死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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17話 それはおばけより恐ろしく

 

――北端にある螺旋階段に到達したミナカ達は、死んだハルハルと同じように下に降りる。

 

 

”なんか、お化けとかでそう(小並感)”

”ハルハルとかでそう(直球)”

 

ぼんやりとミナカのドローンのライトがその階段に立ち込める闇を照らす。

シンプルな手すりも何もない石造りの階段。両壁や天井、そして階段に目を凝らすと銀色の線が何本も走ってるのが見えた――ダンジョン化現象による補強だ。

 

「ここ、滑りやすいでござる。気を付けてくだされ、ミナカ殿」

 

補強された花崗岩で出来たその一段を下に降りる度、徐々に視界が灰色に霞み始める。ミナカは自分達が徐々に酸性ガスの中に突っ込んでいくのを肌で感じた。

レオパルドンは自重で床をいたずらに崩落させない為、反重力機能をオンにしている。足音はせず、滑るように降りていく。

 

”レオパルドンわかりやすいなー”

 

灰色のガスの中。レオパルドンが纏うエネルギーの白い靄は、くっきりと輪郭を帯びている。

彼の煙はけしてガスに混ざる事はなく、先行するレオパルドンの歩みを頼りにミナカは一歩ずつ確かに階段を降りて行った。

そして最後の一段を降り、崩れた鉄のドアを潜ると……二層に辿り着く。

 

地下一階の割に天井は高い。見上げると、レオパルドンの背すら超えている……大体四メートルぐらいかと彼女は見積もった。

 

煙幕のように濛々と立ち込める灰色のガス。しかし、薄っすらと花崗岩で作られた茶色い壁が見える。よく見ると、薄っすらと黄金色の配管が張られており、一か所歪んで捩じ切れてる箇所があった。おそらくはこれがこのガスの出元なのだろうとミナカは思った。

一歩踏み出すと、床は花崗岩と鉄が所々入り乱れていた。

事前に調べた情報では、ここはかつてレーゾスに人がいた時代に作られた宗教施設だったらしい。環境変動と生態系の変動で人がいなくなったとか。

 

一度遺跡が震える。

 

《ンアーッ! 急な地震!》

 

足を滑らせかけたミナカを、レオパルドンは咄嗟に手を差し伸べて――腹を持つ事で支える。危うく滑落せずに済むと。

 

「拙者、ちょっとこのガスの濃度を測ってみるでござるよ」

 

レオパルドンが右腰のアーマーが縦に割れ、中から現れたアナライズガンの引鉄を左手で引く。

 

 

〈ANALYZE GUN:ACTIVE〉

(TOX GAS:8,400ppm)

〈ALERT!:ACID LEVEL CRITICAL〉

 

 

地下に潜った為、磁気嵐の影響が免れたらしい。今回は正常に表示されていた。

表示される文字を見て、ミナカは自然と呟いた。もしこんな所でヘルメットが割れたら一大事だな、と。

ハルハルの配信ではカーボンファイバー製のトラップが至る所に仕掛けているという。この防護服はそれを見越して防刃性能の高い物を選んだので、一応大丈夫だと思うが……そう思案した直後。

 

右足から感覚が無くなる。瞬間、胴の半分までミナカの体が床に沈み込んだ。

 

”ふぁ!?”

”大丈夫か、クズ!?”

 

「ミナカ殿! 大丈夫でござるか!?」

《ファーッ!? なんですか、これ!?》

「拙者の手に掴まるでござるよ!」

 

レオパルドンが即座に膝を折って、剣を放り捨てた右手を差し伸ばす。それにしがみ付き、引き上げられる形で何とか再び岩の床に這いつくばる。

一息つき、止まりかけた呼吸を整えた後ミナカはそこら辺に転がっていた石を床の奈落に投げ込む。落下音は遠く、数拍置いてようやく乾いた着弾音が響いた。

その事実に背筋に冷たい物が走る中、傍らのレオパルドンは左手のアナライズガンを向ける。

 

「どうやら床が腐食したみたいでござるな……ハルハル殿の時と比べてガスの酸性度が上がってるようでござる」

《肝が冷えるかと思いました!》

 

配信画面を見ると、白いコメントには彼女を気遣う声が八割。残りの二割は、誹謗中傷や面白がったコメントだ。

丁度、画面に『あそこで死ねばよかったのに……』というコメントが流れた時だ。

 

響いたのは乾いた炸裂音。クラッカーの物だとミナカ思った直後、画面に白い点が円を描くように現れる。

そして即座に暗転。

 

 

〈WARNING!:SERIOUS COMMUNICATION FAILURE〉

〈RE TRYING⇒ERROR〉

 

〈LIVE STREAM ⇒ ARCHIVE:CONNECTED〉

 

 

惑星ジャ=クーでレオパルドンと初めて会った時と同じ、ライブ配信が接続エラーによって録画に切り替わる。

ミナカは脊髄反射でニューロsynCに触れてスマホを操作。ネット自体が切れていた。

電源を再起動しても直らない。一体何が原因か、設定を操作して調べてみるが分からない。

 

「これも磁気嵐の影響でござるか?」

 

訝しみながらミナカに尋ねるレオパルドンに白い靄はない。アーカイブに切り替わった瞬間、レオパルドンからエネルギーはぱたりと消えた。

 

《いえ、こうならない為にキャストリルから軍用回線を融通してもらったんです……軍用回線はこんな事じゃヘタらない筈なんですが》

 

ピンクと黄のジャケットからスマホを取り出し、焦れた様子でミナカは設定を弄る。

――一拍、ほんのひと瞬き。

ぱりん、というガラスの爆ぜる軽い音が一つ。

 

ミナカの培養テクタイト製のヘルメットのガラスに亀裂が入った。深々と刻まれたそれは、まるで蜘蛛の巣のように広がっていく。

次いで右肩にかけたブラスターが、まるで小枝のように中間で折れた。

……地面に銀の鉄球の転がる音を残して。

 

 




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