死にたくないので炎上上等! 地球への手がかりを探すSFオタクが、銀河最底辺ダンジョン配信でミームから神話になるまで 作:生駒伊織
【熱戦烈戦】ミナカのぶっっっちぎりダンジョン配信part2066【超激戦】
876:落ちた名無し視聴者
は?
877:落ちた名無し視聴者
音復旧したけど、なんて言ったの?
878:落ちた名無し視聴者
なんて言ったんだよ!
879:落ちた名無し視聴者
おいモザイク入って見えねえぞ! 映せよ、生身のレオパルドンをよ!
880:落ちた名無し視聴者
画面にマヨネーズ付けたらモザイク薄れるらしいぞ!?
881:落ちた名無し視聴者
マーガリンの方がいいって聞いた!
◇◆◇◆
ラクトゥーの遺跡に眠る演算機が鳴動する。増幅されたエネルギーが出口を求めて、地表に溢れ出る。
空には曇天が覆い始め、低い震度の地震が大地を揺らし始めた。
「どうやら、思い入れによって消費エネルギーが変わるらしいでござる。強ければ強いほど、比例してエネルギーが減っていくでござる……物質だと更に消費量が変わるとか」
レオパルドンが青い文字を読み上げてそう呟く。割れんばかりの地響きが酷くうるさく感じた。
その中でミナカは叫ぶ。
「どうしましょう! お兄様! ワガハイ、急に願い叶えろって言われてもポンポン思いつかないですよ!」
「頑張るでござるよ、ミナカ殿! 何とかあのエネルギーを使い切らないと、拙者達諸共お陀仏でござるよ!」
レオパルドンも叫んだ。
「で、でも! でもでござるよ、ミナカ殿の欲望は底なしでござろう!」
「そ、そうです! ワガハイは自慢じゃないけど欲深! そう……願いだなんて……」
そこで気付く。
配信冒険者ランキング一位になる夢は置いといたとして。
母の愛を父に告げ、名誉は回復し、フィアナと再び出会い、挙句手の中には夢の証である位相転換杖。
「……あ、やべ。夢、全部叶ってる」
「嘘でござろう!?」
無我夢中で気が付かなかった。この手の中にはもう夢という夢を全て手にしていた。
そこで、ミナカはハッとした表情を浮かべた。そうだ、絶好の願いがあった。これで何とかなる。
「キャストリルに増援を送りましょう! あいつ、なんだかんだで今回めっちゃ助けてくれましたし!」
「ナイスアイディアでござる!」
その時、ミナカの視界に着信のサインが入る。映像通話で、それはキャストリルからの物だった。
レオパルドンが両手で×をする。どうやら願いが叶った訳ではないらしい。
《……悪いわね、こっちは無事よ》
「ンアーッ! …………なにも言えない」
一瞬、何で生きてるんだと言おうとして思い踏みとどまったのは、ミナカのなけなしの良心の発露であった。
通話が切れると再び、ミナカは頭を悩ませる羽目になる。しかし、代案はすぐに思いついた。
「そうです! 死人を蘇らせましょう! フィアナとママを!」
「ナイスアイディアでござる!」
そう思い、行動に出ようとした時。ミナカのスマホから着信のベルが鳴る。
ピンクのスマホを取り出し、出ると聞こえてくるのは……。
《ご、ごめんねミナカちゃん……あのわたし、実はちょっと生きてて……》
「フィアナ……その、今じゃない……あぁ、でも生きてて良かった!」
ぶつりとそこで通話が切れる。磁気乱の影響だった。
「お兄様、今ので何とかなりました!?」
「いや、何ともなってないでござる。アレは単にめちゃくちゃ運が良かっただけでござるな……」
「ンアーッ! 紛らわしい! でも、生きてて良かった……でもやっぱり紛らわしい!」
「後、ご母堂の件はちょっと無理っぽいでござる!」
「じゃあもう無いですよ願い!」
ここに来て急に現実が牙を剥き始める。ふとコメント欄を見ると、コメント欄も騒然としていた。
一難去ってまた一難という感じに。
「お金は!?」
「そりゃあればいいですけど、そんな魅力感じないんですよね……」
「じゃあ、欲しかったっていうランキング一位は!?」
「それは自分の力で取るから意味があるし……」
「何で今になってイチイチまっとうな事言うんでござるか!?」
その時、ミナカが目を時計に向けると残り時間は…………三十秒を切っていた。
「ンアーッ! 嘘ぉぉぉぉぉぉ!?」
「何か、何か無いんでござるか! もう何でもいいでござる!」
そこでミナカの脳に走馬灯のように今までの過去が巡り始める。
ヴァレンとの戦いから、あのジャ=クーで初めて出会った時。そう、あの時もこんな命の危機だった。
”今までバカにした奴等を見返してない! ウィザードにもなってない! 赤ダイヤモンドの盾もらってない! 可愛いショタのおちんちんピュッピュしてない! やだやだやだやだ!”
記憶の中で、最後の願いが見つかった。
これは確かに自分の中で、今一番強い願いだ。
しかし、これは余りにも……その。
へらっと、ミナカの顔に媚びた笑みが浮かぶ。それは魂から発せられる媚びた笑みだった。
「あー、見つかったかも……しれません」
「何でござるか!? ならすぐに言うでござるよ!」
「いや、でもその……ちょっと、問題が……」
「言うでござるよミナカ殿! ここまで頑張ってきたんでござる、大抵の事は皆許してくれるでござるよ!」
「い、一番問題なのは……お兄様なんですよ」
一度ミナカはレオパルドンの姿を見ると、ためらいが生まれた。
「拙者に出来る事があれば何でもするでござる!」
「ほ、本当ですか……怒りません?」
「もう後十秒しかないでござるよ!」
焦りをにじませるレオパルドンに対し、ミナカはためらいと焦りと恐怖……様々な物が入り混じった叫びを上げる。
「――お兄様の姿が、激萌え美少女ショタだったらいいのに!」
息継ぎせず、ミナカは思いのまま叫ぶ。
「身長はわたしよりちょっと下! 髪は白のロング、目の色は赤! 肩と鎖骨のラインはフェミニンで、尾てい骨がちょっと出てる感じ! 少女と少年の中間形態な、そういうわたしの理想のショタだったらいいのに!」
レオパルドンの目は見なかった。正直、怖かったから。
「え!? ちょ!?」
困惑する声は両手を耳で塞いでシャットアウト。
尖塔から光が迸った瞬間、ミナカは後ろを振り向きしゃがみ込んで目を瞑る。
……数秒経ち、ミナカはゆっくりと恐る恐る目を開けて後ろを振り返る。すると、思わず両目を見開いた。
「お、お兄様……お兄様なのですか?」
「…………」
フィールド・モジュレーター、そして中にある神の鎧共々正面から空いていた。
地面にへばりつくようにして、白い髪と赤い瞳を持つ……ミナカの理想のショタの姿がそこにある。
服は着ていない。
理想のショタは、磨き抜かれた鏡のような神の鎧の裏側に自分の姿を映し、その顔と形がどう変わったかを無言でしばらく確かめた。
「これが、拙者……」
野太い声はそのままで、ミナカは一瞬どうせなら声も変えとけば良かったと後悔。
そう思いながらスマホのカメラを連続撮影モードにして姿を残す。
「お兄様……なんてお姿に……」
「………………まずは写メを撮るのをやめるでござるよ、ミナカ殿」