異世界転生   作:MSZ-006

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「リョウ!困るよ、僕まで巻き込んで!」

 

「本当じゃ、肝が冷えたぞ?」

 

「申し訳ないです。でも本当に、有難う御座います。グリーン博士、宇治茶博士。ヴェルダンディも有難う」

 

「リョウの為なら、こんな事くらい問題ないわよ?」

 

アンダーソン少佐が去った後、俺は博士たちとヴェルダンディにお礼を言った。

 

「き、貴様!なんで私を庇った!私は真っ当な軍人なんだぞ!馬鹿にしているのか!?」

 

「だからさ!俺を殺そうとした馬鹿の話は、もう聞いているだろう?そんな奴と比べたら、アンタはマトモな軍人だ。だから庇った、それだけだ」

 

「・・・そんな事を言って、私が喜ぶと思うのか?そ、そんな事をして、わ、私が惚れるとでも思ってるのか?!別に、お前なんて、これっぽっちも興味ないんだからな!」

 

顔を赤くして、此方を睨む男山大尉。

 

・・・そう言えば、テア博士が見当たらないな?

 

どこに行った?

 

「リョホ? おほいぞ?なひ、やってんら?」

 

その声と同時に、もぐもぐと口いっぱいに食べ物を頬張り、中身の詰まった大きな紙袋を、大事そうに抱えたテア博士がひょっこりと現れた。

 

「テア博士、今までどに行ってたんですか?」

 

「もぐもぐ、お腹すいたから歩いてる軍人に『購買は、どこですか?』って聞いて、食べ物を買って来たんだ。ここは、凄いな!急造した避難所なのに、もう売店や食堂まで機能しているんだぞ!」

 

まぁ、魔導科学がある世界だからね?

 

物資は次元収納付のトラックがあれば問題ないだろうし、空間魔法で広さも自由に変えられるからね。

 

「おい、貴様!早く着いて来い!少佐が用意して下さった宿へ、案内してやる!有り難く思え」

 

相変わらず顔を赤くしている男山中尉が、俺を睨みながら言ってくる。

 

しかし、さき程とは違って目に殺気が籠もってない。

 

どちらかと言うと・・・。

 

「リョウ?あの人、リョウに惚れたわよ?」

 

な、なんだってぇーーー!?

 

『話は聞かせてもらった!人類は滅亡する!』みたいな大事件の真っ最中のハズなのに、なんでそっちのフラグが立ってんだよ!

 

遺跡が襲撃されて、俺は阿呆な軍人に殺されかけた後なんだけど?

 

いや、俺は男に興味無いんだよ?

 

もう、その手の話は勘弁してくれよ・・・。

 

 

 

 

 

 

かぽーん。

 

いい湯だな〜。

 

用意して貰った宿に、魔導露天風呂があるなんて、素晴らしいじゃないか!

 

風呂場には、俺とヴェルダンディ、そしてテア博士の3人。

 

「リョウ〜、こっちに来なさいよ〜!」

 

「そうだぞ、リョウ!ヴェルダンディ師匠の言う通りだ!早く、此方に来たまえ!そして、風呂場にある物を用いて、私を激しく・・・!」

 

「絶対に、行きません!俺は、一人で入りたいんです。良いですか?絶対に、此方に来ないでくださいね?」

 

「あひぃ〜!そ、そんな風に冷たくあしらわれると・・・ハァハァ」

 

嬉しそうに、身悶えているだろうテア博士。

 

・・・そうだった。

 

この博士、ガチのドMだったわ。

 

拒絶すればするほど、喜ばせるだけじゃねぇか!

 

かと言って、俺がそっちに行ったら行ったで、大変な問題が発生するに決まってる。

 

宿に着いて、俺たちは夕食を食べた。

 

宇治茶博士とグリーン博士は、浴びるように酒を飲んで泥酔中だ。

 

俺は露天風呂があると聞いて、喜び勇んでやって来た訳なんだが・・・。

 

この宿の露天風呂って、男湯女湯の入り口が分かれてたんだよ?

 

それが、露天風呂に到着したら、混浴ってどう言う事なんだよ!

 

ガラッ、と男湯側の扉が開く音がした。

 

だが、もうもうと立ち込める湯煙のせいで、誰が入ってきたのかは見えない。

 

ここには俺たち以外にも客がいるし、最初は新しい客かと思ったんだ。

 

だが、その見えない人影から漏れた声を聞いて、俺の背筋に冷たいものが走った。

 

「いい湯だなぁ〜」

 

・・・男山大尉だ。

 

間違いない、アイツの声だ。

 

なんで男湯から、入ってきてんだよ!

 

あ、そうか?!

 

元は、男だからか!

 

ってことは、この湯煙の向こうを少し進んだら、仕切りの無いこの混浴露天風呂でアイツと鉢合わせるって事じゃん!

 

ただでさえヴェルダンディとテア博士の相手で限界なのに、瞳ちゃんまで追加されてたまるか!

 

俺は即座に、気配を遮断した。

 

戦闘力を測る機械を目の前に突きつけられても、絶対にエラーを起こす自信がある。

 

それくらい的確に、俺は自分の存在を世界から消し去った。

 

一刻も早くここから脱出するため、俺は湯船の中にあった大きな岩の後ろへと身を隠した。

 

「・・・ふぅ、しかし、リョウとか言ったな。アイツ」

 

何やら俺の文句を、小声で言い出しそうな雰囲気なんだけど?

 

「あんなに真剣に、私を庇って。でも、私はヴェルダンディさんに、一目惚れしたんだ!・・・ヴェルダンディさんが言う通り、もうちょっと話してみるのも悪くないのかな?」

 

文句かと思ったら、違うのかよ!

 

まぁ、俺だって人に嫌われるよりは、好かれる方が良いからね?

 

でも、相手は男だしなぁ。

 

「も、もし、強引に迫られたらどうしよう?今の私は、女だ。どう考えても、腕力じゃ勝てない。だから、強引に力で無理やり捻じ伏せられて・・・。ハァハァ、うぅん!?」

 

迫るかボケェ!!

 

誰が元男のアンタを、力ずくで捻じ伏せるか!

 

あと湯船の中でハァハァとか艶めかしく言うな、湯気がさらに暑苦しくなる!

 

しかも、なんでちょっと受け入れ態勢オッケーみたいな雰囲気なんだよ!?

 

こう言う話は、ラノベや大っきいお友達向けのゲームだけで充分なんだよ。

 

「リョウ〜!私たちそろそろ、上がるわよ〜!」

 

「リョウ!早く上がって来て、今度は温泉宿にある物で、私を激しく・・・はうぅ!?」

 

「ちょっと、テアさん、大丈夫?湯当たりしちゃたのかしら?」

 

どうして、こうもタイミング悪く名前を呼ぶかな?

 

「・・・おい!ひょっとして、傍に居るのか?」

 

ヤバい!?

 

こうなったら、いつぞやのカオリたちの真似をして、動物の鳴き真似で誤魔化すか?

 

それとも、俺の七色の声で他の人間になりすますか?

 

「・・・居るなら、黙って私の話を聞け。とは言え、返事がないのは困るな?では、水面を叩いて返事しろ!良いな?」

 

俺は仕方無く、お湯を一度パシャンと手で叩いて返事する。

 

「私は、上に姉たちが5人いてな?私は、一番下の弟だった」

 

パシャン!

 

「それで、私は小さい頃から、姉たちに着せ替え人形宜しく、女物の服を着せ替えられたり、髪を綺麗に飾られたりしていたんだ。そして、成長して私は思った!見た目が、可愛い女の子みたいなのは駄目だ!私は男だ、だから男らしくなろうと、システマを習ったんだ。因みに、ロシアに居た元特殊部隊の隊長をやっていた人の道場だ!」

 

パシャン!

 

システマって、アレだよな?

 

確か、ロシアの過酷な軍隊が生んだ『感情を殺し、あらゆる苦痛に耐える』とかいう軍事格闘技だったよな?

 

しかも、元特殊部隊の隊長直伝とか、チョイスのガチ度が高すぎて逆に引くわ!

 

・・・感情を殺し、あらゆる苦痛に耐える軍事技術か。

 

それは、素晴らしいな。

 

じゃあ、そのシステマの呼吸法とやらで、この混浴風呂の『気まずさ』と、俺が今まさに直面している『逆上せの苦痛』を消し去る方法を教えてくれ、マジで。

 

あ、暑くなって来たな・・・。

 

「そして、私は軍に入隊した。しかし、男の私は見た目が既に女の子っぽくて、周りの上官や同僚連中からデートに誘われたり、同僚女性兵や上官の女性兵にコスメを勧められたりしたんだ」

 

パシャン!

 

「・・・だから、もういっその事、女の子になった方が理にかなっている。そう思い私は、魔導エステで性別を変えたんだ。そんな私を、お前はどう思う?」

 

いや、どう思うって。

 

パシャンしか返事のしようがないのに、どう返事を返せと?

 

ダメだ・・・意識が、遠のく・・・。

 

ズブブブ・・・と、俺の身体が湯船に沈んでいく。

 

「・・・おい?どうしたリョウ、返事がないぞ。おい!」

 

バシャバシャと湯をかき分ける音がして、慌てた大尉が俺を岩陰から引っ張り上げる。

 

倒れかかる俺の身体を、受け止める大尉。

 

だが、あいつの身体はシステマの『極限の脱力』が骨の髄まで染み込んでいる。

 

慌てて俺を支えようとした瞬間、無駄な力が一切抜けたそのしなやかな肉体が、図らずも極上の柔らかさで俺を抱きしめる形になってしまいーー。

 

「ひゃうんっ!?な、何処を触っているんだ貴様!」

 

知るか!

 

お前がフニャフニャすぎて、どこを掴んでも柔らかいトコに手がめり込むんだよ・・・!

 

俺の意識は、極上の感触と大尉の悲鳴を最後に、完全にブラックアウトした。

 

目が覚めると、其処は本当に知らない天井だった。

 

そして、いつの間にか浴衣を着ている。

 

一番に、そして何より、すぐ目の前で俺を覗き込んでいる、可憐な少女の顔。

 

「目が覚めた様だな!良かった・・・。取り敢えず、コレを飲め」

 

俺はゆっくり身体を起こして、浴衣姿の男山大尉からスポーツドリンクを受け取る。

 

そこでようやく、自分の頭がさっきまで彼女の柔らかい太ももの上にあったことに気がついた。

 

・・・ひょっとして俺、さっきまで膝枕されてたのか?

 

「全く、急に返事がなくなったからビックリしたぞ!」

 

ちょっと怒りながら、此方を睨んでくる。

 

だが、その瞳は俺が無事で良かったと、心底安堵していた。

 

「いや、申し訳ない。逆上せてしまって意識が保てなくなってしまって・・・」

 

「そうか。ならば・・・私が、お前を助けた時の記憶は無いな?無いよな!?」

 

今度は、顔を林檎のように真っ赤にして俺を問い詰めてくる。

 

実際は、あのフニャフニャした柔らかい極上の感触が、今でもハッキリと手に残っているが・・・気まずすぎるし、相手は男だ忘れてしまおう。

 

「そうだな。大分、ボンヤリしていたからな。何も覚えてないよ」

 

「・・・そうか。なら良い」

 

なんで今度は、ちょっと残念そうな顔してんだよ!?

 

「後、着替えさせてくれたんだな。有難う」

 

「べ、別に私は今は女だが、元々は男だからな!?そ、それくらいは問題無かったぞ!?」

 

・・・うん。

 

問題ないって割には、何でそんなに顔を赤くして、此方をチラチラ見てんだよ?

 

「・・・なかなか、立派な」

 

「あ〜!なんだ、早いとこ戻ろうか?」

 

俺は男山大尉の言葉を遮り、立ち上がった。

 

 

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