異世界転生   作:MSZ-006

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豪華な朝食(宇治茶博士とグリーン博士は宴会)が終了後、俺はシュウさんの経営するゲームセンターに来ている。

 

「おはよう!リョウ君、さっそくだが衣装合わせを頼む」

 

「お早う御座います。はい、お願いします」

 

俺が衣装合わせをしていると、ユカさんとポポが、俺に近づいて声を掛けて来た。

 

「リョウさん!大丈夫ですか?」

 

「お父さん、大丈夫?」

 

ユカさんもポポも、心配そうに声を掛けてくれる。

 

「お早う御座います。俺なら何も心配いりませんよ」

 

俺は視線も合わせず、素っ気なく返事をする。

 

「・・・そうですか。私を含めて、みんな心配してましたよ?」

 

「お父さん、帰って来ないの?」

 

ユカさんとポポが、とても辛そうな表情で聞いてくる。

 

「しばらく戻る気はありません。それに、何の問題もありませんから。心配は無用です」

 

二人は俺の言葉に、酷く悲しそうな、寂しそうな表情を浮かべた。

 

そんな二人から目を背け、俺は黙って衣装合わせに集中した。

 

他のスタッフが、ユカさんさんとポポを衣装合わせやメイクの為に、別室へ連れて行く。

 

ユカさんと、ポポに対する罪悪感が胸を締め付ける一方で、心のどこかで安堵している自分がいる。

 

割り切れない想いを抱えたまま、俺は鏡の中の自分をじっと見つめた。

 

鏡に映る今日の衣装は、どこか場違いに華やかな、ミニ浴衣のような服だった。

 

因みに、女装だよ?

 

此れは、俺の趣味じゃ無いからね?

 

ちゃんと、監督の指示だよ!?

 

プロの手によって化粧を施され、ウィッグで髪型を完璧に整え、鏡の前に完成したその姿は・・・。

 

「こ、此れが、アタシ?」

 

や、ヤバい!

 

また、双六ゲームの時と同じ状態になってる。

 

俺は待機している皆のいる廊下へと、大部屋から出た。

 

その姿を見たヴェルダンディ、テア博士、瞳ちゃん、魔導アナグマがそれぞれ声を上げる。

 

「リョウ!?綺麗ね!」

 

「り、リョウなのか?君は、そんなに可愛い姿にもなれるのか?!どれだけ私を虜にすれば気が済むんだ!さぁ、早く私を辱めろ!ハァハァ」

 

「本当に、リョウなのか?凄く可愛いぞ!?並んで歩いたら、姉妹の様にしか見えん!今度、その姿で一緒に買い物に行こう!」

 

「クックッ!ジェジェジェ!キーキー?」

 

「うぅん!リョウ、この魔導アナグマ『可愛い!ちょっと、そこのお嬢さん!ぼくと一緒に、ねぐらに行かない?』と、発情しながら、言っているぞ?」

 

テア博士が咳払いして、頬を上気させながら通訳してくれる。

 

「うふふ!皆さん、有難う!でも、お前、俺だよ?俺!」

 

お礼は高い声で言い、最後の台詞だけ声を低くし静かに、威圧的に魔導アナグマに言う。

 

「り、リョウ!その声、駄目ぇ!」

 

ヴェルダンディが、真っ赤になって身悶える。

 

「ハァハァ、君の高い声も素晴らしいが、低く静かな声も堪らん!耳元で、激しく言葉責めしてくれ!」

 

テア博士が、ハァハァ言いながら潤んだ瞳で此方見る。

 

「り、リョウ!き、昨日の事を思い出すから、それは駄目だ!?」

 

瞳ちゃんが、頬を紅く染めて、俺をチラチラと見る。

 

「キュ!キュン!」

 

三者三様+一匹は、それぞれ反応を示す。

 

内一匹は、腹を見せて発情している。

 

・・・その後、スタッフに連れられ場所を移動する。

 

其処には、着替えをしたユカさんと監督が何やら話している。

 

・・・ユカさん、凄く綺麗で可愛いな。

 

そんな感想を、俺は喉元で止めて二人の所に行く。

 

セニョール監督は、俺を見た瞬間「やはり、私は間違って無かった!」と大声を上げて絶賛し、ユカさんは顔を赤らめながら「リョウさん、可愛いです!」と、言ってくれる。

 

俺は裏声で「うふふ!有難う御座います!ユカさんも、凄く綺麗ですよ?あれ?ポポは?」と、返事する。

 

「ポポちゃんは今、違う撮影をしていますよ」と、ユカさんが答えてくれた。

 

監督は台本片手に、周囲に指示を出している。

 

そんな光景を眺めつつユカさんが、俺に言う。

 

「リョウさん、まだ怒ってますか?」

 

「・・・別に、私はユカさんに怒ってなんていませんよ?ただ、今はそっとしておいて欲しいだけです」

 

「因みに、昨日は何処に行かれてたんですか?」

 

「昨日は、カオリと始めて会った遺跡に行って、其処が何者かに襲撃されたり、その直前にモンスターの襲撃を受けたりしましたが、今は軍が用意した宿に居ますよ?」

 

「ちょっと!?襲撃って、一体なにがあったんですか!怪我は無いですよね?大丈夫なんですよね?」

 

ユカさんは、血相を変えて俺に聞いてくる。

 

「有難う御座います。私は、何も心配しなくて大丈夫ですよ?遺跡に居た博士の一人が変形する魔導アーマーを持っていたので、問題なく撃退しましたから」

 

「・・・分かりました。無事なら、良かったです」

 

「・・・ユカさん、ごめんなさい。有難う御座います」

 

俺は、ユカさんの目を真っ直ぐ見つめながら、お礼と謝罪をする。

 

そんな俺を見てユカさんは、頬を紅く染めながら「リョウさん?それは、反則です!ちゃんと、昨日の責任とって貰いますから!」と、はにかんだ笑顔を浮かべる。

 

確かに、昨日はユカさんとデートだったのに色々とあり過ぎて、台無しになったもんな。

 

「分かりました。今度は、本当に二人っきりでデートですね!」

 

「はい!」

 

ユカさんが、嬉しそうに返事してくれる。

 

「よし、二人とも、準備は良いかな?先ずは、二人で通して歌って貰う。因みに、選曲はリョウ君に任せるが、なにかいい曲は無いかな?」

 

「・・・そうですね。本来、二人で歌う曲じゃ無いですけど、此れなんてどうですか?」

 

俺は魔導通信機から、前世で誰もが知っていたレジェンド声優が歌う、懐かしいアニメ曲を流す。

 

それは、とある少年が異世界へと迷い込み、数々の苦難を乗り越えて古代の美しき魔導人形と結ばれる、切なくも美しい冒険譚を歌った曲だった。

 

劇中、数々の困難を乗り越えた主人公は、現実世界に戻る際、『必ず迎えに来る』と言い残す。

 

それから何十年もの歳月を掛け、彼はようやく異世界へと戻ってきた。

 

魔導人形が待っていた時間は、彼女にとってはほんの一瞬。

 

しかし、目の前に現れた主人公の姿は、すっかり大人になっていた。

 

その姿を見て、彼女は涙を浮かべた笑顔で呟く。

 

『ずいぶん遅かったじゃない・・・。でも、ずっと待ってたんだから』

 

人間には想像もつかないほど長い、孤独な時間を一瞬で溶かすような、ヒロインの笑顔と言葉。

 

それがあまりにも印象的な、素晴らしいエンディングだった。

 

「す、素晴らしい!此れで行こう!」

 

セニョール監督は、大絶賛。

 

「凄く切ない恋心と、初々しい歌ですね!リョウさん、後でこの歌も私の魔導通信機に移して下さい!」

 

「はい!分かりました。撮影が終わったたら、移しますね?」

 

「後、リョウさん?ゴモリーさんの時の様に、私もおデコでこの歌の情報を渡して下さい!」

 

「いや、アレは、そのなんと言いますか、その場のノリと言いますか・・・」

 

「ゴモリーさんは良くて、私は駄目なんですか?」

 

上目遣いで、ちょっと拗ねた様に俺を睨むユカさん。

 

そんな事されたら俺の心が、あのアニメヒロインの巨大な杖型の魔導武器から繰り出される一振りの一撃で、一国を瞬時に灰燼に帰す。

 

そんな威力で、平常心を破壊してしまうんですけど!?

 

「だ、駄目じゃないです・・・」

 

「じゃ、お願いします!」

 

そう言って、ユカさんが目を瞑り顎を上げる。

 

その後、俺は心臓をバクバクさせながら、なんとかおデコをつけて歌を移し終える。

 

俺の精神が、本当に崩壊しかねないよ!?

 

周りに人が居て、良かったよ?!

 

そうじゃ無かったら、本当にヤバかった!

 

「リョウさん、有難う御座います!」

 

ユカさんが、頬を染めてはにかんだ笑顔で俺に礼を言う。

 

いえ、此方こそ有難う御座います。

 

俺は心の中で返答し、笑顔で答える。

 

今、言葉を発すると、俺の精神が崩壊する。

 

そんなやり取りを経て、台詞を入れて数回リハーサルをした後、本番を一回で終わらせる。

 

監督と一緒に、出来上がったシーンを観てみる。

 

「リョウ!私は、歌なんて知らないぞ!?」

 

「大丈夫!ちゃんと教えるから!」

 

俺はファムの顔に、自分の顔を近付ける。

 

ファムは、真っ赤になりながら目を瞑り顎を上げる。

 

そして自分の額に、ファムの額をつける。

 

「・・・おい、リョウ?き、キスじゃ・・・」

 

「えっ!?なに?」

 

「べ、別に何でもない!」

 

顔を赤くしたファムは、誤魔化す様に俺を見て言葉を発する。

 

「それにしても、何故そんな格好なんだ?」

 

「だって、俺もファムも奴らに見つかったら、大変だろう?だから、こうして変装してるんだよ!」

 

俺はさも名案を言ったとばかりに、ドヤ顔でファムに言う。

 

「・・・そんな事をしても、奴らの目は誤魔化せんよ。しかし、お前のそんな姿が見れたのは、幸さな事だな」

 

そう言って、笑うファム・ファタル。

 

「じゃ、歌おうっか!」

 

「うん!そうだな!」

 

俺とファムはマイクを握り、さき程のアニメのエンディング曲を歌い上げた。

 

たとえ姿が女の子に変わってしまっても、あなたへの愛は変わらない。

 

強くなくても、頑張らなくてもいいから、ただ二人で一緒にいたい。

 

それは、大切な人が傷つく姿を見たくないという、深い慈愛と優しさに満ちた歌詞の歌。

 

女装した俺と、ファムが俺に向ける切ない恋心で、とても歌の歌詞に合っている。

 

一通り観終わった監督が「ふむ?ファム君のさき程のアドリブとリョウ君のアドリブに対する返し、素晴らしいじゃないか!」と、大絶賛する。

 

アドリブってのは、ユカさんが歌を移す時の「・・・おい、リョウ?」って部分のセリフだ。

 

俺は本当に聞き取れず聞き返したのだが、其処が良かったらしい。

 

そんな会話をしていると「ポポさん、入りま〜す!」と、スタッフが監督に告げる。

 

「ご主人、お父さん!僕、こんな格好になった!」

 

目の前に現れたのは、いつもの愛らしいバックツインテール姿のポポではなかった。

 

髪を後ろですっきりとまとめ上げた、どこか大人びた雰囲気の彼女がそこに立っていた。

 

服装は、いつもの動きやすいラフな短パン姿ではなく、黒いパンツスタイルのスーツで、黒いネクタイを締めた出来る女的な感じの服装になっている。

 

「凄い!素敵よ!ポポちゃん!」

 

「うん!凄く似合ってるな!」

 

ユカさんと俺はポポの姿を見て、素直に感想を述べる。

 

「えへへ、有難う!お父さん、ご主人と仲直りしたの?」

 

ポポが笑顔で、俺とユカさんに礼を言って聞いてくる。

 

「ポポ、すまなかった。でも、俺は暫く帰る事は出来ない」

 

「・・・そっか。でも、帰ってくるんでしょう?」

 

「そうだな。落ち着いたら、帰るよ」

 

「うん!じゃ、ご主人と一緒に待ってるね!だから、早く帰ってきてね!お父さん!」

 

ポポの屈託の無い笑顔に、俺は本当に申し訳なくなる。

 

しかし、俺の精神は未だにシコリが残っている状態だ。

 

だから、俺の心がキチンと落ち着くまで、帰る事は出来ない。

 

 

 

 

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