異世界転生   作:MSZ-006

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「あ、アニキ!戻りました!」

 

「も、戻りました!トロワ?大丈夫か?殺されてないか?」

 

肩で息をしながら、三馬鹿の二人が戻ってきた。

 

「おい!人聞きの悪い事を言うんじゃない!殺すぞ?あと、お前らのアニキになった覚えは無い」

 

「す、すんません!」

 

「い、命だけはどうか!」

 

「お願いッス!助けて下さい!」

 

俺はため息をついて、二人にベンチに座るよう声を掛ける。

 

「お前らの話は、そこのトロワから聞いた。取り敢えず、饅頭食おうか?あと、お前?え〜と、アルか?お前は何を買ってきたんだ?」

 

「俺は甘いのは好きじゃないから、ピザとコーヒーにしました!」

 

「そっか。じゃ、食いながら俺の話を聞け。これは俺の知り合いの話なんだがな?そいつは小さい頃から病弱で、しかも自分でインスリンの注射をしなきゃならん身体だったんだよ」

 

俺は自分の前世の話を、知り合いの話として三人に聞かせた。

 

ろくでもない親と、ろくでもない大人たち。

 

クズみたいな連中や、人を食いものにするろくでもないクズ共。

 

俺が見てきた、汚い腐った世界の話を聞かせた。

 

三人は飲み食いしながら話を聞いていたが、最後の方は半分泣きべそをかきながら聞いていた。

 

「でな、お前らが児童養護施設で育ったってのは、トロワから聞いた。でもな、お前らは俺が話した奴に比べれば、マシな方だろう?信頼できる仲間が居るんだから・・・」

 

俺は、イチゴ牛乳を飲みながら言う。

 

「そうですね。その人に比べれば俺たちは、まだマシですね」

 

「うん、そうだな。俺たちには仲間がいる!」

 

「そうッス!一とアルが居てくれて、本当に良かったッス!」

 

三人はお互いに顔を見合わせ、笑っている。

 

「それでな?最後に俺からの説教なんだが、『する事を当たり前と思え、して貰う事を当たり前と思うな』ってのが、俺の考えなんだ。強要する気は無いけど、今後もし何かあった時に、そんな風に思って貰えたら嬉しいな。どうかな?」

 

「か、カッコいい!アニキ、カッコいいよ!」

 

「その言葉、凄く感動しました!」

 

「本当に、カッコいいッス!」

 

「うん。有難う。でも、これは自分を犠牲にして、人を助けろって意味じゃないんだ。自分を守りつつ、可能な限り大切な人を守れって意味なんだよ」

 

俺は残りのイチゴ牛乳を飲み干し、三人にそう言った。

 

「アニキ!俺、アニキに一生ついて行きます!」

 

「うん!俺も今の話は、凄く感動した!だから、俺もついて行く!」

 

「そうッス!アニキは最高にカッコいい、アニキッス!」

 

最後の台詞・・・なんかアニキッスとか言う商品名みたいだな?

 

まぁ、そんな事は良いか。

 

「そもそもお前ら、俺に嫉妬して喧嘩吹っ掛けてきたんだろう?もう二度と、こんな事をするなよ?」

 

「はい、すみませんでした!」

 

「本当にすみません!でも、あんな美人や美少女と一緒ってのが、どうしてもムカついて・・・」

 

「それで、八つ当たり気味に殴ってやろうってなったッス。本当に、スンマセンした!」

 

「うん。もう良いよ。あと、お釣りは三人で上手く分けてくれ、俺は帰るよ」

 

「アニキ、待って下さいよ!せめて、お名前だけでも聞かせて下さい!」

 

「そうだよ!アニキは俺たちの名前は知ってるけど、俺たちはアニキの名前を知らないよ!」

 

「そうッス!名前を教えて欲しいッス!」

 

「・・・俺の名は、リョウさ」

 

「リョウアニキ!魔導通信機、登録して下さい!」

 

「俺も、お願いします!」

 

「俺も、お願いするッス!」

 

「うん、良いよ?まぁ、何かあれば相談に乗るから、気軽にメッセージくれ」

 

「有難う御座います!」

 

「やった〜!俺、凄い人と魔導通信機の登録して貰えた!」

 

「本当ッス!アニキに会えて良かったッス!」

 

魔導通信機を登録し終わり、この場は解散になった。

 

俺は、またフラフラと街中へ歩き出す。

 

「・・・おい、リョウ!」

 

後ろから、声を掛けられる。

 

「男山大尉?どうして?」

 

「貴様、私の事は名前で呼べと言っただろうが!」

 

「いや、流石に、それはちょっと」

 

「な、名前で呼んでくれないのか?」

 

男山大尉が、泣きそうになりながら俺を見る。

 

「わ、分かりました!瞳さん!此れで、良いですか?」

 

「ふ、ふん!名前を呼ばせてやるんだから、有り難く思え!」

 

男山大尉もとい、瞳ちゃんは顔を赤らめて満足そうに頷く。

 

「・・・それで、リョウ。お前の話をヴェルダンディさんから、聞かせて貰った。後、さっき三人に話してた話も聞かせて貰った」

 

「盗み聞きとは、感心しませんな?」

 

「し、仕方なかったんだ!声を掛けようと思ったが、その・・・お前の話が余りにも切なすぎて」

 

俺は瞳ちゃんの方に向き直り、正面から見つめる。

 

「・・・それに、お前の言ったあの言葉・・・凄く胸に刺さった」

 

瞳ちゃんは少し俯き、小さく呟いた。

 

さっきまでの勝ち気な態度から一転して、どこか神妙な面持ちだ。

 

「『する事を当たり前と思え、して貰う事を当たり前と思うな』・・・か。軍人としても、一人の人間としても、本当に重い言葉だな。お前は、そんな若さでどれだけの地獄を潜り抜けてきたんだ?」

 

じっと俺の顔を覗き込んでくる瞳ちゃんの瞳には、同情だけじゃない俺という人間に向ける純粋な敬意が混ざっていた。

 

その真っ直ぐな視線が少し気恥ずかしくて、俺はわざとらしくため息をつき、イチゴ牛乳のパックをゴミ箱へ放り込む。

 

「ただの知り合いの昔話ですよ。それに俺は今、こうして生きてる。それで十分でしょう」

 

「リョウ・・・」

 

「それより瞳さん、わざわざ俺を探して声を掛けたって事は、俺に何か用があったんじゃないですか? ヴェルダンディから、何を聞いたんです?」

 

俺が話を切り替えると、瞳ちゃんは「あ、あぁ! それなんだが・・・」と、今度は顔を真っ赤に染めて話し出した。

 

「ヴェルダンディさんから、リョウの性癖やリョウの好みとか色々聞いた。後、転生者だと言う事も聞いたぞ」

 

「・・・性癖は置いておいて、俺が転生者である事を聞いたんですね?それを、アンダーソン少佐に報告すると?」

 

「べ、別に、お前が転生者だとしも軍には、関係ない事だ!だから、そんな事は報告する気はないぞ!」

 

「俺はてっきり、少佐に報告して実験材料にされるかと思いましたよ?」

 

「そ、そんな事、私が赦さない!」

 

瞳ちゃんは拳をぎゅっと握りしめて、今度は怒ったように俺を睨みつけてきた。

 

「お、お前は私の・・・その、大切な友人だからな!軍の実験材料になんて、絶対にさせない!」

 

必死に俺を守ろうとしてくれるその姿に、さっきまでの気恥ずかしさが少しだけ和らぐ。

 

「・・・そうですか。有難う御座います、瞳さん」

 

「ふ、ふん!分かればよろしい!リョウ、それに・・・私はお前の性癖についても、その・・・」

 

瞳ちゃんは急に声を小さくして、もじもじと指先を弄び始めた。

 

せっかくシリアスな雰囲気になっていたのに、何故ここでその話題に戻る?

 

「ヴェルダンディさんが言っていたぞ。リョウは『緊縛とか露出、人妻が大好きなマザコンのロリコンで、普段はツンツンしているけど、二人きりになると急に素直になる女が好きで、更にメガネを崇拝している』と、言っていたが・・・そ、その、実際はどうなんだ!?」

 

あれ?

 

・・・これ、また俺のトラウマが再発しそうなんだけど?

 

更にマザコンとかって、新たな癖が追加されてるし・・・。

 

でも、男はみんな軽度のマザコンだと思うよ?

 

前世の某ドラマの人みたいに、『む〜!む〜!』とか冬の人みたいに、俺は言ってないしね?

 

よし決めた。

 

今度はガチで泣きながら部屋に閉じ籠もって、二度と出て来ないようにしてやろう。

 

「リョウ・・・?おい、背中からゴーストみたいな何かヤバい奴が見え隠れしてるぞ!?大丈夫なのか!?」

 

ドン引きして一歩後ずさる瞳ちゃんを置き去りにし、俺は凄まじい殺気を放ちながら、ヴェルダンディのいる方向へと反転した。

 

もうね、背後に『ゴゴゴゴゴゴ・・・』って、効果音が見えそうなレベルの怒りである。

 

「お、おい待て、リョウ!どこへ行くんだ!?」

 

「あの駄エントに一言、言ってやらないと気が済まん!」

 

俺は、全力疾走で駆け出した。

 

 

 

 

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