異世界転生 作:魔導科学
俺たちは結局、全員で弘崎君の店に来た。
店の入り口を開くと薄暗い店内の奥、怪しげなスポットライトの下で、黒いマントを羽織った弘崎君が独特のポーズでこちらを指差していた。
「・・・フハハハハ!混沌の渦に呑まれ、己が欲望の果てに迷い込んだ哀れな民よ!その業、私がすべてを導こう!さあ、世界の理を覆す覚悟があるならば、我が絶対の領域へ・・・。いらっしゃい!『アクセサリーショップ・レオパルド』に、ようこそ!」
相変わらず、全力の中二病に出迎えられた。
「こんにちは、弘崎君。新しい転生者を連れて来ました」
そう言って、俺はめぐりちゃんを前に出す。
「こんにちは〜!以前、ミラージュスパイダーのワイヤーを作って貰った囃子原です。覚えてますか?」
「勿論、覚えているとも!囃子原さんには、何回も打ち合わせに来て頂いた、お客様だからな!」
弘崎君が様々なポーズを付けながら、めぐりちゃんと話す。
「そして、ボクが転生者です」
「・・・ぱーどぅん?」
「だから、ボクが転生者なの!」
「な、なんだって〜!まさか、リョウさんの前に既に転生者に会っていたなんて!!」
「このお店の名前、本当は最後にンが付くんでしょう?」
「リョウさんと、同じ事いってる!?って事は、特撮も分かる?」
「う〜ん?凄く詳しい訳じゃ無いけど・・・」
「いや、電子レンジマンとライス戦隊 マゼ・ゴ・ハンの歌を聞かせてあげれば?」
俺は、めぐりちゃんと弘崎君の話に割って入った。
「リョウさん、その電子レンジマンとライス戦隊 マゼ・ゴ・ハンって何ですか?」
「まぁ、めぐりちゃんに聞かせて貰えば、分かりますよ?」
「じゃ、ちょっと流しちゃうよ?」
めぐりちゃんが、魔導通信機から歌を流す。
『電子、レンジマン
電子、レンジマン
誰かが何処かで、ボヤいてる
何処かで誰かが、嘆いてる
温かいの〜、飲みたいな〜
レンジでチンだ〜
頭にきらめく、電子レンジ
(レンジマン、レンジマン)
クッ◯パッドの恩恵は、レンジでチンだ(チンだ〜)
加熱調理、安心安全に済む〜
あ〜あ〜
毎日の家計を、守る為
ガス代節約、でも電気代掛かる
電子レンジ 電子レンジ
おぉ~!レンジマ〜ン』
「次は、コレだよ〜!」
『ご飯が、もしも無かったら〜
パンでも食べろと、人は言う〜
でも、やっぱり俺は日本人
日本人なら、お米だろう〜
お米はオー、日本の主食だ
ジャパンをオー、育ててきたんだ〜
梅!海苔!明太!
梅!海苔!明太!
ラーメン頼んで、ライスも付けている
タコ飯〜、チャーハン〜、ライス戦隊 混ぜご飯〜!!』
歌が終わり、静かに仮面を取る弘崎君。
「・・・リョウさん俺、今日ほど悔しい日は、無いですよ」
弘崎君が、咽び泣きながら俺に言う。
「ど、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
なんか、初めて弘崎君と会った時と同じ様な光景だよね?
「俺、リョウさんが初めてだと思ってたんです・・・。でも、そうじゃ無くて、他の人が!しかも、お客さんでリョウさんより、早く会ってた人だったなんて!」
うん?
ちょっと、待とうか?
どうにも、誤解を招きかねない言葉の響きなんだけど?
チラッと、カオリたちの方を見ると全員、顔を赤くしてハァハァ言いながら、此方を見てる!
やっぱり、おかしな想像してるよね!?
「リョウが受け?それとも、タチ?」
ネアさん?
危険なBL妄想は、止めて下さい!
「私は、リョウ様が受けを推します!」
ミリィさん?
俺は、男に興味無いですよ?
「・・・日替わりで突いたり、突かれたり」
リリーさん?
更に、危険度が増しましたよ!
「リョウ、羅川先生のニ◯ーヨーク・ニュ◯ヨークで、感動してたもんね!」
カオリ〜〜〜!
また、その話を出すのか!?
「あの、羅川先生のニュー◯ーク・ニューヨ◯クって、何の話ですか?」
ゴモリーさんが、カオリに問い掛ける。
「前世で伝説的な名作BLコミックなんですよ!ゲイのカップルの愛と人生を、シリアスかつ感動的に描いた作品なんです!」
めぐりちゃんが目をキラキラさせながら、ゴモリーさんに説明する。
「あらあら、リョウさん?やっぱり・・・」
哀さんが、聖母の様な微笑みで俺を見つめる。
確かに、俺はCL◯MPとか羅川先生の作品が大好きですよ?
でも、俺は正常なんです!
女性が好きな、正常な男なんです!!
「主、二刀流?」
瑞?
俺が前世で教わったのは、夢想神伝流で二天一流は修めて無いし、男に興味は無いからね?
それから、なんで頬を染めてニヨニヨしながら、俺を見るのかな?
「私は、パパが男の人が好きでも、大丈夫だからね?」
珊瑚、違うんだよ!
違うんだ・・・。
「リョウさん!この世界は、同性婚で一夫多妻や多夫一妻も、認められてるから、大丈夫ですよ?」
「ご主人、お父さんも良かったね!」
「ユカさん、ポポ?違いますからね?俺は、正常な男ですよ?」
「リョウ〜、大丈夫だよ〜?何も心配しなくて、良いからね〜?」
マリーさん、その優しい微笑みがとても不安なんですよ。
「リョウさん?すみません!お気持ちは嬉しいですが、俺には瑠璃が居るんで・・・」と、ちょっと頬を染めた弘崎君が俺にそう言う。
「誤解です!そもそも、弘崎君の発言が、事の発端なんですよ!?責任とって下さい!」
「せ、責任ですか?でも、俺は同性と付き合った事ないから・・・」
「おいぃ!その話から、一旦離れろ!」
俺は、なりふり構わず必死に抗議したよ。
一時間後・・・。
「やだ〜!リョウさんったら、誤解なら誤解って早く言ってよ!」
「何度も説明しましたよね、哀さん?」
俺はジト目で、哀さんに文句を言う。
「リョウさん、すみませんでした!俺に、気があるわけじゃなかったんですね。・・・でも、ちょっと残念です」
「おいぃ!また、話をややこしくするな!」
俺は弘崎君の発言に、すかさずツッコミを入れた。
すると彼は、慌てて弁解する。
「すみません!残念っていうのは、同郷だし話も合うから、もっと仲良くなれると思ったのに・・・って、意味です!」
「もっと、仲良く?」
「それは、禁断の甘い・・・」
「はい!其処までですよ〜?ゴモリーさん、ミリィさん?」
これ以上の大爆発は、御免だ。
俺はベテラン爆弾処理班の如く、彼女たちの妄想という名の危険物を、迅速かつ完璧に解体した。
「あれ?リョウさん、その隣にいるお嬢ちゃんが着けてるアクセサリーの紐って、俺が仕上げたヤツですよね?」
「はい。そうですよ?」
「でも確か、ドラゴンの娘さんに、プレゼントしたんじゃ?」
「はい。そうですね」
「リョウさん、ドラゴンの娘さんが可哀想じゃないですか!」
「えっ?いや、そんな事ないですよ?実際、とても喜んでくれましたし・・・」
「喜んでくれたのに、他の娘にプレゼントしたんですか!?リョウさん、見損ないました!」
「弘崎君?一体、なんの話をしてるんですか?」
「リョウさん、アンタは俺に製作を依頼した作品を、ドラゴンの娘さんにプレゼントしたのに、他の娘の手に渡ってるじゃないか!」
「あの〜、それはですね・・・」
「そんな大人、修正し◯やる!」
弘崎君の素早い縦拳が、俺の顔面を捉える。
「ちょっと!パパになにするの!」
珊瑚が、弘崎君の手首を掴んで止めてくれた。
「離せ!いいか?君は、顔が良いからって取っ替え引っ替え女を騙す、ろくでなしの中二病で、ロリコンのこの男に騙されてるんだ!目を覚ませ!」
・・・酷い言われようだな?
「パパに対する暴言や暴力は、お仕置きが必要だね?」
珊瑚が、弘崎君の手首を握る力が強くなる。
「そうですね?珊瑚ちゃん!」
後ろから、状況を眺めていたユカさんが、静かな憤怒を醸し出している。
「・・・確かに、リョウは緊縛、露出が大好きな変態属性を持つ、危険な中二病患者。でも、その事実があったにしても、今の発言は許せない」
リリーさん、アナタの発言もどうかと思いますよ?
「弘崎さん?リョウさんは、人妻も好きなのよ?」
哀さんが、更に燃料を投下する。
もうね、火に油を注ぐなんて生ぬるい。
修羅場の話し合いに浮気相手を『連れ』として同席させるような、火災現場にガソリンどころか、ニトログリセリンを笑顔でぶちまける鬼畜の所業だよね?
確かに、否定できない所はあるにはあるよ?
もうね、変態属性だって否定はしないし、人妻の魅力だって理解しているよ?
・・・男には、興味無いけどな?
「な、人妻まで・・・! リョウさん、アンタって人は!君は、やっぱり騙されてる!彼は君に『パパ』なんて呼ばせてるけど、それも歪んだ性癖の一環なんだ!早く俺の後ろに!」
弘崎君は、珊瑚を守ろうと必死に叫んでいる。
その目は、邪悪なロリコン魔王で変態な俺から、無垢な少女(珊瑚)を救い出そうとする正義のヒーローそのものだった。
「弘崎さん?ドラゴンのビィちゃんは、その娘ですよ?」
カオリが、事も無げに言う。
「は?」
「だから、私がこの間、パパとママと一緒に居たレッドドラゴンなんです!」
珊瑚が、弘崎君の手首を掴んだまま叫び声を上げる。
「えっ・・・? ドラゴン・・・? 人間・・・? えっ?」
弘崎君の思考の歯車が、ガチリと音を立てて噛み合わなくなった。
身体から力が抜け、その目は珊瑚と俺の顔を交互に往復している。
「彼女が珊瑚。この間、作ってもらったミラージュスパイダーのアクセサリーをプレゼントした、ドラゴンの娘さん本人です。昨日から、人型化できる様になったんです」
ガバッ、と弘崎君がその場に五体投地した。
床に額がめり込みそうな勢いである。
「大変、申し訳ありませんでしたーーーッ!!!」
その見事な土下座っぷりに、ユカさんが冷ややかな視線を送る。