かつてこの空の上を、我が物顔で飛んでいた大陸が、国家があったという。
有翼の民によって支配されていた国と伝えられる。
その国は500年前に滅びを迎えることになったのは、所々に知られるところである。
そして、その際に枕詞のように「飯が不味かったから滅ぼされた」と付くのも皆が知るところ。
とはいえそれは長年の間、何かの暗喩、もしくは食い意地の張った逸話の多いニホンジンに因んだ冗談のようなものと思われ、歴史家もそのような説をいくつか発表していた。
だが今回、発見された当時の日記を解読してみたところ、それが冗談でも暗喩でもなく事実、少なくとも要素の一つであった可能性が高いことが判明した。
これはニホンジンと同じく、有翼の民によって異世界から奴隷として召喚された、コシン種族やヨヒトイ種族の日記を翻訳したものである。
ニホンジンという連中はどうも、何を考えているかよく分からん連中だ。
妙に大人しくて、奴隷として召喚されたことも、使役されることも唯々諾々と従った腰抜けのように見えたが、その日の内に、「飯が不味い、反乱するぞ!!」といきなり決起しやがった。
こんな不味い飯を食わせるのは、俺達を人間扱いしていない証拠だとか何とか。
そんなこと奴隷として召喚された時点で、気付けよというか何というか。
――コシン種族の日記より抜粋。
ニホンジン、怒らせるべきじゃない、それが我等の共通見解。
「飯が不味い、反乱だ!」と主たるロウフの怒りの如き様、忘れ難し。
異界に召喚され、我等ヨヒトイの民には、もはや寄る辺などない。
彼等に恭順すべきとの意見もある。
しかしあれほど勇猛な戦いをしてみせた彼等は、他者を支配しようともせず、土地を開墾したりするのに一日を費やしている。
我等の世界にも彼等に似た姿のものはあれど、大地の恵みは育つのに幾ばくかの時間がいる。
北にある森林にて得た食料を彼等に提供し、友好の使者を立てることに皆で決めた。
主たるロウフ、父なるミズ、母なるクミよ、この異界にその威光届き得るなら、どうか我等に幸運を。
――ヨヒトイ種族の日記より抜粋。
これらは狩猟種族として知られるコシン、ヨヒトイ両種族の当時の日記である。
この日記が真実を記しているとすれば、飯が不味いとニホンジンが反乱を起こしたのは事実となる。
また多数の種族と友好的な関係を築いていたニホンジンだが、当初は訝しまれていたことも同時にうかがえる。
実際は有翼の廃嫡王子による、浮遊大陸の動力部たるマジックアイテム(魔剣であったと言われる)の奪取。
さらに突如として参戦したエンシェントドラゴンの攻撃などが重なったために浮遊大陸は地上に落着している。
このため、この反乱は要素の一つに過ぎないと思われるが、これらの行動はニホンジンの反乱を好機と見て起こされた可能性も考えられ、今後の研究に面白い波紋を起こすことが期待される。
さて、今回大量に発見された日記は他にもある。
大半はニホンジンのものだが、この国の興りに深く関わった彼等が一体何を見、何を為したのか、読み解いていきたい。
前々から構想練ってた料理物を書き始めてみました。
落とし所は決まってるんでエピローグはすでに書いてあったり。
コシン 猫獣人。 猫→寝子→子寝
ヨヒトイ 梟獣人。梟の古語、飯豊のアナグラム。
主たるロウフ→フクロウ、父なるミズ、母なるクミ→ミミズク。