死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について 作:生駒伊織
「という訳で、アタイを呼んだ訳か! へへ、可愛い後輩に頼られるだなんて嬉しいなぁ!」
「っし! っく! ――で、でパイセン。ワガハイの船の残骸はどの位――っし! っく! ――お金になりますか!?」
「百年前の軍用機の食べかけなんざ、幾らにもならないぞ! あのまま放置して食わせた方が、処分費取られなくて安上がりさ!」
「っし! っく! ――で、パイセン! なんでワガハイ! 腕立て伏せをやらされてるんですか!?」
ミナカが連絡したのはギルドの駐屯惑星で一緒になったパイセン、違法改造と密輸で捕まった赤髪の女だ。今はオレンジのツナギの上に白衣を羽織り、腰の革ベルトにはレンチやスパナなどの道具が吊り下げられている。
連絡を入れたらすぐ宇宙船で迎えに来てくれた。レーゾスの大気圏を抜けた今は、重力の井戸を低軌道で逃れて星の荒野に達している。
剥き出しの内装に、暗く絞られた照明。剥き出しのケーブルが垂れ下がり、所々が透明なビニールに覆われている……一目で弄っている事が解る宇宙船の室内の中、ビスの打たれた鉄の床からは低い振動が響き、ほのかに潤滑油が香った。
そしてミナカはジャケットを脱ぎ、黒いボディースーツの状態で腕立て伏せを乗り込んだ時から行っている。上腕と胸が浅く震えていた。
「そりゃ可愛い後輩にこれ以上借金をさせない為さ! 礼は良いぞ、半分は趣味だからな!」
「なんの趣味なんですか!?」
「性的なのに決まってるだろ! アタイは天下のレズだ!」
「公然猥褻レズ!」
この女のこういう所がミナカは嫌いだった。いい人なんだけど、イマイチ感性が合わない。
ちなみにレオパルドンは今は貨物室で鹵獲品と船の残骸から回収した僅かな品と一緒に押し込められ、フィールド・モジュレーターを外している所だ。
「で、パイセン。ワガハイ達、三日後には惑星レーゾスに行かなくちゃいけないんですけど……丁度いい船ってあります?」
「金を出せば何でも買える状態だな」
「つ、つまり……?」
「運が悪かったなコーハイ、今軍用宇宙船の中古市場は惑星レーゾスの開発で高騰してる。普通の業者なら、まぁ三か月待ちって言ったトコだな」
「三か月!? 後二週間しかないんですよ!?」
「ほら、腕立て腕立て! 大胸筋がおるすだぞ!」
驚きのあまり、思わず腕立てを忘れて立ち上がるミナカをパイセンは即座に諫める。すごすごとミナカは再び腕立てに戻った。
「っし! っく! ――ヤバいですよ、パイセン! キャストリル、ちょっと仕事が忙しいらしくて、送迎サポートは出せないって言われました! 家の船も兄から断れたから貸せない、売れないで! ただ金は出すそうです!」
「まぁ、そうだろうな。綺麗な船の数が足りんだろう……今はレーゾス直通のワープゲートを急ピッチで作ってるしな」
「パイセン、ちなみに――」
「ダメ、アタイも予定が詰まってる」
全ての船にワープ機能が付いてる訳じゃない。基本的に自前でワープ機能が付いているのは高額な機体だけであり、通常は帝国内の各星域にある巨大なワープゲートで料金を払って移動する。
現在オルムステッド系列の企業は全てレーゾスの開拓に向けて全力を注いでいる。もう宇宙を飛べるなら何でもいいと言わんばかりに。
「っし! っく! ――だから、ワガハイ達本当なら一番近い星系のワープゲートを利用して――っし! っく! ――行こうと思ってたんです!」
「行くだけなら普通の宇宙船でもいいが、レーゾスは荒れ地だ。装甲の厚い軍用機じゃないと、一秒で原生生物に食われるだろうね」
「っし! っく! ――なんとか、なんないですか! パイセン!」
そこで、パイセンは一拍間を置く。フロントの窓ガラスに仄かに映るのは、視線が左上は向く所。何かを思い出していると見える。
「ウチに幾つか船がある。惑星コーグの店に、な」
「パイセン、マジですか!?」
「腕立てを休むな! トレーニングは終わってない!」
ただし、と。
腕立てを続けるミナカに対し、パイセンはその赤い髪を一度弄ると少しばかり嫌らしい笑みを浮かべる。
「雇い主とは言え、タダではやらん。悪いがこちとら慈善事業じゃなくてな……その代わり品質は闇にしては折り紙付きだ。このアタイが弄ったヤツだしな」
そこで、コクピットに通じるドアが開くとそこにレオパルドンが入って来た。腰には茶色い革のホルスターで、銀の銃型デバイスを吊り下げている。
あの赤い装甲の塊。フィールド・モジュレーターを外した姿は少しばかり細く見えた。
「お待たせしたでござる、パイセン殿。外し終わったでござる」
そこでパイセンはその髪と同じ赤い瞳を、右横に手と共に走らせる。青白いホログラムで今いる一帯の地図を広げると、最寄りのワープゲートまで距離が短い事を確認。
「残り十か……よしコーハイ、ワープゲート通り終わるまで運転変わってくれ。事故るなよー」
「っし! っく! ――パイセンはどうするんですか?」
ミナカは即座に立ち上がると、スーツのエアコンを入れてそのままコクピットに座る。ちょっと茹った頭で赤と黒のレース仕様の四点式ハーネスを引き、ぼんやりと輝く計器の薄緑が宇宙の深淵から頬を照らした。
パイセンはと言えば、白衣の袖をまくり腰のベルトからスパナを取り出す。
彼女らの船の前に、巨大な白塗りの円環が映る。徐々に大きく迎えてくるそれは、ワープゲートだ。光年もの距離を渡り、違う星系に行く為の物である。
周囲に船はなく、空いている為かスイスイ進む事が出来、円環の中まで入ると円環が高速で回転。瞬間彼女達の船は光となった。
「ほんじゃま、早速フィールド・モジュレーターのメンテと行くか!」
こんな時普通なら止めそうな物だがミナカは止めない。そもそもパイセンの密輸業は副業で、本業は違法改造専門の業者。腕のいいメカニック。
彼女との縁は駐屯惑星ドルトムントでキャストリルと別れた後の事、ミナカ達がオンボロ宇宙船に戻ろうとしたその時。鉄格子の窓から再び声をかけられた。
『よー、コーハイ。もし金が余ってるなら、アタイを雇う気はないか? 代わりに何でも作るぞ』
『ファ、何だこのパイセン!?』
『腕は、ほら御覧の通りさ』
放り投げられたのは、針金とボルトで作られた手のひら大の四角い装置だった。ボタンを押すと、青白いホログラムで『アタイを買ってくれー』というパイセンの像が出る。
それがギルド駐屯地から矯正局の鉱山に送られる寸前でパイセンを拾った理由である。
『そしたら拙者、作って欲しい装備が二つあるでござる。……状況によって使い分ける事が出来る武器って作れるでござるか?』
『つまりご所望は百徳ナイフって事か。ふむ……』
ただ、そのかいはあった。レオパルドンの装備一式=フィールド・モジュレーターを作ったのも彼女である。
中古のパワードスーツと、工場で使用されるヴァリアブル加工機を組み合わせたそれは非常に見栄えのする物となった。
『それともう一つは……地球への手がかりを探す道具が欲しいでござる』
それで生まれたのがあのアナライズガンである。
「そう言えばナージャンで、面白い物手に入れたみたいだな……」
「燃料コアとEXコアを手に入れたでござる!」
「もし、相場の半額で譲ってくれたら装備を改良してやるぞー」
「改良!? 拙者、パワーアップイベントとか大好きでござるよ!」
そう言ってレオパルドンはその緑の卵のような双眸をミナカに向ける。こういうところを見ると、ミナカはレオパルドンが子供っぽく感じた。
聞けばレオパルドンは三十代だという。知ってる大人よりも、なんというか熟しきれていない感じがした。ともすればミナカより年下ではないのかと思ってしまう程に。
その時、鈴の鳴る音がミナカのスマホから鳴る。
複数のSNSで、あるハッシュタグの投稿数が既定の数に達したら通知する設定をONにしていた。
先程メールを送ったステマ要員共が、早速成果を上げたらしい。
設定したのは『#レオパルドン〇〇説』。
現在の投稿数、約十億。いい感じにバズってる。
「さてさて、前回上げた正体説動画は……おっと早くも五百万再生!」
更にブームを活性化させる為、新ネタを投入する。勿論真実だ、謎解きゲームで大事なのは公平性だから。
彼女は知っている。好奇心には人を惹きつける力がある。人は目立つ物を見つければ、根掘り葉掘りを知りたがるものだ。
レオパルドンを欲しがらせる為に大事なのは”謎”。
彼の経歴を一切明かさない事で、謎を……演出で思い込みを誘導させて考察の余地を与えてやる。更に雇ったサクラの幾人かに、適当なこじつけの説を流させる事によってムーブメントを作る。
それが視聴者を生む力となる。
人は箱があれば中身を見たくなる物だ。
たとえ、その中身が空っぽだったとしても。
「それじゃ、ここで新情報を一つまみ。レオパルドンの鎧の素材は……っと」
◇◆◇◆
【兵器?】レオパルドン考察スレPart369【人?】
1:名無しの考察者
よく来られたし、ここはレオパルドン正体考察者スレである。
ニュービーは基本ROM階梯を進み、自らの見識を研磨してから学説を唱える事を推奨する。
現在提唱されている説は151説である。
古代兵器説は提唱者が増加したので、学派として別スレに。
…………。
……。
…。
765:名無しの考察者
レオパルドンのアレは、絶対UEクライス社製のパワードスーツだ!
俺、見たもん! 新作の発表会でよ!
766:名無しの考察者
>>765
お、ニュービーか? 落ち着いて、まずは啓蒙を高めろよ
767:名無しの考察者
>>765
まずは脳に瞳を得るのだ、話はそこからだ
768:名無しの考察者
惑星ザスケラの中世のパワードスーツカタログを手に入れたけど、アレは西に住んでた鎧職人の作に似てる気がする
ほら、胸のスマホホルダーの意匠とかそっくりじゃないか?
769:名無しの考察者
>>768
あそこの星系、中世の作風全部同じやんけ!
770:名無しの考察者
しかし、次の配信レーゾスか
771:名無しの考察者
↑あのお嬢の話で、なんか知ってる感出してたよな
772:名無しの考察者
速報! レオパルドンの素材判明、イドロダイトだってよ!
ソースは公式!
773:名無しの考察者
さっきまでの学説がもうゴミクズ以下か!
小娘の発言一つで説がコロコロ変わる! たまんねぇなぁ!