異世界転生   作:魔導科学

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さて、やっと落ち着いた所で、ミリィさんが最高級のテントを出してくれた。

 

テントを、出してくれた。

 

大事な所だから、二回言ってみた。

 

普通、テントって、組み立て式の布?だかのヤツを思い出すじゃん?

 

でも、ミリィさんが出したのは、豪邸でした。

 

白亜の石壁に、重厚な彫刻が施された二連の玄関扉。

 

おまけに二階のバルコニーからは、優雅なティーテーブルまで覗いている。

 

「あの、ミリィさん?コレって、テントじゃないですよね?」

 

「いいえ、リョウ様。こちらは、最高級のテントになります」

 

「は?いや、どう見ても豪邸にしか見えませんが・・・」

 

「リョウ様、よく見てください。そして、触れて下さい」

 

そう言われて、豪邸の壁に触れてみると、ちょっと柔らかくてテント生地っぽい手触りだ!

 

「こちらのテントは、父と母が研究、開発した魔導テントクロスを使用した、最高級のテントです。因みに、オール魔導電化で上下水道完備で、自動魔力充填機能が標準装備。燃料切れなんて存在しませんし、常に清潔に保たれる浄化魔法が発動しているので、汚れを心配する必要もありません。そして、災害対策も完全に完備しております」

 

「災害対策も完全に完備ですか?」

 

完全に完備って、ちょと変な気がするけど、それは置いといて・・・。

 

「はい。どんな強風が吹いても、飛ばされる心配は一切ありません。それから、テントが埋まる水量の水害でも、全く問題ありません。火災があっても、火が燃え移る心配も不要ですし、地震で地割れがあっても、何の問題もありません」

 

なる程?

 

よく分からんな。

 

「その災害対策の部分を、詳しくお願いします」

 

「分かりました。では、強風対策ですが此方のテント、実は私でも片手で持ち上げる事が可能なんです」

 

そう言って、ミリィさんが豪邸を掴んで持ち上げる。

 

「この様に、全く重量がありません。しかし、任意の場所に固定した場合、どんな頑固オヤジが来ても、ビクともしません!」

 

頑固オヤジって、説明に必要なのか?

 

要約すると、普通のテントはペグとか言うのを刺すけど、この豪邸テントは魔力を流すと地面に癒着するんだって。

 

だから、全く動かなくなる。

 

でも、この癒着ってのが、正確には地面にじゃなくて『空間』に癒着するらしい。

 

だから、もし地割れが起きても、空中に浮かんでる状態で止まっていられるのだ。

 

「そして、テントが埋まるほどの大水害の際は、変形して船になります。因みに、潜水も可能です」

 

「あの、ミリィさん?それって、潜水艦って言った方が早くないですか?」

 

俺の問いかけに、ミリィさんは「よくぞ聞いてくれました」とばかりに、さらに胸を張った。

 

「リョウ様。こちらの魔導電化システムは、災害の段階に合わせて『船』と『潜水艦』の機能を完全にコントロールしています」

 

ミリィさんの説明を要約すると、すべてを魔導電化で補うからこそ、その違いは『浮くか』『潜るか』というモードの差だけらしい。

 

まず、テントが水に浸かるレベルの洪水が起きた時は『船モード』。

 

魔導電化システムが自動で最適な浮力を計算し、テントの形状を変形させて水面に浮かび上がる。

 

さらに魔導磁力によって、中の家具やベッドは床にガッチリと固定される。

 

どれだけ激しい波に揺られようが、スープの一滴すらこぼれない。

 

これが、水の上を安全に漂流するための『船』としての機能だ。

 

そして、事態がさらに悪化して完全に水没した時、あるいは激しい津波や潮流を避けるためにあえて水底に避難する時、自動的に『潜水艦モード』へと切り替わる。

 

このモードになると、外壁の魔導クロスが『完全密閉&耐圧魔導バリア』を形成。

 

深海の凄まじい水圧を、完全にシャットアウトする。

 

同時に、魔導電化システムが周囲の水から酸素を無限に生成し、室内の空調を完璧にコントロールする。

 

外が地獄のような大水害でも、中はエアコンの効いた快適なリビングそのもの。

 

水中に完全に潜り、外の世界から隔離して生き残るための究極の機能である。

 

「・・・なるほど。魔導電化のおかげで、水圧も、家具の固定も、空気の心配も全部クリアなんですね。だったらミリィさん?水の中に潜って、水圧に耐えて、酸素まで作れるなら、それってやっぱり完璧に『潜水艦』ですよね?」

 

「いいえ、リョウ様。こちらには、潜望鏡もソナーも付いておりません。外を見るためのスコープがない以上、どれだけ潜水できようとも、こちらはあくまで『潜水機能付きの最高級魔導テント』です。そもそも、潜望鏡なんて、無粋な物が無くても、全てモニターに映し出されるので、全く問題ありません」

 

どれだけ中身がハイテクな潜水艦だろうと、ミリィさんの中での線引きは『潜望鏡があるかないか』のただ、一点らしい。

 

「み、ミリィさん?変形した所は、見れませんか?」

 

「残念ながら、変形するには災害が起きないと無理です。しかし、画像なら、お見せできますよ?」

 

そう言って、ミリィさんが光学パネルを表示して、画像を見せてくれる。

 

コレって、白い船体の色で、どう見ても反体制派の私設武装組織が運用する、最新鋭の双胴型宇宙巡洋艦に見えるんだけど?

 

あの有名な昔のアニメの・・・名前が女みたいって言った軍人をキレて殴りつけて、そのあと修正してやる!とか言ってまた殴りつける天才空手少年の主人公が乗ってた戦艦だよね?

 

「ミリィさん?この戦艦のデザインは・・・」

 

「はい、父がデザインしてます」

 

やっぱりか!

 

やっぱり、シュウさんだよね?

 

「父がこの船をデザインした時、『私、シュウ・アスナが粛正を行おうというのだ!』なんて呟くから、母に『どうしたの?具合でも悪いの?』と、心配されてましたね。ですが、父が転生者だと知って納得しました」

 

・・・シュウさん、なんで赤い方にしなかったんだろう?

 

「因みに、ミリィさん?シュウさんはなんで、この船をデザインしたか分かりますか?」

 

「父は、この船には思い入れがあると言っていました。確か『・・・赤ではない白というのも、悪くない。こちらのほうがスマートじゃないか。フッ・・・私がこの艦(ふね)に身を置くことがあるならば、その時は・・・サングラスでも誂えるとしようか』と、言ってましたね」

 

コレって、アレか?

 

俺がシュウさんを、修正しないと駄目なのかな?

 

でも、理由もなしに殴る訳にもいかんな。

 

そもそも、キレやすい天才空手少年だって、キチンと理由があってキレてただけだし?

 

俺は、彼を肯定するよ。

 

後、残念ながら、空は飛べないらしい・・・。

 

「では、次に火災が発生した際と、細かな機能説明になりますが・・・」

 

俺の脳内ツッコミを置き去りにして、ミリィさんの説明は続く。

 

「外での火災発生時、先ず魔導バリアによる保護機能が作動している為、高熱を一切受け付けません。ですので、夏の高温になる時期でも内部のエアコンと、この魔導バリアによって一切の外気温を遮断します。此れは、テントクロスに編み込まれたミラージュスパイダーの糸を通して、生地全体に魔力を循環させて、常にバリアを張ってあるから成せる技術なんです。どうです?凄いでしょう!因みに、この辺りは私も協力しています」

 

えっへん!

 

とか、言い出しそうな雰囲気で説明を続けるミリィさん。

 

「内部で、火災が発生した場合は?という質問になるかと思いますが、そもそも火災という概念が存在しません。どう言う事か?調理用のコンロ等はありますが、他の物に燃え移らない様、魔導科学の粋で作られたテントクロスは、魔力が切れない限りは燃えないのです。此れは、テント内に配備されている全ての物品に適用されています」

 

それから小一時間ほど、ミリィさんから高級魔導テントの機能について、時に通販番組の如く実演を交えた解説を受ける。

 

俺は観客よろしく、『おぉ!』だの『え〜!』だの『す・・・凄い!?』等のガヤを入れつつ話を聞いていた。

 

しかし、最終的には内容が凄すぎて何が何だか分からない状態に陥っていた。

 

因みに、この豪邸テントは非売品で、売る気は一切ないとのこと。

 

まぁ買うにしても、国家予算を軽く数倍凌駕するお値段だからね?

 

 

 

 

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