死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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14話 一位になろう!

 

 

――YouTubuチャンネル『ゲロッパうどんのSF考察教室』の『視聴者の質問に答えてみた』より引用

 

 

Q:一番好きなSFキャラは何ですか?

A:ドラちゃんでござるな。ドラちゃんの兄貴分、保護者役の姿が好きでござる。

 

 でも映画は『帰ってきた〜』が一番でござるな。のびちゃんのあの戦いと、別れの姿は非常に心打たれる物があるでござる。

 安心して帰れないんだ! の所は、未だに涙抜きでは見られないでござる。

 

 登場する秘密道具もまたよいでござるな! ウソが本当になるから、最後の反転した台詞がまた想像力を膨らませるのがまた!

 

 

◇◆◇◆

 

 

――マーベラーの操縦席にて。

 

 

二十平方メートルのコクピットの中、ミナカは操縦席に座りながら膝に分厚く印刷された紙のマニュアルを置いて、周囲の機器を手早く操作していく。

配信は開いていた。ひとえに、ドヴェル=スタイン避けである。

コーグを発ち重力圏から外れた直後、彼女はワープ機能を使う事にする。

 

「と、言う訳でここでちょっとのインターバルとなります! インターバルの後にはいよいよ、お兄様がレーゾスの大地に立つ! ビックリするくらいの冒険と戦闘が待ってるので、絶対見てくださいね!」

”おー、待ってるわー”

”きーつけてなー”

 

ワープ中は基本的にあらゆる通信が途絶されるので、一先ず配信を区切ると勝利の美酒気分でミナカはタンブラーを手に取るとコーヒーを一口啜る。火傷しそうな程熱い。

 

「いやぁー、お兄様様々ですよ。たかだか宇宙船の試運転だけでそこそこの同接稼げるんですから……今回の配信はひょっとしたらランキング一位だって、夢じゃないかもしれません!」

 

そこでレオパルドンはおもむろに腕を組み、しばし考える素振りを見せた。

 

「……どうしてミナカ殿は、ランキング一位を目指すのでござるか?」

「ファ!? どうしたんです急に?」

「いえ、そう言えば拙者帰る事ばかり考えていて、ミナカ殿とこうした話をしていなかったでござるからな……」

 

レオパルドンの後頭部の白いコードが、?マークを作る。

そこでミナカも思い出すと、確かにレオパルドンとこういう事を話した事は無かった。

 

「拙者、イマイチこの配信社会の世界観を、未だに呑み込めていなくて。配信冒険者ランキングとは、そんなに欲しい物でござるか?」

「えぇ、喉から手が出る程……一位になれば、凄い名誉が手に入る。誰にもバカにされる事なんてなくなる」

 

ためらっては――言葉に詰まってはいけない。直感でミナカはそう思った。

混ぜ物はしない。使える真実を加工し、受け入れやすいようにする。

 

「一位のいい所はみんな見てくれる所、切られないんです。誰も見てくれないチャンネルは、切り捨てられて死ぬだけなんです」

 

これだけは本当。後は加工する。

ウィザードへの憧れは削る。ノイズになる。

パパの件、ママの件も削る。これもノイズになりかねない。寂しさを悟られてはいけない。

大事なのは強く自立した女に見せる事。

そして次の工程はバラバラの願いを、一つにまとめる。問題の集約化だ。

 

「そう一位になればお金も幸せも、全てが手に入るんです。だって――」

 

言葉に思わず感情が滲む。そうだ、一位になれば何もかも手に入る。全てが報われるのだ。

ミナカは自然と窓の外を見る。

視線を誘導して行うのは、ヴィジョンの提示だ。未来への展望、広がる全てがお前の物だと思わせる為。

 

「――だって、この宇宙の隅から隅まで張られたネットの、配信者の一位。銀河で一番強くて面白い人。その景色って、凄く良いと思うんですよ……ワガハイはお兄様と一緒ならその景色を見る事が出来ると思うんです」

 

気づくと、レオパルドンは静かに話を聞いてくれていた。

上々の反応だとミナカは思った。

そこでこほんと一度咳払いをする。緩みかかった心を引き締める。感情的になってはいけない、感情は劇薬だから。

 

「ワガハイは、多分配信冒険者としてはそこそこ止まりでしょう。でも、お兄様ならきっとなれると思うんです。見てください、後ちょっとなんです」

 

そこでミナカはニューロsynCの黒い縁を右手でこすると、Bluetooth接続で正面の窓にネットの検索が浮かぶ。それは配信冒険者ギルドがリアルタイムで統計している、配信冒険者ランキング。

真っ白いページ、そこに表示されたレオパルドンは三位。

 

「……本当に拙者なら、なれるでござろうか?」

「ワガハイが知る限り、一番可能性があるのはお兄様です」

「なるほど……ミナカ殿の言い分は、分かったでござるよ。ありがとうでござる」

 

少し喋りすぎたか、いや説得にしてはくどかったかもしれないな……そう思いながらミナカはもう一度タンブラーのコーヒーを一口啜ろうとする。

 

「時にミナカ殿。今の言葉何%ぐらい嘘が入ってるでござるか?」

「ンアッ!? なんです、その急な入りは!?」

 

口を付ける寸前、レオパルドンのその言葉に一瞬タンブラーを落としそうになった。

 

「ミナカ殿は口が上手いでござるからな。少し気になったでござるよ……何せ分の悪い賭けが好きだなんて大嘘かました後でござるからな」

「ワガハイ、正直者村生まれのギャンブラーですよ! 狂気の沙汰ほど面白いでしょう! それに、こんな時に嘘は入れませんよ!」

 

咄嗟につまらない冗談で誤魔化す。心に残る苦い物を、コーヒーで上書きした。

さっきまで火傷しそうな程熱かったのが、今は適温になっていた。

 

「ンアーッ! ウカウカしてたら、もうこんな時間ですよお兄様! 幾らワープが有るからって、視聴者様のポップコーン脳はもう限界寸前です!」

「そうでござるな! さて、そしたらワープと行くでござる! ……時に、ワープの時はやっぱりワープ!って言うでござるか?」

「言いませんよ。どこのローカルルールですか?」

 

そうしてひと段落が付いた時、いよいよミナカ達はワープに移った。

 

「それじゃ行くでござるよ! ワープ!」

「わ、ワープ!」

 

リアクターに集められたタキオンが急速に船体を包み込むと、マーベラーから物理法則が剥離され時空のただなかに突っ込む。

ふっと、一瞬機内の音が飛ぶ。音のスペクトルが時空間の位相を違えた事で遠くなったのだ。

そしてミナカの赤と青が向けられるのが、現実世界用の速度計ではなく、ワープ用の速度計に変わる。

 

窓に映る光景は、スライドするように流れていく。

 

コーグ周辺宙域からレーゾスまでは、約二十パーセク=約六十五光年。

光で六十五年かかる距離を、ミナカ達は僅か数分で駆け抜ける。

音が戻ったその時、丁度青い星レーゾスが姿を見せていた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

――YouTubuチャンネル『ゲロッパうどんのSF考察教室』の『視聴者の質問に答えてみた』より引用

 

Q:嫌いな物は何ですか?

A:楽しくない嘘と、陰で何かをしてる人が嫌いでござる。楽しい嘘は大好きでござるが、人を傷つけるのはあまり好きじゃないでござるよ。

 

 昔、工場で働いてる時。お金を盗んだ疑いをかけられたでござるよ。

 上司に詰められたものの、幸いにもスグに疑いは晴れたでござる。犯人は何時もニコニコ顔で接してくれていた人でござった。

 

 聞くところによれば、陰で拙者の悪口を言っていたらしいでござる。

 まぁ、当時の上司は平謝りしてくれたでござるが、もういたくないと思ってすぐ辞めて今の職場に再就職したのでござるよね。

 

 あ、今ちょっと思い返して怒りが……あの女(憤怒)

 

 

◇◆◇◆

 

 

――マーベラーの内部にて。

 

 

位相を超えた後、ミナカはレーゾスの星域でスラスターのクールダウンも兼ねてゆるゆるとマーベラーを走らせていた。操縦桿を握る中、ミナカは高級車はイマイチ扱いづらいなと思っていた。

船の正面、左側には全周囲外部カメラのリアルタイム映像が映っている。

その背後には、今まさに巨神兵=モルディッギアンが荒涼とした衛星の上にまるで世界を滅ぼす数日間初日かのように両足で立っていた。

 

今からこいつの筒先の前で配信をやるかと思うと、胃に重たいものが落ちる感覚が走った。

だが、やるしかないと思い直してミナカは黒いリボン――ニューロsynCに触れると、通話機能をオンにしてレオパルドンに話しかけた。

 

「それじゃ、お兄様着陸に入りますよー! シートベルトを着用して下さい! しばらくネットも使えなくなります!」

《オッケーでござるよ、ミナカ殿! スレも消しとくでござる!》

 

コクピットに備え付けられたスピーカーから聞こえるのはレオパルドンの声。

彼は既にいない。パイセンが加えたフィールド・モジュレーターの改良点の確認と装着の為、既に別室=第一カーゴに移っていた。

 

《拙者、このシチュ好きなんでござるよね。――ミナカ殿、ジミ・ヘンドリックスの『ブゥードゥー・チャイルド』をリクエストしてもよいでござるか?》

 

相変わらず、よく解らない事を言っている……とミナカはそう思う。

けれど、今はいつもよりかは受け流せる気がした。むしろ、普段と変わらないレオパルドンの様子に何処かホッとしていた。

 

「はいはい、お兄様。いい子にして下さいね」

《――》

 

レオパルドンの鼻歌が聞こえる中、ミナカは操作盤に指を走らせた。

レーゾスの衛星軌道に入る為、スラスターの出力を一段落とす。既にキャストリルの剣帯の索敵範囲内である。

船体外部のカメラが丁度、数キロ離れたところに存在する剣帯の本体が一度青く輝くところを映した。

刹那、ミナカの視界とスマホそれぞれに白い文字。

 

 

〈ALERT!/OLMSTEAD DOMAIN〉

〈PASS ID:276653/AUTHORIZER: CASTRIL QUOSTI OLMSTEAD.ADC〉

〈PASSAGE CLEARED〉

 

 

表示されるメッセージ、通行オッケーという事だとミナカは理解した。

 

「はてさて、ここは編集で緊迫した音楽を入れときましょうか。さて、AIちゃんにこれは任せ……現地情報!」

 

今まで取った動画をスマホにぶち込んだ後、AIに編集を任せる。そしてミナカは視界にキャストリルから渡された観測衛星から送られる、レーゾスの最新データを開いた。

惑星に着陸する時に見るのは、大気、危険な生物の有無、地形や環境など。

――惑星レーゾスは、帝国の管理が行き届かないアウター・ワールドに属する。

未開の地であるそこの情報を、ミナカは一度確認する。

 

 

〈TERRAFORM DATA:PLANET RAYZOS〉

〈AD.XIAL TILT: 18.7°〉

〈AD.ROTATION PERIOD: 27.0 h〉

〈AD.ORBITAL PERIOD: 412 d〉

〈AD.SURFACE GRAVITY: 0.96 G〉

〈AD.SOLAR IRRADIANCE: 1180 W/m²〉

〈AD.ATMOSPHERE⇒〉

〈N2:78% / O2:21% / Ar:0.9% / CO2:0.04%〉

 

 

各数値は、人類の生存に適した環境であった。

ここら辺のテラフォーミングの手腕は流石お貴族様だな、とミナカは思った。

 

「お兄様、今回の着陸は荒っぽいカース・フォール式で行きますからね! いつも以上に揺れますよー!」

《了解でござる。しかしカースとは、もしやして鷹のカースではござらんか?》

 

金のかかった惑星に向けて、ミナカは磁気嵐が渦巻くレーゾスの大気にマーベラーを突っ込ませた。

 

 

――――。

――。

 

 

磁気嵐が呼び寄せた鉛色の雲を突き抜けて、赤く輝く信号弾を出した後。ミナカが着陸したのは小高い山の上。

着陸まで五十メートルを切ったところで着陸用のスラスターを吹かし、円盤の裏の着陸脚を六脚展開する。

油圧式の着陸脚はスムーズに展開した。

同時に現地生物避けの超音波トラップを船を取り囲む八方に展開。内部の動体センサーが感知すれば、超音波を発生させ動物を近寄らせないという物だ。

 

「ほーれほれ。行きますよー」

 

作り出した安全地帯にミナカはゆっくりと船を降ろす。

同時にマーベラーの上部。丁度天井に当たる部分に格納されたアンテナを展開。

折りたたまれた全長六十センチ程のアンテナがマーベラーの船窓左側に展開すると、ミナカの視界に黄色い文字が走る。

 

 

〈CONNECTED〉

〈…〉

〈ALERT!/GALAXY LIVE LINK:CONNECTION IS UNSTABLE⇒CAUSE:MAGNETIC STORM〉

〈RE CONNECTED:OLMSTED SATELLITE №79‐185762〉

 

 

接続は上手く行った。流石は貴族の金に飽かせた軍用回線だと思った。これならちょっとやそっとの磁気嵐でも、難なく配信が出来るだろう。

スマホのベル音が鳴る。マーベラーの外部カメラを右の船窓に映すと、灰色の球体型の哨戒ドローン達がこの船の周囲を飛んでいた。

着地の際の一度大きな揺れが収まり、それを見て、ミナカはようやく一息を着く。

スマホの時計を見ると配信再開まで後一時間、あまり時間は無いがコーヒーの一つぐらいは飲みたい所であると思った。

だが、その前に……とそう思いながらミナカは切れてたBluetoothを再度接続して艦内スピーカーでレオパルドンに声をかける。

 

「はい、着きましたよー。お兄様」

 

そこでタンブラーを手に持つと、途端床に茶色い染みが出来ていた。

よく見るとタンブラーの底にはヒビが入り、そこからコーヒーが滲むように漏れていた。

 

「あー、もう最悪!」

 

とりあえずジャケットから取り出したガムテープでタンブラーのヒビを埋める。その後、ポケットティッシュで染みを拭いた。

その時、船を揺るがす大きな衝撃が一つ。生理的な反応からミナカはその赤と青の瞳を、外部カメラのモニターに向けた。

黒い鱗の海が一瞬映る。

 

「――って、なんじゃありゃああああああ!?」

 

船体右側のカメラに映るのは全長十三メートル程の巨大なミミズだった。口に当たる部分はぽっかり穴が開いており、その周囲には円を描くように無数の触手が蠢いている。

ミナカは思わずそのグロテスクな姿をカメラ機能で撮影し、ネットに繋げて検索する。

検索結果は即座に出た。

 

 

〈DATA:メタルワーム〉

惑星レーゾスに広く分布する金属を融解し捕食するミミズ。体内に酸を貯蔵しており、通常船舶で周囲に近づく際は注意が必要。

 

対応:

 ・専用殺虫剤を使用する。

 ・以下の合金を用いた船舶(主に軍用船など)

 

 

最後までスクロールすると、備考欄には『移動時の伸縮波の出す周波数で中和する為に超音波は効果が著しく低い』と記載されていた。

尚、ブラスターやレーザーなどの攻撃は遠距離でないと酸の被害が出るので控えるようにとも。

……そこで思い出す、こいつの事をすっかり忘れていた事に。

 

 

〈GARGO №1.METAL WORM-LURE:100%〉

 

 

ちらり、とミナカが目を走らせるとメタルワーム用の疑似餌を詰めたカーゴの情報。勿論撒いておらず、ステータスは満タンを意味している。

ミミズは太陽光を嫌う。磁気嵐の影響で曇天が続き、メタルワームの行動が活発になっている事の注意をミナカは今になって思い出していた。

 

「ンアッー! わーすれーてーた! て痛、ファニーボーンぶっけた!」

 

右肘の先端をさすりながら、ミナカは涙目でスマホを走らせて、マーベラー外部のセンサーを確認する。

 

 

〈MARVELER ARMOR:10.6〉

〈ACID Lv:12.4 GCL/pH:-3.1〉

 

 

マーベラーの外部センサーは、機体の素材と計測された酸の数値を分析し、少なくともメタルワーム程度では一切傷が付かない事を示していた。

船は無事である。問題は人である。

カメラで確認出来る限り、周囲に集まったメタルワームは十匹。ミナカにとって、それは酸のタンクが十個ある事を示していた。

 

「やらかした……完全に、完璧に」

 

酸の数値は、軍艦の合金ですら溶解する事を示している。

この数値ではたとえ防護服でもナノマシンが耐えられないだろう。ネットによれば、酸自体は空気で急速に劣化するらしいが、物量で押されてる今それは意味のない情報だ。

 

後一時間で配信再開しようにも、このメタルワームがそれまでに引いてくれるとは思えなかった。

 

ネットで再度メタルワームの事を検索してみると、そこには特徴として『食欲旺盛で、獲物に対する執着心が強い』とあった。ついでにメタルワームの体験談として、三日三晩宇宙船に張り付かれたという記事。

今一番見たくない話だった。

このままでは大量の視聴者が切ってしまう。

 

《ミナカ殿、どうしたでござるか? 外にめっちゃウネウネとした、豪華客船を襲ってパルスライフルぶっ放されそうな感じの物が》

「お兄様、ごめんなさい。やらかしました、こいつら用の疑似餌を撒くの……すっかり忘れてて」

《配信には間に合いそうでござるか?》

「……いえ、このままじゃどうにも……このスーツじゃ、こいつらの酸防げなくて」

 

今更疑似餌を撒いても、メタルワームの習性を考えれば疑似餌なんか目に入らないだろう……そう思うとミナカは声が一オクターブ低くなった。

……一度ミナカは口座を見て、心を落ち着かせようとする。しかし、口座は何とかしてくれそうに無かった。

その時、沈黙がしばし流れる。

 

《ふむ、それはまずいでござるな。視聴者は一分一秒でも早く続きを見たいでござるからな――あいわかったでござる、拙者が何とかするでござるよ》

「お兄様?」

《とりあえず、メタルワームの特徴をまとめたページのリンクを送って欲しいでござるよ。拙者、エイリアンの生態を考察した事もあるでござる》

 

そこでミナカは半信半疑で、言われた通りのページを送る。ついでに酸を飛ばす動画も。

届いて目を通したのであろう、再びしばらくの沈黙が流れた後。

 

《なるほど、体内振動と空気の圧縮振動による共鳴で移動。そして張り付く際に周波数を出して固定と……絵が見えたでござるよ》

「絵?」

《クソデカミミズ系クリーチャーは、以前考察した事があるでござる……最も再生数は稼げなかったでござるが》

「な、何をする気ですか?」

《ミナカ殿。多少の出費は覚悟していただくでござるよ》

 

 

◇◆◇◆

 

 

〈ALL SYSTEMS:CLEAR〉

〈Field Modulator:Active〉

 

 

白い電球が煌々と部屋を照らす。

第一カーゴの中、三メートル大のコンテナの両扉がレオパルドンの前で開く。

電灯が付いた内部には、溶接の跡が残る黒い鋼鉄製のラックに固定されたフィールド・モジュレーター。

コンテナ丸々一個改造した装着用装置。これもパイセンの作品である。

あの子機から生き残った数少ない物の一つだ。

レオパルドンは背を向けると、鎧は彼の背後から殻で覆うように装着し始める。

 

黒いラックに取り付けられた時代を感じさせる黒い液晶には、オルドラウス文字で次々と緑色の文字が浮かび上がっていく。

 

 

〈EX MOUNTED SEQUENCE: COMPLETE〉

〈VARIABLE MACHINE TOOL: OK〉

〈POWER ASSIST: OK〉

〈RADIATORS №1-3: OK〉

〈ANTI GRAVITY ASSIST:OK〉

〈POWER SUPPLY:NORMAL GENERATOR〉

 

〈STREAM LINKED:SWITCHING TO HYDRODYTE Pow〉

 

 

オルドラウス文字は段々読めるようになってきていた。ヴァリアブル加工機、筋力補助、ラジエーターの1から3など様々な項目に異常が無い事が表示されていく。

金属の弾ける音が立て続けに八度。

通常電力で起動したフィールド・モジュレーターを身に纏い、ラックの固定から放たれたレオパルドンはゆっくりと一歩を踏み締める。

動作は、少し鈍い。

だが配信が始まり、イドロダイト出力に切り替われば変わるだろう。

 

「ブゥン!」

 

レオパルドンはいつものように景気づけで叫んだ。

右手を見ると、未だ震えを帯びている。しかし、それを握りしめて押し殺す。

 

……思い出すのは、彼女がキャストリルに啖呵をきってくれた姿。

 

彼女は紛れもない相棒だった。

たとえ、オルドラウス語読めるようになった今になって契約書の内容を把握してる事は――報酬の配分率がおかしかったとしても、彼女のあの言葉だけは本物だと思っている。

そこからレオパルドンは黙々と準備を始める。彼が最初に手にかけたのはカーキ色に塗装された軍用ボックスだった。次にワイヤーの束を手に取ると。

 

「こんな時、どうするか……まずはフレアを解体するところから始めるでござるよ」

 

同時にネットのレビューで高評価を受けてるAIアプリをダウンロードする。アプリを落としてアカウントを作成する傍ら、彼はフィールド・モジュレーターを動かして作業を始めた。

そこで鼻歌を口ずさむ。曲は平成のマイナーな特撮、お気に入りの『機光忍メタルグレイダー』のオープニング、『鋼は今でも立てられるか?』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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