異世界転生 作:魔導科学
「で、おんどれは、何をそんなにべそべそ泣いとんねん?」
「辱めを受けました。もう生きていけません・・・」
「ドアホ、何が辱めや!そんな程度のことで死んどったら、これから先、何回死んでも足りへんぞ!自分、そこんとこ分かってんのか?」
そう言って、お父さんは俺の前に、紙の珈琲カップを置いてくれる。
「そんなしけたツラしてんと、これ飲み!」
「・・・有難う御座います」
「ま、なんや。さっきは庇うてくれたさかいな。それのお返しや!せやけど、めぐりとマイハニーに手出しよったら、タダじゃおかんぞ?分かってんのかゴラァ!」
俺たちは今、人が居ない場所で二人きりだ。
ヴァ〜!
ガァルル!!
グァ〜!?
外には大量のゾンビや、目が真っ赤に染まったドーベルマンがウロウロしており、その喫茶店の片隅でお茶してる所だ。
「なんでゾンビ共が襲うてけぇへんのか、不思議やろ?それはな、ワシがこのゲームセンターの店員やからや!どや、凄いやろ!」
「・・・はい、凄いですね」
さっきめぐりちゃんが、このゲームの中に家があるって言ってたな。
お父さんとお母さんが、ゲームセンターの店員さんって話も、確かしてたかな?
「なんや自分、おもろないやっちゃなぁ。せや、自分さっき、めぐりが作ってくれた魔導アーマー見て『カッコええ』言うてたやろ?もう一回見したるさかい、シャキっとしぃや!」
そう言って、お父さんはゾンビの彷徨く外に出て行く。
しかしゾンビ共は、其処にお父さんが居ないかの如く、無視しして歩いていく。
「・・・変、身!」
お父さんの周りが眩く光り、中から現れたのは、全身を包む鈍い光沢を放つ深紅の装甲。
左右非対称に走るシルバーのライン。
最新鋭の兵器を思わせる、胸元に刻まれた十字の意匠は暗殺者の系譜。
そして闇を駆ける忍の系譜と、科学の粋が融合した『鋼の戦士』の姿。
それは先程みた『仮面ライダーXYZ』だ。
その姿を見た瞬間、俺は泣きべそをかいていたことも忘れ、子供のように満面の笑みを浮かべていた。
「うわぁ~!Z◯だ〜!カッコいい!」
「おい自分、◯XやなくてXYZ(エグゼイズ)や!間違えんなや!しばくぞコラァ!?ま、ええわ。ほな、ちょっと見とけよ?」
お父さんがそう言うと、今まで無視ししていたゾンビ共が、急にお父さんを認識して襲い掛かって来た。
「行くで!まずはコイツや!」
ベルト中央の赤い投影レンズ部分が点滅し強く発光、そこから光線が放たれるようにして、虚像が形成された。
複数の仮面ライダーXYZが、ゾンビ共を撹乱する。
一体一体が、全く違った動きをしており、どれが本物か全く分からない。
その内の一体が、腰の後ろに横一文字に据え付けられた電磁ナイフの柄を掴み、赤く熱を帯びた刃をゾンビの首に当てる。
首を落とされたゾンビが、ホログラムの様に消え失せる。
「次は、これや!」
両手から目にも止まらぬ速さで射出されたマイクロチェーンが、敵を雁字搦めにすると同時に、閃光とともに敵の絶叫をかき消す。
「どや!5万ボルトの高圧電流やぞ!!」
そのまま、閃光を纏ったマイクロチェーンを、ゾンビが密集している場所に放つ。
一瞬にして複数体のゾンビが、ホログラムになって消えて行く。
「お次は、これや!」
膝のプロテクターを外して、十字手裏剣を手に持つ。
あれ?
でも、お父さんって確か、超ノーコンだった筈だよね?
「フッ!」
カッ!
俺の足元に、十字手裏剣が刺さってるんですけど!?
「あー、すまんなぁ!わざとちゃうねんで?ま、ええか」
いや、良くないよ?
危ないよ?
「次は、コレや!」
なんか、複数のゾンビが合体した様な見た目のデカい化け物が、低い唸り声をあげで迫って来る。
お父さんは、前世の餓狼な伝説の格ゲーに出できた、骨法使いの技の様に肘でデカい化け物に突っ込む。
「衝撃集中爆弾や!」
ドガン!と凄い爆発が起きて、デカい化け物が跡形も無く消えている。
更に、反対の肘のプロテクターを外して、道に放り投げる。
今度は、上手くゾンビの群れに到着し、付近一帯のゾンビが爆発と共に消え失せる。
「どや!凄いやろ?衝撃集中爆弾には、こんな使い方もあるんやぞ!」
周りのゾンビを一掃したが、遠くでうごめいていた群れが、さらにこちらへ迫ってくる。
「これで、最後や!」
高く垂直跳びし、空中で激しく三回転。
「XYZイナズマキック!」
叫びと共に、赤く光る足先でゾンビの群がる地点を撃ち抜く。
周りに居た数え切れない数のゾンビが、一瞬で消滅する。
そして辺りは、不気味な静寂に包まれる。
「どや?凄いやろ!?」
変身を解き、店に戻ってきたお父さんが、自慢げに俺へ言い放つ。
「はい!滅茶苦茶カッコよかったです!!もう、そこにシビれる!あこがれるゥ!って、状態です!そうだ!?ぜひ写真を一枚、お願いします!」