暗い教室でアグネスタキオンとマンハッタンカフェが会話をしている。
アグネスタキオンはある事に気が付いたみたいだが…

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第1話

「なぁカフェ」

 

「お断りします」

 

「おいおい、まだ何も言ってないじゃないか」

 

「どうせ新しい薬を飲ませようとするんでしょう?」

 

「まったく、私をマッドサイエンティストか何かだと思っているのかい君は」

 

「えぇそうです」

 

「えぇー!、私はサイエンティストだがマッドではないだろう!?」

 

「・・・彼女も、私の意見に同意のようです」

 

「はぁ、カフェの友人の君までそんな大きく頷いて・・・」

 

「で、結局なんの用なんですか、聞くだけ聞きます」

 

「ふむ、いや今さらではあるんだが、私はこのラボに籠りっきりで外に出ていないなと思ってね」

 

「・・・」

 

「そういえば、トレーナー君にもしばらく会ってない気がするし、そろそろ外出しようかと思うんだ」

 

「・・・」

 

「なぁカフェ、なんで君はずっと私と一緒にここに居るんだい?」

 

「・・・」

 

「おかしいと思ったんだよ、いつも気がつくと君がそこに居る。まるで私をこの部屋から出すまいとする様にね」

 

「タキオンさん・・・私は・・・」

 

「そこの君もそうさ、カフェの友人という事しか知らないが一体誰なんだ?君たちはなぜここに居るんだ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「おーいカフェー?だんまりじゃ何もわからないぞー」

 

「タキオンさん、以前私の見えない友人について話をしましたね」

 

「あぁ君がいつも話しかけていたイマジナリー・・・いやすまない、友人のことだろ?」

 

「えぇ、そうです。その友人というのが今ここにいる彼女です」

 

「なんだって?私はてっきり君の話す友人というのは幽霊か何かだと思っていたのだが、なぜ姿が見えるんだ?私にカフェのような力が宿ったという事かい?」

 

「いいえ、違います」

 

「では、彼女の方に変化があったという事かな、実に興味深い」

 

「いいえ、それも違います。彼女は以前と何も変わっていません」

 

「ほう、ではなぜこんな現象が起きているのかな?カフェ」

 

「・・・・・・タキオンさん、あなたが亡くなっているからです」

 

「は?」

 

「タキオンさん、できるだけ落ち着いてください。あなたは既に亡くなっているんです」

 

「おいカフェ、いくら何でも冗談が下手じゃないか?これを見たまえ、私はさっきからこの椅子に座って試験管を握って・・・」

 

「・・・気がつきましたか、そこには最初から何もありません。私からは、あなたは何もない空間に浮かんでいる様にしか見えていません」

 

「あ、え、」

 

「タキオンさんが亡くなってから既に一週間が経っています。あなたの遺品はすべて撤去されていて、残っているのは元からあったこのソファと机だけ・・・」

 

「待ってくれ、私はどうして死んだんだ?なにも覚えてないぞ?」

 

「・・・タキオンさんは、寮の部屋で心不全による心停止で亡くなったと聞いています。発見したのは同室のデジタルさんです・・・」

 

「・・・」

 

「ショックを受けるのは当然です。本当に急だったのでしょう」

 

「ショックではあるが・・・、目の前の現実を受け止めないといけないねぇ・・・」

 

「学園の皆さんもかなりのショックを受けていました。あなたのトレーナーさんもそうです」

 

「そうか、彼にも申し訳ないことをしたねぇ。今会いに行ったら驚いてしまうかな」

 

「・・・残念ですが、タキオンさんはトレーナーさんに会えません」

 

「それはなぜだい?」

 

「あなたが亡くなった後、魂だけがそれに気づかずにこの部屋に来てしまったのでしょう。しかし、あなたが今自分が死んだと自覚した以上、もうそう長くは留まれません」

 

「私はいずれ消えるということかい?」

 

「はい・・・、おそらくは今夜のうちに」

 

「そこに居るカフェの友人の様に残れたりはしないのかい?」

 

「彼女は、タキオンさんとは存在自体がかなり異なります。なので・・・」

 

「・・・そうか、・・・・・・そうか」

 

「私はあなたを見届けるために、毎晩この場所に来ていました。あなたの中では私がいつも居た事になっていたようですが・・・」

 

「死んでからも君に迷惑をかけてしまったねぇ」

 

「そんなことはありません。私にとってここは、あなたに会える最後の場所ですから・・・」

 

「なんだい、意外と寂しいと思ってくれていたのかな。・・・ふむ、確かに今夜消えるというのは間違いなさそうだねぇ」

 

「タキオンさん・・・体が消えかけて・・・」

 

「そのようだ、幸い痛みとかは感じないようだ」

 

「ごめんなさい、私があなたに自覚させてしまったせいで・・・」

 

「気にしないでくれたまえ、元々死んでいるのだし、それにいずれ自分で気がついただろうさ」

 

「・・・」

 

「ところでカフェ、なにか文字を書く物持ってないかい?」

 

「スマホならありますが・・・」

 

「それで構わない、今から言う事を記録してくれないか」

 

「・・・わかりました。・・・あ、いえ、私の友人ならタキオンさんの声を直接録音させられるようです。」

 

「そうなのかい、ずいぶん便利だな。まぁ音声の方がいいだろう。よろしく頼むよ」

 

 

「・・・よし、以上だ。なんだか恥ずかしいなこれ、まぁいいかどうせ最後なんだしな」

 

「もう・・・いいのですか?」

 

「あぁ、その記録をトレーナー君に渡してくれ」

 

「えぇ、必ず・・・」

 

「それじゃカフェ」

 

「はい」

 

「ありがとう、さようならだ」

 

「・・・っ!、はい・・・」

 

「おや、君が泣くところなんて初めて見たねぇ、やれやれ記録に残しそびれたよ・・・」

 

「それは・・・こっちのセリフです・・・」

 

「」

 

「さようなら・・・タキオンさん」

 

 次の日

 

「君は・・・」

 

「お久しぶりです。タ・・・トレーナーさん」

 

「・・・あぁ、久しぶり。何か用かい?」

 

「信じていただけるかわかりませんが、亡くなったタキオンさんからあなたへのメッセージを届けに来ました」

 

「なんだって?いったいどういう・・・」

 

「タキオンさんは亡くなった後、研究室に魂だけ存在していました。私は昨日まで彼女に会っていたんです」

 

「もしかして今もそこに居るのか!?」

 

「いいえ、彼女はもう完全に消えてしまいました」

 

「そうか・・・、できれば俺もタキオンに会いたかったが・・・」

 

「信じて・・・いただけるのですか?」

 

「あぁ信じる。君はこんな嘘をつくような子じゃないと思うし、タキオンから少し話は聞いていたからね」

 

「ありがとうございます。先ほど会いたいとおっしゃっていましたが、おそらくそれは難しかったかと」

 

「それはどうしてだ?」

 

「まず、あなたではタキオンさんの姿を見ることができません。そして、タキオンさんがそれに気がついて自分が死んだと自覚すると・・・タキオンさんの魂は消えてしまいます」

 

「そうなのか・・・、タキオンは研究室でどんな様子だった?」

 

「ある意味でいつもと変わりありませんでした・・・」

 

「・・・なんとなくだけど想像できるよ、君は何度かタキオンと会っていたのかい?」

 

「えぇ、毎晩あの場所に。本当にごめんなさい、私だけ会いに行ってしまって」

 

「君が謝る必要はないよ」

 

「いいえ、私は自分のためだけにタキオンさんと会っていました。そして昨日、彼女は気がついてしまった・・・」

 

「いいんだ、いいんだ・・・!君の気持ちはよくわかる。とてもね・・・」

 

「・・・今、タキオンさんの音声記録をスマホに送りました」

 

「わかった、後で聞いてみる」

 

「えぇ、では」

 

「なぁカフェ」

 

「はい、なんでしょう」

 

「タキオンに、未練はあったと思うか?」

 

「それは・・・その記録を聞けばわかるかも知れません」

 

「そうか、タキオンのためにいろいろありがとうな」

 

「私の・・・少ない友人の一人だったので・・・」

 

「あぁ、タキオンも君のことを友人だと言っていたよ」

 

「はい・・・ありがとうございます」

 

「やぁトレーナー君。突然の別れになってしまってすまないねぇ、私だってついさっき知ったんだ、許してくれたまえよ」

 

「さて、あまり長くはなさそうだから手短に言うよ」

 

「私にはやりたいことが沢山あった、それがこんな形で潰えてしまうなんて口惜しくてたまらないよ」

 

「せっかくトレーナー君やカフェという協力者を得られたのに・・・」

 

「でも、いいのさ」

 

「私はいつも全力で駆け抜けていたとも、道半ばだったのは残念だが、後悔はしていない」

 

「私の研究記録は取ってあるだろう?それがいつか役に立つかも知れない」

 

「きっと、私のような者が今後現れる。そしたら君がその者のサポートを・・・」

 

「いや、このお願いはやめとこう。君はもう自由なんだからな」

 

「とにかく、私の事はあまり気にしないでくれたまえ、トレーナー君はトレーナー君の道を進めばいい」

 

「・・・それじゃあこれから最後のメッセージを送る」

 

「心して聞いてくれよ?・・・一回しか言えないからな」

 

 

「トレーナー君、今までありがとう、君は最高の助手だった」

 

Fin













こちらは二次創作「向夏」の解説or補足になります。
先に本編をお読みください。

・タキオンのトレーナーについて、この事件の後仕事に復帰しています。次に担当したウマ娘がどんな子なのかはわかりません。

・デジタルについて、本人はウマ娘との別れ(引退、退学など)ある程度経験していますが、今回にはさすがにダメージが大きくお休みしていました。描写をカットしていますが、タキオンはデジタルにも一言言葉を送っています。カフェからその言葉を聞いたデジタルは次の日から学園の活動に復帰しています。

・本編前半でカフェの「…」が多い理由は下手に発言するとタキオンが亡くなった事に気が付いてしまうため

・モルモット呼びしてない件について、このお話の中ではモルモット呼びは少しふざけているかつトレーナー本人にだけしか言わない設定です。

・タイトル「向夏」の意味(実馬ネタがあるため閲覧注意)


向夏は6月の下旬を指す言葉
そして実馬のアグネスタキオンの命日は6月22日


余談
私はアグネスタキオンに一目惚れしてウマ娘を初めたくらいタキオンが大好きなので、タキオンの悲しいお話はつらいです。
このお話もあくまでIFとして、今ウマ娘で活躍しているタキオンを応援して欲しいと思っています。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想などあればぜひコメントください。

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