死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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24話2 最終回「さよならレオパルドン」

 

 

――時は少し巻き戻り、ミナカとキャストリルが話し合ってる最中。

 

 

レーゾスの予備遺跡の座標が示したのは東だった。東の常に分厚い砂嵐に隠された砂漠。何もない乾いたその土地、そこがレーゾスの予備遺跡を示していた。

彼の乗るマーベラーが入ると、途端砂嵐はマーベラーを歓迎するように晴れ、レオパルドンの視界の中で新しい青文字が表示された。

 

 

【ゲート構築時間計算】

【算出完了=730:00:00】

 

 

ゲートが完成したらどうすればいいのか、それはもうレオパルドンの頭に直接流れ込んでいた。

ここでレオパルドンにとって誤算だったのは、ゲート構築までに一か月かかるという事だった。一か月である。

幸いにもこの体は食事も睡眠も必要無い。レオパルドンに必要だったのは時間を潰す為の娯楽であった。

この一か月見ていたのは――

 

《そうですね。確かによくないですよね…………そうですね、んじゃいっそマジモンのオナニー配信でもしますか》

 

ピンク色の髪の少女。少しやつれたのかもしれない。トークも精彩を欠いており、以前の彼女ならこんな話題にもしない。

……無い筈の胸が痛んだ。

言ってしまえば十代の女の子の隣に、常にSANチェック中のライダーがいるのだ。しかも番組後期に出て来るアルティメット・フォームだ。気持ちは解る。

……でも、許す事は出来なかった。

自分と彼女の間に、絆や友情なんて物は無かったと思うと。どうしても許す事は出来なかった。

 

こんな時のメンターは何も答えてくれなかった。

それでも、一か月たった今。やらなくてはいけない事は分かる。

最終回だ。

 

マーベラーのカーゴの中、普段より白い照明の中ドローンが動く。真横にはコンテナを改造した着装装置、傷ついたフィールド・モジュレーターが収められている。

顔面から胸にかけて、アルドに真っ二つにされたダメージが今も生々しく残っていた。

他には様々な――チャフや発煙筒などが入った――銀色のケースが天井近くまで積まれている。

 

「身だしなみは大事でござるからな。ライダーも最終話は基本小ぎれいかつ笑顔で……いやアマゾンズは違ったでござるが」

 

モニター正面に映るの自分の姿を確認し、顔に着いた泥をピンク色のタオルで落としておく。

最終回なのだ、皆にお別れを挨拶するのにだらしない恰好ではしまらない。

ピンク色の手鏡を持ち、身だしなみをチェックする。

 

「……」

 

そこでふと、興味本位で胸に力を入れてみる。感覚的には胸を張るのに近い。

そうすると胸の中央が縦に割れた。二つの胸板は観音開きになり、中には十センチ×十センチの緑色に光る板が背中に収まっている。……とある作品では、自分と同じようなキャラが背中の内側。血で描かれた印に魂を封じられてるという設定だった。

恐らくは、これもそういう物なのでは無いだろうか。……レオパルドンはそう推測を立てていた。

 

「誰も、アルにしてくれと頼んだ覚えは無かったでござるが」

 

手鏡を内側に向け、隅々を探す。これ以外に似たような箇所は無かった。

……少し気味が悪くなって来たので、レオパルドンはそれ以上自分の体を調べる手を止める。それこそミナカが言う所の自傷行為オナニーに違いなかった。

気分を入れ替え配信を始める事にする。嫌な物を直視して、それを引きずるなんてあってはならない。そういう中途半端な嘘は観客にすぐ伝わると、ミナカがそう言っていた。

 

 

〈GALAXY LIVE LINK:CONNECTED〉

〈REC:LIVE / ALL SYSTEMS:NORMAL〉

 

〈VIEWERS:0/Au REACTION LEVEL=LOW〉

 

 

通信状態は悪く、接続には少々時間がかかった。

配信を始めた最初はゼロ。しかし徐々に同接者数は上がっていき、一呼吸もしない内に百万人を突破した。

 

”レオパルドン!?”

”生きとったんかワレ!?”

 

自分の姿が見えると途端視聴者は様々な反応を返す。喜びや困惑、怒りや悲しみなど。東さっぽろ市の底辺YouTuber時代とは全く違う。

 

「みんなお久しぶりでござる。拙者、レオパルドンでござる」

 

久方ぶりに喋ると、一瞬自分がどんなキャラか忘れてしまった。思い出すのは一か月無職だった時。あまりに誰とも喋らなかった為か、話し方を忘れてしまった事と似ていた。

 

「一か月前はとんでもない物を見せてしまったでござるな、いやはや本当に申し訳ないでござる」

 

そう言うと、途端幾つかのコメントがスパチャ付きで流れ込んでくる。

 

”これから復帰するのか?”

”え、再開してくれるの!?”

 

その無邪気なコメントに一瞬言葉が詰まった。これから話す事は真逆だと言うのに。……一拍間を置いた後、レオパルドンはゆっくりと舌を動かした。

 

「いや、真逆でござる。今日はみんなにお別れを言いに来たのでござるよ」

”ファ!?”

”え、は?”

”どういう事だ、レオパルドン!?”

「拙者の目的は達成したでござる……この遺跡を手に入れる事、それが拙者の目的でござった」

 

地球への帰還手段を手に入れるまでの二か月間。思い返せば、これ程濃い経験はした事が無かった。

色んな事があったと思う。

 

「みんなには本当色々お世話になったでござる。拙者一人では無理でござった、不甲斐ない姿ばかり見せていたでござるが、みんなが見てくれたお陰で頑張る事が出来たでござるよ」

”や、やめちまうのかよ……”

”嘘だぁ、やだぁ”

”クズの事引きずってるのか?”

 

そこで思い出すのは、アルドの事。自分がこの手で殺めてしまった人。多分彼の事は、きっと一生忘れる事は出来ないだろう。

彼の事を思うと、もう戦おうという気にはなれなかった。

 

「みんなの事を思えば、こんな形で終わって本当に申し訳ないと思うでござる……けれど、拙者にはあれは許せなかった」

”確かに。気持ちは解るけど”

「ミナカ殿とは、上手くやっていたと思ってたのでござるが……上手くやりこめられてるだけだったでござる」

”ごめん、今のちょっと面白かった……”

「これパブリックドメインでござるから、是非ともみんな使って欲しいでござる」

 

そこで一度レオパルドンは咳込む。声からは少しだけ険が取れていた。

 

「どうか、皆は元気でやって欲しいでござるよ。拙者はもう二度と配信冒険者には戻らん、これが本当の最後――最終回『さようならレオパルドン』でござる」

 

これが作品だとしたら、ここで最終回が許される作品なんてないだろう。後味の悪い嫌な作品である。

しかし、しょうがないのだ。もうレオパルドンは疲れてしまったのだ。

どだい、彼はオタクでヒーローなんて向いていない。現実はなろう小説ほど甘くなかったのだ。

 

”最後に教えてくれ、レオパルドン。結局お前は、一体何だったんだ?”

”なぁ、改造人間だったのか? それとも光の巨人だったのか?”

”ザスケラの近衛だったの?”

”キノコ狩りの男ってどういう意味なの?”

 

そこで感じるのは一抹の慚愧だ。自分が面白半分で語った話を信じた視聴者がこれ程までいるとは。

思い出すのは、自分の好きな作家の一人。小さい女の子が、自分の家に来た時に主人公を探して「彼はどこにいるの?」と聞かれた際の逸話。

夢を壊してはいけないのだろう。ここまで幻滅させる物を見せて、最後の最後まで裏切るというのは、それは動画制作者の端くれとしてできない。

 

「拙者の正体は……次に出会った時、君だけにそっと教えるでござるよ」

 

そう答えた直後、配信を切る。これが精いっぱいだった。

配信冒険者として、最低限の事はしたと思う。

後に残された黒いモニターに映るのは、武骨な顔面の自分の姿。特撮のヒーローのような姿だが、中身は違う。

 

「拙者は、今何なんでござろうな」

 

人気のある時は調子に乗るくせに本性は臆病で、年下の女の子の過ちを許せないくらい狭量。

異世界に行けたらなんて三十超えて考えてた癖に、いざ異世界に来たら戦いに怯え……挙句の果てには人を殺し、元の世界に逃げ帰ろうとしてる。

自分はレオパルドンではない。

ただのゲロッパうどん。

痛いオタクのおっさん、社会のボトムズなのだ。

そうして鬱々とした感情を溜めた直後。彼が振り仰ぐとそこに、フィールド・モジュレーターが目に入った。

 

「貴公にも世話になったでござるな」

 

物言わぬ自分の装備に一礼する。特撮美術を題材にした作品に曰く、スーツには背負った物語があるという。

使っていた自分の物語は大した事ないが、このパイセン作のスーツは非常に素晴らしい……劇しい光を放っているのではないかとレオパルドンは思う。

彼の為にレオパルドンは用意した物があった。

 

日本酒……は手に入らなかったので、カップに入れたコーヒーを彼の正面に当たるテーブルの上に置く。

本当は折れた刀よろしく、日本酒かせめて酒をかけて労うべきなのだろうが、生憎この船に酒は無い。……という訳でコーヒーを用意した、どうか自分の分まで飲んで欲しいという祈りを込めて。

 

「機械に入ってたヤツでござる……ブルーマウンテンか、キリマンジャロかはわからぬでござるが」

 

次にコクピットにも寄った。このマーベラーの中枢、そこの計器の一切合切は火を落とされて沈黙している。

もう動く事は無いだろう。これ程の名機が、である。

 

「もし、拾われたのが拙者でなかったら……きっと華々しい活躍が待ってたと思うでござるよ」

 

その計器を撫でると、艶やかなガラスのメーターがきらりと光る。それは涙を流すかのように。

 

「しかし、拙者は貴公と共に過ごせて光栄だったでござる。貴公のその雄々しい姿、ピザをモチーフにしたようなフォルムは拙者にとってこの世界のどの宇宙船よりも心強かったでござる……ありがとう、マーベラー」

 

レオパルドンがその時思い出したのは、好きな作品の一シーン。

自分の愛機が奪われるとなった時の事。主人公が涙と共に愛機への思い入れを語り、自分の牙のけじめを着ける瞬間。

彼と同じように。フィールド・モジュレーターとマーベラーは、レオパルドンのこの銀河配信社会の全てだった。

 

「さらばでござる、フィールド・モジュレーター。さらばでござる、マーベラー……魂の兄弟達よ」

 

――外に出ると、太陽が砂漠を白く焼く。マーベラーの正面には何もないが、レオパルドンが右手を伸ばすと、足元で小さな砂嵐が生まれ――地面から徐々に石造りのドームが現れてくる。

正面には両開きの扉があり、レオパルドンより僅かに……十センチほど大きかった。表面はつるりとしていて、ドアノブはない。

 

「アイディアは七十年代。絵面は現代以上でござるな……」

 

これがレーゾスの予備遺跡、その入り口であった。

扉が左右にスライドして開き、中は灯が一切なく暗い。その中に、レオパルドンはゆっくりと足を踏み入れていく。

 

 

……ここでレオパルドンの痕跡は世界から跡形もなく消えた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

――とっとこ詐欺@tottoko_sagi

 

は? どうしたんだ、これ?

 

 

――ミナカ・アラギ批判用アカウント@Anti_ARAGI

 

アンドロイド達が何か暴れてんだけどw怖いw

 

 

――ペットアンドロイドと一緒【現在拘留中】@PET_AND_PRETTY

 

ウチの子達、何処いったんだろう? 外は危ないのに……

 

 

――†聖なる異端の闇使い†@EL_no_ZWEI

 

惑星各地で暴動……おいさっきの映像、僕んちの近くなんだけどw

 

 

――(#^.^#)@KiwCBGDorRTByu

 

おい、何か惑星ザスケラの南でビル崩れてんぞ!

 

 

――帝都惑星ニュース@TEITO_news

 

【緊急】各地でアンドロイドの反乱が発生【速報】

 

現在、ザスケラ・ジャ=クー・ヴァートゥなどでアンドロイドの反乱が発生中。

帝国軍並びに各地の領軍が事態の鎮圧に当たってます。

各惑星に住んでる方々はアンドロイドに近寄らないで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。

第24話から、次章の火種が本格的に動き始めます。
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※続きます。
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