異世界転生 作:MSZ-006
「良かったな、お前等!」
俺は三人に新しい就職先が見つかった事を、心の底から喜んだ。
「貴様ら、私から軍に話を通しておく。軍の基地に行ったら、私の名前を出せ、そうすれば分かる様にしてある」
「姉さん、有難う御座います!」
「流石、リョウアニキの恋人だ!」
「ッス!可愛いだけじゃなくて、奥さんとしての能力が高いッス!」
ハジメ、アル、トロワと喋ったが・・・おい、トロワ?
お前の発言だけ、ちょっとズレちゃいないか?
「ま、まぁな!リョウの妻として、貴様らの事を見捨てたら、リョウの威厳に関わるからな!」
瞳ちゃんが顔を赤くし、チラチラと俺を見ながら言う。
「有難う御座います。いや、流石です!やはり、大尉ともなると軍に顔が利くんですね!」
俺は、瞳ちゃんに礼を述べつつ、褒め言葉を送った。
「・・・リョウ?それだけか?」
瞳ちゃんが、酷くガッカリした様な表情で俺を見る。
「アニキ、此処は『お前のおかげで、旦那として鼻が高いぞ!』とか・・・」
「そうですよ!リョウアニキ!奥さん、喜ばせないと!」
「ッス!ッス!『俺の為に、有難う。このまま一生、俺と共に歩んでくれ!』とかって、キメるところッス!」
三馬鹿が、余計な事を言い出す。
本人たちは、小声で喋っているつもりだろうが、周りに聞こえてんだよ!?
見ろ!?
周りの女性陣の顔を!
少なくとも、俺は他の女性陣の方に、顔を向けられないぞ!?
そして、瞳ちゃんは頬を紅く染め、潤んだ目で俺を見てるし!
「あの瞳さん、今回のコイツらの件は本当に、有難う御座いました。心よりこの場を借りて、お礼を申し上げると同時に・・・」
「リョウ!お前は、馬鹿か!?」
「リョウさん!そんな答えを、瞳さん望んでません!」
「パパ?もう鈍感系、難聴系主人公は止めてあげて?」
「リョウ様?私たちにも、早く答えを出して下さい?訴えますよ?」
話を聞いていたカオリ、ユカさん、珊瑚が瞳ちゃんの援護に回り、ミリィさんがメガネをクイッと上げながら、俺に釘を刺す。
それを聞いた他の女性陣が、うんうんと頷いてる。
・・・いや、哀さん?
貴女は、人妻ですよね?
何故、貴女まで一緒に頷いてるんですか?
あっ、そっか!
他の娘たちに対して、早く答えてあげなきゃ駄目でしょうって、そう言う意味ですよね?!
じゃ無いと、困りますけどね!?
「あ〜、瞳さん。今度、俺とデートして下さい!お願いします。後、他の皆様にも、個別にデートの約束をさせて頂ければと思います。宜しく、お願いします」
俺は、瞳ちゃんと周りの女性陣に頭を下げる。
「うん!楽しみにしてるぞ?」
瞳ちゃんは、花が咲いたようなキラキラした眩しい笑顔で答える。
「リョウ様、私はリョウ様に以前、『無期限でデートに誘って下さい』と、お願いしましたが、それが明日と言う事ですね?」
ミリィさんが、メガネをクイッと上げながら俺に言う。
えっ?!
明日なの?
「リョウさん?私との約束も忘れないで下さいね?」
ユカさんは、ニッコリ笑って言う。
大丈夫です。
昨日の事なんで、まだ忘れてないですよ?
「リョウさん?それは、私も含めてよね?」
哀さんが微笑みながら、俺を見て言う。
「あ、あの哀さん?哀さんには、旦那さんが居られますし、めぐりちゃんの前ですよ?」
「あら?めぐりは確かに私の娘だけど、それと此れとは話が別。それから、リョウさん?ウチの人が『仕事』に行ってるのは、リョウさんがよく分かってるんじゃないかしら・・・?」
哀さんの顔から表情が消えて、冷たい眼差しで俺を射抜く。
「さ、さぁ?俺は、何も聞いてないですよ!?」
俺は、哀さんから目を逸らし答える。
やっぱり、哀さんは気付いてるんだ。
真夜中に、旦那さんと死闘した事を・・・。
「・・・そう?なら、良いわ。でも、デートには行くわよ?」
そう言って哀さんは、優しい微笑みを浮かべる。
他の女性陣は、デートの内容を考えているのか、とても静かに黙考している。
「アニキ、俺たち職安に行って退職の手続きをして来ます!」
「それから、労基に行って話して来ます」
「男山大尉、軍の基地に行くのは、明日でも大丈夫ッス?」
「うむ!様々な手続きが終わってからで、大丈夫だぞ!」
瞳ちゃんは、とても機嫌よく三人に言う。
俺は、三人を眺めながら本当に良かったと思った。
ろくでもない仕事をクビになり、今度はマトモな職場を推薦される。
それは他人がみたら、とても羨ましい事なんじゃないかな?
少なくとも、俺は羨ましいと思うな。
まぁ、就職先の好みってのは、人それぞれあると思うけどね?
「アニキ、有難う御座いました!姉さんたちと、お幸せに!」
「リョウアニキ、軍に再就職して給料が出たら、何かお礼をさせて下さい!」
「そうッス!アニキと男山大尉に、何かお礼をしたいッス!」
「ばか、そんなの良いんだよ!後、此処は俺の奢りだ、勘定は気にするな」
「うむ!軍の訓練は厳しいが、しっかり頑張れよ!私はリョウと、幸せになるからな!」
「アニキ、有難う御座います!」
「ご馳走様です!リョウアニキ!」
「アニキ、有難う御座います!今度、連絡するッス」
俺は立ち上がり、三人が頭を下げて店を去って行くのを見送る。
やっと、落ち着いたな。
俺は静かに席に座り直し、ホッと息をつく。
瞳ちゃんは、他の女性陣と楽しそうに談笑している。
俺はそんな女性陣の姿を眺めつつ、さき程の哀さんの言葉を思い出す。
真夜中に旦那さんと繰り広げた死闘の後、俺に対して一方的に告げた言葉。
シュウさんから依頼された、命の危機が全く無いとは言えないと言われた仕事を受ける。
哀さんやめぐりちゃんは家族として、シュウさんに対して危険な仕事はさせられないと、旦那さんを引き止めた。
だが旦那さんは、それを振り切って仕事を受けようとしている。
旦那さんの言葉を、哀さんに伝えるのは簡単な事だ。
・・・しかし、それは男として俺の矜持が許さない。
だから俺は、この瞳で嘘をつく。
まるで、前世で有名だった二人組の歌手が歌っていた、歌のタイトルみたいだな。
そんな事を考えながら、俺は皆の姿を黙って見つめる。