異世界転生   作:MSZ-006

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「わ、私だって、頑張って捕獲したんだぞ!」

 

瞳ちゃんが、俺とヴェルダンディの間に割って入る。

 

「瞳さんは、なにを獲ったんですか?」

 

「私は、テア博士と一緒に、魔導アナグマを捕獲した!」

 

瞳ちゃんは、檻の中でキュウキュウと鳴いている毛玉のような生き物を、自慢げに差し出してきた。

 

魔導アナグマ。

 

体長1メートル程で、人懐っこく愛嬌のある外見である。

 

一部では、高級食材としても珍重される魔物だ。

 

しかし、その愛くるしさとは裏腹に、ひとたび逆鱗に触れれば最凶の魔獣へと変貌する。

 

前世のアナグマも鋭い爪で地下にトンネルを掘る生き物だったが、こいつの爪と腕力は別次元。

 

地下数百メートルを掘り進み、人間など一撃で葬り去るスペックを持つ。

 

基本は臆病なので滅多に人前に現れず、出てきても甘えるような仕草で人間を虜にする、きわめて危険な生物なのだ。

 

「魔導アナグマを、獲ったんですか?」

 

俺は、信じられず聞き返した。

 

「そうだぞ!しかし、私にはトドメを刺すことが出来なかった・・・」

 

いや、うん。

 

逆に、良かったよ。

 

いくら高級食材で美味しくても、あんな可愛い見た目の生物を殺っちゃ駄目だよ!

 

俺は檻に近付き、そっと手を出す。

 

因みに、俺は『異世界純情選手権』第二位なんだぞ!

 

前世の某アニメ映画で、リスみたいな動物に指を噛まれて『ッ!ほら、怖くない』と、微笑みながら手を引っ込めなかったお姫様がいたが、奴が前世で一番と言うなら俺は異世界で二位だ!

 

なんて、勝手に作った設定を思考しながら、檻に手を近付けようとして・・・止めた。

 

だって、よく見ると爪の一本一本が、俺の指より太いんだよ?!

 

それに体長1メートルって、確実に腕を噛み千切られるよね!?

 

やはり俺は、あの姫様には勝てないんだな。

 

そんな事を考えながら、檻の中の魔導アナグマを見つめる。

 

その瞳は、純真な子供の様なキラキラした目をしている。

 

さ、触りたい!

 

ナデナデしたい!

 

俺が、そっと手を伸ばそうとすると「リョウ、止めた方が良い。その魔導アナグマは、捕獲されたばかりで気が立っている」と、テア博士から注意される。

 

「フシャー!」

 

こ、怖えぇ!

 

「大丈夫だぞ!なにもしないから、心配しなくて良いんだぞ?」

 

ひ、瞳ちゃん?!

 

危ないよ!

 

瞳ちゃんが、無防備に魔導アナグマの檻に近付き手を伸ばす。

 

そして、魔導アナグマの頭を優しく撫で始める。

 

「きゅ〜ん!」

 

「ふむ?急に落ち着いたな?」

 

テア博士が、魔導アナグマを見てそんな事を言う。

 

落ち着いたの?

 

なら、俺も・・・。

 

そう考えて、檻に手を近づけると・・・。

 

「フシャー!キシャー!」

 

ギャリン!

 

前足で、檻の柵を引っ掻く魔導アナグマ。

 

「ちょっと?!テア博士?落ち着いたんじゃなかったんですか?」

 

「・・・リョウ、残念だが諦めた方が良い。男は嫌いだそうだ」

 

男は嫌いって・・・。

 

瞳ちゃんに撫でられてる魔導アナグマを見ると、此方をチラッと見てフッと勝ち誇った様な顔をしやがった!

 

・・・よし、鍋の具材にしてやろう!

 

そんなやり取りを眺めていたヴェルダンディが「あら、随分と美味しそうな子を捕まえたのね?」と、魔導アナグマを見て言う。

 

それを聞いた魔導アナグマは「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」と、全力でヴェルダンディにも媚びを売り、テア博士に何かを必死に訴え掛けている。

 

「フムフム?リョウ、コイツは鍋にするのか?」

 

テア博士が急にそんな事を言い始めた為、魔導アナグマの顔が一気に青褪める。

 

「テア博士、急にどうしたんですか?」

 

「リョウ、コイツは今、こう言ったんだ!『そこの美しい美魔女のお姉さん、ぼくは悪い魔導アナグマじゃないよ?食べても美味しくないよ?早くそれを通訳して、美形のエルフのお兄さん?!』とな!そもそも、私は女だ!失礼なヤツだ!」

 

確かに、テア博士って見た目が綺麗で中性的だから俺もイエッサーとかって返事して、怒られたっけ?

 

まぁ、その後、ドMに覚醒してしまったが・・・。

 

俺のせいじゃ、無いからね?

 

魔導アナグマと、目があった。

 

そして、頭を下げて必死に俺に対して命乞いをしている。

 

まるで、土下座してるみたいだな。

 

「ヴェルダンディが釣ってくれた魔梶木もあるし、瞳さんに懐いてるから、逃がしたらどうかな?」

 

俺は、ヴェルダンディにそう言ってみた。

 

「リョウ、優しいのね?リョウがそう言うなら、私はそれでいいわよ?テアさんは?」

 

「・・・ヴェルダンディ師匠とリョウがそう言うなら、鍋は諦めてやる」

 

「良かったな!お前は、もう自由だぞ!?」

 

そう言って、瞳ちゃんが魔導アナグマを撫でる。

 

そんなやり取りをしていると、ペ◯パー君が複数の大皿に料理を載せて運んで来た。

 

「オマタセ イタシマシタ!マカジキノ フルコースデス!」

 

刺身、焼き物、揚げ物、煮物、汁物と朝から贅沢なフルコースが近くのテーブルに乗せられる。

 

料理から目を離し、檻を見ると瞳ちゃんは檻の鍵を開き、寂しそうに微笑んで魔導アナグマの頭を撫でている。

 

「良いんだぞ、もう行っていいんだ。・・・私は、トドメなんて刺したくなかった。だから、リョウが逃がそうって言ってくれて、凄く嬉しいんだ!」

 

瞳ちゃんは、ぐっと涙をこらえるように胸を張る。

 

「お前の帰る場所は、こんな狭い檻の中じゃない。広い大地や、深い地面の下だぞ!・・・だから、早く行け!元気で、自分の幸せをつかむんだぞっ!」

 

とても、感動的なシーンだな。

 

でも魔導アナグマは、瞳ちゃんをジッと見つめ動こうとしない。

 

そして、魔梶木のフルコースをチラチラと眺めて、ヨダレを垂らし始めた。

 

「行け!行けって、言ってるんだ!お前は、もう自由なんだぞ!」

 

瞳ちゃんは、そんな視線に気付かず魔導アナグマに必死に語り掛ける。

 

そして魔導アナグマを抱きしめ「・・・バカなヤツだ!お前は、私と共に居る事を選択したんだな?なら、今日から訓練だ!私は、軍人だからな?厳しく指導してやる!」と、魔導アナグマをワシワシ撫でながら、嬉しそうに微笑む瞳ちゃん。

 

そんな魔導アナグマは、『えっ?!ちょっと、軍人って何?聞いてないよ!』的な顔をしている。

 

そしてテア博士に、何やら語り掛ける魔導アナグマ。

 

「キュ!キュ〜ン、キュキュ〜ン!?キュン!」

 

「ふむふむ?なる程?瞳大尉、魔導アナグマがこんな事を言ってるぞ?『解放してくれて有難う!ぼく的には、お姉さんと一緒にいるのは、大賛成なんだけど、軍人とか訓練とかって聞いてないよ!?そんな事より、ぼくも魔梶木食べたい!』だそうだよ?」

 

「そうか!でもその前に、お前に皆を紹介しないとな!」

 

瞳ちゃんが、魔導アナグマの言葉を無視して、俺たちの紹介を始める。

 

そして、俺の説明で「リョウだ!彼は、その、わ、私の大好きな人だ!!昨日、プロポーズされた!」と、昨日の泥酔状態で発言した内容を、皆の前で爆弾投下する。

 

その威力たるや、漆黒の宇宙空間を埋め尽くす、数億の異形なる宇宙怪獣の大群。

 

一つの銀河を瞬時に食い尽くす、絶望の軍勢であった。

 

そのド真ん中に、突如として一機の超巨大ロボットが出現する。

 

操縦席に座る二人の少女の意識が完全にシンクロした瞬間、鋼鉄の巨躯は胸の前で堂々と腕を組み迫り来る大群をただ冷徹に眺めて、仁王立ちしている。

 

武器を構える素振りすらなく、敵を完全に格下と見做した傲然たる構えだ。

 

直後、頭部バイザーの奥に、怪しく鋭く輝く一条の紅いモノアイが起動。

 

ギロリと大群を捉えた瞬間、その単眼から次元を引き裂く極大の熱線が放たれた。

 

 

ギロリと大群を捉えた瞬間、その単眼から次元を引き裂く極大の熱線が放たれた。

 

腕を組んだまま、首だけを動かし、身体は微動だにしない巨躯。

 

そして放たれた光条は、首の動きに合わせて空間を薙ぎ払いーー文字通り『世界を焼き尽くす光の刃』となって、半円状に超拡散していく。

 

「ーーッッ!?」

 

宇宙怪獣たちには、悲鳴を上げる時間すら与えられない。

 

光に触れた怪物の群れは一瞬の抵抗も許されず、次々とド派手に爆散。

 

弾ける光の粒子が連鎖するように宇宙(そら)を埋め尽くし、漆黒の世界を完全に白く染め上げた。

 

俺に対してのダメージは、それ程の効果だ!

 

『頂点を目指して高く跳ぶ系』の神曲を脳内で再生させながら、俺は必死に思考する。

 

お、覚えてたんですか!?

 

え〜と前世の法律で、確か民法第93条の『心裡留保』とか言う法律あったよね?

 

それを、使えないかな?

 

魔導アナグマは、俺を見つめ『ガーン!』と言う吹き出しが出そうな表情で俺を見る。

 

しかし、命を救われた事で諦めたのか「キシャー!ブゥーブゥー!クルル、キュッキュッ!?キュルル?」と、またテア博士に言っている。

 

「ふむ?『お前、プロポーズしてたのか!でも、ぼくは諦めないぞ!ぼくはメスだけど、この娘はぼくの好みだから、軍隊でもなんでも入隊してやる!?早く、魔梶木、頂戴?』だそうだ」

 

・・・は?

 

お前、メスだったの?

 

男嫌いっていうから、てっきりオスかと思ってたのに!?

 

なんだよ?

 

その勝ち誇った様な顔は?

 

魔梶木やらんぞ?

 

そんなツッコミを心の中で入れていると、ヴェルダンディが俺に言う。

 

「リョウ?諦めなさい?因みに、昨日の事は一部始終、私もテアさんもちゃんと覚えてるわよ?それから多分、貴方の事だから心裡留保で、どうにかならないかな?って思ってると思うけど、『善意無過失』で、相手が本気で信じていた場合心裡留保の原則通り、あなたの発言は『有効』よ?まぁ、そんな事を言わなくても、貴方なら責任は取るわよね?」

 

フフっと、優しく笑うヴェルダンディ。

 

・・・うん。

 

そうだね、責任はちゃんと取らないとね。

 

「何じゃ、リョウ?お主、また新しく恋人を作ったのか?若いのぅ!」

 

宇治茶博士が、日本酒片手に魔梶木の刺身を食ってる。

 

「チキショー!ヴェルダンディさんやテア博士、更に男山大尉まで!君は一体、どれだけ貪欲なんだね!?もげろ!お前なんて、もげてしまえ!!」

 

グリーン博士が、魔梶木のフライを片手に、ワインを飲みながら暴言を吐く。

 

シリアスに考え事しようとしたのに、台無しだよ!?

 

 

 

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