異世界転生 作:魔導科学
リリーさんに抱き締められた俺は「リリーさん?随分、大きくなられましたね?」と、声を掛ける。
「・・・リョウ、お姉ちゃんって言って」
「はい?えっ?そもそも、今は一体、どういう状況ですか?」
「・・・お姉ちゃん」
「はい。お姉ちゃん」
「・・・うん、カワイイ。今、汚いゴロツキ共が、この修道院を借金の形に、取ろうとしてる」
「で、何で俺は、子供の姿なんですかね?」
「・・・それは、分からない。でも、この姿も良い」
さっき、近くのプレイヤーに呼び寄せられて、他のプレイヤーの物語に転移したって、言ってなかったか?
「この話は、リリーさんの話ですか?」
「・・・そう、私がサイコロで出した」
「そうすると、呼んだのはリリーさんですか?」
「・・・私が転移した時は、誰かを呼ぶ様な話は無かった」
「そうなんですか?じゃ、他の誰かか?」
「・・・リョウ、これ掛けて『真実はいつも一つ!その名は、迷探偵コ◯ン!』って言ってみて」
そう言って、黒縁メガネを渡される。いっそ、その声優さんがユニットを組んで歌っていた、Wのつくガンダムの主題歌でも歌ってやろうか。
「ほとばしるリズムとエモーションを感じる。この胸の鼓動は・・・!」
「・・・!!リョウ、お願い、歌って」
そして何故か始まった、修道院でのお遊戯会と言うなの、ワンマンショー。
そう言えば、さっきリリーさんが借金の形にとか不穏な言葉を、口にして無かったっけ?
まぁ、取り敢えず歌い終わったら聴いてみよう。
「リョウは、この修道院の前に捨てられていたんです」と、修道服の老女がリリーさんに話している。
なるほど、そういう設定なのね。
「この子は、歌がとても上手で最近は『僕が大人になったら、アイドルになってお金を稼いで、みんながお腹いっぱい、食べれるようにするんだ!』なんて、言ってくれてるんですよ」
老女は、俺の方を見ながら微笑みを浮かべている。
えっ!
そうなの?
知らなかったよ!?
「・・・此処の子達は、みんないい子、リョウは更にいい子」
リリーさんの言葉が、非常にくすぐったい。
取り敢えず歌い終わり、リリーさんに話を聞こうとしたのだが。
「・・・アンコール。次は『ジャストなコミュニケーション』の曲を希望」
「分かりました。終わったら、話を聞かせて下さいね?」
「・・・お姉ちゃんは?」
「はい。お姉ちゃん、話を聞かせて下さいね?」
「・・・うん、いい子。ご褒美に、いっぱい話してあげる」
そんなこんなで、お望み通りあのWの主題歌の、アニメOP版の戦闘音が入っているバージョンを熱唱してみた。
「・・・やっぱり、あの重火器特化機体のガトリング音は素晴らしい」
「分かります!あの機体のガトリング音って、凄く燃えますよね!!で、先ほどの話を、お願いします」
「・・・お姉ちゃん」
「はいはい、お姉ちゃんお願い〜」
「・・・はい、は一回、でもカワイイから許す。話としては、此処に来たら、修道女が借金取りに絡まれてた、それを傍観してたら、チンピラに絡まれた」
「なるほど、サッパリ分かりませんね」
ジョ◯ョ風に言うと『あ・・・ありのまま今、起こった事を話すぜ!「俺は話を聞いていたのに、サッパリ理解が出来なかった。別に、難しい話をされた訳じゃ無いのに理解できない」 な・・・ 何を言っているのか、分からねーと思うが、俺も何を聞いたのか分からない。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・』と、いう感じなんだけど?
「リリーさん、もうちょっと、くやしくお願いします」
「・・・詳しく?それとも、チクショウとか、クソとか言いながら?」
「申し訳ありません。詳しく、お願いします」
「・・・うん。じゃ、ちゃんとお姉ちゃんに、お願いして?」
その瞬間、俺の脳内では前世で聴き込んだ、例の『大きいお友達向けゲーム』の主題歌が再生されていた。
あの電波ソングの女王が、甘く『ねぇ、・・・しよ?』とねだるような、中毒性の高いあの名曲だ。
「・・・リョウ、どうしたの?」
「いえ、何でもありません」
まさか、おっきなお友達向けのゲームの主題歌を思い出してたなんて、言えるはずがない。
「・・・生意気いうのもオッケーだよ!寝坊をするのも全然オッケー!相談事ならスッキリばっちり、お姉ちゃんにまかせなさい!」
「ブッ!? ゴホゴホ!?な、何故そのフレーズを?!」
「……お姉ちゃんだから、分かる」
まさか、『ちゃんとしようよ』と窘める側のはずの『姉』が、あんな甘い声で誘惑してくる電波ソングを思い出してたなんて、言えるはずがない。
・・・というか、なんでリリーさんは俺の脳内BGMを完璧にトレースして歌詞で返してくるんだ!?
俺の脳内、この双六のシステムで生中継されてるのか!?