異世界転生   作:魔導科学

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瑞が、ゴモリーさんと哀さんから、指導して貰っていると「出来た〜!」と、めぐりちゃんの声が響いた。

 

「珊瑚ちゃん、ポポちゃん出来たよ!」

 

そう言って持って来たのは、黒い鳥のロボットと黒い蛇のロボット。

 

ロボット?

 

武器じゃないの?

 

「こっちの鳥がポポちゃん用の陰陽乾坤圏で、こっちのヘビが珊瑚ちゃん用の棒だよ!」

 

どう見ても、動物のロボットなんですけど?

 

「めぐりちゃん?可愛い鳥とヘビのロボットに見えるけど?」

 

珊瑚が戸惑いながら、めぐりちゃんに声を掛ける。

 

「うふふ、でしょう?取り敢えず、二人とも手に持って魔力を流して?」

 

そう言われた珊瑚とポポは、めぐりちゃんからそれぞれ、動物ロボを受け取り魔力を流す。

 

すると、動物の目が光り輝き動き始める。

 

鳥はポポの周りを飛んで、肩に止まる。

 

ヘビは珊瑚の腕に絡まり、顔を見つめる。

 

「登録完了!それでその子たちは、専用の武器になったよ!使い方を説明するね?」

 

めぐりちゃんが、二人に説明を始める。

 

「まず、武器になれ!って考えて?」

 

めぐりちゃんの言葉を受け、二人はその姿が武器へと変わるよう強く念じた。

 

ポポの肩に止まっていた鳥が舞い上がったかと思うと、瞬時に陰陽乾坤圏となってポポの両手にピタリと収まった。

 

珊瑚の腕に絡まっていたヘビは、節々を鳴らしながら一直線に硬化し、漆黒の長棒へと姿を変えた。

 

「それで、武器になるんだけど、それだけじゃないんだよ?更に、『形状変化』って念じてみて?」

 

めぐりちゃんの指示で、二人の武器が再び脈動するように形を変えていく。

 

ポポの持つ陰陽乾坤圏は、一度複雑に分解されると、片方に三日月、もう片方にスコップのような刃を備えた長柄の月牙鏟(げつがさん)へとその姿を変えた。

 

一方、珊瑚の持つ長棒は、鋭い音を立てて三つの節に分かれた三節棍となり、さらにそこから刃が飛び出すと、威厳ある十文字槍へと瞬時に変貌を遂げる。

 

「どう?凄いでしょう!十文字槍は、お母さんから習ってね?」

 

めぐりちゃんは次に瑞の方へ顔を向けると、少し申し訳なさそうに、でも自信たっぷりに告げた。

 

「あと、瑞ちゃんのはもうちょっと待っててね? 一通り武器の扱いを習得してから、それに合わせて作るから」

 

「うん。お願いします!」

 

瑞は、二人の武器の変形を目の当たりにして驚きつつも、自分にはどんな専用武器が届くのか、期待で目を輝かせながらお礼を言った。

 

「あら?月牙鏟ですね?珍しい!」

 

月牙鏟って言うの?

 

俺の知識なんて、前世で見た斉天大聖のドラマとか、最強の師匠たちに弟子入りした元いじめられっ子の少年漫画・・・その終盤に出てきた武器として覚えてるくらいなんだよな。

 

「月牙鏟なら、私も教えられますね!」と、ゴモリーさんが言う。

 

ゴモリーさんって、どんだけ使用できる武器の幅が広いんだろう?

 

「ゴモリーさん、その月牙鏟?ってのはどんな武器なんですか?」

 

俺の問いに、ゴモリーさんは満足げに頷き、ポポの持つ武器を指し示した。

 

「月牙鏟は、古くから中国の僧侶が護身と『慈悲』のために携えたとされる、極めて特殊な長柄武器なんです。最大の特徴は、その左右非対称な双頭の刃にあります」

 

ゴモリーさんは、まるで教鞭を執る教師のような淀みない口調で続ける。

 

「先端にある三日月形の刃は『月牙(げつが)』と呼ばれ、相手を斬るだけでなく、その凹みで首や腕を捕らえて封じたり、敵の得物を絡め取ったりするのに適しています。そして反対側の、一見スコップのような刃は『鏟(さん)』。こちらは重さを活かした打撃や突きに優れ、文字通り相手を叩き伏せる為のものです」

 

元々は旅の僧が、道端で行き倒れた者を埋葬し供養するための道具だった。

 

そんな逸話を付け加えながら、彼女はその凶悪なまでの多機能さを説いていく。

 

「槍のように突き、長刀のように薙ぎ、さらには相手の動きを封じる・・・。使いこなせばあらゆる間合いで優位に立てる名器ですが、重心が両端にある為、扱いが非常に難しいことでも知られています。ですが、ポポちゃん。高位の魔導武器は主を選ぶもの。その子に選ばれた貴女なら、重量なんて度外視して振り回せますし、難しい遠心力の制御も驚くほど簡単にこなせるはずですよ」

 

ゴモリーさんの言葉に、ポポが「えいっ」と月牙鏟を軽く振ってみる。

 

その瞬間、可愛らしい見た目からは想像もできない重い風切り音が響き、周囲の空気が震えた。

 

その光景を見ながら、俺は心の中で納得していた。

 

なる程。

 

あの少年漫画で闇の武器使いが圧倒的な破壊力を見せていたのも、西遊記の怪力が自慢の怪物が愛用していたのも、この『重さと多機能さ』の両立があったからなんだな。

 

本来なら死ぬ気で修行して身につける技術を、魔導武器との相性でショートカットしちまうのか。

 

「・・・中国の慈悲の道具でありながら、戦場では最強の捕縛武器になる。めぐりちゃん、またとんでもないものを作ったね」

 

俺が感心して言うと、めぐりちゃんは「えへへ」と鼻を高くして笑った。

 

「さて、では瑞ちゃんの指導に戻りますね?」

 

ゴモリーさんが瑞の方へ戻り、珊瑚は哀さんの元へ行って十文字槍の使い方を教わっている。

 

なんだか、俺だけ置いていかれているような気分なんだけど?

 

俺は、二人の華やかな武器の変形と、それを導く師匠たちの姿を少し離れたところから見つめることしかできない。

 

どうしよう?

 

あんなに凄いものを見せられた後だと、自分の実力だけが足らないと思ってしまう。

 

俺も、誰か凄い師匠のところに弟子入りしようかな?

 

そんな俺の内心の動揺を見透かしたのか、ゴモリーさんは歩きながらこちらを振り返った。

 

「リョウさん?ひょっとして、自分が弱いって思ってませんか?」

 

「はい、分かりますか?」

 

「リョウさん、強さって何ですか?」

 

「強さ・・・、そうですね。何者にも負けない力ですかね?」

 

「確かに、それも強さの一つですね。でも、私はそれだけじゃないと思うんです」

 

ゴモリーさんは足を止め、新緑のような穏やかな瞳で俺をまっすぐに見つめた。

 

「本当の強さとは、自分を律し、大切な人を守り抜く『意志』の深さだと私は思います」

 

彼女は瑞の振るうトンファーが巻き起こす風を感じながら、静かに言葉を継ぐ。

 

「ポポちゃんや珊瑚ちゃんの武器が華やかに見えるのは、彼女たちが迷いの中にいるからです。形を変える武器は、いわば彼女たちの『可能性』の模索。でも、リョウさんは違います」

 

ゴモリーさんは、俺を見つめて「リョウさんは既に、自分の歩むべき道を決めている。派手な変化など必要ないほどに、その剣筋には迷いがない。それは、どんな天賦の才よりも得難い、一つの完成された『強さ』なんですよ?」

 

その言葉に、胸の奥に溜まっていた重い霧が晴れていくような気がした。

 

「リョウさん。あなたは誰かの弟子になる必要はありません。むしろ、彼女たちが道に迷ったとき、変わらぬ背中で道標を示してあげる。それが、あなたにしかできない役割なんです」

 

ゴモリーさんは悪戯っぽく微笑むと、再び瑞の方へと歩き出した。

 

「さあ、立ち止まっている暇はありませんよ? 彼女たちが追いつけないほど先へ、その一振りを磨き続けてください」

 

俺は自分の手のひらを握りしめる。

 

そこには、さっきまでの焦りではなく、確かな熱が宿っていた。

 

「はい!有難う御座います!」

 

「リョウさんに教える事なんて、本当は何も無いんですよ?だから、早く私を迎えに来て結婚して下さい!それで、リョウさんが頑張ってくれるなら、私は子供は何人でも良いんですけど・・・」

 

あれ?

 

いい話だなぁ〜って、感動してたのにいつものゴモリーさんに戻っちゃった?

 

「・・・はい?」

 

あまりの急転換に、俺の感動は一瞬で宇宙の彼方まで吹き飛んだ。

 

さっきまでの後光が差しているようなゴモリーさんは、どこへ行ったんだ。

 

「あの、ゴモリーさん。凄くいい話だったんですけど、最後の一言で台無しですよ」

 

「あら、私は常に本気ですよ?リョウさんの道標になる背中、特等席で見守れるのは奥さんの特権だと思いませんか?」

 

「いや、理論の飛躍が過ぎますって!」

 

遠くで十文字槍を振り回している珊瑚が、こちらを見て「またやってる・・・」と、呆れたような視線を送ってくる。

 

熱くなっていた手のひらも、別の意味で変な汗をかき始めていた。

 

「ゴモリーさん、瑞をお願いします」

 

俺は話を切り上げて、避難する事にした。

 

「めぐりちゃん、ちょっと良いかな?」

 

「お兄ちゃん?どうしたの?瑞ちゃんの武器は、まだ完全に決まって無いから、どうしようか考え中なんだけど・・・」

 

「ごめん!焦らせる為に、来たんじゃ無いんだ。実は、相談事があってね?」

 

「お兄ちゃんが、ボクに相談!?うん!挙式は、教会でも神社でも良いよ?」

 

「めぐりちゃん、ゴモリーさんみたいな事を言わなくて大丈夫だよ?それでね、コレなんだけど・・・」

 

俺は、めぐりちゃんに『No.13・DEATH』のタロットカードを見せる。

 

「このタロットカードを、前世の手品師みたいに掌にヒュッと出せる様な仕掛けって出来ないかな?」

 

「出来るよ?右の中指をわずかに掌側へ沈ませて、手首のバネを弾く様にすれば良いだけだよね?因みに、手甲とかにしちゃう?そうすれば、防御にも使えるよね?」

 

流石、めぐりちゃん!

 

「問題は、糸をどうするかなんだけど・・・やっぱり、ミラージュスパイダーの糸が良いかな?そうなると、ミラージュスパイダーの糸を加工して貰わないとだね・・・」

 

「ミラージュスパイダーの糸なら、俺の知り合いの転生者の人が、店をやってるから問題ないよ?」

 

「えっ!?転生者?ひょっとして、そのお店って『レオパルド』?」

 

「あれ?よく分かったね?」

 

「だって、魔導キャンピングカーを作った時のミラージュスパイダーのワイヤーは、そこの弘崎さんにお願いしたんだよ。やっぱり、あの人も転生者だったんだ」

 

 

 

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