野球部顧問が催眠アプリなる物を開発したんだが?   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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野球部顧問が催眠アプリなる物を開発したんだが?

「えー、注目」

 

 千葉県にある新設された私立明石学園……勉学に力を入れている新設校なので綺麗な校舎と女子は可愛い制服、男子にとってはカッコいい制服デザインが売りの至って普通の高校であったはずだが、うちの野球部顧問が良い意味で頭の狂った変態であった。

 

「学園長が甲子園? て言う高校野球の全国大会に出場できたら次の年の給料2倍、プロ野球選手を1名輩出する事に月給10万上げるって言ってきたから皆には甲子園とプロ野球選手を目指してもらおうと思うの」

 

 入学したて……しかも1年生しかいない、人数も公式戦ができる10人しか男子は集まってないのに、養護教諭……保健室の先生である彼女がいきなりそんな事を言い始めた。

 

「はいはい、今から全員のスマホに先生特製のアプリをインストールするから」

 

 部員の男子達だけでなく内申点が多く貰えるからとマネージャーに志願してくれたり、根っからの虎党の2人の女子マネージャーも困惑していたが、部員12名全員にぐるぐるアイコンの催眠アプリが共有のグループチャットに貼り付けられ、ウイルス覚悟でインストールを行った。

 

 特にウイルス対策アプリは機能しなかったが……。

 

「野球部始動の初日から突拍子のないことをやっているのは先生でもよーく分かる。というか先生野球に対して全然知らないから皆と一緒に覚えていく所存だ」

 

 全員の心の中が一致した。

 

 大丈夫か……この先生はと……。

 

「言っておくがこのアプリは自己催眠を目的としたアプリだから他人には使うことができない。それに試作段階だから出力ミスると体がぶっ壊れるから注意してくれ」

 

 本当に大丈夫なのか? 

 

 こうして甲子園とプロ野球選手を目指す不思議な3年間の野球部生活が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「先生を不審者みたいに見るんじゃないねぇー」

 

 胸がデカくてダウナー系の雰囲気がある顧問の犬走先生から受け取ったこの催眠アプリ……とりあえずマネージャー志望の女子達も含めて円陣を組む。

 

「明らかにやべー人だよな」

 

「俺美人先生が野球部顧問やるって聞いてノリで入ったんだけど」

 

「勉強の合間にできればいいかなーって」

 

 ここに居るメンバー……マネージャーを含めて一応全員中学で野球を経験している為、野球の基礎知識は身に付いている。

 

 ただ野球の実力に関しては新設校に入学している時点でお察しであり、体もまだ出来上がってないひよっこ集団である。

 

「プロ目指せって先生言うけど……プロ行くような選手って今の時点である程度実績残してるよな」

 

「そりゃそうだ。こんなところに来る人材がプロいけるわけねーだろ」

 

「先生には悪いが勉強の合間に運動したいだけって伝えねぇと」

 

 多くの人達は野球は好きだけど、プロを目指せるかって言ったら無理と言わざる得ない実力の選手ばかりである。

 

「でもよ、万が一……いや億が一プロになれるって言ったらどうするよ……プロでなくても6大学から推薦取れるくらい野球が上手くなったらさ」

 

「……そりゃ楽しいんじゃないか? 今より野球が」

 

 男性陣はちょっとウジウジしていたら、虎党の木虎というマネージャー志望の女子が

 

「ウジウジしてるんだったら騙された思ってやればいいんちゃう? 先生も野球わからないなりに何とかしてくれよう思ってこのアプリを作ったんやろし」

 

 発破をかけられてしまった。

 

 とりあえず今日はせっかく先生が作ってくれた催眠アプリなる物の説明を詳しく聞こうということになった為、犬走先生に再度催眠アプリについて説明を求めたが、返ってきたのは以下の通り。

 

 ・自己催眠をすることで練習効率を上げられる

 ・脳を中心に催眠をすることで素早く寝る事ができたり、成長ホルモン分泌量を調整できたりする

 ・勉強にも効果がある

 

 ということらしい。

 

 つまりエロい妄想とかで女子に催眠をかけてイチャイチャするような用途では使えないとのこと。

 

「残念だったねー」

 

 言い方が腹立つけど、普通に天才の所業だろう。

 

 ただ気をつけないといけないのは催眠の仕方によっては体のリミッターを簡単に外せてしまうらしいので、故障にも繋がるから、無茶な自己催眠には警告が表示されるということ。

 

「とりあえず催眠アプリに関しては分かりました。これを使ってどの様に俺達をプロにしようと?」

 

「それは先生もわからないよ。プロ野球選手がどのレベルかすら私知らないし……でも二刀流のすっごい選手がいるんでしょ? その選手を目指してみれば?」

 

「簡単に言いますね……先生」

 

「それくらい私はこのアプリと君達に可能性を見いだしているのさ!」

 

 カッコつけてるが、先生が本当に野球のことをよく知らない事がよーくわかった。

 

 とりあえず俺はメンバーに互いの実力がわからないと話にならないから、好きか得意なポジション(守備位置)に着いてノックを受けるようにと説明する。

 

「ノッカー誰やる?」

 

「とりあえず言い出しっぺの俺がやるよ。キャッチャーフライは期待しないでくれよ」

 

 

 

 

 

 

 ノックをした結果、守備位置は結構皆バラけていて、互いに気を使って本来の守備位置ではない場所を守ってくれた人も居てくれた。

 

 今回俺はノックを打ったが、俺の本来の守備位置は投手。

 

 で、ピッチャーやりたいっていうやつは俺の他にもう1人、キャッチャーできるやつも2人(今回は1人ファーストに入ってもらった)、サード、ショート、セカンドが1名ずつ、そして外野が3人ちょうど。

 

 正直守備面で上手いって思った奴はショートを守っていた小柄の高井と外野の奥野。

 

 奥野は強肩かつ俊足で守備範囲もめっちゃ広かったが、中学の時は自動アウトマシーン……打撃に難があるタイプって自分で言っていた。

 

 その分守備には自信があるらしいが。

 

 ショートの高井は背が小さくて、パワーは無いけどすばしっこいタイプ。

 

 本人曰く成長痛が激しいからこれから背がもっと伸びると思うとも言っていたが……。

 

「じゃあ投手組の投球皆見てくれ」

 

 俺ともう一人の投手である寺松と俺……鶴見が投手を行う。

 

 マネージャー志望で大和撫子っぽい西川さんがスピードガンを野球部の部室から見つけてくれて、それで俺と寺松の球速を測る。

 

「寺松君がマックス130キロ、鶴見君が115キロだね」

 

「よっしゃ自己ベスト」

 

「まあ、こんなもんだろ」

 

 130キロ出ればアマチュア選手なら上出来だろう。

 

 3年間頑張って鍛えれば140キロも寺松は目指せるかもしれないが……。

 

 俺あんまり出力が出るタイプじゃないんだよな。

 

 最後にネットに向かってトスバッティングを行なうことにして、いい当たりを連発していたのがサードの藤島。

 

 ただデブだから足には期待するなって最初に言われたし、守備も終わっていた。

 

 一通り練習をやってみて、実力の無さが露呈しただけ、これじゃあどんなに頑張ってもプロは無理だろう……そう俺は思わずにはいられなかったが

 

「なぁ、せっかくだし自己催眠アプリ使ってみーひん? 例えば……自分の体に一番怪我しない理想な投球フォームをしてみてーみたいな?」

 

 木虎がそう言ったことで催眠アプリを使ってみることにするのだった。

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