死にたくないので炎上上等! クズ少女配信者の銀河最底辺ダンジョン配信に現れた俺は、ただの鎧の傭兵だったが、地球への手がかりを探してると『レオパルドン〇〇説シリーズ』が乱立し神と呼ばれた件について 作:生駒伊織
【見るも無残】ミナカのぶっっっちぎりダンジョン配信part2004【敗北者】
111:落ちた名無し視聴者
は!? 何やってんのこの女!?
112:落ちた名無し視聴者
その戦艦チャーターしたの!?
113:落ちた名無し視聴者
オナニーの次がVSウィザードww
歌舞いてんじゃん(真顔)
114:落ちた名無し視聴者
モルディッギアンで吹き飛ばされない為って、だからってラクトゥーに万歳突撃かよw
115:落ちた名無し視聴者
クズは本物だから(震え声)
◆◇◆◇
――ミナカが配信を始めた直後。
惑星ラクトゥー衛星軌道上に、青い光が瞬く。
しかし、真空で星は瞬かない。
漆黒の宇宙に量子が青く煌めく。タンホイザー・ゲートから、約八十パーセクの距離を越えて全長三百メートルの灰色の戦艦がラクトゥーの大気圏に突入する。
ヴァレンに付いているアンドロイド達は咄嗟の事に混乱した。
自らのリーダーが確保しろと命じたミナカ・アラギが、戦艦に乗って単騎突撃という状況に、どう対応すればよいか分からなかった。
ミナカ・アラギがこのラクトゥー遺跡を開く鍵である事。その一点が、彼等から柔軟な判断と対応を奪ったのである。
最も被害を受けたのは復旧作業中であったアクー・ジャヌスであった。
ラクトゥーの成層圏からのアウトレンジ砲撃により、撃沈レベルまでに破損。幸いにも対消滅エンジンは完全停止していたので、周辺被害は最小限に住んだが、これでヴァレンがレーゾスに向かう手段が無くなったのは、彼らにとって紛れもない痛手である。
宙に幾条もの光が瞬く中、黒ローブのアンドロイドがタブレットを携えてテントの中に入る。
《ヴァレン様、お休みのところ大変申し訳ございません。至急これを》
「えぇ、わかっております……丁度見ておりました」
ベッドから体を起こし、ヴァレンはたった今自分の頭上で行われている配信を見ていた。
画面にはピンクに黒のメッシュが入った少女がアンドロイドに下知を飛ばしながら、船の舵を切っている。
《左舷、弾幕薄いですよ! 何やってんですか!》
《艦長、第三艦橋沈黙致シマシタ》
《勤めを果たした戦士に敬礼! ――はい終了、空間光子魚雷三発撃て!》
たった百人のアンドロイドで些か小ぶりとはいえ戦艦を動かすのも驚きであるが、ヴァレンが引かれたのは彼女のその目。
右が赤、左が青の瞳。
そこでヴァレンは一度脇のテーブルに置かれた十種類の薬を口に放り込むと、透明なコップに入った水で胃に流し込む。その後首筋に医療用ナノマシンのカプセルを刺した。
「混乱しておりますね、今支度を致します。現場には少しだけ持ちこたえるように伝えて下さい」
《ヴァレン様、しかし……》
「彼等を責めるの酷というものです」
これを招いたのは自分なのだ。一瞬の情で失った機会損失は計り知れない。
あの戦艦を回収出来ればいいが、彼女とて無策でここに来てはいるまい。
ヴァレンは上着の上に茶色い革の剣帯を付けると、黒ローブの女に手助けされて白いコートを羽織る。
「レオパルドンさんはどうなりましたか?」
《マーベラーは、レーゾスの砂漠から依然動きはありません。近寄ろうにも砂嵐で不可能です》
「わかりました。監視は常に続け、何か変化があったら極些細な事でも即私に報告を」
《はい、ヴァレン様》
イドロダイトの短剣を左胸に差し、黒ローブの女が両手で差し出した位相転換杖を右手で握る。
「一分だけ外していただけますか?」
《はい、ヴァレン様》
彼女が席を外すと、ヴァレンは一度自分のスマホを手に取り一枚の写真を表示する。
桃色の髪を携えた若い女だった。目元はどこか垂れていて、服装は白いローブを羽織っている。
「……」
再び彼を咳込ませたのは病か、それとも別の何かか……。
◆◇◆◇
――戦艦の第一艦橋の中は騒然としていた。
ラクトゥーの青と緑の入り混じった星の表面を、操舵一つでスイングバイに乗って突っ込む。成層圏に入ると空の色は青、風を切る音すら聞こえてくる。
地表からは翼を持ったアンドロイド達が迎撃に。
ギャラクシー・ライブリンクからデータ片を抽出した赤い光弾が次々放たれ、戦艦の所々が弾け飛び黒煙を上げるも。レストアした三連装砲の前に次々散っていく。
《マム! 敵部隊ガ第三艦橋から侵入シテキマシタ》
「ブロックごと切り離して地表に叩き降ろせ! それで引きずるようなら白兵戦準備!」
《マム! 対消滅エンジント艦橋ノ件終了シマシタ!》
《マム! マムノ装備ヲ艦橋ニ運ビ終ワリマシタ!》
「よし! お前達には一番槍の栄誉をくれてやる!」
《ヤッター! バンザーイ!》
《ドッチガ一番槍ダ?》
ミナカはラクトゥーに入った以上、戦艦内が戦場になる事を想定していた。
拿捕されたアクー・ジャヌスを先程破壊した後、ヴァレンは足を求めてこの艦を手に入れようとすると彼女は睨んでいた。ワープゲートは既に封鎖されて使えない。レーゾスまで行くとしたら、対消滅エンジンを搭載して無事なこの艦だけだ。
《勝ッタナ》
《アァ…》
真横でそんなやり取りをしているアンドロイド達を見かけたので、ミナカは背中のムラマサを鞘ごと抜くと頭をフルスイングした。
「勝ってねぇよアホタレが! 今現在修羅の巷の鉄火場で、大絶賛リンボーダンス中なんだよ! アホな事言ってないで働け!」
《イエスマム!》
《アイアイマム!》
そんなやり取りを、彼女の周囲を飛び交うドローンカメラは一部始終映していた。
〈VIEWERS:2218079622/Au REACTION LEVEL=HIGH〉
白文字の同接カウンターが示す視聴者は二十二億を突破していた。反応も極めて高い。
”面白い、狂気の沙汰ほど面白い……”
”クズ、お前今最高に輝いているよ!”
「畜生! 配信冒険者ランキングはこんなのに限って、一億五千八十三万から上に上がってやがる!」
この銀河系中の人間が、ミナカの配信に集まりつつあった。これでいい、今現在ラクトゥーで自分がヴァレンと交戦している事を、もっともっと知られて欲しい。
それでレーゾス破壊が一分一秒でも遅れてくれれば、レオパルドンが帰る時間が伸びてくれたら……。
高額の赤スパが投げ込まれたのはその時だ。
”おい、クズ外を見ろよ!”
百万クレジットが添えられたコメントが表示されると、ミナカは脊髄反射的に艦橋のモニターを外に移す。
そこには彼女達の戦艦の背後を覆う、赤い光の壁。ウィザードが攻撃を防御する時に使う技と同じ物が星を覆いつつあった。
「閉じ込められましたか……」
”おい、やべぇぞ! どーすんだよ”
”逃げ場ないなった!”
あれの強度はミナカ自身が知っている。ウィザードの異能の前では如何に戦艦と言えども無力と言っていいだろう。
なら、やる事は一つである。こういう時は即断即決が重要だ。
近くにいたアンドロイド一体にミナカは先程までとは打って変わって、静かな口調で命令を下す。
生唾を飲むと、喉が鳴った。
「対消滅エンジン緊急停止」
《イエスマム!》
モニターに映る円形の対消滅エンジンのメーター。その出力が徐々にゼロになる。
そうしてミナカは頭の黒いリボンを触ると、仕掛けを起動した。
瞬間、船が一際激しく揺れる。
船外モニター。その背後には大量の黒煙が吹き上げていた。
《対消滅エンジン、爆破確認! 損傷甚大!》
「これで奴等はもうこの星から出られません」
アンドロイド達は無機質にミナカの命令に了承する。対し、配信のコメント欄はその発言に騒然としていた。
「爆弾は上手く起動したみたいですね」
”なにやってんだ!”
「ウィザードの使うデータ弾が使えるなら、ウィザードが使う壁も使えるでしょうね……しかしアウトレンジ砲撃にはどうしても大気圏に入る必要がありました」
”そりゃ確かにそうだけど!”
「アレが張られた時点でワガハイ達の命運は尽きたと言っていいでしょう」
”そうだけど……”
そこでミナカは口の内側の肉を噛み千切る。血の味が下に広がる中、ミナカは床に血を吐き捨てると嘲笑う。
「ここからが正念場ですよ! 無敵のウィザードをぶっ殺す銀河殴り込み戦艦のね、腑抜けたワガハイや視聴者様への気付け薬には対消滅エンジンを焼くぐらいが丁度いいんです!」
”……お前、死ぬ気かよ”
”もういい、もういいだろ”
「よくありません、全然よくありません」
”なんでだよ!?”
「ワガハイの後ろにはお兄様がいるのですよ!? ここでこいつ等を野放しにすれば、奴等はきっとお兄様に魔手を伸ばす筈です!」
艦橋が再び揺れる。真正面の第一砲塔が連射に耐え切れず遂に爆ぜたのだ。もうもうと黒い煙が立っていく。
それでもミナカには引く事が出来なかった。自分の背後にはレオパルドンがいる。
もう振り向いてもらおうとか、許してもらおうとか思わない。
ただ無事でいてくれれば、それでいい。
「後悔なんて死んでも出来る! 諦めるとか、降伏とか、ましてやいくつもの愛を重ねあうとかクソ喰らえそんなもん!」
その時、艦橋が赤く染まった。ぶつっという音と共にアンドロイドの声が響いた。
《報告! 報告! 艦内に敵白兵部隊侵入! 残存戦闘員ハタダチニ臨戦態勢ヲトレ!》
「上等ですよ、こんちくしょう!」
《ウチ、一人ハヴァレン・スローン! 繰リ返ス! ウチ、一人ハヴァレン・スローン!》
ミナカの脳裏を過るのは、最初にレオパルドンと出会った時。
あの日あの時と全く同じ戦慄が走る。
強がりを口にすると、声は自然と上ずっていた。
「……いいでしょう、撮れ高が高いですね」
”ど、どうするんだよ!?”
”レオパルドンですら勝てなかったヤツだぞ”
「折角なら出迎えてやりますよ、熱烈にね……大変申し訳ありません視聴者様、ここでしばしのインターバルです」