死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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7話2 運命の切符~2002年製美品

 

 

〈GALAXY LIVE LINK:RE CONNECTED〉

〈REC:LIVE / ALL SYSTEMS:NORMAL〉

 

 

 

――そして再び二週間後の惑星ナージャン。

 

頭上に青い十字のホログラム・フラッグが宙に浮かび上がったその後。

タイミングを見計らっていたミナカは、これを好機と見ていた。

配信稼業で大切なのは、キャラ付けである。……という訳でミナカは脳波コントローラー=ニューロsynCの黒リボンを摩ると、レオパルドンに合図を出す。

 

 

〈ENCRYPTED CHANNEL:CONNECTED〉

〈MESSAGE:LEOPALDON〉

 

 

秘匿回線で手早くメッセージを打つ、伝えるのは一つ。

今凄いカッコいいアングルだから、ここで思わせぶりなカッコいい事を一つ。……表示された瞬間、分かったという意味の籠った頷きが彼から返って来た。

 

「これはあの時の船でござるか、思い出すでござるな」

 

うーん、ちょっとイマイチだな……という旨をレオパルドンに速攻で伝える。もっと謎ワード多め、安物料理のラードの如く入れまくって欲しい。

ただ、ワード長くなったらダメとも付け加えとく。

こくり、と言わんばかりの再びの頷きが返ってくる。

 

「…………ノーチラス号」

 

よし、良く分かんないけど短くていいチョイスだ。コメント欄に目を移せば。

 

”新しいワードが出たな”

”ノーチラス号。検索しても出てこない”

”↑あ、いや……そう言えば二万年前の未帰還の開拓船団に同じような名前の船が……”

 

こうして適当なワードを混ぜ解けば、信者は盛り上がる。経歴不明、正体不明、ただ確かなのは異常な程強いアーマーを身に着け、それを一切外さない。

それが世間のレオパルドンというキャラである。

……当の本人からは、とある作品を露骨にパロッたコント番組みたいという良く分からない評価であるが。

 

”おい、アレ運営貴族の船じゃね!?”

”アレは……オルムステッド家の奴だ!”

 

コメント欄がざわつく。

よく整備された四メートルの黒いパワーアーマー達が着陸した船から射出され、数十機は足裏のローラーで滑走しながら、やがて二列に整列し回廊を作る。

そうして、その中を白いドレスの女がゆっくりとした歩調で歩く。七個の護衛衛星が周囲を絶えず周り、足音は瓦礫を踏み締めているというのにしない。

 

「順調なようね、バルディナ」

「なーに、ダイナミック登場かましながら涼しい顔してるんですかね。このアマは」

「私の家、金持ちだから。羨ましいならそう言った方が身の為よ?」

 

白亜の宮殿のような宇宙船から出て来たのは、白いドレスと淡い翡翠の髪の貴族令嬢。彼女はミナカの嫌味にも平然と切り返す。

そして彼女の登場に、配信コメント欄が湧いた。

 

”運営貴族! 初めて見た!”

”画面が一気にお高級ですわ~”

 

それに対し、キャストリルは髪を右手で掬うと貴族特有のたおやかな笑みでドローンカメラの向こう側に笑いかける。更に沸き立つコメント欄を後目に、ミナカの青と赤が視線を戻すと。

 

「貴族というのは、人前だとどうしても畏まってしまうものなの……ごめんなさいね、嫌味で」

「謝ってるのに謝っていないという矛盾! そもそも何なんですか、一体全体何しに来たって言うんですか!?」

「激励しに来たに決まってるでしょ? 貴女に貸した総額、約十億クレジット。これを一ヶ月に完済してもらわなければ、レオパルドンはオルムステッド家の物になる……応援の一つでもしたくなるのが人情でなくて? 芳しくないようだし」

 

十億クレジット。ミナカとレオパルドンの保釈金と、レオパルドンを保釈するまでの根回しにかかった総額がこれだ。

この借金を一ヶ月で完済できなければレオパルドンの所有はオルムステッド家に移る。それがキャストリルが持ち出した賭けだった。

視線は自然とレオパルドンへ向いてしまった。彼がミナカの手から離れ、このキャストリルの物になる未来を想像すると心が砂漠の砂のように冷えた。

ここで切られたら一巻の終わりだ。

しかし、これを顔に出してはいけない。配信者は舐められても終わりだ。

 

「あ、ついでに借金はビタ一文負けないからそのつもりで……ほらがんばれ、がんばれ」

「嫌味か貴様!?」

 

散々ミナカを煽り散らしながら、キャストリルの金の瞳は彼女の遥か彼方に赤い背中を見つけ出す。途端、その顔の笑みから嫌味が消えた。

 

「レオパルドン、お疲れ様」

「……おお、キャストリル殿! イカす登場の仕方でござるな!」

 

立ち込めた粉塵は、彼女の周囲で見えない球体に遮られるように止まって見えた。周囲を囲む護衛衛星に守られながら、キャストリルはレオパルドンに足を向けた。

 

”レオパルドン知り合いなの!?”

”戦ってる時は寡黙だけど、喋ると多弁だよね”

”キャラ付けなんだろうなー”

 

そんなコメントを余所に、キャストリルはミナカに断りなくカメラに入る。勝手に入るな、殺すぞと言いたいが視聴者が喜んでるので何も言えない。

ミナカが思うのは精々、いっその事パンチラでもしてくれぐらいであった。

 

「流石だったわ、レオパルドン。今日もとてもかっこよかった」

「フォカヌポウ! 拙者、この様な美少女から『かっこよかった』と言われるなんて人生で初めてでござる……高校生の時はカースト最下位でござったからな」

「……見る目のない女達と一緒にされるなんて心外だわ、私こう見えても審美眼は養ってるつもりよ?」

 

翡翠の長髪を一度右手で弄ぶ仕草。画角は何故か完璧で、フレームに収まっている。

……そのキャストリルの姿はどこか拗ねたように見える顔を作り、よりにもよってレオパルドンとチャンネル視聴者に可愛げを演出しているようにミナカには思えた。それを見て、ミナカから歯ぎしりの音が一つ。

 

「――視聴者様ご覧になられました!? あのロイヤルファッキンビッチ、私は他の女と違うアピールを公衆の面前でやるんですよ! 信じられます!?」

 

”いんじゃね?”

”ダイナミック不敬罪ですわ~”

”女は可愛げだぞ、クズ”

 

荒んだ心を癒す為に銀行口座アプリで貯金額を見る。この世で一番かわいいのは自分、次に金の生る木、その次が銀行口座の預金額だ。

 

「あー、わたしあーいう女本当嫌い。女同士ではマウント取って、男を目にしたら顔色変えるタイプ! 守ってあげたくなる感じ出してるけど、あの女実家の子供部屋だと声低いですよ絶対!」

「聞こえていてよ、バルディナ。時間は稼いであげるから、剥がれた化粧直していらっしゃい」

「ンアーッ! 本性をさらけ出して死んで下さい!」

 

その時、瓦礫の底からがさりという音が鳴る。コンクリート辺の隙間を縫って現れたドラゴンの子機の生き残りは、キャストリルに向けてその牙を向けて炎を放つ。

ミナカが驚愕の声を上げるのと、レオパルドンが気づくのと、回廊の先にいるパワードスーツ二体がその巨大な銃口を反射的に向けるのと――それよりも護衛衛星の反応は早い。

吐かれた炎は見えない力場によって反射され、吐いた子機自身に跳ね返す。

吹き飛び頭の無くなった残骸が瓦礫に崩れ落ちるのと、キャストリルがパワードスーツ達に向けて手を上げて引鉄から指を外させるのは殆ど同時だった。

当の本人は依然として涼しい顔のままである。

 

「だ、大丈夫でござるかキャストリル殿! 申し訳ござらぬ、怪我は!?」

「構わないわ、レオパルドン。ダンジョンに来たのだから、モンスターの一匹ぐらいいるでしょ? でも、まぁ……」

 

そこで彼女は右手の人差し指をレオパルドンの胸に当てて、渦を一度描き。

 

「白馬の王子様にはもしもの時には守って欲しいっていうのは贅沢かしら? ふふ、嘘よ……貴方の一拍遅れてしまう弱点はちゃんと解ってるから」

「だからと言って、スポンサーの方に……」

「その顔に免じて、つれない名で私を呼んだ事は許してあげる」

「――――――お前一体全体、何しに来たんだよこの野郎!?」

 

叫ぶミナカに振り向く顔は、レオパルドンに見せる嫋やかなそれとは違い、水を差され怪訝そうなそれである。

 

「……ちょっとバルディナ、いいとこなのよ空気を読んでちょうだいな」

「公衆の面前でいちゃつき始めたら、空気を読まない事がもう空気を読んだ事になりますよ! 動画配信者的に考えて! 視聴者様もそう思うでしょ!?」

 

”まぁ、賛否は分かれるかなって”

 

「ほらねー!? そんなんだから、没落しちゃうんですよ! そもそも今のくだりいります!? 尺だって有限なんですよ!」

「無粋ね。でも、そこまで言うなら仕方ないわ……」

 

レオパルドンに体を預けながら、キャストリルは翡翠色の髪を煩わしそうに撫でる。

 

「ねぇ、惑星レーゾスの最近発見されたダンジョンの話は聞いているかしら?」

「一か月前の、古代文明の遺跡に出来た奴ですか?」

「そう。全三階建ての短いダンジョンだけど、凶悪な生物とここにいるドラゴンクラスのアンドロイドがわんさか……並みの冒険者じゃ歯が立たない」

 

”はとこが行ったんだけど、速攻で逃げ戻って来たわ”

”アレ階数解ったんだ、知らんかったわ”

 

「まさか、そこに行けと……冗談じゃありませんよ! こちとら、このドラゴンダンジョンで結構準備に時間が――」

「再生数と収益は返済額に届いて?」

 

そこでミナカの息が詰まる。今回起死回生の一手のつもりで潜ったドラゴンダンジョン、今の所の視聴者からの課金総額はおよそ一億。

熱狂から冷めた。思った以上に稼ぐ事が出来なかった。

焦げた金属と砕けたコンクリートの粉っぽさが鼻に残る。キャストリルが纏う護衛衛星の光が、やけに嫌味に感じた。

 

「私としては別に返済してくれなくてもいいんだけど……後半月、今のままのペースで本当に稼げるの?」

 

嫌な女だと改めてミナカは思った。でも、確かに後半月で稼げるのは疑問だ。

でも、だからと言ってこの女にレオパルドンを渡すのは絶対嫌だ。

 

「それに、レオパルドンのあれ。フィールド・モジュレーター、アレって特注品でしょう? 幾らかかったの?」

「アンタのとは別で……三百万」

「帝国の一般階級の一か月の生活費が大体、二十万から三十万と聞いてるわ。平均的なブラスターを新品で買ってもそのくらい。普通の武器より高く付いたわね」

 

確かにキャストリルの言う通りだった。

レオパルドンが先程ドラゴンと戦う時に使っていたフィールド・モジュレーター。

それはミナカが金を出して特注で作らせた物であり、これの所為でジャ=クーでの稼ぎの半分が消えた。

 

「まぁ、貴方の気持ちも解るわ。自費で死にに行けと言われて、はいそうですか……なんて言えないわよね。だから色を付けてあげる」

「色、ですか?」

「というのも、惑星レーゾスなんだけど我がオルムステッド家が開拓事業を任される事になって、件のダンジョンが邪魔なのよね。もし貴方達が解決してくれれば、借金額を二億程減らしてあげるわ……勿論収益とは別にしてね」

 

現在の返済済みの額は約一億。今回ので二億。更に今回のをもし受けて成功すれば、半額返した事になる。

けして悪くはない選択肢だ。

でも。

 

「お宅所属の配信冒険者なりに頼めばいいのでは……?」

「オルムステッド家の兵隊連中は正直スケジュールの関係上出し辛いのよ。無理矢理動かせば他の星を管理する兄弟姉妹へ迷惑がかかる、それが大目に色を付ける理由」

 

丁度いい所に、丁度いい兵隊を……というのは人材難のオルムステッドには難しい所なのだろう。

足元で瓦礫が軋む音。それが言葉の合間に不規則に挟まれる。まるでミナカの内なる心の疑問符の現れかのように。

それを見越したのだろう。キャストリルは口元を引き上げる。

 

「それにもう一つ、ベットする物もあるわ。これはレオパルドン向け」

「もう一つ?」

「一か月前、あのダンジョンの最奥に潜った配信冒険者から買い取った情報では、最奥には未だ万全に動く巨大な機械があったそうよ……」

 

七色の護衛衛星の一つが、空中にホログラム映像を照射する。

そこは、広々とした部屋だった。巨大な円形の部屋の中央には青白い光を放ちながら、七メートルはあろうかという青銅で出来た円環型の門が回り続けている。

カメラの前で配信冒険者の一人が、部屋のコンソールを一つ触るとそれは急速に回転し――中からある物が、まるで口から異物を吐き出される様に飛び出した。

 

「そして、今のがこれ」

 

そうしてキャストリルが懐から取り出したのは、彼女の手の平に乗る程小さな物だ。

 

「ペットボトルのキャップですよね、これ……でも何この人形?」

「X線や放射能測定をしても、特に何の異常も見受けられなかった……完全に普通のプラスチックで出来たペットボトルキャップよ。でも、改めて調べてみたけど各星系のメーカーのどこにもこんなの存在しない」

「こんなの、オーパーツとでも言うつもりですか? …………お兄様?」

 

その時、ふとミナカの赤い方の目がレオパルドンを向く。その姿にぎょっとした。

彼は震える手で、それをキャストリルから受け取ろうとする。キャストリルもまた、思わずその金の瞳を大きく見開いて、半ば気圧されるがままに彼に手渡す。

レオパルドンは受け取ったそれを、近場の瓦礫の上に置くと、腰の後ろからグレーの筒を取り出すと、超音波が鳴り響きスキャン。

 

途端、ぱしゅんという乾いた音と共に筒は白煙を上げる。

……ぽつり、と彼が聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた。

 

「間違いない、これは二〇〇二年の奴だ……ペプ……の」

 

人形の形は、小さな緑色の化物だ。右手には同じく緑色の透明な棒を持っており、何とも言えないローブを羽織っている。

その様子に、配信のコメント欄もざわめき始めた。

 

”ペプ?”

”なんか知ってるの?”

”なんて言ったの? 文字バグってわかんねーよ”

”↑プシしか聞こえなかった”

 

「……ーダだ」

 

レオパルドンは、そのペットボトルキャップを瓦礫からゆっくりと壊れないように拾い上げる。

その水平に長い耳を持つ、奇妙な形の人形を握りしめて彼は感慨深そうに呟く。そして……。

 

「ミナカ殿、この話是非とも引き受けるでござるよ」

「ファ!? いや、そんな試しだったらいいですけど……」

「試しなど必要ないでござる――」

 

ミナカの肌が不安で泡立つ。レオパルドンの赤い拳が、噛み締めるようにゆっくりとそれを握り締める。

それが、まるで運命の列車の切符かのように。

 

「――やるか、やらないかでござるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。


ちなみに私はあのペットボトルキャップ、全部集めようとして集めきれなかった苦い思い出があります。
なんでヌート・ガンレイがダブるんだよ……ジャンゴとかアナキンとかもっとあったろ
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