死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

32 / 50
18話1 ハードコア

 

 

 

【意外と】ミナカのぶっっっちぎりダンジョン配信part1033【歌が上手い】

 

 

228:落ちた名無し視聴者

は、落ちたんだけど? また?

 

229:落ちた名無し視聴者

運営君、これは許せる!

 

 

◆◇◆◇

 

 

――レーゾスの二層、濛々と立ち込める酸性ガスの中でガラスにヒビが入る音が鳴り響いた直後。

 

 

透明なガラスの一欠けらが地面に落ちる――

ミナカのヘルメットのバイザーに、蜘蛛の巣のような亀裂が刻まれていた。

 

《あ、え――なにこ……》

 

スピーカーから聞こえるのは、明らかに呼吸の出来ていない彼女の音声。そして引きつったような断続的な呼吸が徐々に漏れ始める。

 

「ミナカ殿!」

 

一拍遅れて、レオパルドンは戦慄と共に悲鳴じみた声を上げた。一体何が起こったのか、把握も出来ていなかった。

ただ本能のまま振り返り、即座に膝を折り地面に倒れたミナカの元に向かった矢先。

 

銃声がレオパルドンの背後から響いた。ブラスターの音じゃない、明らかに火薬を使った物だった。

重たい音は二発。一発目はミナカの白と黒のドローン。一つの弾丸が串刺すように撃ち抜き、黒煙を上げて二つとも地面に転がる。

ワンショット・ツーキルだ。

もう一発はレオパルドンの右手の底――小指の付け根に直撃。吹き飛ぶ事は無かったが、イドロダイトの奥が痺れ、それで握っていた剣を取り零す。

明らかに、これは奇襲だとレオパルドンは思った。

更にど、という音が響く。見ると、そこにはミナカの体を緑色の粘液が覆っていた。

瞠目した瞬間、背後の灰煙が一際大きくうねる。刹那、数メートル先が青く盛り上がった。

 

中から現れたのは、レオパルドンすら覆う青い影。

 

「データ上、貴方にそこに行かれては困るのですよ。レオパルドンさん」

 

その泡立ったような青い両腕がまず先に、次いで巨体が煙の中から現れる。

レオパルドンより五十センチ高い、三メートル程の全身を青で染めた巨大なサイボーグである。

その丸形の頭部と視線が合った。瞬間、全身で振り返った直後のレオパルドンと丁度両手を合わせて取っ組み合う形となる。左手のアナライズガンはそのはずみで、煙の中に転がった。

青い巨体に一瞬レオパルドンは驚き、目を丸くするも即座に心を切り替えて自己紹介をする。

 

「……拙者、配信冒険者をしているレオパルドンと申す者でござる。貴公、ご芳名は?」

「データを鑑みて名乗るのは不要かと」

 

あの時の、マーベラーでのキャストリルの言葉を思い返す。

恐らく、これがドヴェル=スタイン家の者なのだろう。

 

「では、名無し殿。早速でござるが、この両腕を外してミナカ殿の救助を手伝っていただきたい」

「データ的に、それは無理です」

 

もしかしたら、ワンチャンあるのでは無いだろうか。もしかしたら万に一つで手違いという事があるのではないか。そう思って聞いたが駄目だった。

どうやら、自分はこの人間と戦うしかないらしい。

怯える心の中、覚悟を決める。

 

「――ならば、力尽くで行くでござる!」

 

レオパルドンは思いっきり力を込める。

瞬間、青い巨躯の両の掌から肘にかけて亀裂が走った。

 

「――」

 

無表情な顔の奥で、青い巨躯から戦慄の息が漏れる。

体格は上だが、パワーはこちらの方に分がある。そう量ったレオパルドンは、そのまま両手に力を込め砕け散らそうとする。

 

「データ以上のパワーですねッ……ですが」

 

その時、レオパルドンは無意識にネットリンク機能を使用していたのだろう。

一瞬、レオパルドンの視界に赤文字のメッセージが浮かび上がる。

 

 

〈WELCOME〉

〈G.H.O.S.T:ACTIVE〉

 

 

青い巨躯の全身に施されたバイオ膜の中のレンズが一斉に動いた。

怖気が走った一瞬間。僅かな隙を突かれ、タルデの両手がするりとすり抜けた。レオパルドンの腕の関節が一度回転し、左脇から再び青い腕が円を作る。

構図は丁度青い巨躯にアームロックをかけられた態勢となった。

 

「がああああ!」

 

イドロダイトを通して痛みが走る。腕を決められた痛みだ。力を込めて何とか抜け出そうとするも、その瞬間まるで見透かされたように微細な力を加えられて機先を潰される。

 

「無駄です、貴方の動きは全て察知しデータとして電子頭脳で分析しております。どうか諦めて下さい、レオパルドンさん」

「お、おr――」

「我等には交渉の準備があります。その鎧を引き渡してくれれば、即座に外しましょう。彼女の治療も行います――この交渉条件は九十%の成功率であると、データは保証しています」

 

淡々とした言葉にレオパルドンは無性に苛ついた。

それでも痛みを堪え、努めて冷静に分析する。

 

これは、この極め方は間違いなくアレだ。ドラマ版じゃない方、原作版の極め方だ。

 

「があああああ!」

 

まずこの体勢から腕を外す手段は存在しない。

何故なら、これは体幹と肩と肘を一本の軸に固定しているからだ。

逃げる手段は、腕を一本犠牲にする事だけ。

普通なら。しかし、レオパルドンには奥の手がある。パイセンがフィールド・モジュレーターを改良してくれた際に付けた新機能、配信停止下でも一分だけエネルギー付与を使えるシステム。

マーベラーの時に音声は設定してある。

 

「三十秒後、再び交渉をいたしましょう。データがそう言っています」

 

しかし、ダイナモを回そうとしたその瞬間銃声が再び鳴り響く。

銃弾は、今度はミナカが倒れた側――レオパルドンの背後からやって来た。

銃弾が再度準イドロダイトを揺らし、思考が一瞬止まる。その隙を突き、突如天井からもう一体――緑の粘液が彼の頭上に絡みついた。

 

《キキ、そうはさせねぇよ》

 

女の声が響く。性悪そうな、ハスキーな声だ。

もう一体の緑の粘液は意思があるらしい。瞬く間にフィールド・モジュレーターの隙間に入り込み、それは一気に膨れ上がる。感触は柔らかいまるでゴムの塊に漬け込まれたかのよう。

レオパルドンの体の自由が即座に奪われる。

ふと、声のする方を見ると天井には一際大きな銀のボールを抱いた粘液が、まるで雫のように垂れ下がっていた。

 

「いいタイミングです」

《キキ、ツメが甘いな》

 

どうやら、ミナカとこの体に纏わりつく物はあの緑の粘液の何からしい。

手も足も出なかった。ただ溺れるように絡みつく緑の粘液で徐々に窒息していき、思考がカリカリと絡め取られていく。

 

 

◆◇◆◇

 

 

――肺が焼けていた。

 

緑の粘液に首から下を圧迫され、背中から床に押し付けられ。

ジリジリと肺を焼かれ窒息していく感覚を味わいながら、ミナカはそれでも生きる為に頭を回す。

死にたくなかった。こんなとこで、まだ配信ランキング一位になっていないのに死ねる訳がない。……しかし出来るのは、目と鼻の先にあるレオパルドンが落とした剣の柄を見る事だけだ。

緑の粘液は体を締め付け、胸が膨らむ余地すらない。

 

《……こ、ひゅ……》

 

倒れ伏したままミナカはゲルの中から何とか右手を動かす。右手が一番粘液が薄くて、肘のあたりが露出している。逆に左は駄目だ……粘液が分厚くて出す事は出来ない。

ゆっくりとジャケットの中からある物を取ると、右手を真横に出そうとする。

ゴムのような感触で、へばりつく緑の粘液は絡む。

 

《……ひゅ、ひゅ……》

 

ミナカは諦めず試した。

死にたくない、絶対に死にたくなんてない……ただその一心で動かすそれは、四度目で外に出す事が出来た。

右手に握っていたのは、茶色いガムテープ。

それを、まるで蜘蛛の巣が張ったかのような亀裂の入ったヘルメットにくっつける。

その後、医療用ナノマシンを取り出そうとするもどうやら当たり所が悪かったらしい。ブラスターを割られた際、カプセルもほとんど駄目になっていた。

左手で触る限りは、無事なのは一本だけ。

 

《ち……》

 

畜生と、ミナカは思った。

畜生、畜生、畜生。

何をされたのかは分かる。こいつ等は例のヤツ等だ。配信が切れたのもこいつらが原因だろう。

おかしい所は幾つもあった、戦ってない筈のアンドロイドが何故か防御が上がってたり、変な緑色の粘液が付いていたり……けれどまさか、配信を切るなんて暴挙する訳ないと思った。

レオパルドンのスペックを考えれば、課金バフぬきで戦おうなんて思わないから。

………………多分、キナイの息がかかってる気がする。

 

「があああああ!」

 

レオパルドンの絶叫が焦燥を駆り立て、ふわふわとした思考を確たるものにする。

その時、灰色の煙の中。指先に一つの物が触れる。

目を凝らして映るのは銀。アナライズガンだ。

 

どうやら先程弾き飛ばされた物が、丁度ここに転がっていたらしい。無我夢中でそれに指を伸ばし、少しずつ寄せた後手に取って掴む。

殆ど脊髄反射の行動だった。

 

「があああああ!」

 

――お兄様を助けなきゃ!

――でも、どうするべきだ!?

恐らく、今目の前のヤツ以外にいるとしたら三人。

あのバカでかいヤツと、緑のゲル。そしてそれ以外の遠方からパンパン撃ってるヤツだ。

撤退しようにも、退却ルートを見極めなければ後ろから撃たれて終わりだ。

 

……先程あの喋る緑の粘液が落ちて来る直前は、弾丸は背後から来た。

……更にあのバカでかいヤツの動き、あの一挙手一投足を見抜く動き。

……そして自分の体を縛るこの粘液! 一匹いるって事は数匹いてもおかしくない!

 

どうすればいいのだ、まず何をすればいい……そう思った時だ。

その時灰色の煙の中で煌めく物が一つ。それは地面を転がるドローンカメラだった。丁度球体の中央には、敵の弾丸がめり込んでいる。

ミナカは肺を焼かれながら、握ったアナライズガンを咄嗟に向けた。

 

 

〈ANALYZE GUN:ACTIVE〉

〈SCAN:FLIGHT UNIT OFFLINE / CAMERA MODULE ACTIVE〉

〈SCAN:BULLET / SIZE:7.62㎜ / AUX:BLUETOOTH LINK CONFIRMED=NEURAL CORE INTERFACE TRACE〉

 

 

視界に飛び込むスキャン結果。破壊されたのは飛行部分でカメラは生きていた。

弾丸にはBluetoothが仕込まれ、更にそれは電子頭脳とリンクして軌道を変える仕組みになっている。

なら、まずはパンパン撃ってるヤツがどこから来てるのかを突き止める。

ミナカはむせ返りながら、自分のヘルメットの上にある脳波コントローラーのリボンを撫でた。

 

《――ッ、――ッ! ッ!》

 

その際、思わず胸を上げたからだろう。ヘルメットを鼻と口から漏れた血が染める。危うく自分のゲロで窒息しかけた。

それを根性で何とか耐えて、探るのは映像データ。コマ送りにして弾丸が当たるまでの間の映像を引っ張り出す。

 

こんな時だけ運は良いらしい。見つけたのは一点、丁度弾丸が壁を跳ねた瞬間だ。僅かコンマ0.0001秒の一瞬間。

これを解析アプリにかける。炎上した際に使う物で、元は写真から位置情報を探る為の物だ。これをカスタムモードで条件を追加していく。

北東――真正面から、約三十五メートルと出た。

射線を崩せば、まず射撃は潰せる。

 

血の混じった咳を溢す度、脳に酸素が行かず判断が遅くなりかける。明滅する視界の中、それでも生きる為にもがいてあがく。

 

残り二体。次はあの青くてデカいの。

……ミナカの炎上マーケティングで培った視線誘導感覚が告げている。

あの体を覆うのはカメラだ。

カメラで一挙手一投足を観察し、レオパルドンの隙を突いてアームロックを賭けたのだろう。おそらく、生身の脳では情報処理が追い付かない。

あれだけ巨大な理由は、電子頭脳を数台積んでるのだろう。多分、ハッキングを仕掛けて誤作動させようとも金のかかった高度な防壁で弾かれるに違いない。

 

レオパルドンは攻撃を喰らった瞬間、一拍遅れる弱点を持っている。相性は最悪に近い。

考えを巡らせる中。突如、焼けた肺から空気が一気に抜けた。

ミナカを覆う緑の粘液が急速に収縮し始めていた。右手には徐々に、まるで植物が根を張るように粘液が伸びていく。

 

まずい、このままじゃまた何も出来なくなる!

どうすればいい!

何かないのかと思いログを探ると、そこに現れたのは赤いメッセージ。

 

WELCOME

G.H.O.S.T:ACTIVE

 

恐らく、苦しみで悶えて目を瞑った瞬間があったから見逃したのだろう。G.H.O.S.Tのは聞いた事ある、俗に言う偽課金バフという身体能力を強化する奴だ。

これを使ったからか、とミナカは即座に理解する。

――右手に絡む緑の粘液の量が多く、太くなっていく。

 

《――ッ、あ、ドブカ……スがッ……》

 

もう限界だった。

粘液によって腕があらぬ方向に曲がり、ミナカの手から銃把が滑り落ちる。瞬間、トリガーガードに指が絡んで自分に銃口を向ける形で引鉄が引かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。