死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について   作:生駒伊織

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25話3 炎のさだめ

 

 

――パイセン、フィアナの決死の時間稼ぎで何とかコーグを後にした。

 

 

しかし、到底無事な出発とは言えなかった。艦内部に侵入したキナイの部下との熾烈な闘争が待っていた。

 

「ンアーッ! パイセン仕込みのトラップ起動! レーザートラップ!」

 

ミナカはコンソールとモニターで次々艦内に仕掛けられたトラップを起動する。六画面モニターの一画では黒マントと帽子を脱いだアンドロイド達が、格子状の赤いレーザーで細切れになった。

 

「お次は物理矢! アンド、落とし穴! オラオラオラ! パイセン特製の罠はワガハイが引くレベルであるぞコラ!」

 

……モニターの中でアンドロイド達は次々トラップに倒れていく。ミナカが若干楽しくなってきたその時だ。

艦橋の隔壁が破られる。現れるのは銀色の鋼鉄の右腕。

 

「主ヨ、オ前ニ憎シミヲ!」

「ンアーッ! しぶとく一匹生き残ってたぁあああああああ!」

 

徐々に上半身をねじ込むように這い出てくるそれに、ミナカは背中に差したムラマサを取るとブラスターモードを乱射。

アンドロイドが怯むも、上半身を上げた所で鞘から刃を抜き、その胸に突き立てる。……それでようやく最後の一匹が機能を停止した。

 

「ひ、ひぃ! ひぃ!」

 

引き攣った声が荒い息で笑えるくらい出てしまう。その場にへたり込み、ピンクの袖で額の汗を拭う。

理不尽に始まったこの戦闘にようやく一息がついた。あまりの急展開の数々に、ミナカの脳は沸点を越えてパニック寸前である。

 

「なんですか、これ! アンドロイドの反乱から始まって、陛下が登場! パイセンは急にキャラ変したら、フィアナに変身! 頭がフットーしちゃいそうだよぉぉぉぉ! ――アンドロイドから情報引こ」

 

一しきり叫んだ所で、機能停止したアンドロイドの首筋にコネクタがあったのでケーブルを繋いで情報を抜き出す。

大規模な情報の出し入れにはケーブルの方がいい。解ったのは二つ。

ヴァレンの命でラクトゥーの遺跡を起動するには何故か自分が必要で、それで確保に動いていた事と、レーゾスにヴァレンが今向かおうとしている事。

 

「知らん所でワガハイが何故か歯車に!?」

 

やる事はただ一つ。キャストリルへの連絡だ。

迷わずミナカは頭上の黒いリボンを触ると、スマホの通話アプリを起動。キャストリルにかけると、即座に繋がった。

Bluetoothで環境のモニターに接続すると、現れるのはいつも通りの翡翠の髪の嫌な女。

 

《あら、バルディナ。時間より早いわね》

「キャストリル! ええと、まず何から話したらいいものやら――」

 

とりあえず今起こった事を整理し、彼女に話す。

大事なのは二点。ミナカがラクトゥー遺跡起動に必要な事と、現在レーゾスにレオパルドン確保の為ヴァレンが向かおうとしている事だ。

それを聞いて、キャストリルは一度手元の紅茶を飲むと。

 

《解ったわ、なら貴方のやる事は一つよ。逃げなさい》

「言われなくたって逃げますよ、コンチクショー! でも、レーゾスに艦隊は向けてくれますよね! ね!?」

《ごめんなさい、それは少し難しいわね》

「ファ!?」

 

そこでモニターから響くのはブラスターの音だ。何やら異様な空気が伝わってきている。

 

《ドヴェル=スタイン家の長男坊がこっちに攻めて来てね、今対応に追われてるの……これはどの兄様か姉さまの手引きかしら》

「のんきに茶飲んでる場合ですか!?」

《これでうろたえたら士気に関わるわ……この反乱を治めない事には、レーゾスに船は出せないわ》

 

そこで彼女はモニターの下から白と銀に装飾された拳銃を取り出す。明らかに金のかかっているブラスターだった。

キャストリルはミナカと話しながら、ブラスターに手を加えていく。バッテリーを換装し、銃の上にはスコープを取り付けた。

 

《さて、私もそろそろ加勢した方がいいかしら》

「お、お兄様はどうなるのですか!?」

《最終手段として、お父様が先程手配したモルディッギアンでレーゾスごとヴァレンを葬る。最悪、これで何とかヴァレンの目標達成を阻止する予定よ》

「そ、そんな!?」

《……悪いわね、バルディナ。お互い生きていたらまた会いましょう。それでは、ご機嫌よう》

 

そこで通信が途絶える。

モルディッギアンがレーゾスを破壊すれば、ヴァレンの計画は頓挫する可能性が極めて高い。しかし、それをすればレオパルドンがどうなるのか。

 

今唯一頼れる筈だったキャストリルは生死不明。

伝手を頼るか。いやこんな状況で人を集められる訳がない。

………………逃げる理由はある。

 

突如ノイズ音が響く。

 

《大丈夫》

 

スピーカーから響くのは、フィアナの声。

 

「パイセン! あ、いや……えっとフィアナ!」

 

ミナカが最後に見たのは、キナイと戦っているその姿。聞きたい事はいっぱいあった。

けれど一番聞きたかったのは、今どうすればいいのかという事だ。

 

「パイセン! わたし――」

《ミナカちゃんならやれる。なれるよ、絶対》

 

そうして、後に続くのは瓦礫が全てを埋める音。何が起こったのかは想像出来る。

 

「パイセン……フィアナ」

 

その死にミナカはしばし呆然とした。涙は遅れて頬を伝う。

それを右の袖で拭い、地面に払う。

 

「そうだ、わたしはお兄様を……今お兄様を助けられるのはわたししかいないんだ」

 

フィアナは自分がレオパルドンを助ける為に戦ってくれたのだ。なら、自分はやるしかない。

目的は一つ、レオパルドンが地球に帰る時間を少しでも稼ぐ事だ。

モルディッギアンの前にヴァレンが来なければいい。それに相手が自分を求めているなら、自分を殺す事だけは無い筈だ。

 

……やる事は決まると行動は速かった。進路を惑星ラクトゥーに取る。

 

そうして、格納庫に収めたアンドロイド兵達を起動。戦闘配備に付けさせた後、ミナカはジャケットの中から四センチほどの灰色のドローンを取り出し起動すると配信の回線を開いた。

契約不履行なんて知った事か。今はお兄様を守れればいい。

 

 

〈NEURO-synC : ONLINE〉

〈GALAXY LIVE LINK:CONNECTED〉

〈REC:LIVE / ALL SYSTEMS:NORMAL〉

 

 

回線を開くと、即座に視聴者は付き始める。

 

「ミナカのぶっっっちぎりダンジョン配信! さて、今回は特別企画! 現在発生中のアンドロイド反乱の首魁、ヴァレン・スローンをソロで討伐しに行こうと思います!」

 

精一杯の笑顔でそう配信する。恐れ知らずの配信冒険者として振舞う。

もう後戻りは出来なかった。

 

 

 

 

 

 




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