異世界転生 作:魔導科学
俺は今、軍の基地にいる。
目の前には、アンダーソン少佐が座って此方を眺めている。
「結論から、言おう。今回の件は事故として処理された。しかし、今後は気をつけたまえ」
アンダーソン少佐は、光学パネルを通して裁判所とやり取りした連絡事項を俺に伝える。
本来、保護モンスターであるエントに危害を加える行為は、重大な違法行為だ。
では、なぜ俺が罪に問われなかったのか。
それは、この国の軍が警察機構も兼ねており、軍が裁判所に問い合わし俺と、そしてエントの双方から徹底的な事情聴取を行ったのだ。
その結果、エントが『自分の意思で行ったことだ』と明確に発言したため、違法性のない事故、あるいはエントの自己責任として処理されたらしい。
エントが、俺を庇ってくれたのだ。
「・・・そうですか、エントに感謝します」
「そうだな。あれほどの明確な意思表示がなければ、今頃君は監獄の中だっただろうね?」
少佐の言葉を聞きながら、俺は基地に来る前のことを思い出していた。
事故が起きた直後、俺は博士たちに、自分を軍に連行するよう頼んだのだ。
最初はテア博士が「私の大切なリョウを、監獄に入れるなんて嫌だ!」とごねていたが、最終的には宇治茶博士とグリーン博士に「法を敵に回しては研究どころではない」と諭され、博士三人総出で俺を軍に連れてきたのだった。
テア博士?
別に、アンタのものになった訳じゃないからね?
これはツンデレでもなんでもなく、事実です!
「リョウ!良かった、早く我が家に帰ろう!」
「テア博士、俺の住んでる所は施設の居住区で、既に同棲している家族も居ます」
「なら、今日は家に泊まれれば良い!私は、愛人枠でも構わないぞ?」
「いや、俺がダメなんです!そういう爛れた関係ってのは、最初はよくても段々と問題が生じやすいですから、御免です!」
「なんだ?リョウ、やけに詳しいな?経験者か?でも、そんな所が、たまらない!ハァハァ!」
テア博士に、ジト目な熱視線で睨まれる。
「良かったのぅ!しかし、『俺を軍に連行しろ』と言った時は、肝が冷えたぞ?」
「宇治茶博士の言う通りだよ!今回の件は、我々にも責任がある。それを一人で、背負い込むなんて・・・」
「あれは、俺の不注意が原因です。だから、博士たちを巻き込む訳にはいきませんよ」
「その心意気やよし!リョウ、儂はお主が気に入ったぞ!」
「僕らの事は、心配しなくても大丈夫さ!死なない限りは、何処でも研究は出来るからね?でも、有難う」
二人の言葉に俺が密かに感動していると、すかさず割り込んできた奴がいた。
「リョウ、時折みせるそんな優しさが、私を更にダメにするぅ~!」
「テア博士?それなら、テア博士だけ前言撤回しましょうか?」
「そ、そんな!君は私を何処まで沼らせる気なんだ!さぁ、抱け!今すぐ私を抱け!」
「取り敢えず、エントを迎えに行って、外に出ましょうか?此処は、軍の基地内ですし」
俺は、テア博士を無視して宇治茶博士とグリーン博士に声を掛ける。
流石に、転生者じゃないから『そこに痺れる、憧れるぅ~!』という台詞は無いが、非常にウザったい存在になってしまったな。
俺たちは、エントを迎えに行った。
俺たちは、エントを迎えに行った。
大事なところだから、二回言った。
だけど、迎えに行った先で、俺の脳処理は完全にフリーズした。
「あの、どちら様でしょう?」
「やだ〜!私よ、私!さっき会った時も覚えてなかったのに、また忘れたの?ひょっとして若年性認知症?それとも、短期記憶障害?」
目の前に、妖艶な美魔女が立っている。
え〜と・・・?
「リョウでしょう?貴方、転生者なのね!でも、まさか私が人の姿になるとは思わなかったわ!これで意思の疎通ができるから、楽になったわね?」
「・・・あの、どちら様でしょう?」
俺は、また同じ質問をする。
「私よ!これなら、分かる?」
そう言って美魔女は、鋼鉄のエントに変身する。
「エントか?!」
「驚いたな!?お主、転生者なのか?後、エントが人になりおったぞ!」
「はじめまして、僕の名はグリーン・ティー!魔導科学を専攻している研究者さ!所でお姉さん、好みのタイプは?僕の年収は、ざっと一億ちょっとなんだけど、どうかな?」
「ごめんね?グリーンさん。私の心は既に、リョウに盗まれてるの!」
「なん、だと!?テア博士だけでなく、こんな妖艶な美魔女まで!君は一体、どこまで貪欲なんだよ!チキショー!!もげてしまえ!」
・・・もげてって、何がだよ。
まぁ良いや。
「ハァハァ・・・リョウ?君はまた私を、こんな風に貶める!どれだけ私を、興奮させるのかね?焦らしなのか?そういう趣向なのか?我慢ばかりさせられて、もう限界だよぉ!?」
テア博士が、身悶えしながらこちらに擦り寄ってくる。
「取り敢えず、此処から出よう」
俺はテア博士を無視して、エントと共に外に出る。
テア博士を含め他の博士たちも外に出て来た。
「そう言えば、名前はあるのか?」
俺は、美魔女なエントに聞いてみた。
「名前?そうねぇ・・・、私たちはお互いに名前で呼ぶ習慣が無いの。だから、貴方が名前をつけて?」
カオリの時もそうだったが、また俺が名付け親にならなきゃならんのか。
「・・・ヴェルダンディはどうかな?北欧神話で、世界樹を育む運命の三女神の一人だったはずなんだよね」
「うふふ。ヴェルダンディ!良いわね!でも私には、色黒な姉も可愛い妹もいないけど?」
「うん、それは版権問題的にマズいから、その辺にしとこうか?」
彼女は、長い若草色の髪を靡かせながら、妖艶に微笑む。
「あ〜、ひょっとして、俺の記憶って?」
「うん!持ってるわよ?貴方の前世の事や、カオリって娘の事、それから他の娘たちの事も全部、分かってるわよ?ドSなんでしょう?大丈夫!私は、ちゃんと受け入れるからね?」
「り、リョウ?それは本当かね?やはり、君は私の望んだ存在じゃないか!出会うべくして、出会った二人ってことだね?さぁ、結婚しよう!そして、私を・・・」
「ちょっと、黙って貰っていいですか?テア博士」
「フグぅ〜!なんて冷たいあしらい方!?私は、いつでも準備OKだよ!」
「テアさん?あのね・・・」
ヴェルダンディが優雅な仕草で、何やらテア博士に耳打ちしている。
「・・・で、・・・こうなって、分かった?」
「フムフム?なるほど!有難う!」
テア博士が、満面の笑みを湛えて俺を見る。
「ヴェルダンディ師匠から聞いたよ!君は、ギャップ萌えが好きなんだね?私はヴェルダンディ師匠から色々と教わったから、今後は君の満足いく女になっていくよ!」
「そうよ、リョウ。テアさんは素質があるわ。ほら、メガネを少し斜めにして、白衣をここまで身に纏うだけで・・・」
テア博士は、さっきまでは掛けていなかったメガネを次元収納から取り出して装着した。
ヴェルダンディが優雅に指先を動かすと、足元の地面からすっと銀色の蔓が伸びる。
それはテア博士の白衣の袖を巻き込みながら、彼女の身体をがっちりとホールドした。
蔓の絶妙な締め付けによって、白衣越しにボディラインが強調される。
テア博士は顔を火が出るほど赤くしながらも、必死にツンとした態度を維持しようと声を震わせた。
「くっ・・・! は、早く解きなさいよリョウ!・・・でも、アンタがどうしても『このまま裏の倉庫に連れて行きたい』って言うなら、着いて行ってあげなくもない、ぞ・・・?」
「ブフゥ!ごほ、ごほ・・・!一体、何を教えた!」
「やぁねぇ〜!私はただ、リョウの好みのタイプをテアさんに教えただけよ?」
また、俺のトラウマを再発させるトラウマメーカーが増えちまった・・・。