異世界転生   作:MSZ-006

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「私の元部下が、本当に申し訳ない」

 

「・・・謝って済む問題じゃないでしょう?この国の安心安全を守る存在に、あんなロクデナシがいるなんて、どうかしてますよね?」

 

「・・・確かに、その通りだ。だが、今は謝罪しか出来ない。どうか、許して欲しい」

 

俺は今、アンダーソン少佐と対面して文句を言っている。

 

グリーン博士が魔導カメラを解析し始めたあたりで、避難所の設置を終えた軍人が俺たちを呼びに来たのだ。

 

そして、俺たちがここに到着してからの事の次第を、少佐へ告げようとしている最中だった。

 

「謝罪は、結構です。で、俺たちが来る前にモンスターの襲撃に遭いました。因みに、アースワームの超巨大な奴でした。そいつが現れた直後、遺跡の方で爆発もありましたが、そちらで何か情報は掴んでるんですか?」

 

「こちらは、そんな報告は上がってきていないな」

 

「・・・そうですか?なら、生物学者兼テイマーであるテア博士から、詳しく話を聞いて下さい。それから、俺たちが到着した時は既にこんな有様でしたよ」

 

「・・・分かった。協力、感謝する」

 

俺は黙って椅子から立ち上がり、扉を開き部屋を出る。

 

廊下には、宇治茶博士とテア博士、ヴェルダンディがテーブルでコーヒーを飲んで待っていた。

 

グリーン博士は、さき程の魔導カメラをずっと弄っている。

 

「リョウ?大丈夫だった?殺してない?」

 

ヴェルダンディが、俺を見て物騒な事を言う。

 

「ヴェルダンディ、いくら何でも、そんな事はしないぞ?」

 

「そうよね?貴方は前世から、国家権力が大嫌いだったから心配したのよ。前にカオリに注意されて、ずいぶんと成長したものね?」

 

「まぁ、文句は言ってやったがね」

 

ヴェルダンディは、こちらに来てからの俺の記憶で、アンダーソン少佐とカオリと一緒に対面した時の話を持ち出した。

 

おいおい、あの話はカオリと一緒にエントだったお前を、助けた時のエピソードだぞ?

 

そんな風に他人の事みたいに暢気に感心されても困るんだがな。

 

「う〜ん?やっぱり、駄目だ!」

 

グリーン博士が、頭を掻きむしりながら声を上げる。

 

「博士、どうしたんですか?」

 

「ジャミングの綻びがあるんだけど、どうしても突破できなくてね?僕と同等か、それ以上のクリエイターが手伝ってくれればどうにかなると思うけど、でも僕以上の人間なんて、この世に存在するかな?」

 

俺はグリーン博士の言葉を聞き、どこまで本気なんだよ、と心の中で盛大なツッコミを入れながら口を開いた。

 

「確かに、博士の能力は素晴らしいと思います。では、俺の方でも人に当たってみますね」

 

「うん!頼むよ。それから、これを渡しておく」

 

グリーン博士から手渡されたのは、フロッピーディスク?

 

前世でも、旧石器時代的な物をどうしろと?

 

「それは古代遺跡から発掘した物を元に作った僕のオリジナルなんだよ?その中に、今回のデータを入れてある。因みに、高位の魔導武器じゃ無いと壊せないし、火に焚べようが水に沈めようが壊れない魔導具なのさ!これを、起動できる様なクリエイターなら多分、ジャミングの綻びを解析できると思うんだ」

 

そんな話をしていると、軍人が近付いて来て宇治茶博士が呼ばれる。

 

「では、行って来るぞ」

 

そう言って、宇治茶博士が俺が出て来た部屋に入って行く。

 

「フロッピーディスクなんて、懐かしいわね?」

 

ヴェルダンディが、グリーン博士から受け取った魔導具を見つめて言葉を漏らした。

 

「ヴェルダンディさん?これはフロッピーディスクって言うんですか?僕が発見した時は、名前の分からない記録保存媒体としか思ってなかったんですよ!」

 

ヴェルダンディさん?

 

貴女は、フロッピーディスクを見るのは初めてですよね?

 

あくまでも、俺の記憶から引っ張って来た話ですよね?

 

俺は心の中で突っ込みつつ、黙って席について置いてあるポットから、勝手にコーヒーを入れて飲む。

 

「ねぇ、グリーンさん。コレって、ギゴガゴとか言って、ロボットとか動物に変形出来ない?」

 

ヴェルダンディが、グリーン博士にそんな事を言っている。

 

「多分、男の子ってこういうの好きだと思うの」

 

「なる程!それは、売れそうですね?もっと詳しく、お願いします。ヴェルダンディさん!」

 

やれ、拳銃が変形とかトラックや車、飛行機が変形だの卵から動物や飛行機に変形だのと、俺の前世の玩具の話をグリーン博士に聞かせるヴェルダンディ。

 

うん。

 

それで、良い。

 

今は、余計な事を考えない様に、他の事に意識を向けさせた方が良い。

 

そんな事を考えていると、俺の上着の袖をちょいちょいと引っ張るテア博士。

 

「テア博士?どうされましたか?」

 

「リョウ。君は、転生者なのかい?」

 

「えぇ、そうですよ?」

 

「なら、私に君が居た世界を教えてくれ!もっと、君の事が知りたい!因みに、私の事も知って欲しいが、それは言葉じゃ無く身体に聞い・・・」

 

「そうですね!前世の世界は、魔法が無い世界でした!!」

 

俺は、テア博士の言葉を遮り、俺の元いた世界の話を始める。

 

それから5分程で、宇治茶博士が戻っ来た。

 

次に呼ばれたのは、ヴェルダンディだった。

 

「じゃ、ちょっと行ってくるわね?」

 

「うん。大丈夫だと思うが、何かあれば大声を上げろ?すぐ助けに行くから」

 

「やぁねぇ、リョウったら!私は、以前のか弱い私じゃ無いのよ?」

 

・・・確かに、そうでした。

 

エグゼキューター・プライヤー・マンティスを一撃で葬る様な力があるのは分かるけど、心配するのは当然だろう?

 

「ふふ、有難う。リョウ!行ってくるわね」

 

優しく微笑んで、ヴェルダンディは部屋に入って行く。

 

傍から見ると、本当にただの美魔女にしか見えないからな。

 

「宇治茶博士、何を聞かれたんですか?」

 

グリーン博士が、宇治茶博士に話し掛ける。

 

「うむ。軍を出て着いてからの話じゃよ、後はその前にあったモンスターの襲撃の話を、ちょっとしたのぅ」

 

まぁ、そんな事くらいしか話す内容が、無いよな。

 

・・・あ、『ないよう』が『ないよな』って、別にダジャレじゃ無いからね?

 

「リョウ・・・。わ、私も助けてくれるのか?」

 

テア博士が、そんな事を言いながら俺に詰め寄って来る。

 

「・・・テア博士?助けが必要ですか?」

 

「はうぅ〜?!ひ、酷い!そんな冷徹に返されたら、私はおかしくなっちゃうぅ!ハァハァ」

 

クネクネと身悶えながら、テア博士が艶めかし吐息を漏らす。

 

「僕は、この魔導具で記録したジャミングの話をしてくるよ」

 

グリーン博士が、俺と宇治茶博士にそう言った。

 

暫くして、ヴェルダンディが帰って来た。

 

「ふぅ、ただいま!ちょっと、リョウ。聞いてよ!変な事を聞かれたのよ?」

 

「よし、殺ろうか!」

 

「ちょっと待て!待つんじゃ、リョウ?」

 

「いや!僕も、リョウに賛成ですね!ヴェルダンディさんに、変な質問なんて、何を聞かれたんですか?ハァハァ!」

 

宇治茶博士が冷静に止め、グリーン博士が興奮しながら同意する。

 

一体、何を想像してんだよ?

 

「それがね?リョウとの関係は?とか、本当にエントなのか、とか。仕方無いからエントの姿を見せたけど、乙女の秘密を知りたがるなんて、失礼よね?」

 

「そっか。なら、良かった」

 

俺はてっきり、言葉に出来ない様な危険な事を恥ずかしがって嫌がるヴェルダンディに、無理やり言わせたのかと思って殺りに行きそうになったぞ。

 

「ヴェルダンディ師匠!本当に、それだけか?実は、身体を弄られたりとかリョウの様な激しい言葉責めをされたりしたんじゃないか?大丈夫か?」

 

テア博士が心配そうに問いかけているが、貴女こそ大丈夫ですか、テア博士?

 

「いや、良くないだろう!ヴェルダンディさんは、乙女の秘密を暴露しなきゃならん様な質問をされたんだぞ!君はそれで良いかも知れんが、僕の気はすまない!ちょっと、抗議してくる!」

 

別のベクトルで興奮しだしたグリーン博士は、呼ばれていないのに立ち上がり部屋へと突進していく。

 

すると、ちょうど部屋から出て来た若い女性兵士とぶつかり、お互いに転んでしまう。

 

「きゃ!」

 

「痛っ!も、申し訳ない!」

 

「い、いえ!大丈夫です。・・・あの、どいて下さい!」

 

「はっ!も、申し訳ない!僕は、グリーン・ティー!歯牙ない魔導科学者で、年収は一億ちょっとさ!おぜうせん、お名前は?」

 

『歯牙にも掛けない』の歯牙ないか?

 

意味的にも年収的にも、色々と突っ込みどころが多すぎるだろ。

 

俺たちは、突然始まったコント?に、見入っていた。

 

「・・・あの、私、男なんです。魔導エステで性別を入れ替えただけなんで、男に興味ありません。ごめんなさい。それから、少佐がお待ちです。部屋にどうぞ」

 

そう言って、若い女性?兵士は、スッと身体を横にずらしてグリーン博士に道を譲る。

 

すると、グリーン博士はなぜか俺を睨んで「チキショー!もげてしまえ!」と言って、部屋に入って行った。

 

もげてしまえって、さっき軍の基地を出た後に聞いたよな・・・。

 

グリーン博士を見送った若い女性?兵士は、部屋の外で待機している。

 

最低限の姿勢を崩さず、何故かチラチラとヴェルダンディの方を見ている。

 

それに気付いたヴェルダンディが、優しく笑いながら、小さく手を振る。

 

それを見た待機姿勢のTS軍人が、顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

暫くしてグリーン博士が、部屋から出てきて此方に戻ってくる。

 

入れ替わりに、顔を真っ赤にして俯いていたTS軍人が部屋に入る。

 

「僕の魔導カメラのデータは、軍に引き渡した。もう帰る」

 

途轍無く、不機嫌なグリーン博士に俺は声を掛ける。

 

「あの、グリーン博士?どうされたんですか?」

 

「どうしたもこうしたも無いよ!もげてしまえ!」

 

・・・また、言われたよ。

 

 

 

 

 

 

 

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