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かぐやの初のソロライブは大盛況のうちに幕を閉じ、人気ライバー『ブレイズ』の後押しも受け、かぐやいろPの注目度はうなぎのぼりに高まった。
雀の千声鶴の一声、さすがの影響力だな。最初からこうなることを目論んでいただけはある。
SNSには数日たった今でも肯定的な反響が乱れ飛んでおり、そんなエネルギーに撃ち出されるようにかぐやいろPのランキングは跳ね上がっている。
もう帝との竹取神戦をしなくても1位になれるでしょこれ。やった方がヤチヨカップが盛り上がるからやって欲しいけど。
でも、な〜んか忘れてるんだよな。
まあ忘れてるってことは大したことじゃないっしょ。
…んー?いや、ちがう!
今日か?今日なのか!?
彩葉が倒れるのは!
原作の流れを思い出したその時スマホが鳴った。
『優希だずげでー!彩葉が死んじゃうー!』
「かぐや!今どこにいるんだ!?」
「とりあえず、彩葉を日陰に運んで休ませておけ!すぐに行く!」
居場所を聞き俺は準備を整える。
風邪熱をただの熱だと思うなよ。暑い夏との相乗効果で何が起きるかわからんぞ。熱中症も怖いからな。
ヤチヨ頼む、かぐやの元へ飛ばしてくれ。
遅い!と言わんばかりにシュンッ…と現れたユキが俺を連れてかぐやの元へと飛んだ。
「かぐや!彩葉は?」
「かぐやちゃん!彩葉ちゃんは大丈夫!?」
「わっ、優希とユキ!来るの早いね!」
ん?思ったよりもかぐやが平気そうだな。
「ずみまぜん…私ちょっと風邪っぽいです…」
彩葉起きてるやん。元気…ではなさそうだけど、意識があってよかった。
「「はああああ…良かったあ…」」
一応、食生活は改善してるし、睡眠不足もできる限り解消していたから、今回は疲労がたたって体調崩しただけか。
「とりあえず、水飲んどけ、水」
「ありがとうございます…」
「冷えピタ持ってきたんだ〜はいっ」
とユキが彩葉のおでこに冷えピタを貼る。
冷えピタ貼ると一気に病人感が出てくるな。
「彩葉どうする?家帰るか?それとも病──
「家に帰りたいです…」
…まあ彩葉はそうだよな。
「よし、わかった。家に帰ろっか」
「かぐやとユキは彩葉に肩貸してやりな」
俺たちは一緒に帰宅した。
玄関に入り靴を脱いだ時、気が抜けたのか彩葉がかぐやへと寄りかかる。
「わわっ、彩葉大丈夫?」
「…大丈夫じゃ、ない…かも」
「優希!どうしよ!どうしよ!?」
「あー、まあとりあえず寝室で寝かせてきな」
「わかった、彩葉頑張って」
かぐやが彩葉を連れて部屋に入っていった。
彩葉は寝室で寝かせて、かぐやとユキが交代で汗を拭いたりタオルを交換して看病している。
ふう…とりあえず落ち着いたか。
かぐやを宥めるのが1番苦労したぞ。
風邪で人は死なん!いや、死ぬ時は死ぬけどな?って言ったのは脅しすぎたか。
今のかぐやは生後1ヶ月なのもあって人の生死に疎いんだよな…まあこればっかりは8000年の中で実感を得るしかないか。
うーん、病院に連れていくのが1番なんだけど、彩葉が行きたくないってゴネるからなあ。
お金のことはもうあんまり気にしてないっぽいけど、病院に行って入院するかもしれないって考えると二の足を踏むんだよな。
それで重症化したら元も子もないというのに。
今回は常備薬と自宅療養で回復しそうだし見逃してやるか。
そこら辺の意識改革もしておかないと…課題は山積みだな。
子どもが熱出してるのに病院に連れていかないって医療ネグレクトだろ…と少し自己嫌悪に陥る。
そんなことを考えているとかぐやがリビングにやって来た。
「優希!彩葉が起きたよ!」
「おう、俺も様子を見に行くよ」
「彩葉ー、大丈夫かー?」
ガチャリ、と扉を開けるとかぐやの私物であろうふかふかぬいぐるみに包囲されている彩葉の姿が視界に入った。
いや、そんなにもこもこしてたら暑いだろ。
「ねー、彩葉…やっぱり病院行こ?かぐやもついて行くから!」
「病院はお金かかるからやだって言ってるじゃん…」
「そんなもん、かぐやに任しときっ」
「彩葉ちゃんお金で解決できるなら解決すればいんだよ」
でもそうじゃないんだよな。
「やっぱり、無理だよ…」
「全部ギリギリで予定組んでるから…何日も休んだら、もう追いつけないよ…」
「そしたら奨学金も…出ないかも…」
彩葉が弱音を吐いた。そんな珍しい姿にその場にいた全員の目を奪われる。
「「彩葉…」」
「彩葉ちゃん…」
うーん、母親の呪縛がすごい。まあ呪縛じゃなくて彩葉が母親の幻影を追いかけてるだけなんだけどな。
早く覚醒かぐやになって彩葉の目を覚まさせてあげてくれ。それが本当に彩葉のやりたいことなの?ってね。
「何で彩葉は、そんなに1人で頑張らないといけないの?」
「俺も聞きたかったんだよな。何がお前をそこまで駆り立てるんだよ」
「彩葉ちゃんも少しは肩の力を抜いてゆっくりしようよ」
母親に褒められたかったから母親の真似をするって不器用すぎるだろ。褒めて伸ばすウチの教育方針とは真反対すぎて油と洗剤だよ!
「うっ、うっ…かぐやのせい?かぐやもめっちゃ無理言っちゃったし…彩葉ぁ、死んじゃったらヤダぁ〜」
やべ、脅しすぎたか。
かぐやが大粒の涙をこぼして泣き始める。ここまで泣くかぐやも珍しいな。
「お、大げさな…死にゃしないよ」
「だって、映画とかだと人間ってすぐ死ぬじゃん!そんでゾンビになって生まれ変わって転生して宇宙に旅立って…わー、彩葉行っちゃやだー」
こいつ何の映画を何個見たんだよ。混ざりすぎ混ざりすぎ。
「何個の映画がごちゃ混ぜになってるのよ、大丈夫だから」
泣いているかぐやを落ち着かせるため、病人の彩葉が看護人のかぐやの背中をさすっていた。
逆ぅ〜!
泣き止んだかぐやは、
「何で彩葉は、そんなに1人で頑張らないといけないの?」
と改めて彩葉に尋ねる。
「…」
黙っている彩葉を見て、
「「う〜ん、う〜〜〜ん…」」と唸り始める2人。
こうやって揃うとめっちゃ似てるなこの2人。
そんな2人の様子を見て少し気が楽になったのか、彩葉はぽつりぽつりと語り出した。
『死んじゃったお父さんの話、出て行ってしまったお兄ちゃんの話、変わってしまった母の話、正しさに潰されそうになった私の話。
母ならきっとこんなふうに体調を崩したりなんかしないだろう。
私は母が風邪を引いているところを見たことがなかった。母は誰よりも正しくて強くて完璧で、母から見れば私はずっと何かが足りなくて。
だから私も出て行くことを選んだ。母が出来たこと、母が通った道を、1人で正確になぞることができて初めて私は母と対等に向き合えるのだと思った』
と、彩葉は語る。うーん、やっぱり歪んでんな。
「それで、私が1人で学費も生活費も賄うならって、やっと折り合いついたんだよね」
「えらい簡単に言ってるけど、みんなそんなことしてなくない?」
「少なくとも俺はそんなことしてないな。親の脛を齧りまくって大学卒業までしたぜ」
「「優希…」」
「優希さん…」
え、なにそのゴミを見るような目。俺のガラスのハートが木っ端微塵に砕け散るよ?
それに親はこの世界にはいないから、寄生先はすでにヤチヨになっているんだがな、がはは。
…あい、すいません。だから、俺の脳内に毒電波を流すのはやめてくださいヤチヨ様。
「はあ…お母さんはそのくらいのこと平気でやってたし、私も譲らなかったし」
さすが、超人の親は超人だな。
「1人暮らしを始めた最初の日のことよく覚えてる。何にもないし、誰にも頼れないけど、自分の力で生きるんだって思ったらめっちゃ力湧いてきた」
「なんかラッキー…みたいな?」
どこがやねん。
俺もヤチヨがいなかったら、彩葉みたいにたくましく生きるしかなかったのかな…
「いやいやいや、ラッキーじゃないっつーの!宇宙人調べでもそのお母さん激ヤバおかしいって!」
「地球人調べでも毒親に分類されるね」
「街中でアンケートしたら9割の人がそう答えると思うよ〜」
「みんなには…」
「え?」
「ううん、何でもない」
そりゃ分からないし分かりたくもないよ。それが当然だと思うって、教育じゃなくて洗脳じゃんね。
でもさ…
「彩葉は1つだけ勘違いをしているぞ」
「彩葉はすでに正確に母親の道をなぞることはできないのだよ」
「なに?」
「だって、俺たちがいるじゃん」
「!」
「あとさ、なぞらないとダメなのか?」
「母親と対等になるために母親の真似をするってそれ、コピーがオリジナルに勝てないやつじゃん」
「母親に認められたい、褒められたいならもっと別の偉業を成せばいいだけじゃね?」
それこそ、五感のある義体の開発とかね。あとタイムマシンも欲しいなー?
「…」
途端に悩み始める彩葉。
おうおう悩め悩め。
「そんなら、かぐやは彩葉を助けるために晩御飯作ってくる!」
「私も行くよ〜」
とバタバタと2人が部屋から出て行く。
「な?彩葉はもう1人じゃないんだ」
「悩んだら近くにいる誰かを頼ればいいんだよ」
「…」
「説教臭くなっちゃったな、じゃあ俺も戻るわ」
これで何かが変わるとは思わないけど、少しは彩葉の意識が改善されればいいな。
続きません
どっかで書きたかったけどタイミングないから投下
【タピオカラーメンを食べるかぐやを見て】
うおっ!舌がすげぇ伸びとる!さすが宇宙人。
なんていうか…その…下品なんですが…フフ…
下品なんでやめておきますね…
私も出来るよ!とユキもラーメンを啜った時に飛び散ったタピオカをカメレオンのように伸ばした舌で絡め取って食べる。
なんていうか…その…下品なんですが…フフ…
下品なんでやめておきますね…