死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

15 / 50
9話1 ハルハルの一生~迷惑系だって生きているんです!

――ミナカ達がワープゲートを通ったのと同時刻、惑星レーゾス。

 

『ハルハル☆チャンネルー! 皆さんこんばんは、迷惑系配信冒険者のハルハルです! 今回はなんと、話題沸騰中の惑星レーゾスに来ました!』

 

惑星の北西――一際大きな大陸の、人里離れたそこ。険しい渓谷の中に建つ、古代の寺院の様な巨大な建物の前。

フードを被り、両手を合わせて祈りを捧げる礼拝者達の像が百体程乱立しているのが目印。

球体型ドローンを五機引き連れた青い髪の優男が、その飾り気のない入口の前に立っている。

 

”お、始また”

”レーゾス!? よく入れたな!”

 

ハルハル☆チャンネル。

登録者数は六十万。そこそこの規模を持つ配信冒険者だ。現在の同接者数は二十万、やり始めにしては上々と言ったところだろう。

 

『という訳で、早速発見されたダンジョンに入ってみようと思います!』

 

ハルハルは、白兵戦を好んでいた。手にするのは戦艦の金属を利用して作られた刀。柄の元にはスイッチが有り、ボタンを押すと高周波振動により切断力が増す。

すらりとした浅い反りの刀身の色は銀。鍔の色は黒、柄は深い赤と青の強化プラスチック。

 

『あ、スパチャはいつでも大歓迎だからね! 顔が良くても惚れるなよ?』

 

”うっぜ!”

”いつか死んでくれーw”

 

いつもの罵倒コメントが流れる中、彼はダンジョンの中に入っていった。

 

 

――――。

――。

 

 

〈INFO:公表データ〉

レーゾスのダンジョンは全三層。

※ただし帝国貴族オルムステッド家主導の公共事業の為、部外者以外立ち入り禁止(出典:配信冒険者ギルド・探索局速報)

 

 

 

配信画面に白文字で公表データが現れると、ハルハルはほの暗い石造りの遺跡の探索を開始した。

 

第一層は重力ブロックと狂ったアンドロイド。

それを超えた先、螺旋階段とエレベーターシャフト両方には酸性ガスが立ち込めている。そのまま下に下ると、第二層はフロア一帯酸性ガスに覆われていた。

ドローンのスキャンデータは、濛々と立ち込める灰煙はマスクなしでは即座に昏倒し、十分も入れば命に関わるだろう事を示している。

 

『なんなんだよこいつ等は、死ね!』

 

現在第三層。

巨大な、座席のない闘技場の様な円形のホールだった。同心円段の中央には青い電流を走らせ、不気味にゆっくりと回り続ける円環型のゲート。

直径三十平方メートルもあるホールの中。ハルハルは足を踏み入れた瞬間、突如現れた骸骨型のアンドロイドと戦闘になった。

 

通り抜けざまに赤い柄――サウザンド・サンズ=ムラマサの刃で切り捨てるのにかかる時間は僅かコンマ一秒。高価な神経加速剤とスパチャのバフ、レアメタルを使った刀の切れ味、何より本人の技量の賜物である。

 

最後の一体を斬り伏せると、一段落つけて彼は周囲を見回す。ホールの周囲を見渡すと、彼が入ってきた階段やスケルトン達が出て来た扉。

不意に、通路の照明が全て消えた。

 

『な、なんだ!?』

 

天井のファンの唸るような駆動音も止まる。何もかも、まるで真空パックの中に入れられたかのように。

撮影用のドローンの光に、雪のように浮いた埃が照らされる。

誰もが一瞬固唾を呑む。そうしてまるで呼吸音を思わせる音が聞こえたかと思うと――黒。

爆弾が爆ぜた様な衝撃が部屋全体に走り、粉塵が闇の中で靄のように蠢くとそれはハルハル諸共包む。しばらくして粉塵が晴れ、青い髪が再び配信画面に現れるのと同時。視聴者の前にもう一つ――

 

”なんだありゃあ……”

 

真正面の両開きの扉が爆ぜたかと思うと、そこから現れたのは全長七メートルにも及ぶ黒い巨体。三頭の犬の頭を持つそれは、ケルベロス。

重たく響くアクチュエーターの音は、まるで唸り声の様。ぼんやりとした赤い六の瞳は、狙いを定める様にハルハルを睨む

 

『ヤバいヤバいヤバい、アレ絶対ヤバいって!』

 

今まで倒してきた奴とは違う、直感でそう感じたハルハルはそれが十メートル先に現れた時点で踵を返して逃げ出す。

忌避反応が足を駆けさせるが、瞬間彼の右側を赤い光が奔る。その先には右の頭。口から放たれるレーザーは、ホールの円形の壁をいとも簡単に抉った。

 

瞬間、配信画面から声にならない悲鳴が響いた。ハルハルのそれである。

彼は、右手で刀身を鞘に入れると腰から取り外して両手に構える。持ち手がスライドして中間程で折れ、鞘の先端が割れて銃口が現れた。赤い光が螺旋となって重心に絡みつく。

 

”やれ、ぶっ殺せ!”

”怖えええええ!”

 

スパチャが飛び交い、それはブラスターの威力を上げる。普通の弾丸よりも大粒のそれは、戦艦の機銃ぐらい威力が跳ね上がっていた。

しかし、ケルベロスは揺らがない。

 

『ヤバッ! ヤベぇ、本当にヤバいって!』

 

恐ろしく頑健な装甲の前に、赤い刀を放り捨て、代わりにジャケットの内側から取り出し投げたのはEMPチャフ。

センサーをかく乱させ、背中のジェットパックで何とか距離を離そうとするも、なぜか電磁波に惑わされる事なくケルベロスが左の首を上げ牙を剥く。

口から放たれたのは耳を突き抜ける超低周波。その衝撃がハルハルの前庭器官を強かに叩いた。

漏れる反吐と共に、上を仰ぐとそこには中央の首が眼前にまで迫っており。

 

『ふぁぽぅ!』

 

もう一本の愛刀、青い柄――ファイブロックギガント=マサムネが素っ頓狂な声と共に走る。

しかし彼の最後の一線である白銀の刃は、徐々に毀れ始め罅割れていく。顎にかかる圧力と、牙の素材が彼の愛刀に勝りつつあった。

 

『そ、そんな僕のファイブロックギガント=マサムネが!?』

 

細かく砕かれた銀の破片が舞い散る中、血溜まりが一つ。

それが彼の最期の言葉であった。一人の迷惑系配信冒険者の死は、瞬く間に銀河を駆け巡る。

それは――遠く離れた惑星にいる一人のウィザードの元にも。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。