異世界転生   作:魔導科学

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「そういえば・・・今、時間はどんなもんだろう?」

 

ふと我に返り、俺は光学ディスプレイに目をやった。

 

カオリたちの情熱的な『ライフプラン』に飲まれて、時間の感覚が麻痺していた。

 

「めぐりちゃんは、早く返さないと親御さんが心配するだろうしな」

 

俺がそう言うと、隣でようやくこちらを向いたシュウさんが、光学ディスプレイの時間をチラリと見て頷いた。

 

「フフ・・・。リョウ君、君のその冷静さは美徳だよ。・・・確かに、若いレディを夜道に歩かせるのは、元大佐としても、一人の紳士としても感心しないな」

 

「シュウさんが言うと、重みが違いますね・・・」

 

「お兄ちゃん、大丈夫だよ!ボク、今日は、彼氏の家にお泊りって言ったし」

 

「めぐりちゃん?それは、ちょっとマズいんじゃないかな?」

 

『ご飯が、もしも無かったら〜

パンでも食べろと、人は言う〜

でも、やっぱり俺は日本人

日本人なら、お米だろう〜

お米はオー、日本の主食だ

ジャパンをオー、育ててきたんだ〜

梅!海苔!明太!

梅!海苔!明太!

ラーメン頼んで、ライスも付けている

タコ飯〜 チャーハン〜 

ライス戦隊 混ぜご飯〜!!』

 

めぐりちゃんの魔導通信機から、音楽が流れる。

 

「・・・リョウ、此れって」

 

「はい、前世で観た特撮っぽい歌でしたね」

 

俺たち転生者なら、分かる。

 

リリーさんと、俺の耳は誤魔化せないぜ!

 

「もしもし?」

 

めぐりちゃんが、誰かと通話し始めた。

 

「え〜? だから、彼氏だってば!うん。・・・え、代われ? ちょっと待ってね。お兄ちゃん、お父さんが話があるって」

 

「ちょっと!? 俺なの!?」

 

嫌な予感しかしない。

 

めぐりちゃんが、ブレスレットを嵌めた手をこちらに突き出してきた。

 

彼女の魔導通信機はブレスレット型か、なんて呑気なことを考えていられたのは、そこまでだった。

 

『自分、どこの誰やゴラァ! ワシの娘をたらかしやがって! 今からそこ行ったるからな、首洗って待っとけよボケェ!!』

 

鼓膜を突き破らんばかりの爆音が響き、ブツリ、と一方的に通話が切れる。

 

・・・俺は、錆び付いた機械のような動きでゆっくりと、めぐりちゃんの方へ顔を向けた。

 

「め、めぐりちゃん? お父さん、もの凄く・・・というか、完全に殺る気満々でお怒りなんだけど?」

 

俺が震える声で問い詰めると、めぐりちゃんは小首を傾げて、とんでもない爆弾を投下した。

 

「だって、仕方ないよ〜。ボクの『はじめて』を、お兄ちゃんにあげちゃったんだもん」

 

「ちょっと待って!? 『はじめて』って何の話!? 語弊しかないから! 誤解を招く発言は危険が危ないから今すぐ止めて!?」

 

俺の絶叫が、店内に響き渡る。

 

・・・刹那、周囲の空気が凍りついた。

 

店内の客たちが一斉にこちらを向き、その目は明らかに『凶悪な性犯罪者』を見るそれへと変わっている。

 

そんな刺すような視線にも気づかず、めぐりちゃんは頬を染めて追撃してくる。

 

「だってお兄ちゃんが、はじめてだよ? ボクのことを強引に引っ張って外に連れ出して・・・そして、あんなに熱く激しく・・・、怒ったの」

 

「言い方ぁぁ!!」

 

その言葉だけ切り取ったら、完全にアウトだ。

 

慌ててシュウさんに助けを求めようと隣を見ると、彼は「元大佐」の冷静さで、音を立てずに椅子を一つ分遠ざけていた。

 

と、取り敢えず、他に助けてくれる人は!?と、珊瑚やカオリ、ミリィさんやユカさんたちを見ると、皆でお喋りしながら、フードコートでお茶してる。

 

あれ?

 

なんでだろう、目から汗が出るよ?

 

まるで、ATフィー◯ド全開で拒まれてる様な、この感じなんだろう?

 

監督は?

 

監督なら、俺を助けてくれるんじゃないか?

 

そう思い、周りを見渡すとセニョール監督の姿が無い。

 

「シュウさん?セニョール監督は?」

 

「彼なら、次の撮影場所を探しに行くと、此処から去ったが?」

 

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

 

娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。

 

おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。

 

たけき者もついにほろびぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。

 

俺の脳裏に、平家物語が流れる。

 

「あっ!お父さん!この人が、ボクの彼氏!!」

 

「・・・ワレェ! ワシの、可愛いめぐりに・・・『激しいこと』をしたボケナスは・・・どこのどいつやぁ!!」

 

空気の振動だけで、窓ガラスが震えるような咆哮。

 

お父さんが、俺の目の前まで詰め寄ってきた。

 

「おい!? ワレか、ウチの娘をたらかしたボケナスは! 覚悟はできとるんやろうな? 指詰めぐらいじゃ済まさんぞ、ゴラァ!!」

 

「ひ、ひぃぃ!」

 

「そんな、どこの馬の骨かも分からんような奴、お父さんは絶対許さへんぞ! そもそもワレ、どこの誰やねん。ちゃんと仕事しとんのか? 年収はナンボや? それにな、いきなり『彼氏』やなくて、普通は文通から始めるもんちゃうんか、ボケェ!!」

 

あまりの剣幕に、俺は反射的に首を横に振った。

 

「ち、違います! 違うんです!」

 

「あ? 違う? いま、違う言うたんか? ワシの聞き間違いやなかったら、勘弁したってもええわ。・・・もういっぺん聞くぞ。違うって、何がどない違うんじゃゴラァ!!」

 

懸命に、説明しましたよ。

 

それはもう、身振り手振りを交えて、時に英語や外来語を混ぜ、そしてこの世界の法律も交えて、めぐりちゃんにも、説明して貰いましたとも。

 

途中、めぐりちゃんが、また危ない発言が飛び出したけど、まぁ何とか誤魔化して。

 

「なんや、誤解やったんか。それやったらそうと、早う言うてくれたらええのになぁ、ホンマに困るわ。・・・けどな、もし今後ウチのめぐりに手ぇ出すようなことがあったら・・・分かっとるやろな?」

 

 

 

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