異世界転生 作:魔導科学
『やめて!俺の為に、争わないで〜!』とか言ったら、止めてくれるかな?
いや、更に激化しそうだよね?
それとも、また歌って皆を鎮める?
いや、俺の下手くそな歌じゃダメだ!
そうだ!
魔導通信機に入ってる、あの歌を流そう!
戦場のすべてを虚無に還す、あの悲劇の歌。
大人の都合で正確な曲名は言えないが、俺の大好きだった某・反逆する黒い皇子のロボットアニメで、主要キャラが死ぬときに必ず流れる『ストーリーズ』的なやつだ。
しかも、キャラクターの原案が『カードをキャプチャーする桜』の先生たちだしね!
「みんな、争いを止めて!じゃ無いと、また泣くよ!?」
『ルールー、ルーラーラー・・・』
俺の叫びと聖なるコーラスが響き渡った瞬間、戦闘を繰り広げていた女性陣の武器や身体からスゥ・・・と魔力が消えた。
・・・別に歌自体に、何か魔力付与とかされてた訳じゃ無いんだけどね?
「・・・私たち、何のために戦っていたのかしら」
カオリが、呟いて武装解除する。
「リョウ〜、泣かないで〜、ごめんね〜?」
マリーさんが慌てて、次元収納に武器を仕舞う。
「なんだか、急にものすごい喪失感が・・・」
ミリィさんが、武器を下げて力なく呟く。
歌の持つ『強制終了の力』は凄まじかった。
誰も死んでいないのに、戦場は完全に『お葬式ムード』に包まれている。
「めぐり、ごめんね?」
「お母さん、ボクこそ、ごめんなさい」
あぁ、哀お母さんとめぐりちゃんも、優しい母娘に戻ってくれた。
「やかましいわ!ボケ!お前が泣いたからって、全部パーになると思うなよ?!アホンダラ!」
そう言って仮面ライダーXYZが、こちらに突進して来ようとした。
「お父さん、今いいところだから、静かにして! ガオキッチン、取り押さえて?」
「アナタ?静かにしないなら、今度は説教じゃ済まないわよ?」
哀お母さんが、仮面ライダーXYZを睨む。
ガオキッチンに確保された仮面ライダーXYZは、変身を強制解除され口を塞がれる。
「ふぎゅ!・・・」
ジタバタ藻掻く、お父さん。
「ゴモリーさん、ごめんなさい」
「ゴモリーさん、ごめんね? 二人掛かりで、攻撃しちゃって」
「いえ、良いんです。私も、悪かったんです。こんな事をしなくても、リョウさんはもう既に、私のモノですから・・・」
ユカさん、ポポ、ゴモリーさんが、お互いに謝っている。
けど、ゴモリーさんだけ、なんかおかしな発言してるけど?
「瑞ちゃん、ごめんなさい」
「ううん。私も悪いから、珊瑚ちゃん。ごめんなさい」
お互いに、手を握り合って謝る珊瑚と瑞。
「そもそも、パパは甲斐性があるから、大丈夫!」
「確かに主だったら、皆を幸せにする。だから、問題ない」
・・・あれ?また、変な声が聞こえるけど、気のせいかな?
「リリーさん、ごめんなさい。私・・・」
「・・・ネア、大丈夫。本気じゃないって、分かってる。・・・ごめん」
ネアさんが、腰にウルミを戻し、リリーさんに謝罪すると、リリーさんも変身を解除してネアさんに謝罪する。
「・・・でも、リョウの泣き顔は、また見たかった」
「リリーさん、それ凄く分かります!」
「・・・泣いてから、止めれば良かった?」
いや、リリーさん?
アンタ、ドSなの?
「・・・リョウ? 因みに、私はドMだから、安心する」
リリーさんが、眠そうな目をこちらに向けて語り掛ける。
「わ、私も、リョウ好みの方だけど?」
ネアさんまでもが、頬を染めながら、おかしな事を言い出す。
やめて?
トラウマが、再発しかねない!
それにしても、激しい戦闘の傷跡が至る所に残されているな。
焦げ跡や無数の傷、中にはデカい穴が開いている所まである。
俺が出したテントが、無事なのが不思議なくらいだ。
「う〜ん! ちょっと、手直しが必要だね?」
めぐりちゃんが現状を確認して、そう呟いた。
「ちょっと、手直しするから、みんな待っててね!」
そう言ってめぐりちゃんが「ポチッとな!」と、手のひらの中にある何かを押すと、どこからともなく小さいロボットが、ぞろぞろと行列で現れた。
アレだよ!
犬のロボットの口から、びっくりしてどっきりしそうなメカが飛び出してくる、あの懐かしいシーンを思い出す。
小さなロボットたちは、コミカルに、そしてたまに転んだりしながらも、テキパキと辺りを修復していく。
あっという間に戦闘の傷跡は消え去り、元通りの綺麗な状態に戻っていった。
そして、一番最後尾を歩いていたロボットが、こちらに向かって小さく手を振って去っていく。
あぁ、もう!
可愛いな、チクショウ!
「リョウ様、申し訳ありませんでした。個別にテントを出すのでは無く、一番大きいテントを出して、みんなで入れば良かったと、改めて考え直しました。・・・そんな駄目な私を、どうか優しくお仕置きして下さい」
こちらへ来たミリィさんは、メガネをクイッと上げ、顔を赤らめながらとんでもない要求をしてきた。
「そ、そうね?わ、私たちもリョウを争って戦闘したから、お仕置きよね?」
・・・ネアさん?
「リョウさん、私はリョウさんの全てを受け入れますよ?」
ゴモリーさんまで、毒されてきた!?
「お、お兄ちゃん?そ、そのボクは、今世では初めてだから・・・。初めは、優しくして欲しいかな?」
めぐりちゃん?
君がそんな事を言うと、俺の生命と社会的な立場が、大問題になるから止めて!?
「リョウさん・・・」
「ユカさん?ちょっと待って下さい!他の方も、発言を一旦停止して下さい!お願いします。本当に、また泣きそうです」
「・・・リョウ、最後の言葉、それは尚更ダメなやつ。ついでに、お姉ちゃんって、言って?」
リリーさんが、顔を赤らめてこちらを眺める。
「みんな、まだ若いわね?いい?リョウさんは、最初は頑なに拒みつつ、段々と抵抗出来なくなる様なシチュエーションが好きなのよ?・・・多分」
哀お母さんが、更に爆弾を落とす。
その威力たるや、頭上の月が怪しく輝いた瞬間、天から一筋の誘導レーザーが巨躯へと降り注ぐ。
それに応じるように、機体の背部に畳まれていた4枚の集光パネルが、まるで翼のように美しく展開する。
パネルが月のエネルギーを吸い上げ、眩い光で満たされていく。
『システム始動、マイクロウェーブ受信開始・・・過給圧上昇!』
咆哮とともに放たれた超高出力の閃光は、射線上にあった巨大な障害物を、爆発の炎すら残さず一瞬で蒸発させる
。
それ程のモノだった。
「最初は、『負けないんだから!』って嫌がってたクセにその後、『身体は正直だな!?』的な展開の事?」
珊瑚が真っ赤になりながら、哀お母さんに聞いている。
さ、珊瑚?
俺は、お前をそんな娘に育てた覚えはないぞ!
そもそも、何処でそんな知識を手に入れた!?
カオリか!
カオリなのか!?
そう思ってカオリを睨むと「ち、違うわよ!私はピィちゃんに、そんな事を教えてないわよ?!」と慌てて答える。
その様子から、どうやらカオリが教えた訳じゃなさそうだな・・・。
珊瑚が放った追撃の爆弾発言によって、周囲の温度は一気に沸点を超えた。
チラリと横を見ると、他の面々も「身体は正直・・・」
「頑なに拒む・・・」と、それぞれ物凄い形相でブツブツと呟きながら、俺を獲物を見るような目で見つめている。
待て、みんな、哀母さんの妄言を真に受けるな!
頼むから、目を覚ましてくれ!
「哀お母様? そのお話、詳しくご教授願えますか?」と、ミリィさんがメガネをクイッと上げながら、哀お母さんの傍に寄る。
「わ、私も!」
「僕も!」
「私も〜、聞きたい〜!」
「主の好み、知りたい」
「更に、リョウの好みを深掘りするチャンス!」
「リョウさん、私はリョウさんの為に、恥ずかしいけど頑張って聞きますね?」
ユカさん、ポポ、マリーさん、瑞、ネアさん、ゴモリーさんが、哀お母さんの所に行ってしまう。
「甘いわよ!リョウの事なら、私が一番分かってるんだから!」と、カオリが更に、俺のトラウマを悪化させようとする。
「カオリ?さっきのフードコートでの謝罪は、何だったんだ?」
「・・・リョウ、ごめんね?」と、静かになるカオリ。
ジタバタ藻掻いているお父さん。
だが、めぐりちゃんのお父さんであり、哀お母さんの旦那である男の執念は、ガオキッチンの拘束ごときで完全に封じ込めることはできなかった。
「ふんぐぅぅぅーーーッ!」
口を塞がれたまま、お父さんの腰のベルトが再び怪しく明滅する。
再度、変身したお父さんは、凄まじい気迫とともにガオキッチンのパワーを力技で一瞬だけ引き剥がし、塞がれていた手をバッと退けた!
「マイハニーの言うシチュエーションはな、確かにワシも大好物やけど、お前がホンマに好きなのは『最初は頑なに拒んどったのに、気づけば段々と抵抗できんなっていって・・・。んで、いつもはツンツンしとる生意気な女が、急にデレて甘えてくるギャップ』のはずや!ちゃうんか!」
「アナタ、あとでじっくり『お話し合い』をしましょうね?」
哀お母さんの冷徹な視線が炸裂した。
お父さんは「しもたぁぁぁ!」と叫ぶ間もなく、ガオキッチンに引きずられ部屋の奥へと消え去っていった。
お父さん、何してくれてんですか・・・?
というか、余計なアドバイスを授けていくな!
その威力たるや、哀お母さんの時に降臨した超高出力の閃光が、まさかの2連装(ツイン)へと一瞬でアップグレードされて、エネルギー過給圧2倍の直撃を食らうくらいヤバい状況なんですが!?
お父さんが遺した爆弾のせいで、他の女性陣からの視線が完全に熱を帯びて俺にロックオンされている。
更に、それを聞いたカオリと哀お母さん以外の女性陣が、一斉に手元の『リョウ、攻略ノート』に猛烈な勢いでメモを書き込み始めた。
そもそも、そんな物をいつ作ったんだよ?
待って?
みんな、あのジタバタ退場していった不審者の言葉を信じるな!
頼むからペンを置いてくれ!