異世界転生   作:魔導科学

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「お願いします」

 

俺は次元収納から白いカプセルを、ユカさんは黒いカプセルを取り出し、シュウさんに手渡した。

 

「・・・よろしい。しばし預かるとしよう」

 

シュウさんは落ち着いた所作で、ポポと瑞をカプセルへと戻し、テーブルの魔法陣に据えた。

 

魔法陣が一瞬眩く光り、すぐに収まる。

 

「終わったよ。リョウ君、ユカさん。・・・さあ、もう一度呼び戻してみるがいい」

 

促されるまま、俺は黒いカプセルを、ユカさんは白いカプセルを受け取る。

 

「最初にカプセルを取った時と同じですね」

 

そう言って微笑むユカさんの横で、俺は手の中にあるカプセルの感触を確かめた。

 

俺たちは、カプセルに魔力を流し込む。

 

魔力を受け入れた球体は、光を放つことも、音を立てることもない。

 

ただ、粘土細工を捏ね上げるような滑らかさで、その表面がうねり、膨らみ、瞬く間に「人型」の輪郭へと書き換えられていった。

 

「・・・主?」

 

瑞が不思議そうに、俺の顔を覗き込んで呟く。

 

対照的に、隣では元気な声が響いた。

 

「ご主人〜っ!」

 

ポポが叫びながら、弾けるような勢いでユカさんに抱き着く。

 

「ポポちゃん、元気だね!?」

 

ユカさんは驚きながらも、嬉しそうにその体を受け止めた。

 

その様子を、シュウさんは口角をわずかに上げ、満足げに眺めている。

 

「主、また会えた。今度は、ちゃんと人型。でも、ヤラシイ目で見るのは、駄目だと思う」

 

瑞が俺の手を取り、静かに微笑む

 

いや、そんな目で見てないからね?

 

「此れで、もう珊瑚ちゃんと、言葉が被らないね!」

 

「ピィ!」[私だって、もう少し成長すれば、人になれるもん!]

 

うん?

 

珊瑚が、何やら不穏な事を言っている気がするが?

 

「そう言えば、リリーさん。昔話でドラゴンと人間が結ばれた話があるって、言ってましたよね?」

 

「・・・うん。言った」

 

「その話は〜、教科書にも、載ってる〜」と、マリーさんが言う。

 

「リョウ君、珊瑚君のことなんだが・・・」

 

シュウさんが、落ち着いた赤い人の声で俺の名を呼んだ。

 

「はい、何でしょう?」

 

思わず背筋を伸ばして聞き返す俺に、彼はテーブルの上の魔法陣から視線を上げ、静かに語り始めた。

 

「ドラゴンが成長して人になるという話は、この世界では非常に有名な話でね。・・・そこで、私はこう考えたのだ。その『成長』とは、すなわち『魔力量の増加』を指しているのではないか、とな」

 

一言一言を噛み締めるような、独特の語り口。

 

「そこで、珊瑚君にこれを贈りたい」

 

そう言ってシュウさんが取り出したのは、掌に乗るほどの小さな、しかし深紅に煌めく結晶体だった。

 

「これは・・・?」

 

「魔力の高純度集積体、とでも言えばいいかな。私の・・・いや、かつての同志たちの知恵の結晶だ。これならば、珊瑚君の魔力量を一時的に、あるいは永続的に引き上げる助けとなるだろう」

 

シュウさんはそれを、慈しむように見つめる。

 

「珊瑚君、これを受け取ってくれるか? 新しい時代を切り拓くのは、いつだって若い力だ」

 

「ピ、ピィ・・・!」

 

珊瑚は、その結晶から放たれる圧倒的な魔力に気圧されながらも、勇気を振り絞るように一歩前へ出た。

 

一方、その光景を横で見ていたリリーさんが、ポツリと呟く。

 

「・・・流石、赤い彗◯。贈り物が、彗星級の魔力」と、呟くリリーさん。

 

深紅に煌めく結晶体を受け取った珊瑚の身体に、膨大な魔力が満ち渡り、眩い光が溢れ出す。

 

「・・・リョウ、向こう向いて。他の男も」

 

リリーさんが、有無を言わせぬトーンで告げた。

 

俺が「え、どういうこと?」と戸惑うより早く、シュウさんはセニョール監督と共に、既に反対方向を向いている。

 

・・・流石、戦場での勘が鋭すぎる。

 

やがて光が収まると、そこには小さなドラゴンの姿はなかった。

 

「・・・パパ?カオリママ!?」

 

双六ゲームの世界で聞き慣れた、あの珊瑚の声。

 

そこにいたのは、あどけない姿をした、一糸まとわぬ全裸の少女だった。

 

「あわわ!?り、リリーさん?マリーさん?早く何か、何か着せるものを!」

 

俺は慌てて目を逸らし、叫ぶ。

 

背中越しに、シュウさんの落ち着いた声が聞こえてきた。

 

「・・・フフ。予測可能だった回避、というわけか。リョウ君、これが『成長』の代償だよ」

 

「珊瑚ちゃん、可愛い〜!」

 

めぐりちゃんが、俺の後ろで騒いでいる。

 

他の女性陣も、バタバタと動いている。

 

「ピィちゃん!大人になったのね〜!?ママ嬉しいわ!」

 

俺の横で、様子を見ていたカオリが瞬間移動したかの如く、珊瑚の方に移動する。

 

取り敢えず、俺はシュウさんとセニョール監督の方に移動しようかな。

 

近付いた俺に、シュウさんが「・・・賢明な判断だ、リョウ君。女性の領域に踏み込むのは、モビル◯ーツの戦場よりも危険だからな」と、俺にだけ聞こえる様に呟いた。

 

「リョウ君、シュウさん。・・・ちょっと良いかな?」

 

喧騒の背後から、セニョール監督が神妙な面持ちで声を掛けてきた。

 

「そうだな。今は、この場から離れよう」

 

シュウさんは短く応じると、流れるような所作で壁に手を触れ、音もなく『道』を開いた。

 

俺も二人の後に続き、静かに部屋を後にする。

 

背後で聞こえていたカオリたちの賑やかな声が遠ざかり、外の涼やかな空気が頬を撫でた。

 

「実は、珊瑚君や瑞君、ポポ君、それから前回居なかった女性たちにも、今回の映画に出演して貰おうと思う」

 

 

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