異世界転生 作:魔導科学
「申し訳ありません!お父さん、決してそんなことを言ったわけではなく・・・!」
「お前に『お父さん』呼ばわりされる筋合いは、ない言うてるやろ!このボケナス!ワシはな、お前のこと認めたわけやないんやからな?・・・そら、さっきはな、ほんのちょっとだけ『案外、ええ奴なんかな?』って思いかけたけどな、今の発言で全部ナシや!撤回や!ボケェ!!」
「お父さん……『さっき』って、どの時のこと?」
「アナタ、さっきと言うと・・・あなたが急に、卑屈なMっ気に目覚めた辺りかしら?」
「ちゃうわ!ちゃうちゃう!!そうや、そうやない〜!?」
お父さんはガクリと項垂れると、次元収納から取り出した漆黒のサングラスをかけ、天を仰いだ。
・・・今の表現、標準語に直すと『違う!違う!!そうじゃ、そうじゃない〜!?』って感じ? 昔は『シャ◯ルズ』から『ドブネズミと星(ラッツ&スター)』なんて名乗って尖ってた人が、俺が転生する時にはラブソングの王様って、呼ばれる様になった人みたいだな。
「お父さん、その姿で『ランナウェイ〜』って言ってみて?」
・・・めぐりちゃん、分かってるね!?
ひょっとして、めぐりちゃんは俺と年代が同じだったのかな?
「ランナウェイ〜?めぐりが言うんなら、しゃあないな〜?こうか?」
お父さんが、立ち上がりめぐりちゃんのリクエストに答える。
俺もお父さんの言葉に合わせて、『ランナウェ〜イ!』って、合いの手を入れてみる。
「アナタ?話が進まないから、ちょっと静かにして?」と哀お母さんが、とても優し目で俺を見る。
「す、すみません!」
「・・・堪忍や、マイハニー」
さっきまで『王様』だったお父さんが、一瞬で『借りてきた猫』に戻る。
どうやら、この家で一番のソウル(実権)を握っているのは、お母さんだな。
「・・・リョウ、分かってる」と、リリーさんがスッと親指を立て、グッドサインを出す。
話について行けてない、ユカさんと瑞、ポポ。
三人は出されたお茶を飲みながら、黙って成り行きを見守っている。
「で、めぐり?異世界転生ってなんの話?」
「お母さん。ボクはここ・・・この世界と同じ、地球で生きていたんだ。ただ、前の世界には魔法は無かったんだよ」
めぐりちゃんが、かつて俺がみんなに聞かせたのと同じ話を、お母さんとお父さんに向かって話し始めた。
さっきまでふざけていたお父さんも、今は口を閉じ、娘の言葉を一言も漏らすまいと真剣な表情で見つめている。
ユカさんと瑞がすするお茶の音だけが、静まり返った居間に小さく響いた。
「・・・そうなの。で、リョウさんとリリーさんも同じだと?」
哀お母さんは、俺とリリーさんを見つめて問い掛けてくる。
「はい」
「・・・そう」
お母さんは一度目を閉じ、それから静かにめぐりちゃんに向き直った。
「分かりました。めぐり、でもさっきお父さんが言った通り、あなたが私たちの娘であることは変わりないわ。何も心配しなくていいからね?」
お母さんは、すべてを包み込むような優しい微笑みを浮かべながら、めぐりちゃんに言い聞かせる。
「せやな」
お父さんも短く、しかし地鳴りのような芯のある声で返事をする。
その一言には、何があっても娘を守り抜くという、父親としての揺るぎない覚悟が籠もっていた。
「リョウさん。この子は昔から、少し変わったことを言ったり、不思議な発明をしたりする子だと思っていました。でも、これでやっと今までの疑問がすべて解けました。娘の説教も含めて、有難う御座います」
お母さんはそう言って、深々と、けれどどこか晴れやかな顔で俺に頭を下げた。