Fate/ZERO-ONE Others night   作:古鉄の夜

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私は仮面ライダーFateが好きです。

現在、執筆中の小説に詰まってしまった……ので、設定を新たにしたこの小説を執筆していきます。



序章
序節 プロローグ 前編


 間桐の屋敷、その長年の魔術の知識を保管する書斎。

 年代を感じさせる木造の扉が開かれ、一人の少年が現われた。

 間桐慎二(まとうしんじ)。間桐家の長男であり、穂村原学園に通う中学二年生だ。

 

「あ……」

 

 廊下で慎二の姿を認めた少女が小さく声を上げた。少女の名は間桐桜(まとうさくら)。歳は慎二の一つ下。慎二にとって義理の妹にあたる。

 

「……ん? ああ、桜か……お前も本を読みに来たのか?」

 

「い、いえ。自室に兄さんの姿が見えなかったので、ひょっとしてここにいるのかなと思って……」

 

「? なんの用だ?」

「……兄さん、今、何時だと思っているんですか?」

「ああ~、朝から読み耽ってたからもうこんな時間か……朝食も食べてなかったし、意識しだしたら腹が……」

 

 慎二は窓の外、高く登った太陽の光を見つめ、今さら鳴り出した腹をさすりながら呟いた。

 そんな兄の姿に桜は一つため息を吐いた。

 

「昼食の用意、出来てますから一緒に食べましょう」

「わかった。行こう」

 

 二人は微妙に間を空けて食堂までの廊下を歩く。

 会話は無い。

 慎二も桜もお互いにどんな言葉をかければいいのか考えあぐねていた。

 この数年、ずっとだ。

 間桐の家は魔術師の家系。三百年以上の長い歴史を持つ。

 魔術師の総本山、ロンドンの時計塔においても大きな発言力を持つ家系ではあったが、間桐がまだマキリであった頃、ある魔術を完成させるために日本に渡った。

 名を間桐に変えて冬木に移り住んだが、その頃から間桐の血筋に衰えが見え始めた。冬木の土地柄に間桐の魔術は相性が悪く世代を重ねる毎に魔術師としての命と言える魔術回路が閉じ始め、慎二の代で遂に絶えてしまった。

 だが、それがどうした。魔術が使えずとも自分は選ばれた家系の人間。勉強もスポーツも努力すれば自分はそれなりにこなせた。ならば魔術だって――

 それから家の書斎で魔術書を読み漁り、魔術をどうにか行使できないか様々な試みを行った。しかし――その努力は悉く失敗した。

 分かった事といえば魔術回路が閉じきり、魔術の源泉たる魔力を捻出できないこの身ではどうあっても魔術は行使できないという冷厳たる現実のみ。

 

 

 そして、桜――この少女が間桐の家にやってきたのは慎二が小学生だった時。当時、慎二は一人っ子だったため、兄弟というものに憧れを感じていた。父も祖父も仕事で家を空けていることが多く、食卓も使用人の作る料理を一人きりで食べるだけ……

 家は裕福なのかもしれないが、寂しさは拭えなかった。

 だから桜が家に引き取られてきた時、単純に慎二は喜んだ。

 引き取られてきたばかりでおどおどしていた桜に慎二は間桐の家に早く馴染めるように、優しく接した。彼なりに良き兄になろうとしたのだ。

 努力の甲斐もあってか桜の表情も徐々に明るくなってきた。時々、自分を悲しそうに見ていることが不思議だったが……

 

 だが成長し、物事が分かり始めるにつれその視線の意味に気付くことが出来た。自分には魔術回路が無い。この間桐の家を魔術師として継ぐことはどうあっても出来ない。

 桜はこの冬木を管理する魔術師の名家、遠坂の出身。その身に宿す魔術師としての才は慎二とは比べ物にならない。ならば桜がこの家に貰われてきたこと。その意味する所は一つ。魔術師として使い物にならない自分に代わり、間桐の後継者に据えるためだろう。

 

 ……では桜が自分を見ていたのは憐憫ゆえか。どれだけ努力しようと決して魔術師になれない可哀想な兄。養子でしかない自分に家督を奪われる惨めな長男として自分は見られていたというのか?

 

 ふざけるな! お前に憐れまれる覚えなんてない! なってみせる! 僕は必ず魔術師になってみせる!

 

 そして慎二は更に魔術にのめり込んでいった。それに比例して桜に接していた時間は減っていった。いや、自分から避けていた。あの目で見られていたら、自分の内にある劣等感、嫉妬心が吹き出しそうだった。このどす黒い感情をそのまま言葉にして吐き出してしまえば桜をどれだけ傷つけることになるか……

 自分が家を継げないのは桜のせいではない。自身の才能不足。生まれつきの才能は誰にも選べないのだ。

 桜も生家である遠坂から自分の意思とは無関係に引き離されて、辛い思いをしている。

 夜、一人で眠れないと自分の部屋を訪ねてきた桜と同じベッドで眠った事があった。寝言で父母と姉をか細い声で呼びながらすすり泣く姿を慎二は知っていた。ここで自分までが桜の手を離してしまったら……

 

 僕は桜の兄なんだ! 妹に当たり散らすなんてそんなみっともない真似だけはしたくない!

 

 兄としての意地。それが妹への嫉妬から慎二をかろうじて踏み止まらせていた。桜もまた、自分に気を使ってか話しかけてくることは少なくなっていた。交わされるのは最低限の事務的な会話のみ。

 

 ……けどそれももう終わりにするべきなのかもしれない

 

ここ数年、魔術を身に付けるためにあらゆることをしてきた。しかし、ついに魔術を行使することは叶わなかった。

悔しいが認めるしかない。ならば自分がこれから取らなければならない行動は――

 

「……桜」

「――はい! 何ですか、兄さん?」

 

 神妙に自分の名を呼ぶ兄に若干、驚きながらも桜は慎二に顔を向ける。

 

「この家はお前が継げ」

 

 慎二もまた桜の顔を見据えながらはっきりと告げた。

 

「……え?」

「この数年、魔術を身に付けるために努力してきたけど、どうあっても駄目みたいだ。やはり僕では魔術は使えない。……だから間桐の家と魔術はお前が継ぐんだ、桜」

 

 慎二のその言葉を受けて桜はしばらく顔を俯かせていると、ぽつりと呟いた。

 

「……兄さんは、それでいいんですか?」

「良いも悪いもない。歴史ある間桐の魔術を僕の代で潰えさせるわけにはいかないだろう? お前には間桐を継ぐ才能があるんだ……僕にはできないことだ。それを誇れ」

 

 桜の顔は前髪に隠れて見えない。しかし慎二は更に言葉を重ねる。

 

「……お前に、託す」

 

 声が震えないように必死に自制しながら。

 

「……兄さんはこれからどうするつもりなんですか?」

「そうだな、今まで魔術一辺倒でやってきたからな。今すぐは思いつかないが……色々やってみて自分の道を探していくつもりだよ」 

 

 兄の言葉を受け止めながら桜は疑問の言葉を投げかける。慎二は一息つきながらそれに答えた。

 窓の外から覗く日光に目を向けながら慎二はもう一つ自分が考えていたことを桜に告げる。

 

「……桜、これからはもっと話そう」

「え?」

 

 俯けていた顔を上げて桜は慎二を改めて見つめなおした。

 

「これまで魔術が使えない自分が認められなくて、お前をずっと無視してきた。……すまなかった。これからはしっかりお前と向き合う努力をしていくよ」

「そ、そんな……兄さんが謝ることなんて、無いです」

 

頭を下げる兄の姿におろおろしながら顔を上げてくださいと頼む桜。不意の事態に弱いところは昔から変わらない。

 

「お詫びには安いかもしれないが、今度の日曜、新都に出かけてみないか? たまには兄妹水入らずであちこち見て回るのもいいだろう……桜は何処か行きたい所、見てみたいものとかないか?」

「……! い、今すぐはちょっと思いつきませんけれど、明日までには考えておきます!」

 

 慎二の言葉に桜ははっと顔を上げると瞳を輝かせて、そうやってまくし立てた。両のこぶしが胸の前でグッと持ち上げられている。

 

「あ、ああ。まだ数日あるし、そう急いで結論を出さなくてもいいぞ。さて、朝昼兼用の飯を腹に入れるとするか……」

「はい! 兄さん! 今日の献立は白米にわかめの味噌汁、鯵の開きときんぴらごぼうですよ!」

「なんで献立を力説してるんだよ、お前は……」

「朝ご飯、抜いちゃったからお腹減ってるでしょう? 沢山おかわりしてくださいね」

 

 ウキウキしながら話す桜に若干、呆れつつも慎二はまんざらでもないと笑顔を浮かべながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――可可可ッ、いやぁ、いかんなぁ、いかんぞ、慎二……そんな聞き分けの良さではつまらぬ。退屈じゃ。お前はもっと、もっと鬱屈してもらわなければ『儂が』つまらぬではないか――

 

――屋敷の何処かで蟲がキチキチと音を立てたが、数年ぶりに笑顔で会話を楽しむ兄妹は気付かなかった……

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