竜宮城営業中   作:神ショー

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寒すぎませんか?なに春に巻き戻った?
台風来てるし梅雨に突入したんじゃないの?



ノックアウト

 

 

 本日のオススメは焼き鳥です。

適度な焼き加減と絶妙な焦げと肉のバランス、そして何より美味しいタレによる止められない止まらなさは犯罪級でした。

現にこの焼き鳥の噂をどこからが聞きつけた耳聰い赤龍がカウンターで山のようにモリモリと食べている姿は周囲のお客さんのド肝を抜いています。

 

 その他にも本日はお肉フィーバーに突入しています。

ステーキや生姜焼きなどおよそお肉で食べられる料理は軒並み半額となっており、それを求めて大盛況でした。

 

 

「駄菓子価格がさらに半額となれば、もはやそれはタダなのでは?」

 

「ありがてぇ、ありがてぇ。女将が今日も可愛すぎて串焼き十皿はいける」

 

「ルナちゃん私に食べさせて〜、あーん♪」

 

「ミオちゃそ、某らは近くの会場でコスプレ会をやってまするので、後でデータを送るでござる。その代わりサイコロステーキを五十皿オーダーするでやんす」

 

「・・・・・・そなたら旦那さまを誰も誘惑せぬのはどういう事だ!」

 

 

 とうとう現状に不満を爆発させたアオが、配膳をしながらプンプン頬を膨らせています。

それを見てあらゆる感情を吹き飛ばされた客たちは一様に手を合わせ始めましたがロロは微塵も気にしていません。

ルナもミオも一瞬だけ動きを止め、ドライグは何回か瞬きしていたのを見ると、彼女がどれだけ不動の器なのかが分かるでしょう。

 

 ちなみに初見の客はともかく、常連の間では余程のモノ好き以外はロロに手を出そうとはしません。

口説こうものなら旦那大好きドラゴンによる点穴突きが待っているからです。

食らうとしばらく独占欲怪獣の下僕として給仕をこなすことになり、ボロ雑巾のようにされるのを何人も見てきました。

 

 しかし訓練された常連客には苦ではなく、その試練を乗り越えてこそロロを口説くという一種の目標とすらなってしまっています。

アオにとって許し難いのは、その多くが女性ということもあるのでしょう。

 

 

「まったく、こやつらは旦那さまの良さを分かっとらん。我なんかより旦那さまを口説くほうが見る目があるというのに・・・・・・」

 

「そりゃお前、略奪愛を計画してるヤツらに気取られ───」

 

「はーいドラちゃんステーキよー」

 

「追加でデミグラスハンバーグとビーフシチューもあるの!」

 

 

 口を滑らせかけた、というよりほぼほぼ暴露してしまったドライグを封じるべく、近くの女性客たちが賄賂で拘束してしまい、続く言葉は紡がれることなく霧散してしまいました。

幸い、こういう所は難聴系キャラに耳を奇襲されているアオにバレることはなかったようです。

 

 しかし目の前にいるロロにはガッツリ聞かれてしまいましたが、危険なことには自ら近づかないようにしている彼女は無視することにした様子。

その行為が後に巡り巡って己の首を絞めることになるのかもしれませんが、常に今を全力で生きていることを完璧にカモフラージュしているロロにとっては痛手となりません。

その時はその時。

未来の自分へ全て任せるというスタンスでした。

 

 

「まあそもそも口説かれても靡かないんですけどね。悪いとは思いますけど。ですが、私を救ってくれたのはアオさんですから───皆さん知らないかもですけど、アオさんより私の方が重いんですよ?」

 

 

 突然のカミングアウトにより店内は正に阿鼻叫喚!

手を合わせて涙を流す者、感謝の言葉を叫ぶ者、あまりの喜びに庭駆け回る者。

あのドライグですら手を止めてロロとアオの間を視線で何度も往復させているのですから、常連客や身内に近しい者ですら知らないレア情報だったのでしょう。

この地獄の中で平然と動いていられるのはルナとミオの双子だけでした。

伊達に家族をやっているわけではなく、日常の些細な仕草などでロロの方が愛の重いことなど数年前にお見通しです。

 

 

 ロロの心がアオにしか動かせないと知り、ならば肉体の方へアプローチをかけようと意識を切り替えた集団が居ることはさておき。

 

 ルナとミオの配慮によって周囲のお客さんたちは徐々にいつもの日常へと戻ってこれました。

珍しい店主の惚気に当てられて正気を失ってしまったと笑いながら会話をする人々の姿は強かさすら感じられるでしょう。

 

 

「もぅ、お父さん急にあんなこと言わないでよ。お客さんでも訓練されてない人とかはショックを受けるんだからね。下手したら死人も出てたかもしれないんだから、今度からは惚気禁止!」

 

「そうそう。アタシがフィルターを張ってたからあの程度で済んだんだし、ちゃんと感謝してほしいのです」

 

「ミオ、ありがとうございます。あと別に惚気じゃなく事実を言っただけなので死人とか出るわけないじゃないですか。ルナは心配性ですねぇ」

 

「・・・・・・じゃあアレは?」

 

 

 ルナの指さす先。

そこには床へ突っ伏して燃え尽きたままピクリとも動かないアオの姿がありました。

ルナやミオの救護が意味をなさないほどロロにより投げられた危険物をマトモにくらい、今この時に至るまで外的刺激に対してマトモな反応を返しません。

 

 つまりロロが悪いのです。

 

 

「アオさん、疲れてたんですね。仕事中に電池が切れるなんて珍しいこともあるものです。呼びかけても揺すっても起きるどころかどんどん安らかな表情になっていくような気がしますし───」

 

「とりあえずお母さん邪魔だから裏に連れてくね」

 

 

 情容赦など母親の肚の中に掃き捨ててきたミオがアオをコロコロと転がしながら裏の居住スペースへ運んでいきました。

結構な扱いであるはずなのですが、それでも表情は変わらず安らかになっている辺りはよく分かりません。

 

 あるいはドライグにやらせれば一発で起きてくれたのかもしれませんが、「アレに触るのはちょっと・・・・・・」と遠慮されてしまったのでは無理強いをすることはロロには不可能です。

飽きてしまったのか途中からお客さんの対応という名の雑談をしに行っていたルナは最初から除外されていました。

 

 ちなみに、この間店舗運営は完全に滞ってしまっていましたが、常連にとっては突発的なイベントでしかないため少しも気にしている者はいません。

むしろ慣れないお客に対し自分の食べている大皿などをシェアしたりして、さり気なくお店をフォローしてくれていたりします。

普段からアオによる奇行を見ているので耐性が付いてしまったのかもしれませんね。

 

 





今回で一区切り。
次回はまたストックがある程度溜まったらになるので気長にお待ちください。
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