死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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10話1 スターファイター

――惑星コーグ。

 

 

帝国領きっての砂の惑星は、星間戦争時代の兵器のゴミ捨て場と名高い。

ワープゲートを抜け、大気圏の断熱圧縮を超えた後、彼女らを迎えたのは数キロにも渡る戦艦の残骸と砂漠。そこに設けられたジャンク屋の楽園、その名もずばり『廃戦艦城』。

そこが、パイセンの根城の一つであるという。

 

「帝国のガラクタ置き場はアタイの家さ。で、ここは船置き場」

 

パイセンの船を少し離れたガラクタの上に置いて、そこから赤い髪を揺らして彼女は『廃戦艦城』を案内する。

途中、先頭を歩くパイセンに対して何人もの人間やアンドロイドが言葉を交わしてきた辺り、ミナカには彼女の顔の広さを伺い知った。

ただ単に下品なメカニックじゃなかったんだ、とも思った。

 

「ウチは『見てくれはまあまあだが、中身は……』なんて事はないから安心してくれ! 金を出せばなんでも売るぞ!」

「あ、パイセン。ちょっと荷物の受取先ここにしてもいいですか?」

「何が届くんだ?」

「電マです」

 

照りつける太陽の下、砂を孕んだ風が一陣流れる。

うず高く積まれたガラクタで出来た迷路の様な道を、パイセンは笑いながら進む。そしてミナカとレオパルドンは足早な彼女の背を追い、それに付いていった。

大昔の横転した戦艦を元に築き上げられた廃戦艦城には様々な物が並んでいる。武器や食料、様々な部品、そして臣民権のないアンドロイド奴隷。

 

《主ヨ、オ前ニ憎シミヲ……》

 

ドワーフの奴隷商が路頭で奴隷を叩き売る中。二メートルはあろうかという男性型アンドロイドのその警句は、嵌められた分厚い首輪の電磁パルスで阻まれる。

 

「お客様の前でその文言はやめろと何度言ったらわかる!」

 

ドワーフの奴隷商は何度もスマホのボタンを押し、電磁パルスを流し続けた。臣民権のないアンドロイドは、こういう定めになる。

 

「ほら、こっちだ。特別展示ルームにご案内!」

 

そんなやり取りが繰り広げられるのを流し、一際開けた場所に出る。そこでミナカ達を待ち受けていたのは……。

 

「マジで……?」

「これは、確かに特別感はあるでござるが……」

 

円形の約三十平方メートル程の、ちょっとした荷物置き場ぐらいの大きさ。その中央にあるのは、一枚の紙飛行機。

ただの紙飛行機じゃない。先端が鋭く尖ったやり飛行機である。

ミナカは手に取ってみる。白い紙で出来たやり飛行機は、どこまでも真っ直ぐ遠くへ飛べそうである。実際飛ばしてみると、結構よく飛んだ。

 

「よく飛ぶだろう、それ!」

「ちょ、パイセン!?」

 

あまりにもあっけらかんとした声に、思わずミナカは声を荒げた。レオパルドンに至っては、勢い良く飛んだ紙飛行機を呆然と見つめている。

 

「冗談さ! 冗談、紙飛行機はただの趣味! 普通に考えてみろ、高値で売る船をわざわざ野晒しになんかしないだろ?」

 

そう言うと、パイセンはオレンジのツナギの胸元からリモコンを出して一つボタンを押す。すると地響きが鳴り響き、敷き詰められた砂を割って両開きに地面が開いた。

中には鋼鉄で仕立てられた、よく手入れされたエレベーターの様だ。それも中位の軍用機や重機も積載可能な程の。

ミナカが訝し気な声をあげた。

 

「エレベーター?」

「この星は戦艦の墓場でね、まだ機能が生きてる船が砂の中にゴロゴロ眠っている! ここがウチの特別展示ルームさ!」

 

三人が足を踏み入れると、そのまま下へ。重心が下に落ちる感覚と共に、油臭い整備工場特有の香りが徐々に漂ってきた。

中に入ると空調が効いた滑らかな光沢を放つ白銀の格納庫。せわしなくアンドロイドが働く中、ずらりと並ぶのは丹念に整備された宇宙船の数々。最新鋭機から人気の機体まで。

 

「どうよ! 小型から中型の船はここに置いてる!」

「砂の中の宇宙戦艦の中に隠された、最新鋭機の数々……テーマパークに来た感が凄いでござる」

「見た目もそうだが、中身もいいぞ! この船はジャ=クー・ファイター。あの星が廃墟になる前、最後に生産されたヤツ。レースに出るならもってこい!」

「レースでござるよ、ミナカ殿! しかもかっこいい背景設定も付いているでござる!」

 

パイセンの言葉に逐一興奮し赤い巨体を震わせるレオパルドンに対し、ミナカはと言えば。

 

「でも、それぜんぜん荷物詰めなさそうですよね?」

 

二人の温度差ははっきりしていた。ミナカは常に冷静な反応を返す。

 

「お兄様、遊びに来たんじゃないんですから」

「でも、宇宙船選びなんて心踊るでござるよ! なろう的にも盛り上がるポイントでござる!」

「だから、なろうってなんなんですか? 何になろうって言うんですか?」

 

そうしてミナカは冷静に自分達が欲しい宇宙船の条件をパイセンに伝えた。興奮するレオパルドンの無駄に熱い視線、パイセンの強かに算段を弾く瞳の前で。

 

「欲しいのはまず分厚い装甲。後、それなり以上の火力と居住性。機材や武器を置けるスペースも欲しいんです。あ、燃費も良いと凄く嬉しい。…………つまり、ショタで言えば筋肉質でがっしりしてて、かつ女顔で白髪。体力あって、家庭力と経済力高め」

「刑務所に入れ!」

 

そして速攻で跳ね返された。そんなやり取りの中、レオパルドンは首元を右手の人差し指でぽりぽりと何度も触った。いつにも増して、アーマーを窮屈そうにしているようにも見える。

その時、レオパルドンの指が一度止まる。何かに触れたらしい。右手をもっと奥に差し込むと、紫色のビニールに入ったコンドームがぽろりと出て来た。

しげしげと不思議そうにコンドームを見つめると、不意にパイセンが打って変わって静かな声で。レオパルドンは思わず腕アーマーの隙間にそれを隠す。

 

その時、何故かレオパルドンはパイセンと視線が合った。

 

「でもまぁ、お前ならワンチャン何とかなるかな……」

「拙者?」

「一機だけ条件に当てはまりそうなのがあるっちゃある。ついてきな……更に一階下だ」

 

更に一階層下がると、そこは先程の明かりに満ちた部屋ではなく暗く閉め切られていた。電気を付けると、周囲には解体途中とも整備途中とも付かない機体が並んでいる。

先程のショールーム然とした格納庫と明らかに空気が違った。暗闇でも燃える様に赤いパイセンの髪を追って、二人は突き進む。

 

「どう見ても、訳ありって感じがひしひしと伝わって来ますね……こういう部屋には大抵ヤバいモンが置いてあるんですよ」

「この部屋、なんていうか……たまらない気分になるでござる。子供の頃、父さんに連れられて入ったアングラなプラモ屋を思い出すでござるな。新琴似町の十二軒にあった、中村ライター店でござった」

 

不安を覚えるミナカをよそに、興奮した様子のレオパルドンは落ち着きなく周囲を見回す。その二人をよそにパイセンは、部屋の一番奥。三重の隔壁に封鎖された部屋の前まで二人を連れてきた。

隔壁が開く中でパイセンは振り返ると。

 

「なに、物自体は変な物じゃない。こいつは趣味の産物でな、商売抜きで気長にレストアしてる……本当は完成したら上に非売品で飾ろうかと思っててな」

 

隔壁が開くと、中から現れたのは全長五十メートル。円盤型の胴体を軸に、先端には二又の形を取る様に、左右非対称に円柱と平たい板が突き出ている。

円盤の横には樽を巨大化した様なバーニアが二つ。円盤の上にはコクピットと思しき楕円形の窓が取り付けられている。

シルエットは、両手足を広げた蜘蛛が近い。

 

「凄い変わった形ですね、この船」

「この形は……これは」

「どうされたんですか、お兄様……」

「いえ、ちょっとこの船の先端が二又で、胴体が円盤というのが……ちょっと昔憧れていた船に似ていて」

 

そこでぽつりと、レオパルドンは目線を遠くに外し、まるで独り言のように呟く。

 

「あの映画で、ソレントからファルコンをくれてやると言われた時……ちょっと悩んでも断るのは勇者の証でござるよウェイド」

「何の話ですか?」

 

ミナカは何を言ってるんだこの人という目で彼を見ていた。

そんな彼女達のやり取りをしばし待った後、パイセンは頃合いを見て自分の話を切り出す。

 

「コイツはもう数百年も前の戦争時代の古い試作機さ。今はもう滅んじまった星の生まれで、闇から闇へ流れて来た物がウチに辿り着いたって訳」

「ああ、試作機! テンションがもう鰻登りでござる!」

「お兄様煩い」

 

ぺたりとパイセンは船の肌に触る。そこには型番を消された跡、鉄の肌を幾つも引っ掻いた様な傷がある。

適当にリモコンを操作すると、胴体と足の隙間から格納されたスロープが降り、彼女は右手で中に来いと合図すると再び話し始めた。

 

「ボディーは強度が高く、戦艦の主砲ですらびくともしない。居住性は見ての通り……今は内装部分を弄っていた所だ」

「確かに、オンボロ船とは段違いに広いですね」

 

内部は透明なビニールシートが被さっていた。所々金属の骨組みを覗かせているが、全体的に広々としていた。少し歩くとコクピットから離れた所に、大型の倉庫が三つ。

元は大型の高速輸送船だった事が伺える。銃座に取り付けられた機銃も、前のよりかなり大きい。

 

「まぁ、内装に関しては後は電気回りだけ。ウチはアンドロイドもいる、手早く終わらせるさ……良い船だぞ、火力も出る。ついでに速度も……ワープシステムも付いてる」

「凄い優良物件じゃないですか!」

「んで、そしたらどうして渋るかって話なんだが」

 

赤く長い髪をガリガリと掻きながら、パイセンが含みのある事を言う。ミナカの不安そうな言葉に触れる様に、パイセンは胸元にしまったリモコンを再度取り出すと、レオパルドン達から見て左側のシャッターが開いた。

そこには、球体状の何かの部品が鎮座していた。周囲には様々な部品や専門書、更には明らかに場違いなハードカバーの本まで転がっている。

 

「こいつ、エンジンが完全に死んでるんだ」

「なら新しいの付ければいいだけじゃないですか?」

「それが出来たらいいんだけどなぁ……」

 

ちらりと、パイセンは再度振り返って背後のエンジンを一瞥し、悔しそうに見つめた。

 

「このエンジンはゼロ点エネルギーエンジン。この小ささで実現された半永久機関さ……そりゃ付け替えりゃ動くが、想定されたスペックより遥かに落ちる。そんなのアタイのプライドが許さない」

「…………外見は、新品同様に見えるでござるな」

 

レオパルドンがそう言うと、パイセンがリモコンをエンジンに向ける。すると球体からは二十センチ程の六角形の棒が迫り上がった。

先端には五センチ程の虹色の煌めきを放つ薄い金属の板。

 

「コイツはエンジンの触媒、イドロダイトのインゴット。だが、すっかりエネルギーが抜けちまってる」

「触媒……」

「つまりライターで言う所の石だ。他が万全でも、コイツがダメなら動かない……触媒を変えようにも、ご存知の通りイドロダイトは滅多な事じゃお目にかからないしな」

 

僅か一拍。口惜しさを滲ませる沈黙の後、短く息を吸う。そしてレオパルドンを指さし。

 

「そこでお前だ。同じイドロダイト製のお前なら何とか出来るんじゃないかって思ってな……もしアンタがあれに触れて、あの触媒が生き返ったのなら……」

「ならの続きはなんですか、パイセン」

「…………持ってけ泥棒、半額でいい」

「やったぜ! これで口座の金を減らさなくて済む――約束ですからねパイセン!」

 

そこでミナカはすぐさまピンクと黒の格子柄のジャケットからスマホを取り出すと、それをパイセンの目の前に向け。

 

「名義はワガハイ、保険は共同名義、作業納期は今から七十二時間後。各違反へのペナルティは返済相殺……以降は確認して下さい。――ご理解いただけたらサインを」

「おま、………………初めて見た時よりガメつくなったな」

 

あまりの変わりようにパイセンは数拍言葉を詰まらせた。それからサラサラと指で流れるように『パイ・セン』とサインをする。

 

「お兄様、パイセンからサイン取りましたよ! 明らかに偽名ですけど、本人以外絶対使わないバカみたいな名前です! やーっちゃって下さい!」

 

そう言うと、レオパルドンはミナカに半ば引きずり出されるように前に出た。ミナカが左手に持ったケータイを、右手で指差す。配信画面を開始する合図だ。

ミナカの経験上、配信を開いてコメントが流れる時。レオパルドンは奇跡を手繰り寄せる。

 

「ミナカの緊急ぶっっっちぎり配信! さて今回は急遽、お兄様とワガハイの新しい宇宙船を買う羽目になった訳ですが――」

 

配信を開始して早々視聴者は付いた。ミナカが事の経緯を説明する中で白いコメントが流れ始めると、白い靄が両手に溜まっていく。

レオパルドンが躊躇いながらもその僅か五センチのインゴットの前に立ち両手を隠すように翳す、途端それが何もしていないのに白く光る。

 

パイセンの目の色が変わった。

 

「続けるんだ。エネルギーが溜まっている」

 

空気が変わった気がする。頬に当たるのは緩く温かい物から、冷たく醒めた物へ。

パイセンは食い入るように視線を注ぎながら、いいから続けろのハンドサインを向ける。レオパルドンはエネルギーを付与し始めた。

レオパルドンの肩が浅く震える。彼から発せられる白い靄は、吸い込まれるようにインゴットに流れ込んでいった。

その時、ミナカの瞳のモニターに白文字でHUDが浮かび上がる。

 

 

〈EXT-SENSOR: HYDRODYTE DETECTED/St: DAMAGED=REPAIR INIT〉

〈HYDRODYTE RESONANCE…〉

〈RECEPTOR-1876548: REALITY DENSITY DROP/CAUSE: E-DRUG EXCESS〉

〈REALITY PATCH: BUILD & APPLY/CAUTION: RECEPTOR DAMAGE RISK〉

 

 

僅か一瞬だけ浮かび上がり、全て読み切る前に消えてしまった。頭の脳波コントローラー=ニューロsynCを触り、諸々の設定を確認する。どうやら配信には映っていないらしい。

不思議な物で、丁度五秒後。レオパルドンの目――クリアブラックのバイザーに覆われた、卵の様な緑の双眸が照度を増す。

そこで彼は手を離した。瞬間、インゴットは自立したかのように白い靄を纏い輝く。入っていた薄い亀裂も、つるりとした表面となって消えていた。

 

「それを、ゆっくりとエンジンに入れろ。今すぐ」

 

パイセンは息を詰めた声でそう言う。

インゴットを元に戻すと、リモコンが即座に操作されて格納。そうして次に可聴域に届くか届かないかの高音が鳴り響く。

それがゼロ点エネルギーエンジンが息を吹き返した瞬間だった。

 

「やった! やりましたよ、お兄様! これで燃料費タダの高級宇宙船がタダで手に入りまし――ンアーッ!?」

「すげぇ、すげぇよ! コーハイ! こんな事、マジで凄え!」

 

ピンクのツインテールを跳ねさせて駆け寄ったミナカを吹き飛ばし、パイセンが赤髪を乱しながら駆け寄る。顔はまさに喜色満面と言った具合。

パイセンは笑いながらも、その右手を伸ばし――空を掴む。動作は音を確かめているようにも見えた。

 

「聞けよ、この音! セックスよりビンビン感じてやがる!」

「やめて下さい、パイセンまで下品な事言ったらワガハイとキャラが被るじゃないですか!」

 

数百年ぶりに響く半永久機関の音は、廃戦艦城中に響き渡っていく。

そうして、この件は後日動画として編集され瞬く間にギャラクシー・ライブリンクを通し。ネット中に広がった訳であるが……。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。


後、全く関係ないんですけど映画『スターファイター』ブルーレイ発売おめでとうございます!

ふざけんな! なんで今なんだよ、俺今年の始めに5千円でビデオ買ったんだぞ!?(マゾの歓喜)
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