1章あたり15話程度でプロットを組んでます。
1-1
Q:友人キャラってなんですか?
A:理想。
……──かつて俺は、パーフェクトでスタイリッシュな友人キャラを目指していた。
ソウルライク×学園ファンタジー風RPG『群星のメサイア』の世界に神様転生を果たした俺は、女神(仮)から与えられた使命もそこそこに、理想の友人キャラ街道を突っ走るつもりだった。
友人キャラ──物語の主人公の傍で、彼または彼女を励まし、助け合い、困難な試練に直面した際にはサポート役となって山場を乗り越える手伝いをするタイプのキャラクター。
クラスメイト、幼なじみ、唯一無二の相棒、etc……。
単に友人キャラと言っても十把一絡げにはできず、作品によって色々なパターンの友人キャラ像が存在しているわけだが、俺が理想とするところは親友枠のソレだ。
例えるならソードアート・オ○ラインのユー○オや、ペル○ナ4の花村○介。
前者は前者で死んだ時に主人公と読者に大きな爪痕を残したし、後者も後者で仲が良いを通り越してコレ惚れちゃってない? 疑惑が生まれたが、そんなことは置いておいて。
どちらも俺にとっては、理想のロールモデルであることに間違いないのである。
兎も角、メインストーリーが始まるまでの間──俺は必死に
物語の主な舞台となる『魔法学園』に入学する頃には、一端の友人キャラ(自称)と化した。
後は何とかして主人公の友人枠に立候補し、ストーリーを一緒に駆け抜けるだけだ。来たるべき日を迎え、思い描いていた未来にまた一歩近づいたことで、抑えの効かなくなった期待と興奮。
それらを胸に、俺は理想へと至るためのファーストステップを踏み出した……のだが。
「──控え目に言って馬鹿じゃないんですか? 理想を抱いて爆死するとか、ホントに」
「返す言葉もないっす……」
一面真っ白な謎空間で、やれやれと呆れた様子で大きな溜息を吐く女神(仮)と、その目の前で正座をしながら俯き加減に反省している最中の俺。
かれこれ数時間はこの体勢のままだが、足の痺れはない。まぁ肉体がないから当然か。
「何度も忠告しましたよね。奴らの──
「……そっすね」
「初めは私も信じていたんですよ。……貴方の言う”友人きゃら”?なるものはサポート役であり、誰かの支えに徹するのが仕事だと、他でもない貴方の口から聞いた際には」
そこで一旦言葉を切ると、女神(仮)はジト目を向けてくる。
「ですが、安心して見守っていたのも束の間。救世主に出会った貴方は、何を思ったのか舵を180度切って、進んで死地に身を置くようになり、傷を負うことも厭わない暴挙に出ました」
「……」
「挙句の果てには決戦前夜、単身で敵陣に乗り込んで尖兵と相対し、自らの生命力の全てと引き換えに少なくない手傷を負わせることに成功……。代わりに貴方に訪れたのは二度目の死でしたが」
……ここまで来たら誰だって分かるだろう。俺は色々あって再び死んだのだ。走馬灯を見たかどうかすら定かではない一度目とは違って、二度目は死ぬ気でやってマジで死ぬことになった。
友人キャラになるという理想を抱えたまま──俺は木っ端微塵に爆散。今に至る。
「正直、文句の一つや二つ言ってやりたい気分ですが……貴方に一つだけ問いかけます」
俺と女神(仮)の視線が交差する。いつにも増して真剣な表情に、自然と背筋が伸びた。
「──後悔は、していませんか? 理想や夢を叶えられぬまま、道半ばで斃れたとしても」
「ない。有り得ない。……絶対に」
彼女の問いに、俺は迷うことなく言い切った。二度とない絶好のチャンスに未練の一欠片もないとは言い難いのが本音だが、それでも俺がした行いについての後悔は一切ない。
むしろあの時、素知らぬふりをしていたら後で100パーセント悔やんだ筈だ。間違いなく。
世界の主人公──救世主に出会った時。俺がかつて憧れた、希望の光で照らす主人公の姿はそこにはなく、絶望の淵に立たされて、昏く淀んだ瞳を持つ少年がいた。
『変わらないんだよ……ボクなんかが足掻いても。……結末は既に決まっているから』
尖兵の魔の手により何度も何度もやり直しを強いられては敗北し、いつしか前に進むことすら諦めた少年。誰の助けも借りられずに、摩耗する心はとっくに限界を超えていた。
涙の一つも流さず、助けてくれと悲鳴も上げず、どうしようもない無力さを抱きしめるように力なく笑う姿。俺はそんな少年を前にして、とある誓いを立てたのだ。
── 孤独に傷ついた
── 一緒に傷を背負う
その時から俺は定められた結末とやらを覆すため、元々組んでいた攻略チャートややりたいことリストをかなぐり捨ててまで、変化の波を起こそうと躍起になった。
何十回、何百回と主人公が繰り返しても不可能だったことを成し遂げるには、生半可なモノでは意味のないことはとっくに悟っていた。せいぜい、凪いだ水面に波紋を起こすのが関の山。
ゆえに、俺は原作崩壊レベルでストーリーを滅茶苦茶に荒らすことを決意した。オリチャーに次ぐオリチャーでフラグを片っ端から叩き折り、主人公の見せ場を奪ってでもそれを強行。
魂が一度消えかけた影響で細かいことは覚えていないのだが、結果的に俺の企みは功を奏したようで。俺がくたばった直後、尖兵は主人公&ヒロインの手で討ち取られたらしい。やったぜ!
「何かがおかしい気もしますが……。貴方がそう仰るのならば、納得することにします」
話を聞き終えた女神(仮)は軽く被りを振ってから、再び俺と視線を合わせる。
「さて、これからの事を話しましょうか。……良いことと悪いこと、どちらから聞きたいです?」
「良いことで」
「では。──使命から逸脱した行為とはいえ、奴らの手先に痛手を負わせたのも事実。貴方は存じないでしょうが、死を迎えた瞬間、貴方の魂の欠片が尖兵へと深く突き刺さりました」
「ほうほう?」
「それをマーカー代わりに、奴らのうちの一体の居場所を特定。今まで散々貪ってきたエネルギーをいくらか奪い返すことに成功しました。その功績を称え──貴方を再び生き返らせます」
その言葉を聞いて、俺はグッと拳を握りしめた。つまり俺は、またパーフェクトでスタイリッシュな友人キャラを目指せるということ。
前回はやりたいことのうち1割も達成できなかったから……ああ、夢が広がるなぁ。
「ただし──」
が、妄想の世界にトリップしかける俺を引き留めるように、女神(仮)が人差し指を立てる。
「別の世界で、ですが。それに加えて、一度砕け散った魂を再構成したために能力の引継ぎは殆どできません。肉体の方にも、何かしらの不調が及ぶでしょう」
「あー……仕方ないか」
「く れ ぐ れ も ! 無茶な行いは避けるように。危地に飛び込むのは以ての外ですからねっ」
そのまま立てた人差し指で額を突っつかれた。要するに、主人公の隣で困難に立ち向かうよりかは、一歩下がってサポートする方が良いということなのだろう。
忠告は素直に受け取るつもりではいるが……臨機応変に対応しなければならなそうだ。
「こんなところでしょうか。言うまでもなく次はありません。それをお忘れなきよう」
「うっす」
他にも幾つかの注意点を説明されてから、いよいよ旅立つ時がやってきた。女神(仮)の足元に跪くと、俺の身体からキラキラと光の粒子が立ち昇り始める。
「どうか貴方の旅路に幸福を。貴方の人生に平穏を。■■──いえ、今はこちらが正しいですね。我が使徒アッシュ。アッシュ・バーンアウト。……羽目を外しすぎてはいけませんよ?」
「分かってますって。じゃ、お世話になりました」
その言葉を最後に、俺の意識が遠くなっていく。
視界がホワイトアウトし、感覚が消え去り、そして──……
ジジッ…… ジッ……
>『【無垢】より報告:適格者を捕捉 【賢者】【魔術師】:演算を開始』
◆
「んん……? どこだここ」
鼻腔をくすぐる潮風の匂い。湿っぽい空気が頬を撫でるのを感じて目を覚ますと、雲一つない青空が。どうやら俺は波打ち際に倒れていたらしい。
「ぺっぺっ、口の中に砂が……」
ジャリジャリとした舌触りが不快に感じ、海水で口をゆすいだ俺は立ち上がって辺りを見回す。太陽の位置からして昼過ぎなのだろうが、分かったことはそれだけだ。
場所を示す手掛かりが乏しいので、俺は一先ず適当な流木に腰かけた。
「とりあえず、今の状態を一つずつ確認するか。──ステータス・オープン」
そう呟くと同時に、ブゥンと宙に映し出されたのは半透明の板。20センチメートルほどの長方形のそれが元いた世界と変わりなく表示されたことに妙な安心感を覚えたが、果たして。
| [ステータス] Name:アッシュ Age:17 Skill:『身体強化』『隠形』『投擲』『加速』『影分身』 |
「……げっ」
ステータスの中身を見た俺は、思わず顔を顰めた。身体強化に隠形、投擲……どれも記憶に新しく、散々使い倒してきた言わばメイン級と言うべきスキルだが、それ以外の一切が消失している。
覚えてる限りでも十数個のスキルを保有していた身としては、何だか物寂しい気分だ。
加えて。
ちょっとばかし拳を握ったり開いたりして体の状態を確かめようとするも、やはりあちこちに不調が生じていた。魔力回路は焼き切れ、コアは破損、心臓のサークルは不安定……
幾ら俺の肉体が女神(仮)お手製の”強固な器”とはいえ、このままでは半分の力も出せない。
「う~ん、問題が山積みだ。何かしら手立てを考えなくては」
……全ては友人キャラを遂行するために!
一通り自分の状態を確認し終え、ステータスを閉じて立ち上がる。ぱきぽきと音を立てて大きく伸びをしつつ、今一度周囲の景色に目を向けた。
見れば、切り立った崖に沿うようにして右手の方に道が伸びているらしい。
まあ、難しいことは追々ってことで。
今は近くの村か集落を目指し、この世界についての情報を手に入れるべきだろう。
そう結論付けた俺は、早速歩き出そうとして──
「ん?」
ふと、”何か”が太陽の光を遮った。
途端に足元に影が落ちて薄暗くなる。一体何が……
「グオオオオオオッ──!!」
「っ!?」
突如として、凄まじい咆哮が耳をつんざく。思わず両耳を押さえながら、俺は弾かれるようにして轟音の発生源──真上の空へと目をやった。
そこにいたのは、
「ドラゴン? いや違う、こいつは……!」
三対六枚の巨大な翼をはためかせ、風を切り裂いて悠々と飛ぶ巨龍。碧いステンドグラスのような翼膜の輝きは鈍く、エメラルドグリーンの流線型のボディには紫色の棘が突き刺さっている。
「【風魔龍】トワリン……!!」
この瞬間、俺は確信に至った。この世界は間違いなく──”原神”のテイワットだ。
ということは。
つまり。
俺の理想を叶える絶好のチャンスが舞い込んだということ────!
「うわあああああっ──!?」
「誰かオイラたちを助けてくれぇぇぇ!」
……あっ、上から旅人と非常食が落ちてきた。なんで?
2話からはテンポ重視(平均2000字~)で更新していきます。
拙い文章ですがお付き合いください。