異世界転生   作:MSZ-006

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俺は今、現実逃避しつつ一生懸命タロットカードを、掌でキャッチしようと奮闘している。

 

カシュッ!

 

また、失敗した。

 

落ちて地面に刺さった魔導金属製のタロットカードを拾い上げ、再度セットし直す。

 

そして、それを見ながら『もげろ!いや、腐って落ちてしまえ!』や『リョウ、お主の結婚式には儂も呼べよ!』等の酔っ払い博士たちの野次が入るが、俺は一切無視する。

 

カシュッ!

 

なかなか、上手く掌に収まらないな。

 

地面からタロットカードを拾い上げて、腕に着けたギミックにタロットカードをセットする。

 

そして相変わらず周りの女性陣は、とても賑やかだ。

 

やれ、『結婚式』だの『初夜』だの『子供は何人が良い』とか、『・・・お姉ちゃん呼びが、最高』とか、『いや、ママ呼びの方が至高!』だとか『人妻って、響きに弱い』だの『メガネが、性癖です!』とか『ロリコンだから、自分たちが有利!』更に『ドSで緊縛や露出、言葉責めが大好き!』はたまた[女装した姿こそ究極!]とか、好き勝手に言っている。

 

そんな言葉を無視して、暫くすると俺はコツを掴んで上手く掌でカードをキャッチできる様になった。

 

カシュッ!

 

シュン!

 

俺は、上手くキャッチ出来た『No.13・DEATH』を手首のスナップを効かせて、誰も居ない方って向って投げる。

 

『No.13・DEATH』は、俺の意思に従い暫く空中を旋回した後、俺の手元に戻ってくる。

 

この魔導金属製のタロットカードは、俺の意思を読み取って飛んでくれる便利な高位魔導武器だ。

 

前世のロボットアニメで『行け!』とか言って、無数の敵を確実に仕留める精神駆動型遠隔兵器。

 

あるいは、前世のクラシックなSF小説で、アニメ化された水着のような衣装を着た二人組の美少女が出てきた、脳波を追尾して喉元を切り裂く、あの苛烈なカード型暗器をどこか彷彿とさせる代物だ。

 

俺の中二病を、大満足させる至高の逸品だ。

 

どういう訳か武器量販店で買った際に、この『No.13・DEATH』だけ売られてたんだよね。

 

本来、タロットカードってのは大アルカナで22枚、小アルカナも含めると全部で78枚ある筈なんだけどね?

 

まぁ、俺はこの『死と再生』のカードが、非常に気に入ってる。

 

『死と再生』って、中二病心を非常に擽る言葉だよね!?

 

では、皆さん?

 

目を瞑って下さい?

 

いいですか?

 

先生は決して、皆を責めてる訳じゃありません!

 

ただ、皆の中二病心を確かめたいだけなんです!

 

だから、『死と再生』と言う言葉が中二病心を擽ると思った人は、正直に挙手しなさい!

 

・・・大丈夫。

 

先生は、ちゃんと分かってますからね?

 

うん!

 

皆さん、素直で宜しい!

 

先生、そんな皆さんが大好きです!

 

と、一人静かに脳内コントに浸っていると、カオリや他の皆から『リョウが、また異世界と通信してる!』とか『アレは、おそらく私たちとの今後を、真剣に考えているんですね!』や『・・・リョウ、中二病だから仕方無い』等の発言が聞こえてくる。

 

「リョウ!ちょっと、いいか?相談したい事があるんだが・・・」

 

瞳ちゃんが、何やら困った様な顔で俺を見る。

 

「どうしたんですか?結婚式の話なら、駄目ですよ?」

 

「き、貴様!私をあんな風に辱めて、そんな事を言うのか!?お前は、私に対して責任を取らないとならんのだぞ?!し、しかし、その話じゃ無い!魔導アナグマの事だ!」

 

魔導アナグマ?

 

はて、一体なにかあったのかな?

 

「何かあったんですか?」

 

「うむ!さき程、グリムリーパーアリゲーターと戦闘させた際に、動きが良く無いと思って、私やユカさんに頼んで魔導アナグマの動きを見て貰ったんだ。しかし、しっくりこない」

 

瞳ちゃんは、本番仕込みのシステマだしユカさんは、CQCの使い手だもんな。

 

「じゃ、ゴモリーさんに聞いてみたらどうですか?ゴモリーさんは、様々な武器や拳法の使い手でもありますよ?」

 

「そうか!では、魔導アナグマと一緒に話を聞いてみる!後、私はお前の辱めのせいで、男に戻れないんだから、ちゃんと責任は取れよ?リョウ!」

 

・・・瞳ちゃんに、釘を刺されたよ。

 

瞳ちゃんは、魔導アナグマを引き連れてゴモリーさんに話し掛ける。

 

話を聞いたゴモリーさんは、何やら魔導アナグマと会話し、体幹や動きなど様々な角度から観察している。

 

そして、ゴモリーさんがとある拳法の型を見せ始めた。

 

あの動きって、呂洞賓(りょどうひん)だよね?

 

それから、漢鍾離(かんしょうり)、張果老(ちょうかろう)、藍采和(らんさいわ)、鉄拐李(てっかいり)、韓湘子(かんしょうし)、曹国舅(そうこっきゅう)と次々に、型を見せるゴモリーさん。

 

それは前世で、某拳法家の映画スターが有名にした『酔八仙拳』だ!

 

俺は前世で、この映画が大好きだった。

 

前世の俺が、若い頃『酔拳、戦闘理論』なんて本まで買って、読んだくらいだ。

 

暫く見ていると、魔導アナグマがゴモリーさんの動きを模倣して、器用に動き出す。

 

その動きは、まさに前世の映画スターがやっていた動き!

 

旋風脚なんて、物凄く綺麗に決まってる!

 

・・・足短いけど。

 

でも短い尻尾も旋風脚で、一緒に使ってるのか!

 

「お兄ちゃん、何アレ?なんだか、フラフラしてるけど?」

 

「めぐりちゃん、アレは酔八仙拳って言う中国拳法の一つだよ。前世の映画にもなったんだ」

 

「そうなんだ?!ボクは、前世じゃアクション映画とかあんまり見なかったからなぁ。でも、酔っ払ってるみたいな動きって、面白いね!」

 

「うん、そうだよね。中国拳法は、動物やカマキリ、後は寝ながら戦うなんて珍しい拳法もあるからね。因みに、酔八仙拳は、寝ながら戦う拳法も混じってるらしいよ?」

 

「お兄ちゃん、博識!じゃ、魔導アナグマに何か武器とかあった方が良いかな?」

 

めぐりちゃんが、目をキラキラさせながら言う。

 

「そうだなぁ・・・。瓢箪なんてどうかな?」

 

「ひょうたん?ひょうたんって時代劇とかで、水筒代わりにしてるアレ?」

 

「うん!酔八仙拳で瓢箪は、強力な武器になるんだよ。瓢箪を敵に投げつけたり、紐で相手を絡めたりね」

 

「そっか・・・、確かこの牧場は魔導植物もいっぱいあったね!ちょっと、聞いてくる!」

 

そう言っためぐりちゃんは、調理専用の魔導ロボを見付けて、何やら話し掛けている。

 

「お兄ちゃん!この牧場、肉食ウツボカズラが居るんだって!で、その瓢箪は食べれないけど、メロンみたいな実は、甘くて美味しいんだだって!」

 

肉食ウツボカズラ。

 

普段は、動かず獲物が来ると蔦を伸ばし、獲物を捕まえる肉食の植物モンスター。

 

因みに、食虫植物のウツボカズラを巨大にした見た目で、周りに瓢箪やらメロンの様な果物を、実らせるモンスターでもある。

 

光合成と水分だけで、生息は可能なのだが、獲物を獲る。

 

人間程度なら簡単に飲み込んでしまう位のサイズなので、果物や瓢箪が欲しい人間や果物を主食とする動物が近づくのを、待ち続けるそんなモンスターだ。

 

メロンの様な果物は、とても美味しく高級な果物物として人気があり、瓢箪は工芸品として人気があるが、相手はモンスター。

 

ある程度の実力が無いと、養分にされかねない。

 

だから、高級品になってしまう。

 

そう言えば、宿の売店にメロンみたいな果物とか、瓢箪も置いてあったな?

 

お値段、お高めだったけど・・・。

 

「リョウ!今の話、聞かせて貰った!魔導アナグマの訓練相手に、丁度いい!」

 

瞳ちゃんが、俺とめぐりちゃんの会話を聞いて、即座に次の対戦相手を決めてしまった。

 

さっき、水中戦闘訓練と称してグリムリーパーアリゲーターと戦ったばかりなのに、大変だな・・・。

 

一通り、型を習った魔導アナグマがゴモリーさんと組手をしている。

 

其処に瞳ちゃんが、さき程の話を伝える。

 

あっ!

 

魔導アナグマが、気絶した!

 

相当、ショックだったんだな。

 

「瞳さん、流石にグリムリーパーアリゲーターと連戦はキツいと思うんで、明日にしませんか?」

 

「リョウ、そんな事じゃ軍でやっていけん!しかしリョウに免じて、今日は、止めてやる!」

 

「キュ、キュキュン!」[か、庇ってくれて、有難う!]

 

うん。

 

まぁ、アレだよ。

 

俺は前世で、ブラック企業に勤めてたの経験があるからね?

 

だから、いくら軍属になるにしても、余りにもハード過ぎれば見るに耐えられん。

 

「リョウ、優しのね」

 

ヴェルダンディが、俺の傍に来て声を掛ける。

 

「俺の記憶を持ってるなら、分かるだろう?」

 

「そうね!私も、リョウの記憶は持ってるんだからね!」とカオリが、俺とヴェルダンディの間に割り込む。

 

「うふふ、そうね?貴女も私も同じ存在だからね。だから、貴女が私に嫉妬する気持ちも分かるわよ?」

 

ヴェルダンディは、落ち着いた余裕のある表情でカオリ見て微笑む。

 

「ぐぬぬ!」

 

カオリが、ヴェルダンディを見て唸り声を上げる。

 

ヴェルダンディは、見た目で言うとカオリより歳上のに見えるからな。

 

それで、こんな大人の女的な余裕が生まれるのか?

 

「リョウ、私は元エント。元の年齢を合わせると、前世の貴方より歳上なのよ?」

 

なる程?

 

エント時代に何年生きていたかは聞いてないが、だから大人の女としての余裕があるのか。

 

「カオリ、ヴェルダンディ。取り敢えず、皆で温泉街にでも行ってみるか?」

 

俺は、ゴモリーさんと魔導アナグマの組手を眺めながら、二人に声を掛ける。

 

「そうね!行きましょう!」

 

「うん!勿論、行くわよ!」

 

ヴェルダンディとカオリが返事して、俺を間にして歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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