死にたくないので炎上上等! 地球への手がかりを探すSFオタクが、銀河最底辺ダンジョン配信でミームから神話になるまで   作:生駒伊織

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プロローグ 銀河配信社会の片隅で

 

 

――銀河配信社会の片隅で。

 

 

◆◇◆◇

 

 

【観測者確認完了】

【惑星レーゾス端末よりアストラル光中継網へフォールバック……】

 

【惑星ラクトゥーの端末内フォトニック純結晶体起動:以後は観測者思考読み取りの自動筆記(第三者叙述)】

 

【アカシック・レコード限定励起】

 

 

 

〈GALAXY LIVE LINK:CONNECTED〉

〈REC:LIVE / ALL SYSTEMS:NORMAL〉

 

 

暴力!

もういっちょおまけに暴力!

 

乙女の尊厳――具体的に言えば股間にたたえたそれが思わず漏れ出そうになるほどの暴力により、轟音と粉塵が巻き起こる。

 

光子ミサイルにより焼かれた廃棄都市の地下で、轟音を立てて全長三十メートルもの竜を模したアンドロイドがその右手で横一文字に薙ぐ。

音速を超えるその一打で、何かが闇の中にかき消えた。

そして、それを映すのはドローンの配信カメラ。配信映像に姿のない配信者の少女の声だけが入る。

 

「ミナカのぶっっっちぎりダンジョン配信! さて、今回は惑星ナージャンのドラゴンダンジョンに来ました! で、感想なんですが――普通に考えろや死ぬだろコレ!」

 

”いきなりの暴言で草”

”やべーな! ドラゴンかよ!”

”今、ギャラクシー・ライブリンクで一番おもしろいダンジョン配信だろマジで”

 

その時、配信画面に白文字でTIPS=解説が入る。

 

 

〈TIPS:ギャラクシー・ライブリンク〉

三千年前に築かれた銀河規模のネットワークであり、今一番人気なのはダンジョン配信。

 

 

その解説が入った直後、即座に反応するのは画面を挟んだ向こう側の視聴者の面々。

 

”ちょwこのTIPSバグ、まだ消して無かったのかよ”

”俺、これ消せっつったろ!”

 

そんなコメントが飛び交うこの配信も、現在六十万もの視聴者が熱狂の渦中にある。

増え続ける配信者の目の中、ダンジョンのボス。ドラゴン=機竜は一度雄叫びを上げた。その細長い首、太った胴体。羽ばたく為の二対の翼――それら全てがクロームで仕立てられている。

その二対の羽から炎を噴き出しながら、百七十メートルもある地下空間を飛び回っていた。遥か上方を機竜が飛ぶ度、土煙が乱舞する。

 

風を切る音に紛れ、何かを吸い込む音。

機竜の喉奥が一度煌めく。口からは光子の炎が途端溢れ、小さな火球を数発吐き出した。火球は弾丸の様に鋭く飛び、地面や壁に直撃すると爆ぜた。

 

「ンアーッ! 火吐いたーッ! やだやだ! 死ぬなんて最悪の損なんですけどーッ!」

 

”死ぬ死ぬ!”

”ナージャンのドラゴン、火吐くからな”

 

配信画面が一度大きく揺れる。しかし、その時闇の中から何かが飛び弾ける音。

ドラゴンのロジックが変わる。配信画面が安定し、再びクロームの背中が映るとドラゴンは一段と暗い闇に向けて火球を放つ。

しかし、火球を吐き出した直後に口元に向かって何かがまた弾けた。

これでは仕留めきれない、ドラゴンがそう判断したのは明らかだった。その巨体が着地すると、左右の前足を大きく振り回し瓦礫を飛ばさせる。

直後、顎を大きく引き周囲の空気を吸気する。

 

”吸気の為に着陸、それだけ吸うならデカいのが来るな”

”排熱のメインは口なのか? もし逆流したら翼にも行くんじゃ……”

 

その時、三発目が闇から飛び出て吸気するドラゴンに吸い込まれた。

咆哮。そして炎。

閃光で闇が晴れた。立ち込める地下の闇は、先程の火球より激しい炎でまるで真昼のように照らされる。

都市ごと廃棄されてから数百年。しかし、それなりに頑健だったはずの重合金で出来た地下の柱が、まるで飴のように溶けていった。

――その紅蓮の炎の中を、もっと深い紅が蠢く。

炎の中で揺らめく白い靄がその姿を象る。それは、人のシルエットをしていた。

 

”来たぞ!”

”ウッソだろおい!?”

 

灼熱のただ中を悠然と歩くその姿が映った時。

その時、同時接続者数が百万まで膨れ上がる。そうして鈴の音が絶え間なく鳴り響いた。

 

”ほらよ”

”そら”

”いつものお金投げタイムだ!”

 

課金。課金に次ぐ課金。膨大な額の入金を示す音が、轟音に負けずに響く。

 

「あ”ぁ”! お”ふ! 来た来た来た来た! やっぱ百万という数字は裏切りませんね!」

 

それは未だ炎を浴びせ続ける口にまで辿り着くと、一度白い靄の絡む右腕を振り上げ口内に腕をねじ込んだ。

炎が逆流し、行き場を失った奔流は翼に走る。排熱の過負荷により両翼は耐えきれず爆ぜた。

機竜の絶叫が響き、頭を上げてそのクロームの腹が画面一杯に広がる。

内蔵された放射器を破壊音と共に引きずり出しながらその姿が露わになった。

 

”あの状況で見抜いたのかよ!?”

”レオパルドン!”

 

レオパルドン。それが彼の名前だ。その姿にピントが合わさり、姿が自然とズームされる。

身長は二メートル五十センチ程。全身の色は赤。

装甲板を全身に張り巡らせ、いからせた全長四十センチほどの円柱型の肩が二対。その真横から生えた排気口から、一度圧縮されて熱を帯びた空気が高音を立てて吹き出し、周囲の金属やコンクリート片を巻き起こす。

厚さ三十センチ程のバツ型の胸プレートに、爆ぜた小石が跳ねるが傷ひとつ付かない。

子供の身長程もある分厚い腕には、籠手のように二十センチ程の厚さの十字形の盾が付いていた。……四肢は全て分厚い装甲板で覆われ、インナー部分は黒。

 

四十五センチもある足が一歩を踏みしめる度、コンクリートに深い亀裂が地響きと共に走る。

その闇のベールの最後の一枚が炎で剥がされ、顔があらわになった。

 

三十センチを超える黒いヘルメットは、まるで古代の騎士の様。額には六十センチもの長さを誇る二又に分かれたのいぶし銀の角。対し、後頭部には馬の尻尾の様な白いコードが腰の辺りまで伸びていた。

瞳の部分には二対の卵型の目がはまっており、色は緑。まるで瑪瑙のような輝きを放っていた。

――ドラゴンが首を立てる。その高さは十五メートルにも達した。

しかし彼は怯む事なく戦闘を続ける。

 

”凄ェ! さすがレオパルドン、硬ェ!”

”俺、これと戦えって言われたら土下座する”

 

右腕と左肩。腰の後ろ、両ふくらはぎの排気口からは白い靄が出ており、白いマントの様に彼の体を覆う。

そこで空気が圧搾される甲高い音が響き、左腕と右腿が縦に裂けた。

 

《フィールド・モジュレーター、システム起動。戦闘加工に入ります》

 

無機質な女の人工音声が響く。その時、画面にまたしてもTIPSの白文字が躍った。

 

 

〈TIPS:フィールド・モジュレーター〉

レオパルドン専用に作成された工作用強化外骨格。顔と関節以外の全てに着用し、各部位はヴァリアブル構造素材により二分割から最大四十五まで変形し加工する。

 

 

即座にコメントに上がるのは非難の声。白文字で煽る様なコメントが幾つも流れる。

 

”クソTIPS許して~”

”テンポこわれちゃ~う”

”狂いそう……!(静かなる狂気)”

 

手にした放射器の残骸を二つにへし折ると、一方を左腕の甲。もう一方を右腿にセット。素材が固定され何かへの加工が開始される中、彼は両拳を握り締めると白い靄が回り機竜を殴り始める。

 

”ピンポイントなバリアのパンチってコト!?”

 

力場を纏った素手の殴打。

拳で滅潰させる中、遂に拳がクロームの腹を突き破り、まるで血飛沫の様に黒いオイルを頭から被る。

突き破った腹の亀裂が、腕一本分まで広がると彼の右の十字が四分割される。そうして、それを開いた亀裂の中に突き立てると――

 

《右ガントレット、素材確認。急速加工並びに急速鍛造を開始します》

 

アナウンスと共に機竜の内部で加工が開始する。機竜の悶える様な絶叫が更に響く中、カメラの外で声がする。

 

「御覧下さい視聴者様! ご覧の通り無敵です! あのワガママボディ、火炎放射を物ともしない硬さと怪力! 今年のダンジョン配信、無敵部門チート無双賞受賞モンです! 配信冒険者ランキング1位だって夢じゃない! ですが、もっともっとかっこいい姿を見たいなら――その先は言う必要無いですよね!!!!?」

 

配信画面に流れるコメントに対し、絶叫混じりに煽る声。それに対し視聴者はと言えば。

 

”金を送れー! 送れば送る分だけ早く出来るぞ!”

”了解、今月の生活費だ!”

”もってけ泥棒、これは俺の家賃だ!”

”風俗代だよ!”

”お母さんから貰ったおやつ代”

 

思い思いのコメントと共に、課金がされる。総計は、質のいい軍用船を即金で変える程の額。

 

「一万、二万、一万、三万、おお十万! このぐらいあればワガハイなら一ヶ月遊んで暮らせます!」

 

”お前の金じゃないぞクズ!”

”誰がお前にやる言うたねん!”

 

「いいじゃないですか、夢見たって! 視聴者様に体張ってるキャメラマンは、ワガハイですよ!」

 

次々注がれる電子マネーに彼が纏う白い靄が濃度と量を増す。彼を覆う鎧の一部が可変――交差した胸が割れて、鎖骨の上までスライド。内部の機構が一部のぞく。

体色は赤から銀。黒いバイザーから浮かび上がる瞳の色は緑から赤。

 

《出力上昇確認。高速加工モードに入ります》

 

すると加工の音が一際高くなる。ドラゴンの中では目が眩む程の光が漏れ、そして消えた。

その黒いヘルメットと緑のラスター線を飛び散る火花が浮かび上がらせる。

 

《右ガントレット加工完了》

 

体色が元に戻る。

そうして内側から引きずり出されるのは、棘の付いた鉄球と杭を鎖で繋いだ物。音を立てて勢いよくそれを引きずり出すと、彼は遠心力をたっぷり載せて鉄球をドラゴンに叩きつける。

まるで爆弾を破裂させたかの様な音と衝撃。左腕と右腕から火花と駆動音を弾けさせつつ、赤い彼は鉄球を次々繰り出す。

激しいクロームとクロームのぶつかり合いに怯む機竜は、既に手も足も出ない。

 

”レオパルドン!”

”レオパルドン!”

”化け物やんけ!”

”くっっっっっっっっそやべぇな、コイツ!”

 

上がるボルテージと同接数。既に視聴者は三百万人を突破。そこで少女の声が入る。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”、銭子が貯まる音が堪らねぇぜ! 三百万課金騎兵の財布から降り注ぐ銭のシャワーがよぉ!」

 

”もうちょい言葉選べやクズ!”

”こいつ、マジ……マジ……”

 

しかし、機竜とてむざむざやられる訳には行かなかった。その尾を地面が叩くと、地下全体が波打つ。天井からは瓦礫が雨の様に崩落し、同じくコンクリートの床を砕いた。

そうして急速な右回りで、口と腹からオイルを漏らしながらも機竜は一瞬の隙を生んだレオパルドンに、その尾が叩きつけられる。

一拍遅れて衝撃波はやって来た。立ち込める土煙が、配信画面を覆う。

 

”マジか?”

”死んだ?”

 

彼の生死を疑うコメントが流れ始め、

その時、ドラゴンの首がぐるりと回転する。丁度カメラ――その先の視聴者達を振り向くように。

 

「え、嘘ッ!?」

 

軽い地響きを立てながら、口元の牙と黒々としたオイルを剥き出しにし機竜は声のする方に向かう。

 

「ちょ、嫌! 待って、待って下さいよ!」

 

瓦礫が転がる音、そして呻き声が一度画面外で響く。その後に何かが荒い地面を擦る音。

両前足の爪で周囲の物を爆ぜ砕きながら、ドラゴンは狂ったように近づいていく。

その顎が引かれ、黒々とした瞳――センサーアイに赤いぼんやりとした光が灯る。

掠れ、引きつった声が画面外から入る。

 

「いや、やだ! こっち来るな!」

 

コンクリートが舞う。

 

「あっち行って下さい、行け!」

 

鉄片が砕ける。

 

「やだやだやだ、死にたくない死にたくない! お兄様、ねぇお兄様ったら!」

 

空気が帯電する。

その鈍い銀の巨体が、画面一杯を覆う。

 

「ひっ!」

 

右のその鉤爪が肩一杯に振り上げられ、切り詰めた嗚咽が漏れた。

 

「助けて、パパぁぁああああああ!」

 

――その声と、分厚い土煙が爆ぜたのは同時。

レオパルドンの正面姿が映る。向けた背には丁度牙が突き刺さるもヒビが入り砕け、かすかな火花が散る。

 

「お兄様! あぁ、お兄様!」

 

荒れる呼吸が安堵の呼吸に切り替わるその一拍後。

 

「――ご覧の通り、お兄様は死にません!」

 

少しだけ掠れた少女の声と共にレオパルドンの足元から土煙が湧く。そのまま高速で右回転し振り向き様に彼の左拳が機竜の顔に入った。

そのまま衝撃と威力で、機竜の巨体が浅く数メートル後方まで滑空。

……彼の背中はあれだけの衝撃があったのに、傷一つ付いていない。

 

《左ガントレット、右レッグアーマー。加工完了》

 

澄んだ人工音声がそう告げると、圧搾音を立て出来上がったそれがせり上がる。

左の腕甲から現れるのは銀の持ち手、右の太腿から現れたのは鋼の刃だ。

持ち手はオーソドックスな円柱で、鍔は飾り気のないシンプルな長方形。刃の先端は途中で空洞となっており、二つを合わせて一度振ると、更に三十センチ程の両刃の刃が現れた。

 

「お兄様、やってください! 一発デカいのを!」

 

その時配信画面には少女の声に応え、こくりと頷く姿が映る。

機竜は両手で地面を抉ると、瓦礫が幾つもレオパルドンに浴びせられるが傷一つ付かないどころか、怯む事すらない。

赤い巨体が剣を持った右手を垂直に振り上げると、白い靄が先端まで包み込む。そうして腕は勢いよく水平に――その刃が投擲された。

 

「……ード■ッカー、なんちゃって」

 

手から離れた瞬間、先程まで彼を焼いた光子の炎が噴射。降りかかる瓦礫の隙を縫って、鍛造された刃がドラゴンの腹部中央に突き刺さる。

瞬間、赤文字でシステムアラートが表示された。

 

 

〈AUTO:SOUND FILLTER ACTIVE〉

〈STILL RECOVERING…〉

 

 

配信画面から音が消える。無音の中に映るのは天井から瓦礫が落ちる様と、差し込む光。

 

”おい、マイク飛んだぞw”

”音声システム落とすとか、イカれてんだろこの威力!”

 

数秒後、復旧した音声システムから、乾いた風の吹く音。カメラが上を映すと、数十メートル先のそこには大穴が空いており照りつける三つの太陽が覗いている。

胸を貫かれたドラゴンは、既に機能を停止していた。大きく開いた顎に、光の失せたセンサーアイが一度ズームされる。

突き抜けた刃は、もう何処にも無かった。

沈黙がしばし流れ。

 

「やったぁああああ! やった、勝った! 流石お兄様、さすおに! うへへへ、視聴者様も見て下さいよ総同接数三百八十万人ですよ! 総課金額二億、こんなお金見た事ないです!」

 

そこで一瞬、ピンク色の長髪を団子にし、更にツインテールにした少女が映る。彼女はスマホを片手に瞳を爛々と輝かせながらウォレット画面を見ていた。

黒いボディースーツの上に羽織った、ピンクと黒の格子柄のジャケットが目に痛い。

 

”汚ぁい!”

”レオパルドン映せYO!”

”汚いぞ! 炎上商法で一位を目指すお前の性根が!”

 

辛辣なコメントに対して、彼女は一度カメラに顔を向ける。赤と青のオッドアイ、そして右頬には水色の涙の形をしたフェイクタトゥー。

彼女はわざとらしい程、悪びれもしない顔をすると。

 

「一位を狙うのに綺麗も汚いもないんですよ! 取れる手段を取れずに死んでいくヤツがバカなんです! 悪名は無名に勝るって知らないんです?」

 

後半は挑発的な笑みを浮かべて。

そう言うと、コメントは彼女からすれば面白い程盛り上がった。非難轟々の嵐である。

 

”このクズw”

”最低野郎かよw”

”お前さっきも燃えてたのに、まだ燃え足りないのか!”

 

ここで彼女はタイミングを計った。名シーンを作り上げる方程式は一パーセントの閃きに、九十九パーセントのタイミングを足して生まれる。

 

 

「死にたくないので炎上上等! ――ワガハイの元に折角舞い込んだお兄様というチャンス! 借金までしたんです! このクソデカ配信者坂で逃さず活かし、絶対成り上がりますよ!」

 

 

決まったと思った。しかしコメント欄はと言えば、面白がったり茶化すようなコメントで溢れていた。

 

”借金ww持ちなのww”

 

「うるさいですね! こちとらお貴族様への借金で首が回らないんです! 今日お兄様が稼いだ額も、返済で殆ど残らないんですから!」

 

”クズだけど借金はちゃんと返すのな”

 

「約束守らない奴はクズ以下ですからね! 約束は破るより守る方が儲けが大きいんです! 損はしない、約束は守る、数字は裏切らない――これが配信者三原則ですよ!」

 

”やーい、お前んち火の車w”

 

「あー、もううるさい! 絶対に一位になって借金地獄から抜け出しますからね!」

 

”草”

”口だけだろw”

 

「はい、じゃあカメラ戻します! お待ちかねのお兄様ですよ、視聴者様! ティッシュの準備はOK?」

 

そこで再びカメラが切り変わると、そこにはレオパルドン。赤い巨体は機竜の残骸の真横で何かを探している様に見える。

一度四肢から白い蒸気が勢いよく溢れ出した。エネルギーと違うそれは、冷却の為の物である。

 

”一方その頃、レオパルドン。黙々と戦利品探し”

”戦利品の回収はジッサイ大事”

 

カメラが彼をクローズアップすると、そこには鋼色の箱がある。

開くとそこには色とりどりの半透明の結晶。結晶の大きさは五十センチ程、そこで彼は腰の後ろに手をやると、全長五十五センチ程のグレーの円筒を取り出す。

中に拳を差し込むと、それを結晶に向けると高音が鳴り響く。

 

”アレ何?”

”↑アナライズガン、レオパルドンの装備の一つ。スキャナーみたいな物”

”何でそんなのをまた……?”

”↑これは公式情報だが、レオパルドンは古代文明の遺物を探している。理由は知らん”

”↑理由知らねぇのかよw”

 

配信画面と彼の内部に分析結果が表示される。今目の目の前にあるのは高値の素材、だが彼から漏れる言葉は重たく淀んでいた。

 

「……球の手がかりは、無いのか……?」

 

音声マイクのバグで、レオパルドンのセリフにノイズが入る。途端、その呟きを拾ったコメントがちらほら流れる。

 

”今なんて?”

”ちきゅー?”

 

その時、大穴から顔を覗かせる青空に、宇宙船の寄港を知らせる白雲が斜め一直線に引かれた。

直後、船から何かが射出されたかと思うと――それは空に巨大な紋章を浮かび上がらせる。モザイクで象られた様な青い十字架。

 

貴族の到来を示す、ホログラム・フラッグ。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。
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