異世界転生   作:魔導科学

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『リョウ、遺跡からの通信が完全に途切れた。多分、さっきの爆発は・・・』

 

グリーン博士が、今の爆発音から最悪の事態を察したようだ。

 

取り敢えず、今は目の前の脅威をなんとかしないと!

 

超巨大なアースワームは、カマキリ共を瞬く間に丸呑みにした後、今度は此方を獲物として捉えた様だ。

 

俺は、瞬時に魔導アーマーから魔導バイクへと変換し、その場から離れた。

 

直後、その巨体が砂煙を上げながら、俺の居た場所を激しく穿ち地中深くに潜っていく。

 

巨体が完全に地中深くに潜り、姿が見えなくなる。

 

しかし、相手は逃げた訳じゃない。

 

ただ単に、次の襲撃の準備をしていただけだ。

 

『リョウ!このアースワーム、苦しんでいる!殺してくれと、そう言っている!』

 

生物学者兼テイマーのテア博士から、緊迫した通信が入る。

 

ズシァーン!

 

地中から突如這い出した巨体が、凄まじい風圧と共に地面に叩きつけられる。

 

それをバイクの挙動だけで紙一重で躱しながら、俺はテア博士の通信に怒鳴り散らすように答えた。

 

「苦しんでるって、どういう事ですか!?」

 

『人間に対して物凄く、憤怒と怨嗟を抱いている!赦せない、この世界の人間共を根絶やしにしてやるーーそんな感情がダイレクトに伝わって来るんだ!』

 

「なぜそんなに、人間を恨んでるんだ・・・!」

 

『魔力を無理やり注ぎ込まれて、肉体を内側からずっと焼き裂かれているような状態なんだ!体が勝手に暴走して、自分でも止められない恐怖と激痛で、もう狂いそうだと泣いている・・・!多分、何者かがおかしな実験を施した結果かもしれないな』

 

テイマーであるテア博士の言葉を、モンスターの言葉が分からない俺は信用するしかない。

 

「・・・苦しんで、殺して欲しいと、本当にそう言ってるんですね?」

 

『あぁ!人間共が憎い、こんな姿になったのは全て人間共のせいだ、と・・・!』

 

「・・・分かりました」

 

俺は魔導バイクを魔導アーマーに再変換させ、地上でのたうつ巨躯を見据える。

 

「お前の望みを、叶えてやる」

 

俺は奴に急接近し、声を掛けた。

 

「俺を食え!」

 

「リョウ!なにする気なの!?」

 

俺に近付いたヴェルダンディが、心配そうに声を掛けて来る。

 

「・・・俺の記憶を持ってるなら、分かるだろ?苦しんで、悲しんでいるのに誰も助けてくれない絶望・・・。だから、俺がその絶望を終わらせてやる。後、王道のラノベ展開な台詞も言ってみた」

 

アースワームが首を擡げ、俺を一呑みにする。

 

『おい!リョウが、アースワームに呑み込まれたぞ!助けないと・・・!』

 

宇治茶博士が、焦りながら他の博士たちに通信を入れる。

 

『そうですね、早く助けないと!』

 

グリーン博士も同意して武装を展開する。

 

『リョウ!君は私を置いて、何処に行くんだ!私は、君がいないと駄目な身体になったんだぞ!?この責任、どう取ってくれるんだ!?』

 

テア博士は半分パニックになりながら、アースワームを我武者羅に攻撃し始めた。

 

だが、その心配は杞憂に終わる。

 

「・・・終わりにしてやる。これが、俺にできる唯一の手向けだ」

 

・・・本当に、すまない。

 

どうか、安らかに眠れ・・・。

 

アースワームの闇深い体内で、俺は魔法銃ルシファーを最大出力で発砲。

 

同時に、肩の魔導バルカンと両足のミサイルランチャーを一斉射撃する。

 

内部から放たれた無数の光条と爆炎が、アースワームの巨体を内側から木っ端微塵に引き裂いていった。

 

ビクンと一瞬、身体を震わせたアースワームの巨体が内側から一気に弾ける。

 

俺を救出しようと奮闘していた宇治茶博士と、グリーン博士たちが俺の姿を確認してホッと安心する。

 

『君は、私をなんだと思っているんだ!あんなに激しく私を言葉責めしておいて、そんな私を置き去りにして危険な真似をして、私をこんなにも悲しませて苦しめて、君は本当にドドSだな!ハァハァ』

 

テア博士は俺の姿を確認して、ペタンと腰砕けに座り込む。

 

そして最後の方が、何で怪しい吐息になってんだよ?

 

「テア博士、俺は別にテア博士に対しておかしな言動をした覚えは、無いですけど?」

 

『フグぅッ・・・!そ、その冷徹な眼差し・・・っ!』

 

俺の冷たいあしらいを浴びたテア博士は、魔導アーマー越しに身体をビクンビクンと震わせ、バイザーから見える顔を真っ赤に染めて身悶えした。

 

「そんな事より、遺跡に急ぎましょう!」

 

俺は、魔導アーマーをバイク形態に変形させ、ヴェルダンディを後ろに乗せ走り出した。

 

それに合わせて、他の博士たちのマシンも一斉に走り出す。

 

『リョウ、魔導連結バギーに合体しよう。その方が、個別に走るより遥かに速くなる』

 

グリーン博士から、通信が届く。

 

「分かりました、お願いします!」

 

俺が叫ぶと同時に、コンソールの魔導インジケーターが激しく明滅を始めた。

 

博士たちの機体と俺のバイクが、互いの魔力を同調させながら速度をぴったりと合わせていく。

 

『よしーー各機、コネクト!』

 

グリーン博士の鋭い号令が、通信越しに響いた。

 

次の瞬間、俺が駆る中央の大型バイクの左右にサイドカー型ユニットが、さらに後部にはリバーストライクが、猛スピードで吸い寄せられるように接近する。

 

ーーガシャコンッ!

 

ガチィィン!

 

走行中の速度を一切落さないまま、重厚な金属音を立てて各パーツが強固に噛み合っていく。

 

最終的に、一つの巨大な『魔導連結バギー』としての元の姿を完成させた。

 

その瞬間、再び魔導回路が一本の巨大なラインへと繋がり、爆発的な出力が全身を突き抜ける。

 

本来の姿を取り戻した俺たちは、激しい風を切り裂きながら、さらに速度を上げて荒野を駆け抜けた。

 

あっという間に、遺跡に着いた。

 

だが其処は、凄まじい爆破によって地面ごと陥没させられた、原型を留めないほどの瓦礫の山しか無かった。

 

「一体、何でこんな事になってるんだよ!」

 

「そもそも、何物が襲撃したんじゃ?」

 

「確かに、そうですね。此処には、古代遺跡しか無かった。それも、リョウが来るまで、全く起動しなかった物なのに」

 

グリーン博士、宇治茶博士、テア博士が順に喋りながら、必死に生存者を探している。

 

俺も彼らと共に、瓦礫を退けながら生存者を探した。

 

「リョウ、駄目・・・生存者は、居ないわ」

 

地面に手を突いたまま暫く動かなかったヴェルダンディが、顔を上げて俺にそう告げた。

 

「私の蔦で地面の下を調べたけど、生体反応が一切ないの」

 

そう言って彼女が立ち上がると、地面の亀裂から伸びていた無数の銀色の蔦が、意思を持つように彼女の指先へと吸い込まれ、肌へと溶けるように消えていく。

 

残念な事に生存者どころか遺体すら発見出来なかった。

 

それ程までに、酷い破壊の有様だった。

 

俺は瓦礫から宇治茶博士へと視線を移し、問いかける。

 

「宇治茶博士、軍に連絡はしましたか?」

 

「うむ、それはもう済んどるよ。まもなく、来るじゃろう」

 

やりきれない気持ちを抱えたまま、俺は博士の言葉に静かに耳を傾けていた。

 

それから暫くして、止んでいた雨がまた降ってきた。

 

博士たちは、小型の丸い装置を起動した。

 

すると彼らの頭上に、半円状の見えない障壁が広がり、激しくなる雨をパチパチと弾き始める。

 

「リョウ、君は雨具を持っていないのかい?なんなら、僕の製作した魔導具を譲るよ」

 

グリーン博士が、俺とヴェルダンディに一つずつ、その小型の丸い装置を渡してくれた。

 

「有難う御座います、グリーン博士」

 

「グリーンさん、有難う!」

 

「うん!ヴェルダンディさんなら、他にも僕の自慢の魔導具をあげちゃうよ?」

 

グリーン博士は無理に笑いながらそんな事を言っているが、大分、強がっているのが分かった。

 

さっき、俺たちにこの装置を渡してくれた時、彼の手は小刻みに震えていたのだ。

 

きっと、この遺跡には彼と一緒に働いていた、仲の良かった人たちが大勢いたのだろう。

 

その人たちの、遺体すら見つからない状態なのだから。

 

辺りはすっかり真っ暗になり、俺たちはグリーン博士の出してくれた魔導照明器具を使って、周りを明るく照らし出した。

 

強烈な光が、不気味に影を伸ばす瓦礫の山を白々と浮かび上がらせる。

 

「軍の連中は、まだ来ないんですか?」

 

俺は苛々しながら、言葉を吐き出す。

 

「そうじゃな?さき程、連絡したからもう来ても良いんじゃが・・・」

 

宇治茶博士も、困惑しながら返答する。

 

俺たちの会話以外、他の会話は全く無い。

 

静まり返った闇の中で、小型魔導具がパチパチと雨を弾く音と、時折パラパラと音を立てて崩れる土砂の音だけが、不気味に響いていた。

 

遠くから、複数のヘッドライトの光がこちらに向かってくるのが見えた。

 

・・・やっと、来たか。

 

俺は苛立ちを抑えながら、闇を切り裂くように近付いてくる明かりをじっと睨み据えた。

 

 

 

 

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