロン星人!
名前の由来は 目戸(メト)栄(ロン)、一(1世)。
……はい、1世です。間違いじゃありません。セブンのアイスラッガーで斬殺されたメトロン星人本人です。
というのも彼、IF世界線のウルトラマンマックスでは生存しておりまして、このM78世界線でも生きている可能性があるんです。
きっと過去、ヤチヨと出会って仲良くなったのでしょうね。
ちなみに彼の息子はヤプールの手先としてエースに襲いかかり、グロテスクに死んでいます。あんまり検索はオススメしません。
感想評価お待ちしております!