Lost Utopia~幻想の記憶~   作:停泊中のムラサ

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第二話:霊夢の現代新生活~その壱~

 

「ふぅ、ここまでくれば大丈夫よね」

 

ビルの立ち並んだあの謎の領域から走ること5分。先程の喧噪はどこへやら、霊夢は閑静な住宅街に立っていた。

 

「やっと落ち着けるわね。」

 

霊夢は住宅街の一角にある広場のベンチに腰掛けると、大きな溜息をついた。

 

「それにしても、今の人間ってこんなところに住んでいるのね、息苦しくないのかしら」

 

幻想郷の人間の里とは比べ物にならないほどギッシリと並んだ家々をながめてもう一度深く溜息をついた。

 

「それにしても・・・・・・なにか食べるものはないかしら・・・・・・」

 

今更ながら自分が昼食にビスケットを数枚食べただけだということを思い出した霊夢は、ぐで~っとベンチにもたれかかった。

 

グゥ~

 

そんな考えに答えるかのように、霊夢のお腹が大きくなった。

 

「・・・・・・とりあえず移動するとしますか」

 

(それと雨風をしのげる場所が必要ね)

 

気怠そうに立ち上がると、能力を使うわけにもいかず。再び霊夢は歩き出した。

 

 

 

 しばらく歩くうちに、霊夢は住宅街を抜け、少し賑やかな通りに出た。

 

「へぇ~、ここら辺は人間の里と似てるのね~」

 

最初の都市部とは違い、どこか懐かしさを覚えるような賑やかさのある通りを、そんなことを呟きながら進んだ。

 

「あ~、おなか減った・・・・・・」

 

と、言いながら、霊夢はあたりを見回した。

 この通りに入ったときから、すでに八百屋や魚屋が声を張り上げながら、買い物客を呼び込んでいる声は聞こえていた、が、

 

(これっぽちじゃねぇ・・・・・・、というかこっちの世界では使えるのかしら、これ・・・・・・)

 

手のひらに丸い硬貨を転がしながら霊夢はそう思った。

 

むろん幻想郷の通貨が現代のそれに対応しているはずもなく、結果として店先にならぶ新鮮そうな野菜や魚によだれが出そうになるのをこらえながら(いまさら生だの未調理だの、霊夢には関係ないのである)歩き続けているのであった。

 

「いっそのこと鳥でも獲って食べようかしら」

 

そんな物騒な考えを察知したのか、電線にとまっていた雀たちが一斉に飛び立っていった。

 それと同時に風向きが変わったらしい。霊夢は通りのさきから流れて来るおいしそうなにおいを感じた、と同時に足は早くも匂いの発生点、霊夢を運んで行った。もちろん所持金はゼロのままだったが。

 

 「・・・・・・おいしそう・・・・・・」

 

今、霊夢の目の前、透明な板を挟んだ向こう側では、たぶん店主であろう五十代くらいの優しそうな男性がコロッケを揚げている。

 

グゥ~

 

もう一度、さっきより大きくお腹が鳴った。

匂いだけでなく、コロッケを揚げる小気味いい音が、霊夢をその場に釘付けにしていた。

 

「お金さえ・・・・・・お金さえあればぁ・・・・・・」

 

ただでさえコスプレと間違われるような服装で、店先でひたすらコロッケを見つめている霊夢を横目に、すでに五人ほどが揚げたてのそれを買っていっていた。

 

「おじさん、コロッケ一つ。」

 

新たに一人の青年が霊夢の横でコロッケを注文した。

 

「おや、ツバサ君じゃないか。今日はなんだか早いねぇ。」

 

「ええ、今日は午後の授業が休講になったんですよ。」

 

ツバサと呼ばれた青年は、どうやらこの店の常連らしく、コロッケが揚がるまでの間、店主と立ち話に花を咲かせていた。

 

「はい、おまちどう」

 

コロッケを受け取りながら、青年はチラリと霊夢の方を見て

 

「あ~、すいませんおじさん、もう一つ追加で。」

 

そう言った。

 

「ん? ははぁ、そう言うことか。それなら一個サービスだ。」

 

店主はニカっと笑うともう一つコロッケを手渡した。霊夢に。

 

「え? あ、ありがとう・・・」

 

突然渡されたコロッケと二人を交互に見つめる霊夢に

 

「遠慮はいらねぇよ、お嬢ちゃん、お腹すいてるんだろう? これは俺の、いや、ツバサ君からのサービスだ」

 

「そんな、おじさん、サービスなんて、ちゃんと代金払いますよ」

 

「いらねぇいらねぇ、俺も丁度このお嬢ちゃんにコロッケ揚げてやってたところだったんでな。ほら、お嬢ちゃんも遠慮せずに食いな。」

 

「そ、それじゃあ、いただきます・・・カプッ」

 

「どうだい? うまいだろ」

 

「お、おいしい・・・・・・こんなの初めて食べた・・・・・・」

 

口の中に広がる肉汁とタマネギの甘みに思わず笑顔になりながら、霊夢はコロッケを頬張った。

 

 

 

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 

口の中に残る余韻を楽しみながら霊夢は二人に言った。

 

「ハハハ、あれだけ旨そうに食べてくれたんなら、揚げた甲斐があったってもんだ」

 

(この際ダメ元で聞いてみようかしら)

 

「あの、どこかここらへんで雨風をしのげる場所ってありませんか?」

 

「お嬢ちゃん、もしかして家、ないのかい?」

 

店主が心配そうな表情で聞き返した」

 

さすがに、「結界の向こう側にあります」と言うわけにはいかず。

 

「え、まぁその・・・・・・いろいろとあって・・・・・・」

 

「なるほど、まぁ詮索する気はねぇが・・・・・・雨風をしのげる場所っつってもなぁ。」

 

「あの、それなら俺の家に来ない?」

 

唐突にツバサが言った。

 

「ツバサ君、いいのかい?」

 

「ええ、あれだけ広い家は一人だと寂しいですし。君はどう?」

 

「え、じゃあ、お願いしようかしら・・・・・・」

 

「ハハハ、よかったなお嬢ちゃん。またいつでも来な。コロッケなら奢ってやるよ。」

 

「あ、ありがとう、おじさん」

 

にこやかに笑う店主に礼を言って、霊夢とツバサは店を後にした。

 

 

 

 

 「ところで、君の名前はなんていうんだい?」

 

帰り道、ツバサが聞いた。

 

「えっと、私は博麗霊夢、あなたは?」

 

「俺は森近翔、えーと、これからよろしく」

 

 

 

 

 




どうも、通りすがりの船長です。やっと投稿できました。

今回は一言でいうとコロッケ回でしたね(笑)最後の方、完全にグルメリポートみたいになってるけど・・・・・・


そんなわけで、だい二話でした!

次回は相変わらず未定です(ごめんなさい・・・・・・)
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