異世界転生   作:魔導科学

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「お母さん、ごめんね? ボク・・・実は、異世界から来た『転生者』なんだ」

 

「異世界転生者? なに・・・急に? またリョウさんの影響で、新しい設定でも考えたの?」

 

哀お母さんは、まだ子供の突飛な空想だと思い、優しく、けれど困惑したように聞き返した。だが、俺はその視線を真っ向から受け止める。

 

「お母さん・・・めぐりちゃんの言ってることは、本当なんです。嘘でも、俺の入れ知恵でもありません」

 

「リョウさん・・・?」

 

「俺も、異世界転生者です。ここではない、別の世界の理の中で生きていた人間です。・・・そして、この世界には他にも、同じ運命を辿った者が数名います」

 

「・・・私も、転生者」

 

「リリーさんまで? ・・・みんなで私を揶揄ってる・・・訳じゃないのね」

 

お母さんは、俺の痛いくらいに真剣な眼差しと、リリーさんの浮世離れした静かな肯定を受け、小さく息を吐いた。窓の外で蠢くゾンビの唸り声さえ、今は遠く感じられるほど、店内の空気が重く沈んでいく。

 

「せや! めぐりが異世界から来たんやろうが、宇宙から降ってきたんやろうが、そんなん関係あらへんわ! どこがどうなろうと、ワシとハニーの最高に可愛い愛娘やってことに、何ひとつ変わりはないんじゃ!それ以上ぐだぐだぬかしとったら、どつきまわすぞボケェ! ・・・なあ、それよりこの鎖! ええ加減に、早よ解いてくれへんか!? ずっとこのままっちゅうわけにも、いかんやろ。頼むわ、ほんま!!」

 

お母さんの剣幕に黙らされていたはずのお父さんが、ここぞとばかりに肺活量全開で言葉をまき散らす。

 

「そうね。取り敢えず、場所を移して、詳しく話を聞かせて頂戴?」

 

「分かりました」と、俺は頷く。

 

「・・・ちょっと、おーい! 無視せんとってぇな! 話が進むんはええけど、ワシを置き去りにして盛り上がらんといてーや! ・・・このままやったら、ワシ、いい年してホンマに泣くで? 嗚咽漏らすで!?」

 

「あぁっ、すみません!? すぐに、今すぐ解きますから!!」

 

お母さんの冷徹なスルーに心を折られたヒーローの姿に俺は慌てて、仮面ライダーXYZの体に食い込んだ、マイクロチェーンを解き始める。

 

 

 

 

「どうぞ。汚い所で、ごめんなさいね?」

 

今、俺はめぐりちゃんの御実家・・・すなわち、あの『仮面ライダーXYZ』と『最強のマイハニー』、そして地球破◯爆弾も真っ青なパワーを秘めためぐりちゃん達が暮らす自宅へと、正式にご招待されていた。

 

お母さんは、お父さんと同じくゲームセンターの店員だ。

 

ゾンビをなぎ倒したわけではなく、ゾンビが一切近寄ってこない特殊な装置を使い、まるでお買い物帰りのような平然とした様子で、あのカオスな撮影現場に割って入ってきたのだ。

 

その底知れない余裕と丁寧な物腰。

 

俺はまるで異世界転生者としてではなく、娘さんの交際相手として初めて挨拶に来た時のような、妙な緊張感に背筋を正した。

 

「お兄ちゃん、ここ座って? ボクは絶対、お兄ちゃんの隣ね!」

 

「めぐり? ちょっと、リョウさんに迷惑かけちゃ駄目よ。・・・ここは人生の先輩であるお母さんが、リョウさんの隣に行って色々お話しなきゃ」

 

お母さん? 旦那さんの目の前ですよ? 自重して下さい、切実にお願いします。

 

「主、そんな遠慮は不要。私の隣が、一番安全」

 

瑞? 別に危ないことはないと思うよ。・・・物理的には、ね。

 

「いえ、私がリョウさんの隣に行きます!」

 

ユカさん、なんでそんなに張り合ってるんですか!?

 

「・・・リョウ、膝の上に座っていい?」

 

リリーさん、その発言は非常にマズいです! どの程度マズいかと言うと、真ゲ◯ター1が『真・シャ◯ンスパーク』を放つが如く、あるいは天元突破した超巨大ロボが宇宙の理を無視して『超天元突破ギガド◯ルブレイク』をブチかますくらいマズいです! 銀河系が消滅します!!

 

「おい! ゴラァ!! おのれ、人の家に上がり込んで、ワシの目の前で何さらしとんねん! 娘とイチャつくのも大概にせえよと思ってりゃ、ワシの愛しのマイハニーにまで手出ししやがったな!? どこの世界のハーレム設定持ち込んどんねん!! ・・・やっぱりお前、生かしとけへんわ。今ここで、きっちり『教育(ブチ殺)』したるからな! 歯ぁ食いしばれボケェ!!」

 

「・・・アナタ。騒いでないで、取り敢えずお客様にお茶とお菓子お出しして」

 

「な・・・!? ハニー、自分いま何て言うた? ワシ、こいつを『教育』する言うて・・・」

 

「聞こえなかった? 『お・茶・と・お・菓・子』。早くして。お客様をお待たせするなんて、家の恥よ」

 

お母さんの氷点下の微笑みに、さっきまで「ブチ殺す」と息巻いていたお父さんの肩が、目に見えてビクンと跳ねた。

 

「・・・へ、へい! ただいまッ!!」

 

お父さんはさっきまでの殺意をどこへやら、エプロンを探して台所へ猛ダッシュを開始した

 

「そう言えば、ミリィさん達に連絡してないですね。ちょっと、連絡しておきます」

 

「・・・リョウ、大丈夫、もう連絡済み。因みに、カオリにリョウのBL疑惑も確認済み。リョウは、BLじゃないと証明された。おめでとう」

 

「・・・何が『おめでとう』なんですか! ていうか、いつの間にそんな不名誉な確認事項を共有してるんですか!?」

 

「お兄ちゃん、それは仕方無いよ〜?だって、さっきCLA◯Pはまだしもニュー◯ーク・ニューヨ◯クで、感動したって言ってたもん」

 

「いや、あの作品は確かに同性愛がテーマだけど、描かれているのは普遍的な愛と救いであって、最後の・・・二人が添い遂げたその先の、人生の集大成のような幕引きに魂が震えない人間なんていないでしょ!? あの養女の語り、あれこそが真実の愛の形なんだよ!!」

 

食い気味に語る俺に、リリーさんが無機質な瞳を向け、さらに追い打ちをかける。

 

「・・・リョウ、今この状況で、老境の二人の愛を『真実の形』とまで断言するのは、火に油。・・・ほら、お父さんの顔が、XYZの出力限界(オーバーヒート)並みに赤くなってる」

 

「えっ」

 

台所から、盆の上でお茶をチャプチャプ波立たせながら、お父さんが震える声で突っ込んできた。

 

「・・・おのれ!! 自分、今さらっと『真実の愛の形』とか抜かしよったな!? ワシとマイハニーの愛より、そのニューヨークの野郎どもの愛の方が真実や言うんか!? 言うたんかコラァ!!」

 

 

 

 

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