死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

4 / 50
2話 誰!? ねぇ、誰なのこの人!?

 

 

〈ALERT!/COMMUNICATION STATUS:UNSTABLE〉

〈…〉

 

〈CHANNEL№21-567898:RE CONNECTED〉

 

 

 

”は?”

”へ?”

”嘘やろ”

”アンドロイド!?”

 

ネットの向こう側。ドローンカメラ越しのコメントが流れ、配信を見る視聴者達の戸惑いが次々伝わってくる。その困惑の白い渦の中、右手でその刃を止めながら、赤い巨体は彼女を守る様にミノタウロスを押し出す。

 

その間、高音と共に薄っすらと白い靄の様な物が赤い彼を覆う。

 

鋼鉄の牛機の腹に右拳がめり込む。

衝撃がミナカの桃色の髪を一房浚い、音は遅れてやって来た。

ミノタウロスの巨体は十メートルも滑空し、軍用機の残骸数台を巻き込みながら吹き飛ぶ。なんとか着地した後も廊下に焼け跡を……やがてタイルを砕きながらめくり上げ、それでようやく止まった。腹には焼け焦げた跡が深々と残っている。

明らかに体格以上のパワーであった。配信画面の端では静かに上がり続ける同接数を刻んでいる。

 

 

〈VIEWERS:101648/Au REACTION LEVEL=HIGH〉

 

 

バズッていた。見事にバズッていた。

しかし歓喜に浸るよりも先に、赤と青の瞳がズレた焦点を合わせるようにぱちくりすると。

 

「誰!? ねぇ、誰なのこの人!? 怖いです!」

 

急に現れたアンドロイドの乱入に、ミナカは頓狂な声を上げる。

ミナカにしてみれば、急に現れたアンドロイドが勝手に戦い始めたようにしか見えなかった。

彼がそんな彼女を一瞥したのと、ミノタウロスが再び斧を振りかざし突撃するのは同時。

一瞬の躊躇い。直後、意を決した様に赤い彼は両腕を交差した後に斧の刃を受け止める。走る重たい衝撃に、装甲が僅かに欠けた。

数秒の膠着状態の後。熱された刃と腕の隙間から火花が散り始める。

 

”なんだ、ありゃ?”

 

そして水が沸点を迎え、やがて零れ出す様な破砕音。

堪えきれなかったのは刃の方だ。ミノタウロスの持ち手から先、分厚いその刃が木っ端微塵に砕け散る。牛機が態勢を崩した直後、右の蹴りを入れると再びの轟音と共に巨体は壁に叩きつけられた。

牛機のクロームの肌がその蹴りで、僅かに剥げる。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!」

 

彼が戦ってる隙に、ようやく我に返ったミナカは四つん這いになりながら逃げ出そうとする。

手放された持ち手が、彼女の顔前に転がった。

 

「ンアーッ!?」

 

情けない声が一つ。出した鼻血を右手で押さえながら、彼女が高速のハイハイで逃げる様が配信画面に映った。

そんな彼女を見て、心無いコメントが矢継ぎ早に飛ぶ。

 

”逃げんな!”

”逃げるなぁあああ、配信から逃げるなぁあああ!”

”もっとアイツ映せよ!”

 

「うるさいですね! 逃げるに決まってるでしょうが!? 大事なのは損をしない、それが配信者の掟ですよ!」

 

”もっと見せろYO!”

”何の為に配信してるの?”

 

「死ねと!?」

 

”でも、お前同接見てみろよ。めっちゃバズってるぞ?”

 

そこでミナカは再びカウンターを見る様が映る。

 

 

〈VIEWERS:421578/Au REACTION LEVEL=HIGH〉

 

 

……同時接続視聴者数は、既に四十万を超えかけていた。

思わず、鼻血を押さえる手が離れた。

――え、こんなに? なんで?

そう思った直後、まるで心を読んだかの様に視聴者達が答えのコメントを投げた。

 

 

”さっきの電子音あんじゃん? アレ、ネット中に響いたぞ”

”他の配信でもだ”

”このままだったらギャラクシー・ライブリンク中から人来るんじゃないか?”

”SNSじゃ大騒ぎ”

 

そんなやり取りの最中に、同接数は六十五万に達する。口をパクパクしながらミナカは画面を見つめ、そうして再度その赤い彼を見た。

先程より分厚くなった靄を纏った拳を叩きつけるその姿は、宝の山に見える。

 

「……真実を、放送する義務ってありますよね?」

 

こう言いながらも、勿論この後生き残った方が敵になる事も考えている。

青い目で背後を振り返ると、そこには先程の戦いでめくれ上がった床の大穴。その辺に転がっていた鉄板の欠片を投げて、深さを確かめる。二メートルぐらい、と言った所か。

もしもの目星はつけた様子が映る。

 

”なんて澄んだ目だ、きっと心からそう言ってるんだろう”

”エラいぞ!”

”配信者の鑑!”

 

電子音が鳴り響く。課金、課金課金。電子マネーの振り込まれる音が立て続けに響く。

 

「ああ凄い! こんな、新しい宇宙船が買えちゃうぐらい沢山! 絶対映さなきゃ!」

 

鼻血をこすり、そういうとミナカは左右に青と赤を向け、なるべくいいアングルで取れる場所を探す。

その最中、一瞬赤い背中がミナカの視界の端に映ると。

 

”ちょっと待てぃ! さっきからあの白い煙、分厚くなってないか!?”

”確かに、量が変わって威力が上がってるな”

”同接と連動してるんじゃない?”

 

ミナカはほんの一瞬流れたそのコメントを見た。その後に改めてドローンと共に彼の戦いを見返すと。

 

――その時、一際甲高い音が鳴る。

 

「さっきより威力が上がってる、同接に威力が連動してる……って事?」

 

直後、画面が二分割される。現在の画面が左、先程までの録画した物が右。

比較してみると、明らかに彼が纏わり付かせる白い靄がもう靄というより煙の様に分厚い物になっていた。そして一撃はクロームの肌を罅割れさせる。

どういう事? もっと見たい。……そうして挫いた足を引きずりながら、移動しようとするそんな彼女が映ると視聴者の一人が一言。

 

”いや、課金されたんだから援護してやれよ”

 

行動は早かった。その発言をしたものは速攻で彼女にBANされる。

 

「真実っていうのは! 一片の嘘を混ぜたら、ただの出来の悪いフィクションになるんです! ワガハイには、真実を伝える義務がある! …………なんか、文句あります?」

 

”ヴェッ、マリモ!”

”この女”

”貴方って最低のクズだわ!”

 

その時である。彼女が視聴者とやり取りをしていたその背後から、激しいクロームを叩く音が響く。

兵器郡を盛大に巻き込みながら、二体は激しくぶつかり合った。

ドローンがそのレンズを向けると、赤い彼は両拳でミノタウロスの肌を叩いていた。だが、先程吹き飛ばされた時と違い、クロームの肌に残る傷跡は明らかに微々たる物となっている。

 

”耐性付いたか……”

”知ってるのかライ=デン”

”↑一部のレベル高めのエネミーって、一度攻撃喰らうとナノマシンが威力を分析して二回目以降は耐性を付けるのよね。出力も上がる”

 

たまらず声を上げたのはミナカである。

 

「ちょ、ちょ、冗談じゃ! アイツが負けたら、またこっちに来るじゃないですか!?」

 

その声が聞こえたのだろうか、カメラを向けられた赤い彼も攻めあぐねる素振りが映る。直後、顔の液晶モニターに先程の青白い線ではなく、赤い線が走った。

丁度近くにあった残骸の右翼から出る鉄パイプを握ると――それを思いっきり引き千切った。配線やホースの絡んだそれは、一メートル程の長さの武器となる。

 

”力強……”

”軍用機って、あんな柔らかかったっけ?”

 

その先端から、先程から彼を包む白い煙が絡んでく。一瞬、固唾を飲んだ様に硬直する中。先程の戦いの影響で屋根から落ちてきた瓦礫――砂粒程のブロック片――が鉄パイプ目掛けて落ちる。

普通なら鉄パイプの上に乗るか、それとも滑り落ちるだけの筈だ。

 

”粉塵が渦巻いてんだけど……”

”……闘気的なやつ?”

 

ブロック片は、まるで旋風の様に鉄パイプの周囲を渦巻いていた。誰もこの様な状況見た事がなかった。

 

”なに、あれ?”

 

その問いの答えはミナカの配信画面に現れた。ばちり、という短い悲鳴の様な音。そして、その後に本物の悲鳴。

 

「な、なんでワガハイのウォレットからお金が引かれてるんですか!?」

 

スパチャで稼いだ額が、独りでに目減りしていく。対して、赤い彼の持ったパイプに白い光が静脈の様に走る。

異常を察したミノタウロスは、一度右足で床を撫でると右肩を出す様に――突進の姿勢で駆けた。

対し、赤い彼はパイプを思いっきり叩きつける。

間近で、爆弾が炸裂したかの様な衝撃。音が爆ぜ、薄い粉塵が巻き起こり、その余りの威力に一瞬ミナカは耳を塞いだ。

彼女が恐る恐る、その赤と青を開けると牛機がパイプを叩きつけられた部分。胸の当たりは大きくひしゃげていた。クロームの肌には黒く焦げた跡すら残り、それは明らかに膂力以上の威力であった。

 

”嘘お!”

”マジでなんなんだ!?”

 

悲鳴の様な電子音を上げ、怯むミノタウロスに赤い彼は二撃目を……まるで雄叫びを上げ、電光石火の一撃を放つ様に叩き込む。

パイプからは旋風の様な白い靄は消え、体の白い煙も今は表面を薄っすらと覆うだけに量が減っていた。

――砕け散る音。

 

”折れたぁあああああああああ!?”

 

鉄パイプが中央から砕けて折れる。まるでガラスか何かの様に。

騒然としたコメントが流れる中、ミナカは目の前の彼とウォレットの残高を交互に見比べた。

 

「待てよ、待って待って……あの白いので威力が上がる」

 

その時、ミナカの視線をドローンカメラが追う。

……その赤い体が吹き飛ばされ、左肩で床を抉りながら滑空した直後、壁に叩きつけられ破片を撒き散らす。壁を構成する鉄板や、骨組みとなった鉄骨や配線が何本も露に。同じく床を走る配管も。

赤い彼はなんとか立ち上がり、自分の周囲に散らばる軍用機の破片を無理矢理引きちぎると、鋭く尖ったそれを右手に持つ。そうして再度突進し、組み敷いてくるミノタウロスに叩きつけるが少しの傷しか付かない。

 

「で、配信中の同接数であのエネルギーが変化する」

 

ミナカは自分の推測を口に出しながら、仮説を組み立てていく。

 

”頭の働きいいな、クズ”

”↑コイツ、悪知恵は回る”

 

「で、課金すると更に出力が上がる……まとめれば、同接が増えると使えるエネルギーが増える! で、課金をする事でワガハイ達みたいにバフを載せる事ができる……って事!?」

 

赤と青の瞳が一段大きく見開く。

 

「課金です! スパチャして下さい視聴者様! そうしたらアイツ強化されるみたい! 多分、あの白い奴がエネルギーで課金でバフが載るんです!」

 

”だってよ、クズ……(お前の)金が!!!!”

 

「同接も金も、数字は絶対裏切らないんです! ワガハイは人もアンドロイドも裏切るけど、数字だけは絶対裏切らない!」

 

”それは確かに”

”うん、お前はそういう奴だよ”

 

「さぁ、早くコメントを! アイツを強化して強化して、ぶっ倒させるんですよ! こんなおいしい状況、逃してたまるもんですか!」

 

”いや、お前さっき真実曲げない言うたやん”

 

「るせー! 課金と同接こそが真実なんだよ! 約束してないからノーカン! はい約束破ってない!」

 

そう言うと、課金を知らせる電子音が再び立て続けに鳴り響いた。

 

 

〈VIEWERS:702256/Au REACTION LEVEL=HIGH〉

 

 

ミナカは、更に少しでもいい画角で赤い彼の活躍を取れる位置に再び移動する。

その間に金は次々にミナカの財布に流れ込み、彼の力が増強されていく。牛機の猛攻を紙一重で躱すと、振り上げられた右拳をその場の壁を力づくで引き剥がしエネルギーを流して盾にする。

金属の壁板がゴムの様に跳ねた。衝撃から右拳が大きく後ろに逸れ、態勢が崩れた。

その隙を突き、赤い彼は左拳に白い靄を絡めさせた――瞬間白熱化した拳が牛機にめり込みクロームを黒く焦がす。

 

彼の一挙手一投で、観客は大いに湧く。

もっと。もっと。

もっと見せたら、皆もっと喜ぶ。

その思いだけでミナカが手繰り寄せた位置は、彼の右横。ドローンを動かし、背後の前の両方を撮れる。

 

”じゃ、じゃあ少額だけど”

 ……

”給料一か月分”

 ……

”がんばえー!”

 ……

 

大量のコメントと、様々な額の――子供のお菓子を買う額から、一般会社員の給料一か月分まで――課金コメントが流れ、即座に掻き消えた。

白い靄――エネルギーが再び彼と対敵に突きつけた破片を覆う。瞬間、彼は右足を前に出すと思いっきり牛機を吹き飛ばして距離を離す。

直後。彼はつぶさにそれを観察した後、息を呑む間を開け、得物を腰だめに構えると尖った切っ先を向けて走る。

先程少しの傷しか付かなかった破片は、今度は牛機の分厚い胸に突き刺さる。

そのまま渾身の力で破片を下に下げると、異音を立ててミノタウロスの胸の装甲は右斜めに剥がれ地面に転がる。胸の中央から赤い輝きが一度漏れ――直径六十ミリ程の赤いガラス玉のような物が露見していた。

瞬間、得物は破砕。

 

「ああ、惜しい! でもコアが! アレ潰せば!」

 

”コア見えた!”

”潰せ!”

”勝てる、勝てるぞ!”

 

EXコア。

配信冒険者がダンジョンを潜る理由の一つであり、ダンジョンに出没するエネミー達の心臓。これを破壊すればエネミーは全て停止する。

しかし、ここで赤い彼の様子が強張る。

周囲には、もう鍛造出来るガラクタが無くなっていた。軍用機はピンボールの様に叩き合った為に、手の届かない距離に離れていた。

 

「え、あ?」

 

ミナカの熱狂が一気に醒めた。途端、ミノタウロスは一瞬の内に背後に跳躍。そうして再度突進姿勢を取りながら、ねめつける様に横に歩きながら好位置を探り出す。

赤い彼もまた両腕を構え、ミノタウロスから目を離さない。

ミノタウロスの歩みが止まる。その位置は、丁度ミナカの直線上に位置していた。

 

 

まずい。

非常にまずい。

もしここでこの赤い奴が負ける事になれば、今度こそ次の矛先が自分に向いてしまう。

しかもよりにもよって自分の直線上、自分が巻き込まれる可能性だってある。

武器……何か武器は。

 

 

ミナカは赤と青のオッドアイを左右に向けるが、もうめぼしい材料は何一つ――ペンペン草一本も残っていない。

……と、そこで目が大きく見開く。

 

 

でも、これは……と躊躇いを含んだ沈黙が生まれる。

答えを求める様にミナカは一度配信画面に赤い目を向けた。コメント欄は、一体どうなってしまうのか……と、固唾を呑む物で埋め尽くされていた。

 

 

――周囲の状況、そしてネットの反響はミナカにこう告げていた。

つまり、逆転すればこの状況は非常においしい、と。

でも、これはこの判断は……本当に正しいのだろうか。

 

 

そんなミナカの前で一つ変化が起きる。

一度彼が振り返り、自分の横にミナカがいる事を確認する。

そこで彼は両腕を横に伸ばした。それはこれ以上は通さないと、迫り来るミノタウロスに勇気を示す様に見えた。

 

”おおおおおおおお!”

”まさか、こいつ……”

”お前、最初からこいつを守る為に戦っていたのか?”

 

――その時、同接者数は百万人を突破した。

渋面の末、意を決した彼女は涙と鼻血をピンクの袖で拭う。

 

 

個人としては損だ。でも、こうして守ってくれるなら話は別だ。わたしだって人間だし、見殺しは胸糞が悪い。

それに。

言葉も信じない、行動も信じない、人間も神様も信じない。だけど数字だけはけして裏切らない。今、ここでこれをすれば……こうすれば非常に配信として美味しい!

それだけは、信じられる。ミナカはそう確信していた。

 

 

ミナカは意を決した表情を浮かべると、手元にあったそれを力いっぱい彼に投げる。

弧を描くそれは、愛用のブラスターであった。

 

「それを、それを使って!」

 

こくりと彼は頷くと、ブラスターを右手で掴む。しかし、ここで一つ誤算があった。

躊躇う様な間。ミナカも、ん? という違和感を感じた顔を浮かべた。

流れるコメントがそれを言い表した。

 

”なぁ、ひょっとしてだけど……使い方分かんないんじゃない?”

 

「……うそーん」

 

瞬間、ミノタウロスが疾駆する。

 

「……」

 

ブラスターを構え、引鉄を引こうとするも安全装置がかかってる。

 

「……」

 

”やっぱりぃぃぃぃぃぃ!”

”そんな事ある!? 学生でも撃った奴いるぞ!?”

”INT足りなかったかぁ”

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”、嘘だああああああああ!」

 

コメントの諦めとミナカの絶叫が響く。

その間に疾駆が最高速度に変わった。

 

「……」

 

彼はと言えばくるりと、手の中で銃を回転させる。そうして逆さにし、銃身を掴んで振り上げるとエネルギーがブラスターに走った。

瞬間、銃が倍以上に膨れ上がる。バッテリーが過充電により膨れ上がった様に。

ミノタウロスの右腕が上がる。それを頭を屈め紙一重に躱すと同時、それを胸に思いっきり叩き込んだ。

――閃光。

光が弾け、炎が爆ぜ、百万と一つの目を焼く。

その一撃は、ミノタウロスのEXコアに見事直撃。紅蓮の炎が胸元から牛機を焼き、後には何も残らなかった。

一面の炎の中、上ずった声。

 

「か、勝った? 勝った、勝った?」

 

”やったか?”

”↑フラグ”

 

「ふへ、ふへへ。やったぁあああああああああ! ああああ、良かった。こっちも……いやいやいや、そ、そう! これで今月予約した新しい電マを受け取れます!」

 

”草”

”草”

 

ピンク色のツインテールを揺らしながら、挫いた足の痛みすら吹き飛んだらしい。ミナカの顔は途端大喜びに変わる。

 

 

〈VIEWERS:1161682/Au REACTION LEVEL=HIGH〉

 

 

同接者数百万人。嘘みたいな数字の人間が、嘘みたいな課金を次々にしていく。鳴り響く電子音は、まるでファンファーレの様だった。

がらり、という音が鳴る。

びくん、とそこでミナカが一度大きな身震い。その後、炎をかき分けて現れるのは赤い彼。爆炎で焼かれた筈なのに、その肌には傷一つ付いていない。

くるりと赤い彼は振り向くと、紅蓮の炎をじっと見つめる。

バイザーには揺らめく赤い炎。

その中で、ぽつりと呟いた。

 

「なんでござるかこれ、まるでSFではござらぬか……」

 

ふと、彼の目が不意にある物を映す。それは先程まで死闘を演じたミノタウロスの胸の装甲版。

その磨き抜かれたクロームに映る姿を見て、しばらく凝視した後に一言。

 

「……カラーリングはストロンガー……」

 

そう呟いた時に、コメントの字幕機能が彼のコメントを自動で補正する。最後の言葉は解読不能な程、文字化けしていた。

 

――それを見る数多の目にも気づかずに。

 

 

 

 




ここまで読んで合いそうでしたら、お気に入り・しおりに入れていただけると更新を追いやすいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。