異世界転生   作:MSZ-006

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温泉宿と聞いて、みんなは何を想像する?

 

まぁ、当たり前の事ながら温泉宿と言うからには、温泉は付き物である。

 

さっき、溺れかけたけどね?

 

後は、人にもよると思うけど、豪華な食事や風景なんてのもあるよね!

 

でも、俺が思う温泉宿ってのは・・・。

 

カコン、カコン、カコン、カコン・・・。

 

いや〜、楽しそうだね〜!

 

やっぱり、温泉宿の定番って言ったら卓球だよね!?

 

コレは、俺の常識だけどね?

 

他のお客が卓球を楽しくやってるのを見てると、俺もやりたくなるんだよね。

 

でも、なぜか場違いな人が居るんだけど?

 

其処だけ、オリンピックの会場ですかって?

 

そんな風に言いたくなる様な激しいラリーの応酬を、繰り広げてる人たちがいる。

 

「ハハハ!やるな!ヴェルダンディ師匠!」

 

「うふふ、初めてやったけど卓球って面白いわね?」

 

テア博士とヴェルダンディが、とてもにこやかにラリーの応酬をしている。

 

二人とも笑顔なのに、その様はまさにオリンピック選手のそれ。

 

・・・凄い、スマッシュの応酬をしてる。

 

パパパパパンッ!!

 

ピシピシピシィィィッッ!!

 

なんか周りのお客さんが、横目でチラチラ見ながらプレーしてるよ。

 

取り敢えず、俺は他の所を見ようかな・・・。

 

・・・温泉宿って言ったら、やっぱりアレだよね!?

 

レトロゲームコーナー!

 

ちょっと、青いタヌキのロボットの真似をしながら、脳内再生したみた。

 

因みに本当は猫だけど、俺はヤツをタヌキと呼んでる。

 

「おい!私は任務だから、お前に着いているだけだからな?」

 

「うん、そうだね。アンダーソン少佐の命令でしょう?」

 

「ふん!分かってるなら、良いんだ!」

 

「はい、コレあげるよ」

 

俺は、この世界では本当に珍しい現世風のクレーンゲームで取った、自身の身体サイズの温泉まんじゅうに齧り付く、手の平サイズのディフォルメされたホーンラビットを彼女?に渡す。

 

「か、カワイイ〜!有難う・・・。べ、別に嬉しくなんてないんだからな!し、仕方無いから、貰ってやる!」

 

「うん。まぁ、喜んで貰えて良かったよ。さっきのお礼も兼ねてだけどね」

 

しかし、本当にこの世界じゃ珍しい古い機体とか置いてあるな。

 

いや、前世じゃコレが普通なんだけどね?

 

この魔法と科学が融合した最先端の世界で、普通のクレーンゲームやレトロなゲーム台とか、本当に珍しいと思う。

 

あ、脱衣麻雀とかあるじゃん?

 

でも俺、麻雀知らないんだよね。

 

「・・・き、貴様!私が傍に居るのに、あんな如何わしいゲームなんて見て!」

 

「いや君、男でしょう?」

 

「確かにそうだ!しかし、今の私は女だ!お前は、デリカシーがないのか?」

 

「・・・そうだな、申し訳ない。君の様なカワイイ娘が傍に居るのに、あんなゲーム見ちゃダメだよな?」

 

「べ、別に私は、そんな事を言われても嬉しくなんて・・・」

 

顔を赤くしながら、胸元で俺の渡したぬいぐるみを抱きしめて、戸惑い気味に答える男山TS軍人。

 

俺は周りに人がいないのを確認しつつ、彼女を壁際へ追い詰め、勢いよく手を突いた。

 

ーーいわゆる、壁ドンである。

 

因みに前世のネット掲示板において、壁ドンとは『壁を代わりに殴る日給一万の仕事』を指していた気がするが、世界の認識は『相手を両手で包囲して口説く行為』らしい。

 

「な、なんだ!?こ、こんな事をして、私をどうするつもりだ・・・!?でも、お前なら私は・・・っ」

 

豊かな胸元でホーンラビットのぬいぐるみを強く抱きしめ、顔を真っ赤にしながら身をすくませる瞳ちゃん。

 

・・・いや、中身は男の軍人、男山大尉なのだが。

 

覚悟を決めたようにぎゅっと目を閉じる彼女に対し、俺は低く静かな声で、その耳元に囁き掛けた。

 

「・・・二つ、聞きたい事がある」

 

ピクン、と彼女の身体が跳ねるように強張る。

 

「一つ、俺はどれくらい気を失ってた?それからもう一つ、アンダーソン少佐から何を命令された?」

 

「わ、私がすぐに助けたから、五分ほどだぞ・・・っ?それから、少佐からの命令ってなんの話だ?」

 

モジモジと身をよじりながら答える大尉。

 

しかし、その瞳には明らかな動揺の色が混じる。

 

「・・・アンダーソン少佐から、俺たちを監視するよう命令されたんじゃないのか?」

 

俺は彼女の耳元に指を掛け、柔らかな髪を優しくかき上げながら、さらに問い詰める。

 

至近距離からの追撃に、大尉はビクンと身体を震わせ、上擦った声を漏らした。

 

「わ、私が聞いているのは、ただお前たちをこの宿に案内して、私は有給休暇も兼ねて一週間、この宿で休暇を取れと言われただけだぞ!?ち、因みに、お前たちの分の宿も一週間分取ってある!」

 

必死にまくし立てる大尉だったが、その声は次第に熱を帯びて、言葉を失っていく。

 

今や大尉は、艶めかしい吐息を吐き出しながら、欲情した瞳で俺を見つめていた。

 

・・・俺の勘違いか?

 

何か裏があると、思ったんだがな?

 

まぁ、いいか。

 

一週間はカオリたちと会わなくて良いと考えると、少し気が楽になった。

 

まぁ、撮影が有れば行かないとならんがね。

 

そんな事を考えていたら、男山大尉がプルプルと震えだした。

 

「・・・き、貴様は!私をなんだと思ってるんだ!乙女の純情を返せ!もげてしまえ!バカぁ〜!」

 

「ちょ、ちょっと!?いくら周りに人が居ないって言っても、そんな大声で叫ばれたら・・・!?」

 

「リョウ?こんな所で、男山さんと何してるの?」

 

「そうだぞ?リョウ!私を差し置いて、なぜ出会ったばかりの軍人に、ちょっかい出してるんだ!?それとも、アレか?わざと見せ付ける様にして、私を嫉妬させて欲情させるって魂胆か?ハァハァ!」

 

声を聞いて、駆け寄って来たヴェルダンディとテア博士。

 

周りのお客さんが、此方を伺っているが中には『いやねぇ〜!痴情のもつれかしら?』とか『もげろ!もげてしまえ!チクショウ〜!』と、地団駄を踏んでいる奴もいる。

 

「ヴェルダンディさん〜!」と、男山大尉がヴェルダンディに抱き付いて泣いている。

 

「うわぁ~ん!私は、この男に辱められた〜!」

 

『酷い!カワイイ女の子を辱めたんだって〜!』

 

『おい!通報しろ!軍人さん、アイツです!って言ってやれ!』

 

おいおい!?

 

卓球やってた客が、騒ぎ出したぞ。

 

「・・・リョウ?どう言う事かしら?」

 

ヴェルダンディの背中から、何やら目に見えない背後霊的な何かが出てる気がする。

 

「リョウ?ちょっと、其処に座りなさい」

 

ヴェルダンディが、優しい笑顔で俺にプレッシャーを掛けて来る。

 

なんだろう?

 

大分前にも、似たような事があった気がする。

 

実際はカオリと出会った時と、珊瑚を怒らせた時にカオリに言われたんだが、なんだか遠い記憶に思えるな。

 

三度目の大禍時の悪夢!

 

その後、小一時間程。

 

「リョウ?貴方、本当に分かってるの?」

 

「はい。すみません」

 

俺は、正座しながら説教中。

 

周りのお客が卓球しながら、事の次第を見守ってる。

 

こっち見んな!

 

「リョウ、君は私だけじゃなく、この軍人まで毒牙に掛けたんだな!?そんなに私を興奮させて、どうするつもりだ?ハァハァ!」

 

「いや、テア博士?なんか、おかしな方向に話がいってますけど?」

 

「・・・この責任、どう取ってくれるんだ!もう私は、男に戻れないぞ?」

 

「いや、だからそれは勘違いですよね、男山大尉」

 

「貴様、私の事は瞳と呼べ!」

 

いや、なんで怒りながら名前呼びを強要するの?

 

「リョウ、ちょっと反省なさい。取り敢えず、此処は私とテアさん、瞳さんの女の子同士で話すから、貴方はちょっと頭を冷やして来なさい!」

 

「はい、分かりました」

 

俺は、トボトボと三人の前から離れて行く。

 

宿を出て、温泉街をフラフラと散策してみる。

 

お土産屋に飲み屋、ビジネスホテルやカプセルホテルと言った宿泊施設、それから喫茶店や飲食店、たまに饅頭が蒸籠で蒸されて売られていたりと、前世と変わらない風景だな。

 

店を眺めながらフラフラしていると、俺の後をついて来る存在がいる事に気付いた。

 

・・・つけられてるな。

 

俺は敢えて、人通りの少ない方へ向かって歩き出し、わざと建物の隙間の細い路地に入り込む。

 

人がギリギリすれ違える程の狭い場所。

 

俺は其処で、後をつけて来た奴を待ち構えた。

 

「いたいた!お前、随分と調子に乗ってんな?」

 

「そうだな!あんな可愛い女を三人も侍らせて、いい気になるなよ?」

 

「取り敢えず、ムカつくから此処で2、3発ぶん殴らせるッスよ?」

 

そう言って絡んで来たのは、どうやら温泉宿に居た客の様だ。

 

「・・・ちょうど良い。俺は今、非常にイライラしてんだよ!お前等みたいなバカを相手できるのは、本当に運が良い。ほら、来いよ?」

 

俺は、人差し指を立てて指をクイクイっと、内側に曲げる。

 

「チキショーが!ぶっ殺してやる!」

 

「ちょっと、顔が良いからって調子に乗りやがって!殺してやる!」

 

「お前をボコボコにした後、あの可愛い子ちゃんを、俺たちが可愛がってやるッス!有り難く思うッスよ?ギャハハ!」

 

「・・・御託は良いから、早く来いバカども」

 

俺の言葉を皮切りに、バカどもが此方に詰め寄って来る。

 

しかし、此処は細い路地。

 

当たり前の事ながら、最初のヤツがどかなきゃ渋滞する。

 

前世の、左頬に傷がある流浪の剣客が言ってた通りだな。

 

一対多数は、地形を利用して一対一の状況を個別に作る。

 

これが基本だな。

 

「アダっ!?痛いッス!」

 

「ち、ちょっとお前、邪魔すんなよ!?」

 

「バカ野郎、早く行けよ!殴れねぇだろう!?」

 

俺は、三つ巴になったバカ共を眺めながら、次元収納からルシファーと胴田貫を取り出す。

 

右手で同田貫を肩に担ぎ、左手のルシファーをバカ共の足元ギリギリへ向けて発砲する。

 

チュンッ!

 

地面を穿つ音が響き、騒いでいたバカ共が急に静かになる。

 

「さて、お前等は選ぶ権利がある。俺の右手の胴田貫の錆か、左手の高位魔法銃ルシファーの餌食になるか。好きな方を選べ、因みに拒否権は無いからな?」

 

・・・一分後。

 

「サーセンした〜!」

 

「もう、二度とこんな真似はしません!」

 

「ゆ、許して下さいッス!お願いしまッス!」

 

土下座して、命乞いする阿呆共。

 

「なぁ、お前らさ?饅頭、食いたくない?」

 

「へ?ま、饅頭ッスか?」

 

「お、俺は甘い物は・・・」

 

「いや〜、超食いたいです!か、買ってきますね!?」

 

俺は、冷たく三馬鹿を見つめながら言い放つ。

 

「うん。買ってきて?お金は渡すから、人数分な?後、お前は甘いの嫌いなら、違うので良いから、何か好きなの買って。後、一人は残れ?逃げるなよ?もし逃げたら、地の果てまで追い掛けて、必ず制裁を加えてやるからな?」

 

「は、はい!」

 

「い、行ってくるッス!」

 

「いや、お前が残れよ!」

 

「おい?早くしろよ?じゃないと、指が疲れて引き金を引くか、腕が疲れて刀を振り下ろしかねん」

 

「ヒィ〜!助けてッス!」

 

「と、取り敢えずジャンケンな?」

 

「よ、よ〜し!せ〜の!ジャンケンポン!」

 

三馬鹿共が、命懸けのジャンケン対決をする。

 

俺は、黙ってそれを眺める。

 

「よっしゃー!」

 

「・・・」

 

「じゃ俺たち、行ってきます!」

 

「うん、それじゃ此れで饅頭とお前等の好き物、買ってきて?あと飲み物ね?俺は、甘くて冷たいのね?」

 

俺は、三馬鹿の二人に一万円札を渡して、プルプル震える残りの馬鹿に視線を戻す。

 

「おい!行く前に俺たちは、あの公園のベンチに座ってるから、其処に来いよ?もし逃げたら・・・分かってるな?」

 

「は、はいぃ!」

 

「わ、分かりました!速攻で戻ります!」

 

「おい、行くぞ?」

 

俺は、残った馬鹿の首根っこを掴み立ち上がらせる。

 

「ヒイィ〜!こ、殺さないでッス!」

 

「お前、人聞きの悪い事を言うな。殺すぞ?」

 

俺は、そう言ってルシファーと胴田貫を次元収納に仕舞い込む。

 

「さて、お前の名前は?」

 

俺は、公園のベンチに座りながら、三馬鹿の一人に声を掛ける。

 

「・・・トロワ」

 

「は?トロワ?」

 

「そうッス、トロワッス」

 

「苗字は、バートン?」

 

「バートン?何すかそれ?俺たち、三人とも、苗字なんて無いッス」

 

「う、うん、そっか。なら良いんだ」

 

ビックリしたよ?

 

まさか、トロワなんて言うからてっきり、重火器のロボットとかに乗る奴かと思ったよ?

 

でもまぁ、アイツなら多分、命乞いとかしないだろうけどね?

 

その前に、俺がピエロの仮面を被った奴にのされるシーンしか思い付かないな。

 

「そっか、じゃ他の二人の名前は?」

 

「デカいのがアルで、ちっこいのが一と書いて、はじめッス」

 

「・・・そっか」

 

一、二、三なの?

 

「お前等は、兄弟なの?」

 

「いえ、血が繋がった兄弟って訳じゃないッスけど、似たようなもんッス」

 

よくよく話を聞いてみると、コイツらは児童養護施設で育った幼馴染の三人組で、今日は仕事終わりに日帰りで温泉に来た所、俺たちを見掛けて嫉妬したのだという。

 

 

 

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