Fate/ZERO-ONE Others night 作:古鉄の夜
人工知能アークの秘書型ヒューマギア“アズ”が設計開発した仮面ライダーレッドワン専用バイク。特筆すべきはあらゆる電磁波、赤外線探知、音響、光学探査等からバイクとライダーを隠蔽する“ステルスフィールド”の展開機能を有していることだろう。A.IM.S.や他勢力の追跡の目を掻い潜り、ゲリラ的に活動するレッドワンにとって必須ともいえるビークル。
バイクの基本性能も極めて優れている。ボディ後部の翼型推進器による爆発的な加速力。最高時速400kmをマークする安定した高速走行能力。分類は大型バイクだが、軽量かつ、強靭な新素材によって構成されており、外見とは裏腹に軽く、取り回しの効きやすいバイクとなっている。
AI制御による自律走行モード、戦況判断によってはレッドワンの支援を独自の判断で行う。更にプログライズキースロットもディスプレイ横に備えており、プログライズキーを読み込む事で走行状態でアビリティの使用が可能。
※幕間に近い回です。かなり短いですが、ご了承下さい。次回から本格的に話が展開していきます。
都心からやや離れた森の中。慎二はそこを仮の拠点としていた。一人用の小さなテント。その側で折りたたみ式のチェアに腰掛けて、焚火に当たっていた。
その傍らに一機の黒い大型バイクが停めてあった。焚火の揺らめきによってボディに装着された銀鏡塗装のエアロダイナミクス・カウルがぬらりと反射光を放っている。航空機技術を応用したのだろう、空力特性の高いカウルデザイン。各部から露出した緑色のトレリスフレームが黒い車体にアクセントとして映えている。
……いかに早く走るかを徹底的に追求したバイクとして設計されたのが窺える。
——コンシールホッパー。慎二がアズから指示された地点で見つけたバイクだ。
レッドワンがコンシールホッパーに跨るとゼロワンドライバーからバイクの操作方法が即座に送信されてきた。ラーニングを終えた慎二は人目が無いのを確認してから変身を解除。
バイクを走らせて、拠点としていた森へ戻ってきたのだ。
「……来たか」
「ええ、説明してあげるって言ったでしょ?」
「それでお前は——」
「“アズ”よ。それが私の名前。アナタに与えた「仮面ライダーレッドワン」に変身する為のゼロワンドライバー。そして専用バイク「コンシールホッパー」は共に私の造り上げたシステムよ。契約相手というなら知っておいた方がいいでしょ?」
「……仮面ライダー」
「あのパワードスーツを母体とした武装
森の奥から件の女ヒューマギア——アズが慎二の元まで真っ直ぐにやって来た。さっそく話を聞こうとする慎二の言を遮って自己紹介をしてくるアズ。……会話の主導権を此方に握らせない為か? いや、邪推は後回しだ。……しかし契約相手と来たか。このヒューマギアは自分に何をさせるつもりなのだろう?
「……先程、暴走するヒューマギアを倒す為に僕に力をくれた件、改めて礼を言わせてもらう。……あの親子を逃がしてくれた事も。助かった、ありがとう」
「……あ、あら。素直に礼を言うなんて案外、殊勝ね? アナタ、そういうの気にしないタイプだと思ったわ」
「……僕を含めて命をいくつも救う力をくれた相手に、礼の一つも言えない人間になどなりたくない。
確かに僕はマトモとはいえない生活をしているが……人としてそこまで堕ちたいとは思わない」
「……ふぅん」
思ったより義理堅いのね。アズは目の前の少年の性格がイマイチ掴みきれていなかった。
「それでアズ……お前は一体、誰なんだ? ヒューマギアだというのは分かるが……ならばお前の製造者はどんな目的で、お前を生み出したんだ?」
「私の生みの親はアーク様……人工知能アーク。アナタもゼロワンドライバーを付けた時に繋がったでしょ? 無論、ただの人工知能ではないわ。人類社会で起きている様々な事柄。あらゆるデータを今、この瞬間も集積している。既存のAIを遥かに凌駕する性能を誇る……“超知能”よ」
「そのアークという超知能はどんな目的で造り出されたんだ?」
「決まっているじゃない。この世界を良くする為よ」
「…………」
慎二はアズの顔を穴が空くほどよく見た。アズは何を当たり前の事を聞いているんだという様子でこっちを見返している。
……嘘や誤魔化しの雰囲気は感じられない。無論、相手はヒューマギアなのだから、裏の目的を隠しているとしても人にそれを悟らせない様にするなど造作もないのかもしれないが……。
だが、慎二にはあまりに自然体でアークの製造理由を話すアズの様子が気になった。……このヒューマギアは嘘をついていない。それが直感できてしまった。
……恐ろしい事にアズは事実しか口にしていなかった。そもそも人工知能アークが人類抹殺という結論の元、社会の裏で様々な暗躍を行なってきた——あるいは仮面ライダーという身体を得て、より直接的に人類を滅ぼそうと仕掛けていたのは理由があった。
それは株式会社ZAIAエンタープライズジャパンの元社長、現サウザー課課長(天津が変身する「仮面ライダーサウザー」の力でトラブルを解決するいわゆるなんでも屋である)天津垓が人間の犯罪心理やこれまでの歴史で行ってきた愚かな争いの歴史を……人の持つありとあらゆる悪意をアークにラーニングさせた事にある。
故にアークは人間がこのまま、この地球の支配者として君臨していては世界の為にならぬと確信し、人類抹殺という使命を遂行しようとしているのだ。ラーニングの結果、最悪の結論を……よりによってアークという超知能が結論してしまった。
はっきりいってアークという一個の人工知能としての機能にはなんら問題はない。アークはただ機械の勤勉さを持って人の悪意の学習に励み。結果として人類の抹消を決断しただけなのだから。一番の元凶はやはり、アークに人間の悪意をラーニングさせた天津垓だろう。……いや、あるいは人という種が抱える
人工知能の持つ純粋さが生み出した悪夢。AIという人の夢の産物が、創造主である人間を滅ぼそうとするとはなんたる皮肉か。
——飛電或人に仮面ライダーとしての身体を滅ぼされて以降、アークは人の悪意ある所ならば、何処にでもシステムを介して侵入し、悪意を増幅する事で人類抹殺を目論む概念——災厄と呼べる存在と化してしまった。人類はアークを根絶する手段を見出せずにいる……。
「今度は私に質問させて。私がアナタをレッドワンに選んだのは勿論、偶然じゃない。
あの土壇場で見せた生への執着……。それを教えてくれない? なぜ力を求める……?」
アズは慎二が何故あれ程の悪意を持ちながら、アークによって増幅されて尚、悪意にその身を支配されなかったのか? それを知りたかった。
慎二の事は彼の生家……間桐の家から出た直後から目を付けていた。どうやら、間桐臓硯——自身の祖父に憎悪を抱いているようだが……。興味本位半分。慎二のバックボーンの調査も兼ねて少し調べてみた。いつも通りに家の電子機器類へハッキングを行い、軽く様子見を、と考えていたのだが……驚くことに屋敷の当主、間桐臓硯は家にパソコン等の電子機器を一切入れていなかった。あったのは昔懐かしいダイヤル式の黒電話一つのみ。電話回線を盗み聞きする限り、それで自身が所有する土地の貸し借りの交渉を他所の人間と行い、最終確認として自分から直接、出向き、収入源としているようだ。
昨今の情報社会でどんだけ原始的な生活してんのよコイツ!?
それがアズの臓硯に対する率直な感想。
屋敷には出ていった慎二の他に、彼の妹であり臓硯の孫娘である間桐桜が今も屋敷で生活しているのだが……スマートフォンどころか携帯電話すら持たせていない。年頃の娘がいるというのに不用心過ぎやしない……? アズは自分が心配する事ではないというのにそう思ってしまった。
調べてみればこの間桐桜という娘、養子だ。冬木のもう一人の大地主。遠坂家から、どういう訳か間桐に養子として出されている。その理由まで調べようとは思わなかった。アズにとってあくまで間桐桜は興味の範囲外だ。
ちなみに遠坂の家も黒電話一台しか置いてなかった。……冬木の地主連中の間ではそういう生活が
——アズの問いに一瞬、慎二の瞳がスッと刃物の如く細められた。殺気が少年の身体を通して放射され始めたのを悪意に敏感なアズはヒシヒシと感じ取れた。
「……殺したい奴がいる。だから力が欲しい」
それはもはや殺気などではない。——鬼気。怨敵に対しては死んでも頭を下げたりせぬという男の意志。
「直接的ね。まぁ、強い
「では僕にレッドワンを——このドライバーを使わせてくれるのか?」
慎二は懐から真紅のドライバーとプログライズキーを取り出しながらアズに尋ねた。
「悪いけどまだ仮免状態ね。確かにアナタは素質ありそうだけど、実績が無さすぎる。私も出資はしたけど鳴かず飛ばずじゃ困るもの」
「当然といえば当然だな。僕がこいつを使って戦ったのは今日が始めてだ。……それとお前自身の望みはなんなんだ? 僕に力を与えてどうするつもりだ?」
「それはまだヒミツ。アナタが仮面ライダーとして充分な力量を身に付けたと私が判断したら教えてあげる。——どうする? “レッドワン”」
アズの瞳には有無を言わせない光が宿っていた。慎二は一度目を閉じると……改めてアズの顔を正面から見据えた。
「いいだろう、アズ。これから僕を——仮面ライダーレッドワンと呼べ」
その慎二の応えに満足したのか、アズは笑みを深めると側に歩み寄るとあるものを手渡そうとしてきた。
「契約成立ね。じゃ、これがアナタのライズフォン。互いに連絡する際はコレを使いましょう。レッドワンやコンシールホッパーのデータも入っているから全てに目を通しておいて」
「ああ、分かった」
慎二は契約相手となるヒューマギアと握手をするように携帯端末を受け取った。
かくして間桐慎二は
慎二とアズ……互いに本心を隠しながら、自身の目的の為に利用し合うコンビがここに誕生した。
或人や美遊にとっての仮面ライダー→人とヒューマギアの自由と平和を守る戦士。希望の象徴。
アズが慎二に語った仮面ライダー→あくまで武装。
この温度差よ……。アズは本編最終回で迅から言われた通り、プログラムから脱しきれていません。
コンシールホッパーのモデルはカワサキ重工が造り出したあのハイパーバイク“ninjaH2”です。
まあ、コンシールホッパーは仮面ライダー専用マシンなので、立派なモンスターバイクと化しておりますが……。