異世界転生 作:MSZ-006
さて、いつもニッコリと笑う邪神が、すぐ側に這い寄って来そうな混沌とした朝食会は終わり、お出掛けだ!
「天気よくて、良かったね〜!ポカポカしてて、いっぱい寝たのに眠くなってくる!」
「そうね。本当、お出掛け日和ね」
めぐりちゃんと、カオリが会話しながら歩いている。
うん、平和だな〜。
こんな平和な日常が、続いてくれれば良いんだけど・・・。
暫く、ほのぼのと皆で雑談しながら道を歩いていると、それを切り裂くような悲痛な叫び声が響き渡った。
「いやぁ〜!?あなた〜!」
その悲痛な叫び声をあげる人物がいる方を見ると、同心や岡っ引きが集まり更に人集りが出来ている。
「なんだ?」
「何かしら?リョウ、ちょっと見てくる」
「俺も、行くよ」
他のメンバーを先に行かせて、俺とカオリは人集りに近付く。
すると小煩い上司が、他の部下に指示を出している。
「おはようございます。何かあったんですか?」
「彩刃さん?貴方、今日はお休みでしたね?良いですね〜、私たちは一生懸命、お勤めしているのに」
「申し訳ありません。それで一体、何の騒ぎですか?」
「また、自害ですよ。今度は、切腹です!後、こんな書き置きがあったんです」
手渡された紙に「御免」と短く応じて目を落とすと、そこには『大黒屋の悪行、許すまじ』と血を吐くような文字が並んでおり柳の下で浪人が切腹している。
そのすぐ傍に浪人の奥さんと覚しき女性が、泣きながら同心に止められている。
「また、大黒屋ですか?」
「そうですね。この浪人は、大黒屋から大名家に、仕官の話が出てたそうなんです。奥方から、先程そんな話を聞きました。でも士官の話は、うまく行かなかった様ですね」と、小煩い上司は、泣き崩れる奥さんを眺めながら言った。
「大黒屋に、紹介料を支払ったとか言ってましたが、取り敢えず大黒屋の店主に聞き込みに行きます。彩刃さん、休みだからと言って、のんべんだらりとしていないで下さいね?我々、町奉行所の面子ってモノがあるんですからね!皆さん、行きますよ!」
俺とカオリは、小煩い上司に頭を下げ見送った後、なんともやりきれない気分になっていた。
「奥さん、大丈夫かしら?」
「分からん。だが、俺達には何もしてやれない」
無言で歩く二人。
暫く歩くと、ミリィさんの芝居小屋が見えて来た。
ミリィ一座の芝居は、大人気らしく入り口は、行列になっている。
他のメンバーは、もう中に入ったかな?
と、周りを見渡すと「これはこれは、お役人様。本日は、お休みですかな?」と、物腰低いが何処か馬鹿にした様な態度の大黒屋店主が、前に立っていた。
「さっき其処の通りで、浪人が切腹しててな。その件で上司が、お前の店に尋ねて行ったぞ?」
「左様でございますか。浪人と仰いましたな。そう言えば、ウチが大名家に出入りしている縁で以前、仕官の口利きを頼みに参られた事がありましたな。お殿様にお伺いを立てましたところ、色よいお返事をいただけず・・・。その旨を昨日、あの方にお伝えしたのですよ」
「・・・そうか。では、仕官の口利きをする代わりに、金を寄こせと言ったというのは、真っ赤な嘘なんだな?」
「まさか!そのような不調法、誓って御座いませぬよ」と、薄ら笑いを浮かべて答える大黒屋。
「店は番頭に任せてありますので、お役人様がお見えになっても大丈夫で御座います。また後程、奉行所の方へ寄らせて頂きますよ。では、私は芝居見物が控えておりますので・・・これにて失礼いたします。彩刃様」
薄ら笑いを残し、悠々と歩き去る大黒屋。
その姿を、俺は無表情で見つめる。
「・・・リョウ」
カオリが、言葉にできない悔しさを滲ませて声を掛けてくる。
「カオリ?みんなは、もう中に入ったかな」
俺は悔しさを面に出さない様に、不機嫌な声を必死に抑え、機嫌良さげに声を高くして問いかけた。
カオリは俺の顔をジッと見つめ無理を全て分かっていて、それを気遣ってくれる様に、そっと俺の手を引いてくれる。
「・・・リョウ。こっち」
リリーさんが、芝居小屋の裏口から顔を出し手招きしている。
「リリーさん、おはようございます。お土産持って、来ましたよ」
「・・・有難う。ベーコンエッグ楽しみ。マリーとミリィも待ってる」
リリーさんについて、建物の中に入る。
「リョウ〜!おっは〜!」
マリーさんが、元気よく手を振って出迎えてくれる。
「おはようございます、リョウ様。いらっしゃいませ」
そう言って微笑むのは、座長であるミリィさんだ。
「おはようございます、マリーさん、ミリィさん。お邪魔します。他のみんなは?」
「珊瑚ちゃんとネアさんは、仕事をしていますよ。他の方は、先に席でお待ちです」
「仕事?珊瑚の飴売りを、許可して下さったんですか?有難う御座います。でも、ネアさんは?」
「丁度、食べ物の販売を考えていたので、良いんです。ネアさんには前座を、お願いしました」
ミリィさんは優雅に舞うような仕草で座り答えると、メガネをクイッと上げニッコリと微笑んだ。