異世界転生   作:魔導科学

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楽しい朝御飯の後、皆それぞれの仕事場に出掛けて行く。

 

俺達も、職場に到着した直後。

 

「彩刃さん!また、自害です!真毅村さんと一緒に、現場に行って下さい!」

 

小煩い上司からの指示で、俺達は現場に向かう。

 

「リョウ、あれって・・・」

 

「あぁ、昨日の」

 

現場では、ゴモリーさんを通して仕事を紹介してやった若者が、首を吊っていた。

 

「何でだよ?女房、子供が居るんだろ?」

 

「・・・リョウ」

 

「お役人様!ウチの旦那は、自害なんてしません!折角、新しい仕事を始めたのに」と、泣きながら俺達に縋り付いて来る幼い子供を背負った女。

 

「そうだな。仕事を紹介したのは、俺だ。だから、何でこんな事になったか、此れから調べる」

 

「新しい仕事を紹介して下さったのは、旦那だったんですね?お願いします!」

 

「奥さん、最近の状態を教えて下さい。何かおかしな事は、無かったですか?」

 

カオリが、泣き崩れる女に話し掛ける。

 

「旦那が家に帰って来た時、飴の袋を持って、ニコニコしながら帰って来ました」

 

女が、語り始める。

 

「大黒屋さんに暇を出されて困っていたところを、八丁堀の旦那様に仕事を紹介してもらえたって、喜んで・・・。子供に、土産の飴まで買って貰ったって」

 

女は震える手で、飴の袋を抱きしめた。

 

「新しい仕事は鍛冶屋で、これからもっと頑張るんだって・・・そう言って仕事に出かけたんです。それなのに昨日、帰ってくるなり『大黒屋に呼ばれた、ちょっと行ってくる』と言い残して・・・それきり・・・」

 

「大黒屋に?何の話か聞きましたか?」

 

「いえ、ただ金を貰えるとだけ」

 

「金を貰える?」

 

俺は仏を樹から降ろした後、詳しく検分する。

 

「カオリ、遺体に不自然な痣がある。後、懐に多少の金子が入ってるな」

 

コレは、自殺じゃ無い他殺だ。

 

「大黒屋に、行って来る」

 

「私も行くわ」

 

 

 

 

 

「これはこれは、彩刃様。どうされましたか?」

 

愛想笑いを浮かべながら、店の奥から出てくる大黒屋。

 

「昨日、ここへ暇を出した男が来なかったか?」

 

「ええ、参りましたよ」

 

「何の用件で?」

 

「はい。手前どもの手違いで、渡した金子が少しばかり少なかったようで。それを不憫に思いましてな、不足分を直々に手渡してやったのですよ」

 

「・・・ほう?わざわざここに呼んで、自ら手渡したと。随分と情け深いこったな、大黒屋」

 

「滅相もございません。まさか、その金を持ってあのような真似をなされるとは。せっかくの金子も、死んでしまっては宝の持ち腐れ。いやはや、勿体ないことを」

 

唇の端を吊り上げ、こちらの反応を楽しむように、薄ら笑いを浮かべる大黒屋。

 

「大黒屋。俺はあいつが自害したなんて、言った覚えはないぞ?」

 

「・・・。っ、・・・はは、これは手前どもの早合点でしたようで。お騒がせいたしましたな」

 

大黒屋は一瞬だけ表情を強張らせたが、すぐに元の薄ら笑いに戻した。

 

「・・・お忙しいお役目、どうぞお励みください。お出口はこちらでございます」

 

「そうか。邪魔したな」

 

 

 

店を出て、暫く歩く。

 

「リョウ、大黒屋は」

 

「カオリ、分かってる。奴は、黒だ。だが、まだ仕事の依頼が無い」

 

「そうね」

 

俺達は奉行所に戻って、不自然な痣の報告等を終わらせる。

 

しかし、『どうせ、自害でしょう?』と、小煩い上司は取り合わず、話はそれで終いとなった。

 

 

 

 

夕方。

 

古ぼけた社に、ボロボロな姿の女が一人、佇んでいる。

 

「お願いします。どうか、この恨みを。私が身体を売って、稼いだ金です。どうか、この願いを聞き届けて下さい」

 

泣きながら、社に手を合わせるのは、切腹した浪人の嫁。

 

『・・・分かった。金を置いて、此処から去りなさい。決して、振り返るんじゃないよ?』

 

「はい・・・。有難う御座います」

 

女は、泣きながら振り返ることもなく、その場を立ち去った。

 

暫くして、もう一人やって来た。

 

「お、お願いします!此処に来れば、晴らせぬ恨みを晴らしてくれるんですよね!?ウチの旦那を殺した大黒屋をどうか!頼み料は、此れしか無いけど、どうかお願いします!!」

 

涙を流しながら、必死に社に手を合わせる子供を背負った女。

 

女は、小銭と飴の入った袋を震える手で供えた。

 

「・・・分かった。決して、振り返らず、そのまま去りなさい」

 

「有難う御座います。どうか、どうか、お願いします」

 

泣きじゃくる女が去った後、ゴモリーさんが金を取る。

 

夜。

 

静まり返った古ぼけた社に、仲間たちが集まる。

 

「依頼人は、切腹した浪人の嫁。それから・・・リョウさんが仕事を紹介した若者の妻」

 

ゴモリーさんが、古びた机の上に小判一枚と、汚れの目立つ小銭、そして飴の袋を置いた。

 

「あれ・・・? この飴、私が売ったやつだよ」

 

珊瑚が、飴の袋を見て小さく声を震わせる。

 

俺は黙って、その袋を見つめる。

 

自分が手渡した時の、あの男の嬉しそうな顔が脳裏をよぎる。

 

「金が足りねぇからと、飴まで頼み料として置いていったのか。だが、金の重みで仕事をする訳じゃ無い。金に染み込んだ涙の重さで仕事するまでだ。それでゴモリーさん、的は?」

 

「的は大黒屋の店主、その手下共。それから・・・裏で糸を引く大名家の主と、その家臣」

 

重い沈黙が流れる。相手は大名だ。

 

しくじれば命はない。

 

「この仕事、降りたい人は降りて下さい。決して強制はしません」

 

俺はそう言うと、迷いのない手つきで小銭数枚と、飴の袋を手に取った。

 

「やらない訳ないでしょ?」

 

「・・・許さない」

 

「そうだね〜。許す事は、出来ないね〜」

 

「折角、来てくれたのに許せない」

 

「この依頼、受けます」

 

「ご主人、僕も受けるよ」

 

「主、私も受ける」

 

「私もやるわよ。南京玉すだれの錆にしてやる」

 

カオリ、リリーさん、マリーさん、めぐりちゃん、ユカさん、ポポ、瑞、ネアさんが順に答える。

 

「では手引きとして、我々が大名家に入り込みます。丁度よく、大黒屋から大名家に誘われていますからね」と、ミリィさんがメガネをクイッと上げながら言葉を発する。

 

 

 

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