異世界転生 作:魔導科学
「では、これより第一回『リョウ様への不敬、および暴力を働こうとした不届き者への制裁』を開催します」
ミリィさんが、メガネをクイッと上げて宣言する。
いつぞやの様に、女性陣が周りをグルっと囲み、真ん中に俺と弘崎君が座らせれている。
その中には、先ほど来たボア揚げ屋の看板娘兼、弘崎君の恋人の瑠璃さんも居る。
「では弁護人、発言を」
「キョウは、小さい頃から、ずっと一緒でした。私が近所のイジメっ子にイジメられると、必ず私を助けてくれました。そんな彼は、年頃になると『瑠璃、空手が良いかな?それとも、生身で巨大兵器をぶっ壊せるっていう不敗の東方拳法が良いかな?』と言って、近所の日本拳法の道場に通い始めました」
・・・それ、某格闘ロボットアニメの、流派・東方・・・的なやつを意識してるよね!?
あと、空手は確実に、さっき彼が叫んだ『修正して◯る!』の某キレやすい少年の名台詞を意識してるよね!?
俺は心の中で、猛烈にツッコミを入れた。
「瑠璃、せめてそこは『俺のこの手が、真っ赤に燃え盛る!』って、台詞を入れてくれよ!」と、空気を読まずに叫ぶ。
弘崎君、駄目ですよ!
それじゃ勝利を掴めずに、処刑台を掴むことになりかねない!?
俺が内心で頭を抱えていると、ミリィさんがメガネをクイッと上げながら「被告人、貴方に発言を許した覚えは無いです」と、極めて冷徹な声で告げる。
「なる程、では次に被害者のリョウ様?何かありますか?」
「彼は、俺と同じ転生者です。瑠璃さんの話を聞く限り、とても優しく正義感に溢れた青年だと思います!俺のように『犯罪的』で、『破滅的』で、『アブノーマル』な性癖があるわけじゃないようですし? 取っ替え引っ替え女を騙すろくでなしの、中二病を拗らせたロリコン男だと、そこの誰かさんに言われたことなんて、俺は全っ然! 全っく! コレッぽっちも!気にしてないですからねっ!?だから、彼は無罪で良いと思います!」
「リョウ、物凄く気にしてるじゃん」
カオリが、ボソッと言う。
「あの、リョウさん・・・?俺を『庇って』・・・いや、本当に『庇って』るんですよね、これ?まぁ、庇ってもらったと思うのは嬉しいんすけど、ぶっちゃけ俺の罪状より、リョウさんの日頃の行いの方が圧倒的にヤバくないすか・・・? あと、本当に先ほどの発言は、すみませんでした!」と、弘崎君がジト目で俺に言う。
「異議あり!」
「そうです! 異議ありです!」
そう叫んだのは、ネアさんとゴモリーさん。
「異議を認めます。発言をどうぞ」
ミリィさんが、ネアさんとゴモリーさんの方に向き直り、メガネをクイッと上げる。
「リョウのアブノーマルな性癖については、昨日はじめて知ったわ!でも、私たちはまだ誰もそれを求められてない!」
「そうです!私は、いつでも言ってくだされば、リョウさんのお望みのままにされても良いのに!でも、まだなんです!一体いつなんですか、リョウさん!?」
二人の発言を聞いた女性陣は、ウンウンと深く頷いている。
いや、そもそも、頷いちゃならん様な人も混じってるよね?
哀さん、めぐりちゃん、ポポ、瑞、珊瑚・・・は、人間年齢にすると三十路だから良いのか?
いや、見た目が少女とか人妻は、流言飛語的にも色んな意味でアウトだろう!?
俺のライフは、もうゼロよ!
勘弁して?
このままだと、国家権力(兵隊さん)に連れて行かれかねない。
「被害者・・・リョウ様の更に詳しい性癖の開示および、その執行時期についての議論は本日の本題ではありません。それはまた後日、別の最高機密会議にて徹底的に追及いたします」
「えっ、別枠でやるの!?」
絶望する俺を完全にスルーし、ミリィさんは冷徹な視線を弘崎君へと戻す。
「話を戻します。被告人・弘崎 京。貴方が瑠璃さんを守るために拳法を修めたその心意気と、前世の某ロボットアニメへのリスペクト精神は認めましょう。しかし、リョウ様に対して『修正してや◯!』と、暴力を振るおうとした事実は消えません」
「うぐっ!それは本当に、その、ただの条件反射というか、リョウさんが酷い人だと思ったからで・・・」
弘崎君が気まずそうに視線を泳がせると、瑠璃さんがすかさず手を挙げる。
「異議あり! ミリィさん、キョウは確かに早とちりしました。でも、彼が拳を振るったのは、見た目が幼気な少女が『騙されている』と勘違いしたからです!つまり、すべては正義感ゆえの行動なんです!」
「瑠璃・・・!」
感動の視線を交わす二人。
しかし、周囲を囲む女性陣の空気は一気に冷え込む。
「ちょっと、待ちなさい」
カオリが腕を組んで、ジト目で割り込む。
「正義感と言う勘違いから、リョウに殴りかかっても、いい理屈にはならないわよね?そもそもリョウは、説明しようとした筈よ?」
「そうです!」
ユカさんも身を乗り出して、同意する。
「リョウが、どれだけアブノーマルで、どれだけロリコン疑惑があって、どれだけ私たちを焦らし続けていようとも、理不尽に殴られていい理由にはならない!」
いや、ネアさん、それ庇ってるように見えて俺のダメージ倍増してるからね!?
心の中で血の涙を流しつつ、周りを伺う。
するとここで、黙って様子を見ていた哀さんが、ふっと妖艶な笑みを浮かべて言った。
「まあまあ、皆さん。弘崎君も反省しているようだし、リョウさんのライフもすでに尽きかけている様だから、ここは一つ、建設的な『制裁』で、手を打つのはどうかしら?」
ミリィさんがメガネの奥の目を光らせて問う。
「・・・哀さん、何か具体的な提案が?」
「そうねぇ。弘崎君は、日本拳法をやってるのよね?それを活かして、『ボア肉の肉叩き係』を命じるというのはどう? 生身であの硬いボア肉を、最高に柔らかくジューシーに仕上げるには結構な苦労だと思うけど?」
「あ、それ名案!瑠璃さんのお店のお肉も、ついでに美味しくなるじゃない!」
めぐりちゃんが、無邪気に拍手する。
「なるほど。瑠璃さんへの利益にもなり、リョウ様への実質的な労働奉仕にもなる、と」
ミリィさんはそう言い、思考を巡らせ「判決を言い渡します。被告人・弘崎 京は、向こう一週間、ボア肉を『俺のこの手が、真っ赤に燃え盛る』拳で修正する刑に処します。なお、リョウ様への謝罪として、初日のボア肉は、リョウ様に無料進呈すること」
「・・・あ、ありがてぇ。命は助かった・・・」
ガタガタ震えながら、胸をなでおろす弘崎君。
「そして・・・」
ミリィさんの視線が、俺を捉える。
「リョウ様。リョウ様が私たちをいつまで『焦らし続ける』つもりなのか、その本心を聞き出すための『第一回、リョウ様のアブノーマルな性癖、徹底糾問会』を、これより執り行います」
「待って!? 今度は、俺なの?またトラウマを抉るの?! 兵隊さん、俺を連れて行ってぇぇぇ!!」
俺のの悲痛な叫びが、アクセサリーショップ・レオパルドの中に響き渡った。